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【編入初日は出会いイベントてんこ盛りですね】
回避できてないじゃないですか
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アウレウスのエスコートで馬車から降りると、そこには3人の人がいた。年取った先生っぽい人と、私と同じ制服来た女の子と、燃えるような赤い髪の男子学生……。
んんん。ここで豆知識なんだけど、この国の王室の血筋って、燃えるような赤い髪が特徴なんだよね。で、学生かつ赤い髪、ってことはこれはもう……バシレイオスじゃない、この人?
「聖女クレア様、お待ちしておりました。私はここの学園長をしておりますカサロと申します」
「俺は、第一王子バシレイオス・ルベルだ」
「わたくしは、テレンシア・フォリーンと申します。聖女クレア様の編入に際し、案内役を仰せつかりました。以後お見知りおきください」
ほら、やっぱりぃ……。
「はじめまして、私はバートン子爵家のクレアです。どうかこの学園では聖女ではなく、ただの学生として接してください」
聖女とか特別視しないで、お願いだから。聖女と王子の運命の出会いじゃないからマジで。
「クレア様は謙虚なお方なのだな」
バシレイオスはにこりと笑ってそう言った。しかし、私の髪には見惚れていない! つまり、運命感じてない! フゥー! 作戦大成功!
思ったんだけど、セレモニーでエスコート回避しても、学園内で聖女としてバシレイオスと出会ってしまったらアウトなんじゃないかなって。だって髪の色が亜麻色ってだけで運命感じちゃって勝手に好きになるポンコツだよ?
だから、私はかつらを被ることにしたのだ! お母様と同じ金髪のかつら! これでバシレイオスは私に運命を感じることはありませんね! 我ながら完璧!
本当は染めたかったんだけど、お父様とお兄様がお揃いの髪色を変えちゃうのは嫌だってだだをこねるので、かつらで妥協してあげたのです。私優しい。
「そんなことありませんよ」
私もにこっと笑い返した、その刹那である。
突風が吹いた。
あろうことか、私のかつらを吹き飛ばして。更にはまとめていた髪まで解けて、亜麻色の髪がふわりと広がった。
「クレア様、その美しい亜麻色の髪は……?」
驚いた顔のバシレイオスが、私の髪を凝視している。なん……だと……?
「あっ、んん~、これは」
どうしよう、何て誤魔化そう。視線が痛い。
「まさか、貴女も自らの『亜麻色』を秘匿して……?」
ん? 待って、亜麻色の髪を隠さなきゃいけないから、かつら被ってる思っちゃった? それで「俺の秘匿された名前も亜麻色、聖女の秘匿された髪も亜麻色、これは運命……」とかなってない? 違いまーす!
「いえっ完全なるおしゃれです! 今日は金髪の気分だったので!! 隠してたわけじゃないですよ!」
「亜麻色の、髪の聖女……」
早速バシレイオスがぽーっとしている。だめだ、こいつ話を聞いてない。フラグ回避できてないじゃないですか! むしろ、無駄な運命感じてるみたいだし……足掻いてもゲームシナリオに強制的に戻されちゃうの? マジか。いやそんなことはないと信じたい!
「クレア様、落とされたままですよ」
「あっ、うん、ありがと」
アウレウスが落ちたかつらを拾ってくれたついでに、私とバシレイオスの間にすっと入った。
「私はアウレウス・ローズと申します。殿下。クレア様の補佐をさせて頂いております。クレア様のことに関しては私が窓口となりますので、以後お見知りおきください」
もしかしてこれは庇ってくれている? いいぞ、その調子でバシレイオスから私を守ってください!
「あ、ああ」
咳払いをしたバシレイオスの目線は、未だに私の髪に注がれていた。
んんん。ここで豆知識なんだけど、この国の王室の血筋って、燃えるような赤い髪が特徴なんだよね。で、学生かつ赤い髪、ってことはこれはもう……バシレイオスじゃない、この人?
「聖女クレア様、お待ちしておりました。私はここの学園長をしておりますカサロと申します」
「俺は、第一王子バシレイオス・ルベルだ」
「わたくしは、テレンシア・フォリーンと申します。聖女クレア様の編入に際し、案内役を仰せつかりました。以後お見知りおきください」
ほら、やっぱりぃ……。
「はじめまして、私はバートン子爵家のクレアです。どうかこの学園では聖女ではなく、ただの学生として接してください」
聖女とか特別視しないで、お願いだから。聖女と王子の運命の出会いじゃないからマジで。
「クレア様は謙虚なお方なのだな」
バシレイオスはにこりと笑ってそう言った。しかし、私の髪には見惚れていない! つまり、運命感じてない! フゥー! 作戦大成功!
思ったんだけど、セレモニーでエスコート回避しても、学園内で聖女としてバシレイオスと出会ってしまったらアウトなんじゃないかなって。だって髪の色が亜麻色ってだけで運命感じちゃって勝手に好きになるポンコツだよ?
だから、私はかつらを被ることにしたのだ! お母様と同じ金髪のかつら! これでバシレイオスは私に運命を感じることはありませんね! 我ながら完璧!
本当は染めたかったんだけど、お父様とお兄様がお揃いの髪色を変えちゃうのは嫌だってだだをこねるので、かつらで妥協してあげたのです。私優しい。
「そんなことありませんよ」
私もにこっと笑い返した、その刹那である。
突風が吹いた。
あろうことか、私のかつらを吹き飛ばして。更にはまとめていた髪まで解けて、亜麻色の髪がふわりと広がった。
「クレア様、その美しい亜麻色の髪は……?」
驚いた顔のバシレイオスが、私の髪を凝視している。なん……だと……?
「あっ、んん~、これは」
どうしよう、何て誤魔化そう。視線が痛い。
「まさか、貴女も自らの『亜麻色』を秘匿して……?」
ん? 待って、亜麻色の髪を隠さなきゃいけないから、かつら被ってる思っちゃった? それで「俺の秘匿された名前も亜麻色、聖女の秘匿された髪も亜麻色、これは運命……」とかなってない? 違いまーす!
「いえっ完全なるおしゃれです! 今日は金髪の気分だったので!! 隠してたわけじゃないですよ!」
「亜麻色の、髪の聖女……」
早速バシレイオスがぽーっとしている。だめだ、こいつ話を聞いてない。フラグ回避できてないじゃないですか! むしろ、無駄な運命感じてるみたいだし……足掻いてもゲームシナリオに強制的に戻されちゃうの? マジか。いやそんなことはないと信じたい!
「クレア様、落とされたままですよ」
「あっ、うん、ありがと」
アウレウスが落ちたかつらを拾ってくれたついでに、私とバシレイオスの間にすっと入った。
「私はアウレウス・ローズと申します。殿下。クレア様の補佐をさせて頂いております。クレア様のことに関しては私が窓口となりますので、以後お見知りおきください」
もしかしてこれは庇ってくれている? いいぞ、その調子でバシレイオスから私を守ってください!
「あ、ああ」
咳払いをしたバシレイオスの目線は、未だに私の髪に注がれていた。
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