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第一章
第十三話 偶には人恋しくもなる
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安全運転の模範と言える速度で軍用車を走らせる。
目的地には大量のゾンビがいるという情報があったので、車体の前面には更なる防御力向上のために怪物トカゲの体皮や骨などで作った追加装甲を取り付けた。
元々が装甲機動車とかいう区分なだけあって堅牢な車両だが、モンスター相手にどこまで耐えられるかは分からないので改修できるならしておくに限る。
「ゴブリン程度なら大丈夫そうだな」
物陰から現れたゴブリンを轢いてもなお止まることなく国道を走り続ける。
通常のゴブリンは小柄なので、出来れば人間の大人サイズであるホブゴブリンで耐久性の検証をしたいところだ。
同乗者がいれば走りながらの車体上にある機関銃の威力も試せたのだが、こればかりはソロ行動なので仕方がない。
車内には十分な量の武器と食料を積載しているが、人が増えたら消費量も増えるので現状では人を増やすメリットが低いんだよな。
「まぁ、よっぽど強いなら別だけど」
少なくともオーガレベルのモンスターを単独で狩れる戦闘力がある人材ならば、共に行動することを一考する価値はある。
他に人がいれば単純にやれることも増えるので、自衛ができる人材ならば更にできることが増えるに違いない。
ただ、物資のせいで車内は狭いので一人、多くても二人までだろう。
「どこもかしこも集団行動をしているみたいだから、そんな有能ソロ人材なんていないだろうけど。おっ、ガソリンスタンドだ。給油しとくか」
確か、燃料はガソリンじゃなくて軽油だったよな。
機材を動かすためには、以前のように精算機に金を支払う必要があるが、こういう時のために紙幣は調達済みだ。
給油が終わるまでの間、周囲の気配を探ってみる。
怪物トカゲとの一戦後、〈超感覚〉による気配探知は更に研ぎ澄まされており、今のように気配を探ることのみに集中するならば、かなりの広範囲を探知出来るようになっていた。
たぶん半径一キロ強ぐらいは探知できてるんじゃないかな。
「……離れたところにモンスターの反応はあるが、人はいないな」
国道沿いで色んな店があるのだが、昼間の時間帯だというのに調達に来ている者はいないようだ。
ガソリンスタンドの敷地内にある自販機を開けて中の飲料を回収しつつ、確認できたモンスターの強さを気配から探る。
うーむ……下はオーク、上はオーガレベルってところか。
少し手前ではゴブリンもいたが、このあたりの最底辺の強さはオークレベルらしい。
オークレベルが十数体、オーガレベルが一体いる地域ならば、結構強化が進んでいないと物資を調達しに来るのは厳しいかもしれないな。
徐々に此方に近付いてきているオーガらしきモンスターを迎え討つべく、車内にあるグレイヴを手に取ると、先手を取るために気配を絶ってから駆けていった。
更に効力の上がった〈怪力〉による人外の膂力と、オーガよりも格上のモンスターの爪を使ったグレイヴの刃によって、オーガの駆除は速攻で終わった。
初エンカウント時にはギリギリでしか勝てなかったオーガを瞬殺できるとは、俺も強くなったものだな。
約三ヶ月の時の流れをしみじみと感じながらガソリンスタンドに戻ってくると、車両への給油が終わっていた。
近くにあったタオルでグレイヴの刃に付着した汚れを拭ってから車内に積み直す。
それからスマホの地図アプリを開き、現在地から目的地までの道筋を確認した。
「何ごともなければ一時間ぐらいで着くかな。今日中に拠点が決まるといいんだが……」
もし今日中に拠点が決まらなかったら、情報が少ないオフィス街に残るよりも、比較的安全が確保出来ているこの辺りまで戻ってきたほうが良いかもしれない。
現地の状況次第では、オフィス街手前のここらに拠点を置いて狩りに向かうというのも良さそうだな。
考えごとをしながら適当な缶詰を開けて昼食を済ませると、運転席に乗り込み目的地へと向かって車を走らせた。
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