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熱に浮かされた身体

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 ラーケサがマリクの寝所に召しあげられて、数日経った。その間、ラーケサは同じ部屋に留めおかれ、世話をする使用人を何人もあてがわれており、まるで賓客のように遇されている。

 マリクは夜になると部屋にやってきて、ラーケサを裸に剥いては抱くのを繰り返している。必ず愛撫の始めには右肩の傷痕を舐めて、唇を這わせる。それがまるで情事の合図のようなのも、傷痕に触れられただけで身体に欲情の火が灯るのも、ラーケサは嫌だった。

 日暮れが近づいて、またマリクが寝所を訪れる時間が来るのだと思うと、憂鬱な気持ちにラーケサはなる。

(早く殺せばいいものを。この身体がそんなに気に入ったの?)

 心の中でぼやきはしたが、それは彼女の今の本心ではない。

 囚われた初日は、無気力に抱かれた。二日目には殺してくれと哀願した。三日目には、怒り、暴れたがそれでも抱かれた。そうして四日目、五日目と日が経つにつれ、靄がかかっていたように生きる意味を失っていた意識は次第に明瞭になり、彼女は前を向くことにした。

 ラーケサの愛する人はもう殺されてしまった。それでも彼女は今、生きている。かつて男たちの暴力に晒され、凌辱を受けてもなお生き抜いてきたラーケサだからこそ、自身の幸せの指標を失っても生を諦めることなどできなかった。

 だから希望もないような状況において、彼女はここから逃げ出す方法を思案する。打ちのめされた心を抱えたままではこの先、脱出の糸口を掴むこともままならない。

 幸い、というべきか、マリクは暗殺に失敗した女を殺すつもりがないらしい。ラーケサが不遜な態度をとろうと暴言を吐こうと、彼は「大人しく抱かれていろ」と呆れの声を出すだけで怒りもせず、ただ彼女を抱いてくる。とはいえそれがいつまで続くかは判らないのだから、彼女は何らかの方策を探るべきだった。

 部屋にはラーケサを監視するための使用人が詰めているが、部屋の中を探るなとは言われていない。クッションにもたれていた彼女が、窓の外でも見てやろうと立ち上がった時である。

「……っ」

 強烈な立ち眩みがした。同時に身体の奥から酷い痛みが走りはじめ、ラーケサは立っていられなくなり、すぐに膝から崩れ落ちる。

「お嬢様!」

「触らないで!」

 慌てて駆け寄った使用人に鋭い声で叫ぶ。しかし、使用人らは制止の声に構わずラーケサを支え、ぱたぱたと部屋を出入りして彼女を世話する準備を整え始める。やがて、薬湯を持った使用人と共に、マリクがやってきた。

「まだ暴れているのか」

「触らないでってば!」

 痛む身体をこらえて、ラーケサは使用人の腕を押しのけたが、マリクの腕によって彼女はいとも容易く拘束された。

「貴様、私に何をした! この間から……その薬のせいだろう!」

 もがきながらラーケサは彼の腕から逃げようと試みるが、痛みを訴える身体でなくとも腕力で叶わない彼女が思い通りにいくわけもない。使用人に対してはまだかろうじて女性らしい言葉遣いも、マリクの前では自然と荒々しくなる。

 ここ数日、マリクが抱きに来るのはお決まりであったが、この発作のようなものも毎日現れていた。彼に抱かれるようになるまではこんなことなかったというのに、初めて抱かれた翌日から、ラーケサは身体の痛みに悩まされ、そのたびに薬湯を口に流し込まれている。

(初めて犯された時、あの時に飲まされたのがきっと薬だったんだわ)

 薬などマリクが服用していた様子はなかったが、唾液のようなものを飲まされてから、身体がより火照ったのだから、疑うべくもない。

「後は俺がやる。お前たちは下がれ」

「かしこまりました」

 薬湯をそばに置いた使用人たちは礼をとると、そのまま寝所から去っていく。二人きりになった空間で、マリクはラーケサが暴れないように、彼女の身体を抱えて後ろから抱き込んだ体勢をとった。

「この薬はお前のその痛みを取り除くためのものだ。飲め」

「薬漬けにして私の意思まで奪う気か?」

 振り向きざまにマリクを睨みつけて詰問する。それはかつて、彼女が男たちに蹂躙されていた頃、従順に股を開くように躾けるために使われた手段だ。しかし、マリクは鼻で笑った。

「話にならんな」

 薬湯を手に取ると、彼は自らの口に含んで、押さえつけたラーケサに口移しで飲ませた。

「やめ……っんんんっ」

 抵抗を試みるが、身体の痛みと力強い拘束で苦い味の薬湯は次々と彼女の喉奥へと流し込まれた。器いっぱいに注がれた薬湯は一口では終わらない。有無を言わさず何度も流し込まれ、そうして口移しで飲み終わるころには、唾液をたっぷりと絡めて、舌を虐められる。

「どうだ、効いてきたか?」

「ん……っ」

 唇を離されたラーケサは、小さく息を吐く。その吐息には、先ほどまでは明らかになかった色を帯ている。それもその筈で、一口、二口と薬湯を流し込まれるたびに、身体の痛みは和らいでいく代わりに、胎の奥から湧き上がるような欲を訴えかけてきていた。それが薬の効果だとしても、通常であればこんなに効きが早いことは考えられない。恐らくマリクの使う光の魔法の影響もあるのだろう。

「いやだ……」

 情けなさで、涙が出る。薬の影響だとは判っていても、ラーケサの身体は今、明らかにマリクを欲している。彼女の右肩に今日も彼の口づけが落とされて、今から抱かれるという合図をされる。たったの数日で彼女は彼から受けるこれからの愛撫を期待するようになってしまった。

(いやだ)

 ちゅく、と唇が音を立てれば、もう身体の痛みはなく、情欲の炎が全身を覆っている。心の叫びに反して、抵抗しようとしていた四肢は脱力し、だらしなく股を開く。これが薬のせいでなければ、説明がつかない。愛してもいない男に唇を押し付けられただけで火照る身体が自分だなんて、思いたくもなかった。

「快楽に身を任せていればいい」

 胸元の服をずりおろされ、乳房を揉まれる。決して握りつぶさず、やわやわと形を確認するように揉みあげられるその動作は穏やかなのに、ラーケサの身体には熱が籠る一方だ。

「あ」

 ぢゅっと肩を強く吸われて、彼女はわずかに後ろを振り向く。その頬に手を添えられ、またも唇を吸われた彼女は、熱い舌をちゅくちゅくと絡めた。

「……んっい、やだ」

「問題ない」

 指が胸の中央と捉える。触れられていなかったそこはかるくつまんだだけで固くなっていて、指で挟んで捏ねられれば、ぴりぴりと胎に響く快感が走る。愛撫されているのは背中と乳首なのに、蜜壺は熱く潤って、奥からじわりと愛液を溢れさせた。

「あ、あ……だめ、いや」

 それは決して激しくない刺激だというのに、もう胎は我慢ができなくなっている。自然と、腰が揺れた。

「なんだ、もう我慢ができんか」

「っ違う! やめて!」

「心配せずとも、すぐにれてやる」

 ラーケサを後ろから抱き込んだまま、マリクは自身の腰元をくつろげる。そうしてから彼女のスカートを雑にたくしあげると、腰を持ち上げて座ったままの姿勢で秘所に自身のものをあてがう。愛撫もされていないそこは、熱源が触れるとぬちゃと、淫猥な音をたてた。それだけで彼女の割れ目が濡れそぼっていることが、筒抜けになる。

「なんだ。少しは擦り合わせて解してからにしようかと思ったが、欲しくてたまらないみたいだな?」

「いや……っ」

「はは、いやではないだろう」

 言葉と共に腰を落とされて、ラーケサは他ならない自重によって彼女を犯す肉棒を身体に埋めていく。

「やっあぁっだめ、だめぇっ!」

 ずちゅん、と最後に強く奥を穿たれてラーケサはのけぞった。胎を揺らされた刺激で軽く達したが、それを長引かせるようにマリクはトントンと小刻みに奥を揺らし続ける。

「やだ、やぁやっだめあっああっ」

 マリクの体に背を預けるのがいやで、せめて上体を丸めるように起こす。けれどそれはよくなかった。のけぞって肉杭が抉っていたのとは別の場所を刺激されて、余計によがることになる。

「だ、あああぁ、ふ、違う、こん、あっぁ、こ、なの、わた、し……ぁんんんっ」

「これがお前の身体だ」

 ぐちゅぐちゅと音をたてて、愛液が泡立つ。

(これが……私?)

 とんとんと奥を穿たれるたびに、胎を揺らしてどうしようもなくよがる。拒絶の声を吐いているにも関わらず、幾度となく太い肉杭を締め上げて達し、子種を寄越せと全身で訴えかける。前から見れば足を大きく開かされて秘所が丸見えで、通常ならばそれだけで羞恥を煽る体勢だろう。けれども今は、割れ目が極太の肉棒を呑み込んでは出入りし、蜜を泡立たせた二人の結合部を曝け出した卑猥な格好で犯されているという、考えもつかないような痴態を晒しているのに、それすらも興奮材料になって感じ、あられもない嬌声をあげる。そんなのが、ラーケサ自身の状態だ。

「いやぁ……っ!」

「本当に素直じゃないな」

 ずんっ、と強く下から突き上げられて、今度は焦らすような揺れから激しい抽送に切り替わる。肉杭に悦いところを抉られれば、望んでもいないのに胎はうねってより強い刺激を求めた。

「お前があんまりにも締め付けるから、もうじき射精る」

「やだ、やだやだ……!」

 連日、何度も胎に精液を注ぎ込まれている。だというのに避妊のための薬をラーケサは服用していない。旅をしていた頃はいつも飲んでいたが、服用しなくなって数日経つから効果は薄れているだろう。しかも彼は避妊していないとくれば、この先同じことが続けば未来は決まっている。逃げ出すのなら、それは彼女にとっての重荷にしかならない。いよいよばちゅばちゅと強く突き上げられて、拒絶を訴えても蜜壺は勝手に子種を催促してぎゅうぎゅうに締め上げる。

「あかちゃんできちゃう、やだぁ! あっだめええっ」

「孕め、ほら、子種だ!」

「ぁっ、あ、あああああぁ……っ!」

 ぐっと腰を強く抱えこまれ、一際強く突き上げられた胎の奥に、びゅくんびゅくんと勢いよく白濁液が流し込まれる。

「ゃ、あ、ぁあああっ」

 それを絞り取るように蜜壺をうねらせた彼女もまた、一段と激しい絶頂を迎え、射精された白濁を一滴残らず胎に呑み込んだ。

「まだ足りん」

 絶頂の余韻に浸る間もなく、ずるりとマリクは肉棒を抜いた。そうして彼女の身体を引き倒して仰向けにすると、彼女の唇を奪って、首筋に舌を這わせ、再び愛撫を再開する。

「いやだ……」

「胎いっぱいになるまで注ぎこむ。気をやるなよ」

「……ぁっ」

 ぢゅ、と胸元を吸われて、所有印を付けられる。そうしてこの夜もまた、ラーケサは傲慢王の腕の中で踊らされるのであった。
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