悪魔の生贄にされた僕、悪魔に生まれ変わった

第1章 其処

1-8 悪魔対策室

　エクソシストたちの本部は、エッシャールの中心地区に位置し、ランドマークであるエッシャール大聖堂と市庁舎に隣接している。
　3人は街道を進み、中心地区に到着し、クロとハイドが警官である証明を示して、何の妨げも受けなっかた。
　途中、クローゼンはエッシャールのさまざまな通りの様子を観察した。人通りが多く、都市の面積が大きく、少し賑やかですが、ボンとあまり変わりがないように見えた。
　貧困層やギャングの集まりを見つけることができず、また、エクソシストたちが選んだ経路のために都市の暗い側面を見る機会がなっかた。

「着いたよ」

　ハイドが最初に馬を降り、乗馬経験のないクローゼンを降ろすのを手伝いした。
　彼らは市庁舎の近くに止まって、レンガで作られた4階建ての建物の外壁は蔦で覆われており、壁には年月の痕跡が見られた。建物の上部は聖堂のようなデザインで、壁には十字架があり、これが教会の所有物であることを示している。
　出入り口で見張りをしていた警官の一人が馬を近くの馬小屋に連れて行った。
　クローゼンは、エクソシストたちの地位がここでかなり高いようで、警官たちから「上司」と呼ばれていることに気付いた。
　それに従って、2人のエクソシストと一緒にビル内を歩いていくと、クローゼンは廊下でさまざまな職員が忙しく動いているのを見た。
　いくつかの人は普通の職員のように見えたが、それ以上の人々は修道士や修道女のような身なりをしていた。
　クローゼンは、ここがおそらく教会の各部門のオフィスビルであり、機能が混在しているが、各部門間の調整や連絡が容易であることを判断した。

「おおおおおおおおおおお――」

　最上階に到達するまで一緒に歩いていたが、突然、クローゼンの後ろから湯沸かし器が沸騰するような音が聞こえ、後ろを振り返って見た。

「ナイトメアと魔弾射手が帰ってきた！！！」

　顔にそばかすのある女の子が、たくさんの書類を抱えて彼らに向かって走ってきた。赤い髪の毛が乱れていますが、輝くような目をしている。
　彼女は自分の大きな声が同じ階の他のオフィスにどれだけの騒音をもたらすかを全く気にしていないようで、元気よく彼らに話しかけ続ける。

「どうだ！悪いやつを捕まえたかな！結果はどうであれ、お疲れ様！ご飯食べた？一緒に行かない？ちなみに今回の任務の話を聞かせて！！！」

「タニア、声が大きすぎると他の人に迷惑をかけますよ」

　ハイドが静かに彼女に注意し、彼女が駆け寄ってきた後、抱えている全ての書類を受け取った。
　クローゼンは、この名前がタニアという女の子は自分よりも年上のようで、おそらくエドワードとほぼ同じくらいの年齢だと気付いた。
　クローゼンがタニアを見つめているのに気付くと、彼女は明るい笑顔を返した。
　観察者の鏡がタニアを悪魔の契約者として示さなかったので、エクソシストではないようだ。オフィスのスタッフの一人みたいが、年齢は少し若すぎるようだ。
　クローゼンはタニアの輝く目を避け、自分が他人にじっと見られることに非常に不慣れであることに気付いた。

「前に各オフィスが拡声器を買うかどうかの会議を開いたことを覚えてる？ 最終的にその提案は否決されたんだ」
「理由は、もうタニアがいるからって」

　クロは冗談を言いながら、ハイドから書類の半分を受け取った。

「よし、ここだ！」

　彼らは他のオフィスと何ら変わりない部屋の前に立ち止まり、扉には「教会の悪魔関連業務専門オフィス」と書かれていた。

「知ってる人たちは悪魔対策室と略してる」

　クローゼンが扉を見ているのを見て、クロが補足した。

「あるいは、対魔部とも言えるな」

　手ぶらのタニアがドアをバタンと開けた。

「みんな、見て！ どいつらを連れてきたか！」
「タニア、その開け方はドアの寿命に悪影響を与えるから…… 今年もう2回ドアを修理してるよ」

　扉の後ろには数列の机が並び、小山のように積まれたファイルから若い女性が顔を出した。
　金髪の下には端正な顔があり、彼女の顔立ちはまるで手の込んだ人形のようで、見事であると感嘆させ、ついつい見とれてしまう。もしこのような美人が外を歩いていたら、一つの通りが彼女を見とれることだろう。

「おや、ナイトメアと魔弾射手、どうして子供を連れてきたの？」

　その女性はのんびりとした声で尋ねた。

「これが事件の関係者、珍しい生存者だ」
「久しぶり、メリーおばあちゃん、お元気そう……」

　話が終わらないうちに、ホッチキスが飛んできて、クロの頭にヒットした。

「姉さんって呼んで」

『メリーおばあちゃん』と呼ばれた女性がクロを睨みつけた。怒りに顔が歪んでいたが、彼女の美しさは隠せなかった。

（メリー、対魔部のメンバー、悪魔の契約者）

　観察者の鏡が判断を下したので、クローゼンもこの非常に美しい外見が何か理由があると理解した。この少し異常な魅力は、悪魔との契約による願望の実現と関連していると感じた。

「わかった、次は姉さんと呼ぶよ、メリーおばあちゃん」

　クロが意図的にやったのか、うっかりしたのかわからないが、再びその呼び名を繰り返した。

「ボスはいるかい？」

　メリーが眉をひそめて部屋の中を指さし、クロたちが探している人物が部屋の中にいることを示した。
　口論している間に、ハイドとタニアはすでに持ち帰った資料を棚に片付け、その中にはクロが抱えているものも含まれていた。
　クローゼンはハイドがドアをノックし、一緒に中に入るように合図したのに気づいた。

「どうぞ」

　部屋の中から、落ち着いた中年男性の声が聞こえ、クローゼンは緊張していた。

「お邪魔します」

　ハイドがクローゼンを連れて部屋に入ると、そこは独立したオフィスで、あらゆる種類の本がぎっしりと積まれた本棚が壁一面を占めていた。
　部屋の真ん中には外と同じくらいの標準的な机があり、その向かいには会話用のソファとテーブルが配置されていて、角にはいくつかの植物が置かれている。
　机の前に座っているのは中年男性で、おそらく50歳未満だろう。シャープな灰色のショートヘアを持ち、顔の筋肉は引き締まっており、輪郭がくっきりしていた。
　彼は黒いスーツを着ており、制服の襟には暗金色の鷹の刺繍が施されている。

「こちらがヴィクトー・ノーランさんです。対魔部のリーダーで、教会の執行官です。名前だけの話で、この人は完全に親しみやすい心理カウンセラーとして接してくれますよ」

　クローゼンの緊張と硬直に気づいたハイドが、上司を紹介してくれた。
　ハイドの口からは上司が素晴らしい人物であるかのように聞こえるが、クローゼンは彼の冷たい表情から全く親しみを感じなかった。

（ヴィクトー・ノーラン、対魔部のリーダー、教会の執行官）

　悪魔の契約者ではないようだが…確かに単純な人物ではないだろう。
　クローゼンはヴィクトー長官が堅固な性格であり、自分が彼に悪魔召喚の事件について尋問されることを思い浮かべ、思わず拳を握った。

「お帰りなさい。今回の任務、お二人ともお疲れ様でした」

　ヴィクトーは頷きながら言い、

「見たところ、目撃者を守ったようですね。素晴らしい仕事です」
「お褒めに預かり光栄ですが、もしもっと早く到着できれば……」

　ハイドの自責はヴィクトーによって手で止められ、彼の視線はハイドに落ち、そしてクローゼンに移った。
　クローゼンは自分が上から下まで見られている感覚を覚え、自分の身に着けているすべての細部が彼の目に入っているようだ。

「反省する前に、ひとつ質問をさせてください」

　やって来た！クローゼンは緊張して首を持ち上げ、全身が凍りついた。
　エッシャールへの道中でいくつかの説明を用意していたが、ヴィクトーの圧力に直面すると、自分の頭が追いつけるかどうか分からなくなった。

「お昼ご飯は食べましたか？」

　……？

「じゃあ、私がおごります。みんなで外で昼食を食べましょう、お疲れ様のご褒美として。そうそう、タニアとメリーも一緒に連れてきてください」

　クローゼンは固まってしまい、これは彼の予想とは少し違う。