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1周目エンディングと2周目の始まり
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魔王城の最奥部での戦い。そこで私が最後に剣を一振りした所で、魔王が倒れ伏す。
それに合わせて、魔王の魔力で編まれていた魔王城が、サラサラと音をたてて崩れ消えていき、最後に魔王の亡骸だけが残った。
「あれ……!? 倒……せた?」
万全を尽くした魔王戦は、当然ながら勝利である。万が一魔王に負けたとしても、セーブポイントまで巻き戻るだけだ。これはゲームなのだから。
地に伏した魔王を確認してカナエが呆然としているのが、不思議だ。逆に何故倒せないと彼女は思ったのだろう。
「君がいたから、魔王を討伐できたんだ。カナエ、本当にありがとう」
お決まりの文句を告げて、私はカナエの手をとり口づける。
それを合図に、エンディングのメロディーが流れ始めた。場面が一瞬にしてアーネストの王城に変わり、私の衣装も変わった。
白の礼服に身を包んだ姿になり、隣には婚礼衣装をまとったカナエがいる。
「カナエ、私は世界で一番の幸せ者だよ」
「アーネスト様……死ぬほどかっこいいです! いや死ななかったんですけど! やったね!」
ただ決められた台詞を言う私に対して、彼女はどこまでも選択肢にはまらない言葉を吐く。
広間の扉が開き、ビロードの敷かれたバージンロードをカナエと共に歩く。これで、エンディングは終わりだ。
ふと横を見やれば、カナエはとても幸せそうに笑っている。
「本当に、倒せて良かった」
「ゲームだから当たり前だろう?」
しまった、と思ったが口から出た言葉はもう戻らない。彼女は歩みを止めて、ぽかんとした顔で私の顔を仰ぎ見た。
「……そっか」
小さく呟いてから、カナエは再び歩き始める。
「ゲーム。ゲーム、かあ……それでかあ」
先ほどはつい口が滑ったが、シナリオに関係のない問いかけには、口をつぐんでおく。そうして、オープニング前に彼女が選んだ通り、『ミヒャエルルート』のハッピーエンドで1周目が終わった。
カナエと私が微笑みあうシーンで、エンディングは幕を閉じたのだ。だが、これで『ゲーム』は終わりではない。
『好感度の引継ぎができます。2周目を始めますか?』
「はい!」
元気の良い声が答えて、キュルキュルと世界が巻き戻っていく。再びプロローグの始まりだ。
王城の広間、魔法陣の上に光を帯びて、カナエは現れる。
「おお、聖女よ、召喚に応じて下さり、感謝します!」
神官が両手を広げてカナエを迎えた。
「『キャー! ここはどこなの!?』……なーんてね、これで合ってた?」
笑ってカナエは、私の方を向く。
「ねえ、あなたの名前を教えてください」
「私は、この国の第一王子、ミヒャエル・アーネストと申します。突然このように不躾にお呼びたてした事をお許しください。貴女には、聖女として、この世界を救って頂きたいのです」
「また、始まるね。まっかせてください!」
彼女は、1周目と同じく、力強く胸を叩いて見せた。
それに合わせて、魔王の魔力で編まれていた魔王城が、サラサラと音をたてて崩れ消えていき、最後に魔王の亡骸だけが残った。
「あれ……!? 倒……せた?」
万全を尽くした魔王戦は、当然ながら勝利である。万が一魔王に負けたとしても、セーブポイントまで巻き戻るだけだ。これはゲームなのだから。
地に伏した魔王を確認してカナエが呆然としているのが、不思議だ。逆に何故倒せないと彼女は思ったのだろう。
「君がいたから、魔王を討伐できたんだ。カナエ、本当にありがとう」
お決まりの文句を告げて、私はカナエの手をとり口づける。
それを合図に、エンディングのメロディーが流れ始めた。場面が一瞬にしてアーネストの王城に変わり、私の衣装も変わった。
白の礼服に身を包んだ姿になり、隣には婚礼衣装をまとったカナエがいる。
「カナエ、私は世界で一番の幸せ者だよ」
「アーネスト様……死ぬほどかっこいいです! いや死ななかったんですけど! やったね!」
ただ決められた台詞を言う私に対して、彼女はどこまでも選択肢にはまらない言葉を吐く。
広間の扉が開き、ビロードの敷かれたバージンロードをカナエと共に歩く。これで、エンディングは終わりだ。
ふと横を見やれば、カナエはとても幸せそうに笑っている。
「本当に、倒せて良かった」
「ゲームだから当たり前だろう?」
しまった、と思ったが口から出た言葉はもう戻らない。彼女は歩みを止めて、ぽかんとした顔で私の顔を仰ぎ見た。
「……そっか」
小さく呟いてから、カナエは再び歩き始める。
「ゲーム。ゲーム、かあ……それでかあ」
先ほどはつい口が滑ったが、シナリオに関係のない問いかけには、口をつぐんでおく。そうして、オープニング前に彼女が選んだ通り、『ミヒャエルルート』のハッピーエンドで1周目が終わった。
カナエと私が微笑みあうシーンで、エンディングは幕を閉じたのだ。だが、これで『ゲーム』は終わりではない。
『好感度の引継ぎができます。2周目を始めますか?』
「はい!」
元気の良い声が答えて、キュルキュルと世界が巻き戻っていく。再びプロローグの始まりだ。
王城の広間、魔法陣の上に光を帯びて、カナエは現れる。
「おお、聖女よ、召喚に応じて下さり、感謝します!」
神官が両手を広げてカナエを迎えた。
「『キャー! ここはどこなの!?』……なーんてね、これで合ってた?」
笑ってカナエは、私の方を向く。
「ねえ、あなたの名前を教えてください」
「私は、この国の第一王子、ミヒャエル・アーネストと申します。突然このように不躾にお呼びたてした事をお許しください。貴女には、聖女として、この世界を救って頂きたいのです」
「また、始まるね。まっかせてください!」
彼女は、1周目と同じく、力強く胸を叩いて見せた。
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