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傷物令嬢は初恋の太陽に愛を囁く
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エステルは、自室で机に向かっているところだった。何かを考えるようにしてから、羽ペンを滑らせ、また手を止めて、側に置いてあった紙束を手に取る。それを開いて目を通したエステルは、ふっと口元を緩めた。
その時ノックが響いて、メイドのミレーヌが薪を持ってやってくる。
「旦那様方へのお手紙ですか?」
「ええ」
暖炉に薪をくべながら言ったミレーヌに、エステルは頷いて手紙を再び畳みなおした。
季節は冬である。エステルがラウルと婚約してから数カ月が経ち、もう社交シーズンも終わりだ。
「お嬢様からのお手紙、お喜びになられるでしょうね」
「どうかしら。お兄様からはまたお叱りのお手紙だったわ。早く家に帰って来いって」
「仕方ありませんよ。デビュタントが終わったら帰るというお話でしたのに、そのまま婚約して結婚するだなんて言われたら……もし私がお嬢様についてきてなかったら、私も公子様と同じ反応をしたと思います」
「そう、ね……。この婚約は突然だったもの……」
ぽつりと呟いて、エステルは手紙を撫でる。
政略結婚だと思っていたこの縁談は、実は熱烈な恋愛結婚だった。けれど、あの子どもの頃の少年騎士との出会いを、エステルは今まで誰にも話したことがなかったから、誰の目にも突然の婚約にしか映らない。
もっとも、ラウルとコンスタンは、元より知己だったらしい。エステルに助けられた後、ラウルは戦場復帰する際に、コンスタンとの面識を得ていた。戦場でのラウルの様子を知っていたからこそ、最終判断はエステルに委ねていたものの、コンスタンは唐突な縁談にも前向きだったのだ。その話を後からラウルに聞かされてエステルは驚いたのだが。
「でも、春の婚礼には来て下さるのですよね?」
「今そのお願いのお手紙を書いているところよ。お兄様、拗ねてらっしゃるみたいだから」
「まあ! 公子様ったら、来られなかったら絶対後悔されますのに」
くすくすとミレーヌが笑ったところで、部屋のドアが再びノックされた。
「ああ、お嬢様。お時間みたいですね」
「そうね。こちらにお通しして」
「どうぞ」
エステルの代わりにミレーヌが返事をして、メイドが連れてきた来客者を招き入れた。
***
「旦那様、エステル様がお待ちですよ」
「何度も言わなくても聞こえている」
メイドのクロエに急きたてられて、帰宅したばかりのラウルはエステルの部屋へと向かっていた。
「そう急がなくても、仕立て屋など今まで何度も来ているだろう」
「今日は旦那様の服をお仕立てしないといけませんからね」
「それに早くしないと後悔しますよ」
「後悔?」
ラウルの荷物を持って前を歩いていたソフィが、ラウルの怪訝そうな声にほんのりと笑んで振り返る。
「そうですね。今回については、クロエの言葉が正しいと思います」
眉をひそめたラウルだったが、それ以上問い詰めても意味深に微笑むメイドたちが、これ以上何も教えてくれないのは判っている。主に仕えるメイドの態度としては不敬極まりないが、彼女らはラウルがヴァロワの名を戴いた時からずっとラウルに仕えているので、この馴れ馴れしさも仕方がないのかもしれない。ラウルもそれを咎めようとは特にしない。
「さあ、どうぞ、旦那様」
エステルの部屋のドアをノックして入室の許可の声がかかると、仰々しく礼を取って、クロエはドアを開けて見せる。その先に広がる光景に、ラウルは息を飲んだ。
「おかえりなさい、ラウル様」
柔らかな笑顔を浮かべてそう言ったのは、もちろんエステルだった。窓際に立った彼女は今、純白のドレスに身を包んでいた。腰から美しいドレープを描いてふんわりと広がったスカートは長く、トレーンが贅沢に床に広がっている。その生地には銀糸で細かな蔦のようなデザインの刺繍が施されていて、スカートから腰、胸にかけて広がっている。頭には薄く織られた生地にこれもまた銀糸で細かな刺繍が施されたヴェールを被っている。
正に、花嫁の姿である。
「今、仮縫いが仕上がって、試着しているところなの。クロエたちが呼んできてくれたのね」
この数かけ月の間に、様付けは取れなかったが、敬語はほとんどなくしたエステルだ。ドレスを見せようとくるりと回ろうとしたが、トレーンが大きすぎてそれは叶わなかった。
「まだ刺繍が完成しておりませんが、御婚礼にはしっかり仕上げさせて頂きます」
仕立て屋が声をかけると、エステルは「まだ刺繍が増えるの?」と目を丸くした。
「……ラウル様?」
部屋の入口に突っ立ったまま、一言も発さないラウルに首を傾げて、エステルが近づこうとすると、彼はすっと手を前に出して、彼女を制止した。
「貴女はそこにいてくれ。俺が行く」
そう告げると、ついでにラウルはメイドたちに目配せをして、手を振る。すると仕立て屋ともども、ミレーヌたちメイドは一緒に部屋から出て行ってしまった。
ふたりきりになった途端に、無言でエステルに歩み寄り、無言のまま彼女をじろじろと見たかと思えば、ラウルは大きなため息を吐いて顔を覆った。
「ど……どうしたの?」
「……」
恐る恐る尋ねるエステルをじっと見つめて、ラウルはまた深い溜め息を吐く。
「……綺麗すぎる」
「え?」
「貴女に、よく似合いすぎている。こんなに綺麗な貴女を婚礼の場で、他の人間に見せないといけないのか」
心底うんざりしたように言うラウルに、エステルはぎょっとする。
「ラウルさ」
「エステル」
突然彼女を抱き寄せたラウルは、エステルの頭に顔を寄せる。
「どうにか招待客に貴女を見せずに終わらせられないか……」
ごくごく真面目にそんなことを言うので、エステルはふふっと笑いを漏らしてしまった。
「……笑いごとではないのだが」
抱きしめたままのラウルが、むっとした声で言う。
この図体が大きい戦争英雄は、存外に嫉妬深い。そして心配性だ。エステルが何度もダミアンのことはもう忘れたと言っていても、何度もダミアンの存在を引き合いに出していたのは、それほど妬心が大きかったからだ。今は婚礼衣装に身を包んで美しい彼女が、他の男に目をつけられないかどうかを心配しているらしい。
(そんな心配をしなくても、ラウル様しか見てないのに)
エステルはやっぱりくすくすと笑えてしまって、そのせいでラウルが拗ねたように無言で彼女を抱きしめる。そんなラウルの背中に、エステルは腕を回してぽんぽんと叩いてから、もぞもぞと顔を動かして、エステルは彼の腕のなかでラウルを見上げる。
「エステル……」
まるで意気消沈した大型犬のように項垂れるラウルに、これ以上拗ねられないようにエステルは笑いを何とかかみ殺す。
(言葉がぶっきらぼうな癖に、本当に可愛い人なんだから)
背伸びをして、エステルは彼の唇を軽くついばんだ。
「ずっとこの腕の中にだけ貴女がいればいいのに」
「だめよ。婚礼は必ずしなきゃ」
「……俺の星は本当に頑固だ」
また拗ねたように呟いて、ラウルは眉尻を下げる。
「婚礼の儀式では、私がラウル様の花嫁だっていうことを、存分に見せつけたらいいのよ」
「なに?」
「どうせ私は貴方しか見てないもの。そうでしょう?」
背中に回した腕に力を込めれば、ラウルの赤い瞳が揺れる。
「……しかし」
「だって、早く正式に結婚したって周りに示さなきゃ……」
エステルはそこで言葉を切って、ほんのりと頬を染めた。
「赤ちゃんが、作れないでしょう?」
貴族の義務は果たすべきだわ、と、小さく続けたが、そんなものはついででしかないとラウルは判っている。また溜め息を吐いて、ラウルはエステルに今度は自分から唇を重ねる。
「俺の星に、逆らえるわけがないな」
婚礼の儀式の中止も、腕の中に閉じ込めておくのも無理なのは判り切っている。いつでも、ラウルは頑固な彼女の意思に従ってしまうのだ。とはいえ、今回の婚礼については、エステルの言い分が全て正しいのであるが。
白旗を挙げた婚約者の太陽のような赤い瞳を見つめて、エステルはまた口づけを交わす。
「愛してるわ、ラウル」
「……ああ。俺も、愛している」
リップサービスではないその言葉を噛みしめて、エステルは初恋の婚約者に続けて愛を囁くのだった。
その時ノックが響いて、メイドのミレーヌが薪を持ってやってくる。
「旦那様方へのお手紙ですか?」
「ええ」
暖炉に薪をくべながら言ったミレーヌに、エステルは頷いて手紙を再び畳みなおした。
季節は冬である。エステルがラウルと婚約してから数カ月が経ち、もう社交シーズンも終わりだ。
「お嬢様からのお手紙、お喜びになられるでしょうね」
「どうかしら。お兄様からはまたお叱りのお手紙だったわ。早く家に帰って来いって」
「仕方ありませんよ。デビュタントが終わったら帰るというお話でしたのに、そのまま婚約して結婚するだなんて言われたら……もし私がお嬢様についてきてなかったら、私も公子様と同じ反応をしたと思います」
「そう、ね……。この婚約は突然だったもの……」
ぽつりと呟いて、エステルは手紙を撫でる。
政略結婚だと思っていたこの縁談は、実は熱烈な恋愛結婚だった。けれど、あの子どもの頃の少年騎士との出会いを、エステルは今まで誰にも話したことがなかったから、誰の目にも突然の婚約にしか映らない。
もっとも、ラウルとコンスタンは、元より知己だったらしい。エステルに助けられた後、ラウルは戦場復帰する際に、コンスタンとの面識を得ていた。戦場でのラウルの様子を知っていたからこそ、最終判断はエステルに委ねていたものの、コンスタンは唐突な縁談にも前向きだったのだ。その話を後からラウルに聞かされてエステルは驚いたのだが。
「でも、春の婚礼には来て下さるのですよね?」
「今そのお願いのお手紙を書いているところよ。お兄様、拗ねてらっしゃるみたいだから」
「まあ! 公子様ったら、来られなかったら絶対後悔されますのに」
くすくすとミレーヌが笑ったところで、部屋のドアが再びノックされた。
「ああ、お嬢様。お時間みたいですね」
「そうね。こちらにお通しして」
「どうぞ」
エステルの代わりにミレーヌが返事をして、メイドが連れてきた来客者を招き入れた。
***
「旦那様、エステル様がお待ちですよ」
「何度も言わなくても聞こえている」
メイドのクロエに急きたてられて、帰宅したばかりのラウルはエステルの部屋へと向かっていた。
「そう急がなくても、仕立て屋など今まで何度も来ているだろう」
「今日は旦那様の服をお仕立てしないといけませんからね」
「それに早くしないと後悔しますよ」
「後悔?」
ラウルの荷物を持って前を歩いていたソフィが、ラウルの怪訝そうな声にほんのりと笑んで振り返る。
「そうですね。今回については、クロエの言葉が正しいと思います」
眉をひそめたラウルだったが、それ以上問い詰めても意味深に微笑むメイドたちが、これ以上何も教えてくれないのは判っている。主に仕えるメイドの態度としては不敬極まりないが、彼女らはラウルがヴァロワの名を戴いた時からずっとラウルに仕えているので、この馴れ馴れしさも仕方がないのかもしれない。ラウルもそれを咎めようとは特にしない。
「さあ、どうぞ、旦那様」
エステルの部屋のドアをノックして入室の許可の声がかかると、仰々しく礼を取って、クロエはドアを開けて見せる。その先に広がる光景に、ラウルは息を飲んだ。
「おかえりなさい、ラウル様」
柔らかな笑顔を浮かべてそう言ったのは、もちろんエステルだった。窓際に立った彼女は今、純白のドレスに身を包んでいた。腰から美しいドレープを描いてふんわりと広がったスカートは長く、トレーンが贅沢に床に広がっている。その生地には銀糸で細かな蔦のようなデザインの刺繍が施されていて、スカートから腰、胸にかけて広がっている。頭には薄く織られた生地にこれもまた銀糸で細かな刺繍が施されたヴェールを被っている。
正に、花嫁の姿である。
「今、仮縫いが仕上がって、試着しているところなの。クロエたちが呼んできてくれたのね」
この数かけ月の間に、様付けは取れなかったが、敬語はほとんどなくしたエステルだ。ドレスを見せようとくるりと回ろうとしたが、トレーンが大きすぎてそれは叶わなかった。
「まだ刺繍が完成しておりませんが、御婚礼にはしっかり仕上げさせて頂きます」
仕立て屋が声をかけると、エステルは「まだ刺繍が増えるの?」と目を丸くした。
「……ラウル様?」
部屋の入口に突っ立ったまま、一言も発さないラウルに首を傾げて、エステルが近づこうとすると、彼はすっと手を前に出して、彼女を制止した。
「貴女はそこにいてくれ。俺が行く」
そう告げると、ついでにラウルはメイドたちに目配せをして、手を振る。すると仕立て屋ともども、ミレーヌたちメイドは一緒に部屋から出て行ってしまった。
ふたりきりになった途端に、無言でエステルに歩み寄り、無言のまま彼女をじろじろと見たかと思えば、ラウルは大きなため息を吐いて顔を覆った。
「ど……どうしたの?」
「……」
恐る恐る尋ねるエステルをじっと見つめて、ラウルはまた深い溜め息を吐く。
「……綺麗すぎる」
「え?」
「貴女に、よく似合いすぎている。こんなに綺麗な貴女を婚礼の場で、他の人間に見せないといけないのか」
心底うんざりしたように言うラウルに、エステルはぎょっとする。
「ラウルさ」
「エステル」
突然彼女を抱き寄せたラウルは、エステルの頭に顔を寄せる。
「どうにか招待客に貴女を見せずに終わらせられないか……」
ごくごく真面目にそんなことを言うので、エステルはふふっと笑いを漏らしてしまった。
「……笑いごとではないのだが」
抱きしめたままのラウルが、むっとした声で言う。
この図体が大きい戦争英雄は、存外に嫉妬深い。そして心配性だ。エステルが何度もダミアンのことはもう忘れたと言っていても、何度もダミアンの存在を引き合いに出していたのは、それほど妬心が大きかったからだ。今は婚礼衣装に身を包んで美しい彼女が、他の男に目をつけられないかどうかを心配しているらしい。
(そんな心配をしなくても、ラウル様しか見てないのに)
エステルはやっぱりくすくすと笑えてしまって、そのせいでラウルが拗ねたように無言で彼女を抱きしめる。そんなラウルの背中に、エステルは腕を回してぽんぽんと叩いてから、もぞもぞと顔を動かして、エステルは彼の腕のなかでラウルを見上げる。
「エステル……」
まるで意気消沈した大型犬のように項垂れるラウルに、これ以上拗ねられないようにエステルは笑いを何とかかみ殺す。
(言葉がぶっきらぼうな癖に、本当に可愛い人なんだから)
背伸びをして、エステルは彼の唇を軽くついばんだ。
「ずっとこの腕の中にだけ貴女がいればいいのに」
「だめよ。婚礼は必ずしなきゃ」
「……俺の星は本当に頑固だ」
また拗ねたように呟いて、ラウルは眉尻を下げる。
「婚礼の儀式では、私がラウル様の花嫁だっていうことを、存分に見せつけたらいいのよ」
「なに?」
「どうせ私は貴方しか見てないもの。そうでしょう?」
背中に回した腕に力を込めれば、ラウルの赤い瞳が揺れる。
「……しかし」
「だって、早く正式に結婚したって周りに示さなきゃ……」
エステルはそこで言葉を切って、ほんのりと頬を染めた。
「赤ちゃんが、作れないでしょう?」
貴族の義務は果たすべきだわ、と、小さく続けたが、そんなものはついででしかないとラウルは判っている。また溜め息を吐いて、ラウルはエステルに今度は自分から唇を重ねる。
「俺の星に、逆らえるわけがないな」
婚礼の儀式の中止も、腕の中に閉じ込めておくのも無理なのは判り切っている。いつでも、ラウルは頑固な彼女の意思に従ってしまうのだ。とはいえ、今回の婚礼については、エステルの言い分が全て正しいのであるが。
白旗を挙げた婚約者の太陽のような赤い瞳を見つめて、エステルはまた口づけを交わす。
「愛してるわ、ラウル」
「……ああ。俺も、愛している」
リップサービスではないその言葉を噛みしめて、エステルは初恋の婚約者に続けて愛を囁くのだった。
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