6 / 23
3周目 ルート分岐イベント
しおりを挟む
同じルートを何度か周回するヒロインはいる。だから別に珍しいことではない。そう、3周連続でカナエがルート分岐イベントで、私の待つ東屋に現れたとしても。
もしカナエに対する好感度が足りなければ、エスコート役を申し出はするが、その後のプロポーズイベントが発生しないようになっている。しかし、好感度は引き継がれているのでそんなことにはなりえない。私のルートをカナエが選ぶ限りは、この先ずっとハッピーエンドしかあり得ないのだ。
まだカナエは来ていない。だが恐らく来るだろう。というか、来ない方がおかしい。ここまでの道中、全てのイベントでメインパーティーに私を選んでいるので、好感度の引継ぎをされているのにも関わらず、ハッピーエンドに至れる好感度は私だけだ。他のメンバーと言えば、まあ良くてせいぜい友情エンドだろう。
東屋のテーブルに置いた花束を横目に、私は待機する。
1周目と2周目は、私が東屋に来る前にカナエがここで待機していたので、現れる筈の彼女を待つのは、少し変な感じだ。これが正しいイベントの流れだと言うのに。
「お待たせしましたぁ~!」
カナエが走ってきた。しかしその姿が珍妙だ。
抱えるのが億劫になるほどの大きな花束を抱えている。いや、過去2回も花束を持ってきていたからそれ自体は妙ではないが、服装がおかしい。騎士の礼服を着ているのだ。
「準備、してたら……ちょっと、時間かかっちゃって……すみません!」
東屋につくなり、息を切らしながら弁明する彼女だが、それよりも服装について教えて欲しい。ストーリーとして流れにないので、彼女の服装につっこみはしないが。
「3回目の決起集会ですね、アーネスト様。これは私の気持ちです。受け取ってください」
まるで臣下が礼を取るように、彼女は跪いて花束を捧げる。私がそれを受け取ると、そのまま手を取られた。
「アーネスト様。明日、私と一緒に舞踏会に行ってください。そして、魔王を倒した暁には、私のお婿さんになってください」
私が返事をする前に、カナエは私の手の甲に口づける。これは私がやるべきことなのではないだろうか?
「…………ひゃ~~~もう無理! 恥ずかしい!」
手を離してカナエは飛びのいた。
「ふぅ~でも一回やってみたかったんだよね。プロポーズ!」
どうやらプロポーズと言えば、跪いて口づけだと思ったらしい。なるほど確かに、私も過去にそうしている。
「それは私に言わせて欲しかったな」
「へへへ。大好きなら、どっちが言ってもいいでしょう?」
私の了承の言葉を聞いて、カナエはほっとしたような顔をしてから笑う。
こうして3周目も、ミヒャエルエンドで終わることになったのだった。
もしカナエに対する好感度が足りなければ、エスコート役を申し出はするが、その後のプロポーズイベントが発生しないようになっている。しかし、好感度は引き継がれているのでそんなことにはなりえない。私のルートをカナエが選ぶ限りは、この先ずっとハッピーエンドしかあり得ないのだ。
まだカナエは来ていない。だが恐らく来るだろう。というか、来ない方がおかしい。ここまでの道中、全てのイベントでメインパーティーに私を選んでいるので、好感度の引継ぎをされているのにも関わらず、ハッピーエンドに至れる好感度は私だけだ。他のメンバーと言えば、まあ良くてせいぜい友情エンドだろう。
東屋のテーブルに置いた花束を横目に、私は待機する。
1周目と2周目は、私が東屋に来る前にカナエがここで待機していたので、現れる筈の彼女を待つのは、少し変な感じだ。これが正しいイベントの流れだと言うのに。
「お待たせしましたぁ~!」
カナエが走ってきた。しかしその姿が珍妙だ。
抱えるのが億劫になるほどの大きな花束を抱えている。いや、過去2回も花束を持ってきていたからそれ自体は妙ではないが、服装がおかしい。騎士の礼服を着ているのだ。
「準備、してたら……ちょっと、時間かかっちゃって……すみません!」
東屋につくなり、息を切らしながら弁明する彼女だが、それよりも服装について教えて欲しい。ストーリーとして流れにないので、彼女の服装につっこみはしないが。
「3回目の決起集会ですね、アーネスト様。これは私の気持ちです。受け取ってください」
まるで臣下が礼を取るように、彼女は跪いて花束を捧げる。私がそれを受け取ると、そのまま手を取られた。
「アーネスト様。明日、私と一緒に舞踏会に行ってください。そして、魔王を倒した暁には、私のお婿さんになってください」
私が返事をする前に、カナエは私の手の甲に口づける。これは私がやるべきことなのではないだろうか?
「…………ひゃ~~~もう無理! 恥ずかしい!」
手を離してカナエは飛びのいた。
「ふぅ~でも一回やってみたかったんだよね。プロポーズ!」
どうやらプロポーズと言えば、跪いて口づけだと思ったらしい。なるほど確かに、私も過去にそうしている。
「それは私に言わせて欲しかったな」
「へへへ。大好きなら、どっちが言ってもいいでしょう?」
私の了承の言葉を聞いて、カナエはほっとしたような顔をしてから笑う。
こうして3周目も、ミヒャエルエンドで終わることになったのだった。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった
月
恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。
そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。
ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。
夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。
四話構成です。
※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです!
お気に入り登録していただけると嬉しいです。
暇つぶしにでもなれば……!
思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。
一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家族と移住した先で隠しキャラ拾いました
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」
ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。
「「「やっぱりかー」」」
すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。
日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。
しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。
ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。
前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。
「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」
前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。
そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。
まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる