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【まずはバシレイオスのフラグを折ろうか】
お茶会はルート分岐に重要なんです
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訓練が何事もなく終わって、私は胸を撫でおろす。魔力を発動させようとすると周りがピカピカ光り出すのには慣れないけど、とりあえず聖属性魔法の片鱗は見えてきた気がする。
もう一つの気がかり、バシレイオスの方も、訓練中はあれ以来話しかけてこなかったから、一安心。
攻略対象と必要以上の接触を避けるのは、却って危険かもしれないと私は思い直した。だって、歓迎セレモニーを回避したり、髪を隠したりしてたら謎の力でイベント起きたもんね。どうせイベントが起きてしまうなら、変に避けて予想のつかないイベントにするよりかは、一つ一つ、イベントの中で好感度アップのフラグを折っていけばいいという結論になった。
ただ問題は、単純に好感度が上がらないようにイベントをこなしていくだけだと、悪役令嬢は必ず闇落ちしてしまうということ……。好感度アップイベントの時に、攻略対象の好感度を上げないように行動することと、テレンシア達の悩みをなくすようにしないといけないのが課題なんだよね。
ここは難しいけど、考えていくしかないな~! 頑張ろう! まずはバシレイオスの恋愛フラグを折るところから!
ゲームの時、バシレイオスルートから外れるための条件は、立て続けに起きるバシレイオス関連のイベントを失敗させることだった。一つ目はアウレウスと組むことで回避した初期の訓練イベント。もう一つは……
「お茶会、ですか?」
「そうですわ、週末に元々開催される予定でしたの」
アウレウスが聞き返した言葉を、テレンシアが頷いて説明する。実技訓練が終わった後に休憩時間に、テレンシアが教室でそう誘ってくれたのだ。
ちなみに本来は、バシレイオスが誘ってくるイベントなのだが、バシレイオスの好感度が低いと別のキャラクターが誘ってくる。これはゲームじゃないけど、テレンシアが誘ってくれるようなパターンは見たことがなかったけど、私のやりこみが足りないだけなのかもしれない。なんてったって、攻略本見ずにゲームを周回したから……。私納得できるまで周回してから、攻略本読んでもう一回周回するのが好きなんだよね。『はぁれむ・ちゃんす』は攻略本見る前に止めちゃったけど……。
「クレア様は来れそうかしら」
心配そうに私の顔を窺うテレンシアに思わず抱き着きたくなるけど、我慢する。可愛い女の子は目の保養だね~!
「もちろん! 楽しみにしてるよ!」
「良かった」
テレンシアは顔を輝かせて微笑んだ。
「アウレウス様もぜひいらしてください」
「そうですね……」
アウレウスがちら、と私の方を見てから頷く。
「喜んでお招きを受けましょう」
良かった、問題ないとは思うけど、アウレウスが居ると、何かとフラグ回避には便利だもんね。来てくれるなら助かる。
そうして迎えた週末のお茶会に、私は向かった。学園に行くときと同じく、アウレウスが迎えに来てくれた。公式な行事でもなんでもないのに、教会の馬車使っちゃっていいのかなあ。
「どうかしましたか?」
「うーん、お茶会うまく行くといいなあと思って」
物憂げに見えたのか、アウレウスが話しかけてくる。
「お茶会とは普通は楽しまれるものでは?」
「えっあ、そっか」
アウレウスに指摘されて焦る。そうだよね、普通は楽しむものだったわ。
「お茶会にお呼ばれするの初めてだから、うまく行くといいなあと思って」
「そうですか?」
アウレウスは私の顔をしげしげと見つめて、居心地が悪い。私の前世のことは誰にも話していないけれど、誰かに相談したほうがいいのかな。だって、人の生死に関わることだし……でも、『前世のゲームの世界で起こることが怖いです』なんて言って信じてくれる人がいるんだろか、居ないよね……。
「何か別のことを悩んでらっしゃるのでは?」
押し黙った私にアウレウスが追撃してくる。
「ううん、服装とか場違いじゃないかな、って……」
「そんなことはありませんよ、よくお似合いですし、お茶会にはぴったりだと思います」
「え、あ……ありがとう」
にこ、と微笑まれて言われるとお世辞でも悪い気はしない。
「アウレウスも、今日は神官服じゃないんだね」
彼は今、紺色のスーツを着ていた。制服とは違って、首元はクラバットを付けているから、いつもとイメージが違う。教会で初めて会った時に来ていた白を基調とした服に紺色のローブの神官服を着てくるものだと思っていたから、何となく新鮮に感じる。
「神官として行動するなら神官服を着るべきでしょうが、私は今日はプライベートですから、それ相応の服装をしております」
「えっ」
ということは、今日は補佐じゃないってこと? 今日は何かあっても頼れないのかな。
「補佐といえど、週末の休息は必要でしょう?」
「そうだよね」
自然と声のトーンが落ちてしまう。今日の対策はちゃんと考えてはあるし、アウレウスが居なくても、問題はないようにはしてあるんだけど、少し不安になってしまう。
「もちろん……」
ふふ、と笑ってアウレウスが言う。
「プライベートでもクレア様をしっかりサポートしますので、ご安心を」
目を細めたアウレウスに見つめられて、一瞬言葉を失う。
「それどういう」
「おや、着いたようですよ」
私の言葉はしれっと遮られて、同時に馬車が止まる。到着したのはテレンシアの家だ。御者がドアを開けると、アウレウスが先に降りて、私に手を差し出してきた。
「お手をどうぞ。お茶会、うまくいくといいですね」
微笑んだアウレウスの手をとって、私は頷く。プライベートと言いつつ、何かあれば手伝いはしてくれそうだし、今日もフラグ折り頑張ろう!
もう一つの気がかり、バシレイオスの方も、訓練中はあれ以来話しかけてこなかったから、一安心。
攻略対象と必要以上の接触を避けるのは、却って危険かもしれないと私は思い直した。だって、歓迎セレモニーを回避したり、髪を隠したりしてたら謎の力でイベント起きたもんね。どうせイベントが起きてしまうなら、変に避けて予想のつかないイベントにするよりかは、一つ一つ、イベントの中で好感度アップのフラグを折っていけばいいという結論になった。
ただ問題は、単純に好感度が上がらないようにイベントをこなしていくだけだと、悪役令嬢は必ず闇落ちしてしまうということ……。好感度アップイベントの時に、攻略対象の好感度を上げないように行動することと、テレンシア達の悩みをなくすようにしないといけないのが課題なんだよね。
ここは難しいけど、考えていくしかないな~! 頑張ろう! まずはバシレイオスの恋愛フラグを折るところから!
ゲームの時、バシレイオスルートから外れるための条件は、立て続けに起きるバシレイオス関連のイベントを失敗させることだった。一つ目はアウレウスと組むことで回避した初期の訓練イベント。もう一つは……
「お茶会、ですか?」
「そうですわ、週末に元々開催される予定でしたの」
アウレウスが聞き返した言葉を、テレンシアが頷いて説明する。実技訓練が終わった後に休憩時間に、テレンシアが教室でそう誘ってくれたのだ。
ちなみに本来は、バシレイオスが誘ってくるイベントなのだが、バシレイオスの好感度が低いと別のキャラクターが誘ってくる。これはゲームじゃないけど、テレンシアが誘ってくれるようなパターンは見たことがなかったけど、私のやりこみが足りないだけなのかもしれない。なんてったって、攻略本見ずにゲームを周回したから……。私納得できるまで周回してから、攻略本読んでもう一回周回するのが好きなんだよね。『はぁれむ・ちゃんす』は攻略本見る前に止めちゃったけど……。
「クレア様は来れそうかしら」
心配そうに私の顔を窺うテレンシアに思わず抱き着きたくなるけど、我慢する。可愛い女の子は目の保養だね~!
「もちろん! 楽しみにしてるよ!」
「良かった」
テレンシアは顔を輝かせて微笑んだ。
「アウレウス様もぜひいらしてください」
「そうですね……」
アウレウスがちら、と私の方を見てから頷く。
「喜んでお招きを受けましょう」
良かった、問題ないとは思うけど、アウレウスが居ると、何かとフラグ回避には便利だもんね。来てくれるなら助かる。
そうして迎えた週末のお茶会に、私は向かった。学園に行くときと同じく、アウレウスが迎えに来てくれた。公式な行事でもなんでもないのに、教会の馬車使っちゃっていいのかなあ。
「どうかしましたか?」
「うーん、お茶会うまく行くといいなあと思って」
物憂げに見えたのか、アウレウスが話しかけてくる。
「お茶会とは普通は楽しまれるものでは?」
「えっあ、そっか」
アウレウスに指摘されて焦る。そうだよね、普通は楽しむものだったわ。
「お茶会にお呼ばれするの初めてだから、うまく行くといいなあと思って」
「そうですか?」
アウレウスは私の顔をしげしげと見つめて、居心地が悪い。私の前世のことは誰にも話していないけれど、誰かに相談したほうがいいのかな。だって、人の生死に関わることだし……でも、『前世のゲームの世界で起こることが怖いです』なんて言って信じてくれる人がいるんだろか、居ないよね……。
「何か別のことを悩んでらっしゃるのでは?」
押し黙った私にアウレウスが追撃してくる。
「ううん、服装とか場違いじゃないかな、って……」
「そんなことはありませんよ、よくお似合いですし、お茶会にはぴったりだと思います」
「え、あ……ありがとう」
にこ、と微笑まれて言われるとお世辞でも悪い気はしない。
「アウレウスも、今日は神官服じゃないんだね」
彼は今、紺色のスーツを着ていた。制服とは違って、首元はクラバットを付けているから、いつもとイメージが違う。教会で初めて会った時に来ていた白を基調とした服に紺色のローブの神官服を着てくるものだと思っていたから、何となく新鮮に感じる。
「神官として行動するなら神官服を着るべきでしょうが、私は今日はプライベートですから、それ相応の服装をしております」
「えっ」
ということは、今日は補佐じゃないってこと? 今日は何かあっても頼れないのかな。
「補佐といえど、週末の休息は必要でしょう?」
「そうだよね」
自然と声のトーンが落ちてしまう。今日の対策はちゃんと考えてはあるし、アウレウスが居なくても、問題はないようにはしてあるんだけど、少し不安になってしまう。
「もちろん……」
ふふ、と笑ってアウレウスが言う。
「プライベートでもクレア様をしっかりサポートしますので、ご安心を」
目を細めたアウレウスに見つめられて、一瞬言葉を失う。
「それどういう」
「おや、着いたようですよ」
私の言葉はしれっと遮られて、同時に馬車が止まる。到着したのはテレンシアの家だ。御者がドアを開けると、アウレウスが先に降りて、私に手を差し出してきた。
「お手をどうぞ。お茶会、うまくいくといいですね」
微笑んだアウレウスの手をとって、私は頷く。プライベートと言いつつ、何かあれば手伝いはしてくれそうだし、今日もフラグ折り頑張ろう!
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