44 / 70
第一章
第四十四話 俺のこの手が光って轟く
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
各種能力によって強化されたグレイヴを振るい、まるでゾンビ達雑魚アンデッドを屠るようにデュラハン達を薙ぎ払っていく。
強化グレイヴを振るう度に黒い炎と雷が放たれるため、この短時間で周囲の公園は酷い有り様になっていた。
テレビでも観た覚えのある自然豊かな公園だったのだが、最早見る影もないな。
「ぐっ、ええい、鬱陶しいッ!」
いつの間にか地面から空中へと移動していたリッチが、上空から俺に向けて魔法を放ってきていた。
主に放ってくるのが氷や石の礫なのは、俺が炎と雷を使っているからだろうか?
デュラハン達と戦っていると、リッチが俺の頭部や胴体に氷や石の礫をぶつけてくるのだが、金属化した身体に届かないどころか、その上の外装鎧すらも破壊出来ない程度の威力なので当然ダメージはない。
だが、その衝撃音は全身金属故にしっかりと響いてくるため非常に鬱陶しかった。
それに加えて、その攻撃の合間に追加のデュラハン達を召喚してくるため、一向にデュラハンが殲滅できないでいる。
「攻撃の予兆を読まれてるのか……?」
続々と召喚されるデュラハン達との戦闘中に、唐突にヤルングレイプの〈雷光〉をリッチへ放ったりもしたのだが、今のところ全て紙一重で回避されていた。
距離がある上に上空から俯瞰して見れるからか、此方の挙動は全て筒抜けのようだ。
範囲攻撃である〈放電〉なら命中するだろうが、〈放電〉は〈雷光〉よりも射程距離が短い。
当てるならば空中にいるリッチに近付く必要がある。
「ま、最低限の仕込みは済んだからやってみるかッ!」
デュラハン達と戦いながら密かに一帯の地面にばら撒いていた謎金属塊を遠隔操作する。
すると、瞬く間に周囲の地面から十メートル前後の金属柱が次々と形成されていく。
そのうちの一つに乗ると、追加の金属塊を足裏から生み出して金属柱を更に伸ばしていき、リッチがいる上空に向かって上昇していった。
骨と皮だけだから分かり難いが、リッチが驚愕の表情を浮かべているような気がする。
慌てたように上昇してくる俺から離れようとするが、その前にリッチへとヤルングレイプの〈放電〉を放った。
広範囲に放たれた黒雷のシャワーに呑まれたリッチの身体が硬直する。
狙い通りに感電し麻痺状態になったリッチに向けて、左腕から謎金属製の触手を伸ばす。
金属触手をリッチの胴体に巻き付かせると、即座に〈双炎掌〉の蒼紫色の炎を発動させる。
〈黒化〉によって黒炎と化している弱体化の炎を金属触手越しにリッチに直接灯す。
ここまですれば空中を自由自在に逃げ回られることはないだろう。
金属柱から〈強蹴〉を使ってジャンプすると、理解出来ない言語で絶叫するリッチへと飛び掛かる。
更に金属触手を収縮させて一気に距離を詰めると、リッチの胴体へと強化グレイヴを突き刺した。
「◼️◼️◼️◼️◼️ーーーッ!?」
「煩いな。喰らえ、〈雷拳〉ッ!」
強化グレイヴの長柄から右手を離すと、ギャアギャア何か騒いでいるリッチの頭部を鷲掴みにする。
頭部を掴まれてもなお喚くリッチへとヤルングレイプの〈雷拳〉を発動させた。
〈黒化〉によって強化された〈雷拳〉の銀雷が、圧縮された黒雷となってリッチの頭部と接触している右の掌から放たれる。
本来は拳打と共に放つ能力だが、このような使い方も可能だ。
右の掌からリッチの頭部へと送り込まれた圧縮黒雷が、骨と皮だけのリッチの全身を蹂躙していった。
圧縮黒雷に灼かれるリッチを下にして地上へと落ちていく。
地面に墜落する直前に強化グレイヴを引き抜くと、リッチの身体を〈強蹴〉で地上へと蹴り飛ばして落下速度を殺すとともに、その勢いで一帯に生やした金属柱の上に着地した。
勢いを増して地上に落ちたリッチに視線を向けると、リッチらしき肉体がバラバラに砕け散っていた。
圧縮黒雷のダメージと落下ダメージ、そこに〈闘牛本能〉で強化された〈強蹴〉のダメージが加わったことでああなったのだろう。
そんな爆散死体の近くで、リッチが身に付けていた豪奢な王冠と杖、ローブが虚しく地面に転がっているのが見える。
「……良しキタ!」
召喚主が死んだことで召喚されたデュラハン達が消滅していくのを視界の端に見ながら金属柱を回収していると、以前に黒ミノタウルスで見たのと同じ発光現象がリッチのローブにも起こった。
〈錬金鎧〉の全身金属化を解いてから眺めているうちに、リッチのローブがシンプルなデザインの黒いコートへと変化した。
次の瞬間、黒いコート型アーティファクトが飛来してきて身体に直撃すると、身に付けていた革ジャンが消えて代わりに黒いコートが装着されていた。
「おお、涼しい。冷房、いや冷暖房機能付きかな?」
ヤルングレイプの時のことを踏まえると、おそらく今のロングコート形態から変えられるはず……あ、やっぱり変わった。
取り込んだ革ジャンに似た形態は勿論のこと、ジャケットならば大体の形態に変化することができるようだ。
ヤルングレイプの革手袋形態同様に通気性も良く、着心地も素晴らしい謎素材製の上着型アーティファクトを手に入れた。
「冷暖房機能は能力の一部か。他にはーー」
「お兄さん!」
上着型アーティファクトの詳細を確認していると、俺とほぼ同じぐらいに戦闘を終わらせていたソフィアが手を振りながら駆け寄ってきた。
彼女の手には彼女が持っていた刀に良く似たデザインの紅刃を持つ刀が握られており、デスナイトの妖しい気配を放つ長剣に似た雰囲気を漂わせている。
「お、ソフィアもアーティファクトを手に入れたみたいだな。おめでとう」
「ありがとうございマス。お兄さんも手に入れたんですネ?」
「ああ。このジャケットだ」
「元はリッチのローブですカ?」
「正解。そっちはデスナイトの剣だろ?」
「ハイ! 中々使えそうな刀デス! 能力はですネーー」
「待て待て。詳しくは帰ってから聞かせてくれ。今はさっさと脱出するぞ」
ソフィアの言葉を止めてから公園の一角を指差す。
そこには此方に向かってくる様々なアンデッド達の姿があった。
「……確かにボス戦の後にあの数は御免デスネ」
「だろ? 微妙に腹が減ってきたから、たぶん魔力の余裕もない。今はさっさと帰るぞ」
「了解デス! ずらかりまショウ!」
なんだか犯罪者感のあるソフィアの言葉に頷くと、公園の外の車を停めてある場所へと駆けていく。
「あ、ついでにアレも拾ってからいこう」
「リッチの王冠と杖デスカ? 確かにデスナイトの剣に似た気配を感じますネ」
ソフィアの言う通り不思議な気配を感じるアイテムなので念のため拾っておく。
アーティファクトではないが、何か特別なアイテムかもしれないからな。
少し寄り道をしてから王冠と杖を拾い上げると、今度こそ公園を脱出した。
10
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
キモオタ レベル0★世界最弱のオタク高校生の僕だけレベルアップ!美女に囲まれハーレム青春物語
さかいおさむ
ファンタジー
街中にダンジョンが現れた現代日本。
人々には戦士としてのレベルが与えられる。
主人公は世界最弱のレベル0。
レベルの低さに絶望していたある日、戦士のレベルの10倍の強さになるというボスが現れる。
世界で倒せるのレベル0の主人公だけ。
ダンジョンで戦うことは諦めていた主人公だが、その日から自分だけがレベルアップできることに。
最強戦士になって、美女の仲間たちとダンジョンの秘密を解き明かす。
クラスごと異世界に召喚されたんだけど別ルートで転移した俺は気の合う女子たちととある目的のために冒険者生活 勇者が困っていようが助けてやらない
枕崎 削節
ファンタジー
安西タクミ18歳、事情があって他の生徒よりも2年遅れで某高校の1学年に学期の途中で編入することになった。ところが編入初日に一歩教室に足を踏み入れた途端に部屋全体が白い光に包まれる。
「おい、このクソ神! 日本に戻ってきて2週間しか経ってないのにまた召喚かよ! いくらんでも人使いが荒すぎるぞ!」
とまあ文句を言ってみたものの、彼は否応なく異世界に飛ばされる。だがその途中でタクミだけが見慣れた神様のいる場所に途中下車して今回の召喚の目的を知る。実は過去2回の異世界召喚はあくまでもタクミを鍛えるための修行の一環であって、実は3度目の今回こそが本来彼が果たすべき使命だった。
単なる召喚と思いきや、その裏には宇宙規模の侵略が潜んでおり、タクミは地球の未来を守るために3度目の異世界行きを余儀なくされる。
自己紹介もしないうちに召喚された彼と行動を共にしてくれるクラスメートはいるのだろうか? そして本当に地球の運命なんて大そうなモノが彼の肩に懸かっているという重圧を撥ね退けて使命を果たせるのか?
剣と魔法が何よりも物を言う世界で地球と銀河の運命を賭けた一大叙事詩がここからスタートする。
【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~
椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。
しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。
タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。
数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。
すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう!
手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。
そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。
無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。
和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。
せっかく異世界転生したのに、子爵家の後継者ってそれはないでしょう!~お飾り大公のせいで領地が大荒れ、北の成り上がり伯爵と東の大公国から狙われ
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
大公爵領内は二大伯爵のせいで大荒れ諸侯も他国と通じ…あれ、これ詰んだ?
会社からの帰り道、強姦魔から半裸の女性を助けたところ落下し意識を失ってしまう。
朝目が覚めると鏡の前には見知らぬ。黒髪の美少年の顔があった。
その時俺は思い出した。自分が大人気戦略シュミレーションRPG『ドラゴン・オブ・ファンタジー雪月花』の悪役『アーク・フォン・アーリマン』だと……
そして時に悪態をつき、悪事を働き主人公を窮地に陥れるが、結果としてそれがヒロインと主人公を引き立せ、最終的に主人公に殺される。自分がそんな小悪役であると……
「やってやるよ! 俺はこの人生を生き抜いてやる!!」
そんな決意を胸に抱き、現状を把握するものの北の【毒蛇公爵】、東の大公【東の弓聖】に攻められ蹂躙されるありさま……先ずは大公が治める『リッジジャング地方』統一のために富国強兵へ精を出す。
「まずは叔父上、御命頂戴いたします」
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる