高嶺の娼婦は嫌われ騎士に囲われて

かべうち右近

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8.我儘を受け入れて ※

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「ありがとうございます。……周りに聞こえないように、静かにいたしますね」

 ひそ、と耳元で囁いたアルヤが、布団をめくってエーギルに股がった。見下ろした彼はアルヤの顔を見つめていた。その視線を受けながら、アルヤは腰を浮かせたままエーギルの猛りを手で支えて、見せつけるようにゆっくりと身体を下ろす。彼女の動きを見守っている彼の、立派な喉ぼとけが生唾を呑みこんで上下する。それをうっとりと見ながら、アルヤは彼の穂先が秘部の入り口にくち、と当たったところで止まった。

「ふふ、大きい……」

 今日は彼女の身体を一切解していない。昨日も中を貫かれていたから普段よりは中が広がっているはずだし、今だって彼の肉棒を弄っていたおかげでアルヤの入り口は濡れそぼっている。だが、それを考えても、指でもっと慣らしてからでないとエーギルのものを挿入するのは辛いだろう。

「あ、待ってくれ。アルヤ」

 思い至ったエーギルが彼女を止めようとしたが、アルヤが待つはずもなかった。

「んん……っ」

 腰を降ろして、彼女は強引にエーギルのものを迎え入れる。熱く潤った蜜壺が、今日初めて刺激を受けるのは太すぎる肉棒だ。みちみちに締め上げながら、中ほどまで挿入させたところで、アルヤは小刻みに腰を揺らし始めた。

「……っん、ん……っ」

「アル、ヤ……」

 エーギルの腕は、アルヤを止めようとしてさまよい、腰をつかむ直前で止まる。

「手を、繋いでください」

 両手を差し出せば、素直にエーギルはそれをとってくれた。その手に指を絡ませながら、アルヤは上気した頬を緩める。

「エーギル様は、手も大きいですね」

 きゅっと握っても、到底彼の手を包みこめない。このまま体重を預けたってしっかりと支えてくれそうな彼に甘えながら、アルヤはさらに腰を揺らす。彼女が腰を下ろすたびに、太く硬い肉棒がアルヤの奥を叩いて深く穿つ。最初は中ほどまでしか入らなかったそれが、アルヤが腰を揺らすほどに少しずつ少しずつ彼女の中を拡げて侵していき、ついには根元まで入りこんだ。

「ふ、ぅ……っエーギル、様……」

「アルヤ。待て、それでは……ぅっ」

 どちゅっと勢いよくアルヤは腰を跳ねさせる。内側がエーギルの大きなに慣れた途端に、ぬるぬるとゆっくりだった動きを激しくして、快楽を貪るようにアルヤは彼の上で踊る。エーギルの目の前でふるふると胸を揺らしながら、声を抑えて喘ぐアルヤに、知らず彼女と繋いだ手に力が籠もる。それに目を細めながら、彼女はより激しく身体を揺らした。

「ん……っ、ふ……んんっは……ぁ、あ……っ」

「アルヤ、ある、や……!」

 蜜壺を穿つ肉棒が硬い。先ほどよりも太さを増したように思えるのは、きっと気のせいではないだろう。限界が近いのはアルヤも同じで、エーギルのものを咥え込んだ中はきゅうきゅうと揺れて、絶頂が近いことをエーギルに伝えている。

「わたくしの……んっぅう……っなかに、ください、ませ……は、ぁ……っ」

「アルヤ……っ!」

 彼が切なげに声をあげた瞬間、ばちゅんっと下から強く突き上げられた。一際強いその突き上げに、アルヤの胎がぎゅうっと締まる。そのまま痙攣を起こした彼女に誘われるように、太い肉棒がびくびくと震え、熱いものが彼女の奥に叩きつけてきた。二度三度と勢いよく精を吐き出したエーギルの肉棒は、柔らかくはなったものの、出したばかりだというのにすぐには萎まない。

「は……ぁ……」

 荒い息を吐いて、繋いだままだった手を引き寄せて、エーギルはアルヤを抱き締める。彼の胸に頭を預ける形になったアルヤは、そのままされるがままに頬ずりした。まだ二人は繋がったままだ。

「貴女といると、我慢がきかなくなる……」

 もう一度吐いた息は、後悔の念だろう。するつもりがなかったのに欲情し、アルヤに流されるままに身体をつなぎ、挙句の果てには湯あみをできないのに中に出したのだから、悔いるのも仕方がない。

「だって、あのままではお辛そうでしたもの。……それともおいやでした?」

 それはベッドに入る前の問答と同じだ。

「貴女はずるいな。俺が『いやだ』なんて言うわけがないのを知ってるんだろう」

「いいえ、わかりませんわ。きちんと口に出してくださらなきゃ」

 顔を動かして目線を合わせたアルヤは、くすくすと笑って言う。そんな彼女に困ったようにエーギルも笑った。

「……いやじゃない。だから困ってるんだ」

「ん……」

 アルヤを抱き締めるその腕で彼女の背を撫であげた彼の肉棒が、にわかに硬度を増す。それを蜜壺で感じ取ったアルヤが吐息を漏らした。その熱に誘われるように彼女の中もうねったが、さすがに二度目をするのは気が引ける。

「エーギル様……」

 アルヤが困った声を出せば、エーギルは背を撫でていた腕を止めて息を吐いた。

「このままでは続きがしたくなってしまうな」

「……わたくしが我慢できなかったから……ごめんなさい」

「いや、俺もだ」

「ふふ。では……」

 アルヤは身体を離そうと、上半身を起こす。そのときだった。

「はぁん……っだめぇ……!」

 やけに艶めかしい声が部屋に響く。つい先ほど、絶頂に達したときだって声を堪えていたアルヤが、身体を起こしたごときの動作で、そんな声を出すはずがない。顔を見合わせて二人が黙っていると、いやらしく喘ぐ女の声が何度も響く。それに加えて、微かにベッドが揺れるような音が聞こえてきた。

「……ここの壁は、ずいぶん薄いようだな?」

「そう、ですわね……?」

 小声で言葉を交わしたのは、先ほどから聞こえる喘ぎ声が、明らかに隣の部屋からのものだったからだ。ということは、もしかしたら先ほどのアルヤの控えめな息遣いですら、隣には聞こえていた可能性がある。当然そんなことで恥ずかしがる彼女ではないが、別のことが心配になった。

「わたくしのせいで、お隣の方も眠れなくなってしまわれたのかしら……」

 ぽつりと漏らしたその声に、エーギルがふっと口元を緩めた。

「そうだな。だが、あの調子ならもう、こっちが大きな声を出したって問題ないだろう」

「エーギルさ……ぁあっ!?」

 意図を測りかねたアルヤが尋ねる前に、彼女は甲高い声をあげさせられた。まだ繋がったままだった場所を、下から不意に突き上げられて、アルヤは予想外の快感に喘ぐ。

「だ……め……んっふ……っえ、ぁんっ」

 バランスを崩しそうになったアルヤの腰を支えて、エーギルは下から突き上げ続ける。

「えー、ぎるさまぁ……っ! あっ、あ、ぁ、や……ぁっおつかれ、なのに……は、ぁんっ」

「問題ない……っ、明日は……貴女は、寝ててくれれば……」

「ちが……あぁっ」

 もともと、安宿でうるさくするのはだめだからという理由もあったが、明日の行動に響くからと一度で終わらせようと思っていたのだ。だがもう、エーギルは止まる気がないらしい。肉杭が中を穿って胎を押し上げるたびに、抗議の声は嬌声に塗り替えられてしまう。

(エーギル様がお疲れなのに……!)

「ま、って……くだ、んぅっ」

「そうだな。このままでは、……は、ぁ……貴女が辛いだろう」

「ひゃ……っ!?」

 アルヤの視界がぐるんと回る。それはエーギルが彼女の身体を支えたまま身体を起こし、逆に彼女を押し倒したせいだった。ずるんと肉棒が引き抜かれ、アルヤの身体はうつ伏せにされる。

「……は……エーギル様、もう……」

「あと、一度で終わらせるから」

 二回目はやめましょう、と言いかけたアルヤの言葉を、懇願するようなエーギルの声が重なって、彼女は息を呑んだ。

(……エーギル様はいつもは一度だけで、我慢されていたのだったわ)

 それを思い出して、胸がきゅうっと痛む。

(なのに、わたくしは拒もうとなんかして)

 自分がエーギルを満足させようと始めたことなのに、これでは本末転倒だ。

 彼女が黙っている間に、エーギルの腕がアルヤの腰をわずかに持ち上げ、猛った肉棒が秘所に押し当てられた。先ほどまで内側を埋めていたその熱を求めて、入り口は愛液をこぼす。

「……何度だって、エーギル様のお好きになさってください」

「っアルヤ!」

 ずんっと一気に奥を貫かれる。ぐわんと胎を押し上げて侵入した巨根は、アルヤを絶頂へと至らせた。がくがくと痙攣を起こし、肉棒を強く締め上げるそのしごきを受けながら、エーギルは彼女の中を貪り始める。

「アルヤ、アルヤ……!」

「んっぁ……ぁあっあんっあ、えー、ぎるさま……」

 名前を呼びながら、エーギルは夢中で腰を振っている。

(こうやってわたくしを求めてくださること自体が、エーギル様にとっては我儘なんだわ)

「ぁあっも、っと……んぁっ」

(もっと、わたくしに我儘をおっしゃって……!)

 だが彼女の細腰を支える腕の強さは、彼の本来の握力から考えたら、ずいぶんと優しいものなのだろう。そう思えば、彼女の蜜壺は勝手にエーギルの子種をねだってまた揺れる。

「すまない、アルヤ……!」

(エーギル様が謝ることなんて、何もないのに)

 彼女の言葉はただ、喘ぎ声にしなからない。そうして結局、その晩エーギルは遅くまでアルヤを貪りつくしたのだった。
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