上 下
4 / 31

政略結婚の婚約者

しおりを挟む
「悩む時間も与えてやれなかったが、本当にこれでよかったのか?」

 その台詞は婚約の書面を整えるために教会へと向かう馬車の中で、コンスタンがエステルに対して投げかけた疑問だ。こんなにも性急にことを進めるのは、ひとえにエステルが乙女でなくなってしまったせいである。ラウルは一度自身の邸宅に戻り、教会で会うことになっているから、今はエステルとコンスタンの二人だけが馬車に乗っている。

 政略結婚を承諾したことに対する、コンスタンの心配はもっともだろう。しかしエステルは首を振る。

「私が傷物であることを承知の上で娶ってくださるんですから、文句なんてありませんわ」

「傷物だなどと」

「事実だもの」

 ラウルが帰った後に、エステルはコンスタンに対して詳しい事情を説明している。つまり、ダミアン・レヴィ・グランジェに口説かれ、襲われて純潔を失った後、娼婦だと思われていたために捨てられたということだ。

 とんでもない仕打ちなのだから、当然訴えるべきことではある。しかしそれではエステルが襲われた事実が公になってしまうし、世間は貞操を守れなかった女性に厳しい。どんなに相手が悪かろうと、後ろ指をさされるのは女性側である。つまりは、エステルの名誉を守るためには泣き寝入りするほかないのだ。

 その現状に、コンスタンが納得しているわけではなかったが、当事者であるエステルが既に前を向いているのだから、それ以上言及しようもない。表向きには。

「……お前には、じっくりと結婚相手を選ばせてやりたかったが……エステルが納得しているならそれでいい」

 そんな会話を経て、ラウルにプロポーズされたその日のうちに、正式な婚約の手続きはあっという間に済んだ。手続きを済ませた後に馬車が向かったのは、王都内のラウルの邸宅である。馬車から邸宅の前に降り立ったのは、エステル、ラウル、そしてコンスタンとメイドのミレーヌだ。

「本当にこのまま王都に滞在するのか?」

「それが婚約のしきたりですから」

 いかめしい顔を心配そうに歪めたコンスタンに対して、エステルはきっぱりと告げる。

 貴族の正式な婚約は疑似的な結婚に近い。口約束の婚約と違い書面による婚約は、半年以内、遅くとも一年以内結婚を義務付けるものとなる。しかも、書面での婚約を済ませた場合は、結婚までの期間を婚約者の元で過ごすのが儀礼である。つまり今日からエステルはラウルの家で暮らすということだ。

「令嬢に不自由がないよう、充分に配慮します」

 エステルの隣に立ったラウルが言って、エステルに視線を注ぐ。

「……頼む。私は陛下へのご挨拶を済ませたらすぐに発つが……エステル。ゆっくりと顔を合わせていられずすまないな」

「いいえ、お忙しいのに私のために王都まで来ていただいてありがとうございました」

 エステルが頭を下げると、彼女の頭をぽんと叩いて、コンスタンが頷く。大きな背中に名残惜しさを漂わせてはいたが、しゃっきりと背筋を伸ばしたコンスタンは、やがて馬車に乗り込んで去って行った。

「さて、今日からここが貴女の家だ。案内しよう」

 馬車を見送ったラウルが、すっと手を差し出す。背の高い彼と視線を合わせるためにエステルは見上げて、口を真一文字に引き結んだラウルが彼女をじっと見つめているのに気付く。

「よろしくお願いします。侯爵様」

 改めて膝を折り挨拶すると、ラウルは眉間に皺を寄せた。

「ラウルでいい」

「ですが、侯爵様の名前を呼び捨てにするなんてできません。礼儀はわきまえませんと」

「俺たちは夫婦になるんだろう」

 ため息交じりに言われて、エステルの胸がどきりと鳴った。婚約者同士でも、身分の違いがあるならば、位で呼ぶのは当たり前である。しかし、ラウルはそんな身分など関係なく接しろと言っているのだ。それがエステルの胸を騒がせる。

「俺はもともと侯爵なんて大それた身分の人間じゃない。だから貴女にもラウルと呼んで欲しい」

「ですが……」

 断りあぐねたエステルはそれでも渋る。そんな彼女に小さく「頑固だな」と呟いたラウルはなぜか口元を笑ませた。差し出したままだった手でエステルの手を取ると、そのままぐっと引き寄せて彼女の耳に口を寄せる。

「じゃあ、ふたりきりの時にだけ、ラウルと呼んでくれ。それ以外は侯爵様でも構わない」

 密やかに囁いて、顔を離すをラウルはそのままエステルの手を引いて、邸宅の中へと進む。耳を撫でたその感触に胸を高鳴らせるよりも先に、ラウルの歩幅の広さにエステルは驚いてしまう。エステルが早歩きをしなければついて歩くことができないほどだ。けれど、掴んでいる手は実に優しかった。そうして再び真一文字に引き結ばれた口の表情のまま、ちらちらとエステルを見てきて、大股で歩きながらもエステルを気遣っているのがうかがわれた。

 先ほど差し出された手は彼が不器用ながらもエスコートをしようとしてくれたのだとやっと気付いて、エステルの顔にほんのりと笑みが浮かぶ。

(……侯爵様は、政略結婚でも婚約者によくしてくださろうとする、素敵な方なのね。お顔は少し不愛想だけど)

 笑いをかみ殺しながら、エステルはラウルが手を引くままに任せて、邸宅の中を歩くのだった。



***

 ラウルがじきじきに邸宅内を案内してくれ、エステルが関わることが多いであろう主用な使用人の紹介も済まされた。そうしてラウルが最後に案内してくれたのは、エステルが昼間に使用する部屋だった。今日になって突然エステルが住むことになったにも関わらず、通された部屋は客間などではなく彼女のためにあらかじめ用意されていたもののようだ。そのことに驚いたエステルの様子に、ばつの悪そうなラウルが溜め息を吐く。

「……本当は貴女のデビュタントに合わせてジルー家に行って、そのまま連れ帰るつもりだった。貴女の領地では普段、デビュタントは王都に出向かないと聞いていたからな」

 つまりはラウルは、最初から婚約者を迎えるつもりでこの部屋を用意していたらしい。

「貴女はいなかったから、デビュタントの終わりまで待って欲しいと言われ滞在していたが……」

 これ以上はよそう、と首を振ったラウルに、エステルは小さく声をあげる。

 ラウルは彼女と入れ違いにジルー家に赴いていたらしいとエステルはやっと察する。彼女が父親に宛てた「紹介したい人がいる」という手紙を知り、コンスタンと共に急いで王都へと戻ってきたわけだ。通常の地方貴族は王都でデビュタントの夜会を迎えるのが大半だが、ジルー家はその例外に該当する。それをラウルは知っていたらしい。

「それは……行き違いになってしまい、申し訳ありませんでした」

 すっ、と膝を折って頭を下げかけたエステルの額が、とん、と指先で押しとどめられる。ぱっと顔をあげれば、ラウルは眉間に皺を寄せて口元だけを笑ませていた。

「いちいち頭を下げなくていい。それに貴女が悪いわけじゃない。貴女が王都に来たのは陛下の勅書のせいだろう」

 ラウルの言う通りである。今年に限っては王の勅書でデビュタントは王都で行うようにとの命が来ていた。だからこそエステルは王都に来ていたのだ。

「そう、ですが……」

 馬車での長旅ですら領地から王都への道のりは身体にこたえる。それなのに、わざわざ自分を迎えに来るためにジルー家にまで足を運び、できるだけ早く着くようにと馬で駆け抜けた旅程が楽なわけがない。ラウルに利がある政略目的の結婚のためだとは言え、やはり申し訳なかった。

「あまり気に病むな。そんなことより」

 言葉を切って、ラウルはちらりと部屋にいるミレーヌを見やる。彼女はずっと沈黙しているが、ラウルがエステルに邸宅内を案内している間中、ずっと後ろに控えてついてきていた。目線を受けたミレーヌはにこりと笑い返すとエステルとラウルに会釈する。

「お嬢様、侯爵様、わたくしはお嬢様の荷物の采配に回りたく存じますが、よろしいでしょうか?」

「ああ、頼む」

「お願いね、ミレーヌ」

「では失礼いたします」

 ジルー家の別宅から運び込んだエステルの荷物など、他の使用人が勝手に整理するだろう。それにミレーヌが直接指示するのだとしても、今でなくとも良い。けれど察しのいいメイドはそう言って部屋から去り、ラウルの希望通りエステルとふたりきりになった。本来なら未婚の令嬢を男性と密室でふたりきりにさせるなど考えられないことだが、ラウルは婚約者なのだから問題ないだろう。

(人払いをされて、どうされたのかしら?)

「勢いでプロポーズを承諾させた形になったが、貴女は本当に俺と結婚していいのか?」

 部屋についてから離していた手を、そっと繋ぎなおしたラウルは痛みをこらえるような顔をした。既に婚約の書面にサインだってしているのに、今さらになってそんな質問をするラウルに、エステルはぽかんとしてしまう。この質問は今日すでに二回目だ。もっとも一回目はコンスタンからされたものだが。

「……貴女は、好いた男がいたのだろう?」

 その結果として男に純潔を捧げたのではないかと暗に指摘されて、エステルの頬に再びかっと朱が上る。

「違います……! い、いえ、確かに初恋の人でしたけど! そんなの関係ありません! 私は侯爵様との結婚を受け入れています! でなければここにいません!」

 思いがけず、きゅっと手を握り返す形になったのにエステルは、はっとして手を離す。

「初恋……」

 小さく呟いて眉間に皺を寄せたラウルの声に、「失礼しました」と頬を押さえたエステルは気付かなかった。

「……いや、貴女が俺との結婚に納得しているなら、それでいい」

「ごめんなさい」

「謝る必要はない。……貴女が、負い目に感じる必要はないとさっきも言っただろう」

 それはラウルに無駄足を踏ませたことに対する言葉ではなかったのかと思いかけて、不意にエステルは笑みが零れる。

「……ありがとうございます。侯爵様は優しいですね」

 先ほど自分から離してしまった手を、エステルは取ってそっと両手で包みこむ。これは王命に関わる政略結婚なのだろうが、それでもラウルは心を砕いて歩み寄ろうとしてくれている。その気持ちが嬉しかった。

 エスコートのために散々自分から触れておいて、エステルから手を触れさせると、ラウルは居心地悪そうにぴくりと震えた。顔も強張っているが、決して彼からは離そうとしないのが優しいとエステルには思えた。

「これから、よろしくお願いしますね。侯爵様」

「……ラウルでいいと言ったはずだ」

 ぶっきらぼうに告げるのがおかしくて、エステルはまた笑ってしまう。けれど、その笑いをおさめてエステルは頷いた。

「はい、ラウル様」

 政略結婚から始まった二人の関係は、こうして順調に滑り出したかのように見えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

真実の愛を見つけましたわ!人魚に呪いをかけられた箱入り令嬢は、好みの顔した王子様のようなお方を溺愛しております

蓮恭
恋愛
「お父様、このように丸々と太った酒樽のような方とは暮らせませんわ。隣に立てば暑苦しいったらないでしょう」 「この方も背がひょろりと高過ぎてまるで棒切れのよう。私が扇で仰げば倒れてしまうのではなくて?」 「あらあら、この方はまるで悪党のように悪いお顔をなさっておいでです。隣に立てば、私の命まで奪い取られそうですわ」  そう言って父親であるメノーシェ伯爵を困らせているのは娘であるジュリエット・ド・メノーシェである。  彼女は随分と前から多くの婚約者候補の姿絵を渡されては『自分の好みではない』と一蹴しているのだ。  箱入り娘に育てられたジュリエットには人魚の呪いがかけられていた。  十八になった時に真実の愛を見つけて婚姻を結んでいなければ、『人魚病』になってしまうという。  『人魚病』とは、徐々に身体が人魚のような鱗に包まれて人魚のような尻尾がない代わりに両脚は固まり、涙を流せば目の鋭い痛みと共に真珠が零れ落ちるという奇病で、伝説の種族である人魚を怒らせた者にかけられる呪いによって発病すると言われている。  そんな箱入り娘の令嬢が出逢ったのは、見目が好みの平民キリアンだった。  世間知らずな令嬢に平民との結婚生活は送れるのか?    愛するキリアンの為に華やかな令嬢生活を捨てて平民の生活を送ることになったジュリエットのドタバタラブコメです。 『小説家になろう』『ノベプラ』でも掲載中です。

子どもを授かったので、幼馴染から逃げ出すことにしました

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※ムーンライト様にて、日間総合1位、週間総合1位、月間総合2位をいただいた完結作品になります。 ※現在、ムーンライト様では後日談先行投稿、アルファポリス様では各章終了後のsideウィリアム★を先行投稿。 ※最終第37話は、ムーンライト版の最終話とウィリアムとイザベラの選んだ将来が異なります。  伯爵家の嫡男ウィリアムに拾われ、屋敷で使用人として働くイザベラ。互いに惹かれ合う二人だが、ウィリアムに侯爵令嬢アイリーンとの縁談話が上がる。  すれ違ったウィリアムとイザベラ。彼は彼女を無理に手籠めにしてしまう。たった一夜の過ちだったが、ウィリアムの子を妊娠してしまったイザベラ。ちょうどその頃、ウィリアムとアイリーン嬢の婚約が成立してしまう。  我が子を産み育てる決意を固めたイザベラは、ウィリアムには妊娠したことを告げずに伯爵家を出ることにして――。 ※R18に※

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

ヴィスタリア帝国の花嫁 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

夕凪ゆな@コミカライズ連載中
恋愛
大陸の西の果てにあるスフィア王国。 その国の公爵家令嬢エリスは、王太子の婚約者だった。 だがある日、エリスは姦通の罪を着せられ婚約破棄されてしまう。 そんなエリスに追い打ちをかけるように、王宮からとある命が下る。 それはなんと、ヴィスタリア帝国の悪名高き第三皇子アレクシスの元に嫁げという内容だった。 結婚式も終わり、その日の初夜、エリスはアレクシスから告げられる。 「お前を抱くのはそれが果たすべき義務だからだ。俺はこの先もずっと、お前を愛するつもりはない」と。 だがその宣言とは違い、アレクシスの様子は何だか優しくて――? 【アルファポリス先行公開】

処理中です...