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第五章

第百二十四話 呪剣

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 ◆◇◆◇◆◇


 俺がメイザルド王国が雇った三人のSランク冒険者を退けたことによって、戦局はアークディア帝国側に大きく傾いた。
 まだ手札はあるものの、最も強力な切り札を失ったことには変わりなく、メイザルド王国軍並びに他国からの遠征軍の指揮所は、ここから逆転出来る一手を必死に模索しているようだった。
 その一つなのか、本陣の防衛用に残していた飛竜部隊の殆どを、上空で帝国軍の飛竜部隊とやり合っている味方の飛竜部隊への増援として向かわせることにしたようだ。

 普通の魔法や矢などでは届かないほどの高度で行われている制空権の奪い合いは、開戦から今に至るまで一進一退の攻防が繰り広げられている。
 質の面では帝国軍の方が上だが、安定性と手数の面では王国軍の方が上だった。
 これは乗騎である飛竜ワイバーンの手綱を握るだけでなく、攻撃も防御も全て一人で担う帝国側に対して、王国軍は二人乗りで役割を分担しているからだ。
 更に援軍の中には、少ないながらも他国の飛竜部隊もいるため、数の面でも帝国軍を僅かに上回っていた。
 そのせいで空の戦いは膠着自体に陥っていたが、少し前に天翼人族であるフォルモント公率いる単身で空を舞い戦うことが出来る戦翼騎士団が参戦したことによって、徐々に帝国軍側が押し始めていた。

 地上だけでなく空の戦局までも帝国側に傾くのは致命的だ。
 本陣防衛用の部隊まで駆り出したのには、そういうやむを得ない事情があったのは間違いない。
 まぁ、そんな増援部隊も無意味になるのだが。


「ーー【天雷の蓮華】」


 王国軍本陣の中から空へと飛び立った増援の飛竜部隊に向かって、倒した敵兵から奪った長槍を投擲する。
 【天雷の蓮華】の発動媒体になった長槍は、一斉に飛び上がっていた飛竜部隊の中央付近の一騎を貫く。
 直後、長槍を崩壊させて雷光が解放された。
 周囲の空間全体に放電された黄金色の雷は、周りにいた他の飛竜と騎手へと伝播していき、その命を奪い去っていく。
 それだけでなく、まるで天から雷が落ちるように地上の王国軍にまで雷が降り注いだ。


[スキル【人騎一体】を獲得しました]
[ジョブスキル【竜騎乗士ドラゴン・ライダー】を獲得しました]
[ジョブスキル【空騎乗士エア・ライダー】を獲得しました]

[保有スキルの熟練度レベルが規定値に達しました]
[マジックスキル【風塵魔法】がマジックスキル【天嵐魔法】にランクアップしました]
[マジックスキル【術理魔法】がマジックスキル【理力魔法】にランクアップしました]


 増援の飛竜部隊が全て黒焦げになって墜落していく。
 これで空の戦いも帝国側に傾くかな?


「色は少し異なりますが同じ雷系攻撃ですので、陛下の聖剣による攻撃だと周りは自然と考えるでしょう」

「期待通りの戦果だ。よくやった、リオン」

「ありがとうございます。では、この後は引き続き護衛と撮影に移ります」

「うむ。臣民からの反応が良さそうなモノを撮ってくれ」

「お任せください」


 聖剣ソルトニスを振るって王国軍を蹂躙するヴィルヘルム。
 その姿をカメラ型魔導具マジックアイテムで撮影しつつ、ヴィルヘルムの撮影の邪魔になる王国兵を【強欲王の支配手】で跳ね除けたり圧壊させていく。


「戦いながら撮影とか、リオンは器用だな」

「そうか?」

「少なくとも私やシルヴィアには無理よ」


 攻撃を仕掛けてきた王国兵を盾で強打して吹き飛ばしながら、シルヴィアが呆れ気味にそんなことを言ってきた。
 マルギットも槍を弾き飛ばした槍騎兵の首を穿ちつつ、同様の声音でシルヴィアの言葉に同意していた。
 確かに、新聞の一面に載せる用の写真を撮りながら戦うような奴は、俺ぐらいだろうな。

 二人と言葉を交わしていると、真後ろからメイザルド王国所属の冒険者パーティーが襲い掛かってきたので、纏めて【発掘自在】の土槍で串刺しにする。
 唯一攻撃を逃れた剣士による大剣の振り下ろしに対して、振り向き様の回し蹴りで大剣を破壊し、流れるように懐に入り込んで【金剛靠撃】による背撃を喰らわせた。
 インパクトの瞬間、剣士の身体の骨の粉砕と一部内臓の破裂を感じ取りながら、既に生成されている土槍に向かって剣士を吹き飛ばして串刺しにした。

 お。やっとレベルアップか。
 基礎レベルが九十になってから、レベルアップに必要な経験値が更に跳ね上がったな。レベルが百になるのはいつになるやら……。


[一定条件が達成されました]
[ユニークスキル【強欲神皇マモン】の【拝金蒐戯マモニズム】が発動します]
[対価を支払うことで新たなスキルを獲得可能です]
[【万夫不当】【最適行動オーバーライド】【無敵の剛走英雄アキレウス】【戦神闘争】【英勇王争】【英勇王の戦錬血操】【理外の筋力】【不屈】【満ち溢れる生命の源泉】と大量の魔力を対価として支払い、ユニークスキル【万夫不当の大英雄ヘラクレス】を得ることができます]
[新たなスキルを獲得しますか?]

[同意が確認されました]
[対価を支払い新たなスキルを獲得します]
[ユニークスキル【万夫不当の大英雄】を獲得しました]


 ふむ……なるほど。無敵効果こそ無くなったが、純粋な身体能力や生命力が大幅に強化されたみたいだな。
 これで神域権能ディヴァインが三つ、帝王権能ロードも三つ、特異権能エクストラが四つの、合計十個ものユニークスキルを持つことになった。
 我ながら呆れるほどの魂の許容量キャパシティだ。
 ますます死に難く、頑強になった自分の身体に満足しつつ、地面に転がっている剣や槍を浮かせると、弓矢でヴィルヘルムを狙っている兵士達に向かって投擲した。


「それにしても、本陣近くまで攻め込んでいるのに、まだ降伏しないんだな?」

「相手からすれば、皇帝陛下が目の前にいるから一発逆転を狙ってるんじゃない?」

「王弟も負けたら後が無いからな。生き残るためには、これ見よがしに見せ付けられている勝機に飛びつかざるを得ないんだろう」

「……仮に陛下を倒しても、間違いなく報復で殺されると思うんだが?」

「人間ってのは追い詰められると周りが見えなくものだからな。既に手遅れだってことが分かってないんだろう」


 シルヴィアのもっともな疑念に応えつつ、破竹の勢いで突き進むヴィルヘルム達の後に続いて王国軍の本陣へと向かう。
 皇帝ヴィルヘルムの権威回復、という此度の戦争の裏の目的を果たすにあたり、既に一人でSランク冒険者三人を下した俺がこれ以上目立つわけにはいかない。
 そのため、前に出ることなく裏方に徹している。
 遠目にも目立つ聖剣デュランダルも鞘に納めており、攻撃手段も比較的目立たないモノを選んでいた。
 まぁそれでも、自軍の勝利の方が優先されるのはヴィルヘルムも理解しているため、先ほどの敵の増援の飛竜部隊には俺が対処したわけだ。

 聖剣ソルトニスから白金色ーー白金プラチナの金属色ではなく、薄い金色ホワイトゴールドの方ーーの雷が放たれた瞬間を撮影する。
 引き渡してすぐの試運転時には白銀色だった雷も、今では新しい使用者として登録されたヴィルヘルムの影響を受けて、その雷光の色合いを銀色から金色へと僅かに変化させていた。
 同色であるヴィルヘルムの透明感のある金髪プラチナブロンドと合わせると絵が映えそうなので、このシーンはカラーで掲載するとしよう。

 時折、アレクシアや他の近衛騎士達も激写しつつ前進していると、やがて本陣を囲む外壁の前に辿り着いた。
 外壁上には取り付けられたばかりと思われる防衛兵器が確認できる。
 ここからは写真を撮る暇は無いだろうと判断し、カメラを【異空間収納庫アイテムボックス】に収納していると、遠目に気になるモノが見えた。


「あれは……まぁ、大丈夫か」


 直後、外壁の内側に建てられた櫓の一つから銃弾が発射された。
 外壁の向こう側からの狙撃に俺以外誰も気付いていない。
 が、その銃弾はヴィルヘルムが纏っている栄光戦鎧ハイペリュオルの【光帝の護り】による光の力場に勢いを減衰させられ、直撃しても【物理攻撃完全耐性】と鎧の頑強さに阻まれたため何のダメージも与えることは無かった。
 ヴィルヘルムに害を及ぼすような致命的な攻撃では無かったので、【救恤聖戦レリーフィング・ウォー】で付与した一度だけの無効化効果も発動していない。
 カンッ、という金属を叩く音を聞きつつ、懐から取り出すようにして具現化させた短槍を、狙撃手に向かって投擲する。
 取得したばかりの【万夫不当の大英雄】によって増大された筋力を持って投げ放った短槍は、櫓にいた狙撃手の胴体に風穴を空けるどころか爆散させ、その際の衝撃波で櫓までをも崩壊させた。


「今のは狙撃か?」

「そのようです。銃弾を見るに、ロンダルヴィアから供給された銃器による攻撃のようですね」


 地面に落ちた銃弾を拾い上げてからヴィルヘルムの質問に答える。
 今回の戦にあたって、王弟は大国であるロンダルヴィア帝国から武器を購入している。先ほどの狙撃銃型魔導具もその一つだ。
 狙撃銃は【戦利品蒐集ハンティング・コレクター】で回収済みなので、後でじっくりと見させてもらおう。
 他国から購入した武器は他にも存在しており、眼前の外壁上にある防衛兵器の魔導砲台もその一つだ。

 その魔導砲台から魔力砲弾が発射される。
 迎撃しようと思ったが、ヴィルヘルムに手で制されたので任せることにする。
 振るわれたソルトニスから放たれた雷撃が砲弾を呑み込み消滅させると、そのまま伸びていった雷撃は魔導砲台に直撃した。
 聖なる雷撃によって魔導砲台は破壊され、その際に発生した爆発は土製の外壁の一部をも崩壊させた。


「リオン。周りの堀を埋められるか?」

「お任せを」


 【発掘自在】の地形操作能力を発動し、外壁の外側に張り巡らされた堀を埋めて、ついでに逆茂木などの障害物も地面を隆起させて排除していった。
 王国軍は慌てて残りの防衛兵器などを使って妨害しようとしてきたが、それらは近衛騎士達によって防がれ、逆に破壊されていく。
 道を整え終わった頃には、作業を妨げる者はいなくなっていた。


「皆の者! これより王弟達を捕らえる。それを阻む者は全て排除せよ!」

「「「ハッ!」」」

「むっ、あれは……」


 だが、ヴィルヘルム達が突入しようとしたタイミングで、崩壊した外壁の内側から強烈な気配が発せられた。
 直後、黒を主体に赤や紫に緑などの色が混ざり合った禍々しい色合いをした斬撃が、地面を削りながら此方に向かってきた。


「ハァッ!!」


 ヴィルヘルムは迎え撃つためにソルトニスを振るい、白金色の雷電を帯びた蒼銀色の斬撃を放つ。
 黒の斬撃と蒼銀の斬撃が衝突する。
 激突した二つの斬撃は数瞬だけ拮抗した後に共に破裂した。
 その衝撃で周りの外壁の崩壊が更に進んだが、まぁそれはどうでもいいか。
 今、問題なのは……。


伝説レジェンド級であるソルトニスの斬撃を防いだだと?」


 そう、そこが問題だ。
 衝撃で巻き上がった粉塵が晴れて現れたのは、身の丈と同じぐらいの大剣を担いだ二メートルほどの大男だった。


「あれは、王弟の長子でしたか?」

「ああ。確かグロムといったか。戦場に来ているとは聞いていたが、今頃出てきたようだな。だが、あの剣は……」

「おそらく呪剣でしょう」

「呪剣か。だから様子がおかしいのか?」

「扱い切れていないのでしょう。呪剣のリスクも性能もピンキリですからね」


 グロムは大剣を担いだままユラユラと身体を揺らしており、目も虚ろで口も半開きだ。
 それなのに此方のことはしっかりと認識しているように見える。なんとなくだが、斬撃を相殺されたことで警戒しているようだ。
 【情報賢能ミーミル】の【情報解析】【万物鑑定】でグロムと大剣を調べてみる。
 分かったことを自らの所感も交えて雇い主ヴィルヘルムに伝える。


「なるほど。どうやら〈錬剣の魔王〉が生み出した呪剣のようです。能力の【命捧呪葬】という名称からの想像ですが、効果は命を捧げることで強大な力を手にするといったところでしょう。自分の意思で発動させたかどうかまでは分かりませんが」

「錬剣の魔王……つまり、アレも世にばら撒かれた〈錬魔の剣〉の一つというわけか」

「万が一がありますので私が倒します。よろしいですか?」

「ああ。時間を掛けるわけにはいかないからな。リオンに任せよう。その間に、我らは王弟達を捕らえる」

「かしこまりました。彼の命は?」

「あれでは正気に戻るまい。討って構わん」

「承知しました」


 手信号で陛下達と共に行くようにマルギットとシルヴィアに指示を出してから、グロムへと駆け出す。


「ギャマ、ゴ、ドルナァッ!!」

「何言ってるか分かんないな」


 接近する俺に向かって地を割り進む巨大な斬撃が放たれる。
 鞘から抜き放ったデュランダルを振るい、割断の力を宿した斬撃を飛ばす。
 割断の斬撃は、概念的な相性の良さから呪剣の斬撃を斬り裂き、そのままグロムへと襲い掛かった。
 地を蹴り、【縮地】による瞬間移動紛いの高速移動も織り交ぜながらグロムとの距離を詰め、至近距離からの追加の斬撃を放つ。
 初撃と二撃目、十字状に放たれた二つの斬撃に挟まれたグロムがどう判断するかを観察する。
 すると、そのどちらにも迎撃は行わず、後方に下がって二つとも回避した。


「王弟の長子は脳筋という話だし、一概には言えないが脳筋らしくない対処の仕方だな。本能からか? 或いは呪剣の判断か?」


 グロムが二つの斬撃からも俺からも離れた後方に退がったことで道が拓けた。
 その隙にヴィルヘルム達を王国軍本陣内部へと進ませる。


「おっと、お前の相手は俺だ」

「ヅッ、ギャマボ、グヤアッメ!?」


 視線は向けてはいないが、意識がヴィルヘルム達に向いた気がしたので即座に距離を詰めて鍔迫り合いになる。
 【剣神斬禍】を発動させているのに呪剣を破壊出来なかったことに内心驚きつつ、そのまま鍔迫り合いと剣戟を数度繰り返す。
 グロム自体の剣技は大したことはないが、呪剣によって強化された身体能力で無理矢理食らいついてくる。
 身体に幾重もの傷がつくが、その全てが即座に再生されていく。
 デュランダルには【割断聖刃】だけでなく、再生や治癒を阻害する【不治聖刃】という能力もあるのだが、呪剣により強化された自然治癒力は、その更に上をいくらしい。流石は魔王が生み出した剣なだけはある。
 デメリットが大きい代わりに、等級以上に能力が強力になる呪剣ということも合わさって、かなり厄介な代物だ。
 まぁ、それでも倒す手立てはあるので焦りは無い。


「デガ、モコイロ、ザクオチホヌア!!」


 呪剣から周囲の地形を割るほどの衝撃波が発せられ、強制的に距離を開けさせられる。
 此方が体勢を整えている隙に、呪剣から伸びた赤黒いオーラがグロムの身体に浸透していき、その大柄の身体を黒く染め上げた。
 黒い体表には赤黒い血管のような筋が浮き出ており、その赤い筋は全て呪剣に繋がっているようだ。


「状況的に【赭筋錬刻】かな? 更に強化されたか」

「シヌトッ!!」


 グロム自身の総合能力ステータスでは考えられないほどの速さで斬りかかってくる。どうやら呪剣の別能力による身体強化系の能力のようだ。
 なんとなくだが、肉体を斬るだけなら【剣神斬禍】のみでも変わらず通じそうだが、致命傷にはならない気がする……アレで倒すか。
 個人的にはどのくらい強化されたか調べたいところだが、時間は掛けられないし、存在が目障りかつ声が耳障りなのでさっさと終わらせることにした。
 ついでに、手に入れたばかりの【万夫不当の大英雄】の力の試運転に付き合ってもらおうか。


「ーー【巨神穿つ闘覇の煌体ギガントマキア】」


 俺の身体の表面に電子回路のような黄金色の光の筋が浮かび上がると共に、万能感にも似た強大な力が身に宿ったのを感じる。
 地竜系真竜ファブルニルグの皮から作られた黒の革手袋を着けた左手で、振り下ろされてきた呪剣の刃を軽く受け止めた。


「ッ!?」

「幻葬剣現ーー〈不滅なる幻葬の聖剣デュランダル〉」


 割断聖剣デュランダルの第二の発動権言アクティブ・ワードスキルである【界理断つ幻葬の煌刃ドゥリンダナ】を発動させ、その聖なる刃を振り下ろした。
 膨大な魔力を糧に極限にまで高められた割断の一撃は、叙事エピック級の呪剣によって等級不相応なレベルにまで強化された肉体を、頭頂部から股下へと容易く斬り裂いていった。


「ゲッ……ゴ、オッ?」


 呪剣は切断後すぐに再生するレベルにまで肉体を強化していたと思われるが、強い割断の力が追加されたことによって一時的に再生力が封じられ、死を確定させる。
 結果、グロムの身体は再生されることなく左右に真っ二つになり、そのまま地面に倒れ込んで死亡した。


[ジョブスキル【将軍ジェネラル】を獲得しました]
[ジョブスキル【王族ロイヤル】を獲得しました]


 【命狩り奪る死神の刃デスサイズ】とかを使えばもっと簡単に勝てたんだが、それだと経験は積めないし、更なる成長にも繋がらないだろう。
 ま、結局は気分なんだが。
 使用者が死亡したことで、呪剣のオーラがゾゾゾっと剣身を掴んでいる手に這い寄ってくるのが見える。


「穢らわしい」


 乱暴に魔力を注ぎ込み、一部の能力を破壊しながら呪剣を支配する。
 呪剣が悲鳴を上げている気がするが、それを無視して魔力を送り込む。
 別に破壊してもいいんだが、せっかくの叙事級の呪剣なので安全を確保した上で入手しておきたい。
 能力的には要らないので、あくまでもコレクション兼素材用にだが。
 赤黒い呪剣のオーラが消え去り、鍔に金飾が増えたのを最後に支配が完了した。


「錬魔の剣ゲット、っと」


 危険性が下がった呪剣を【無限宝庫】に収納する。
 残ったグロムの死体をどうするか一瞬悩んだが、首実検のために頭部は必要かもしれない。
 そのため、一度【復元自在】で真っ二つになった身体を元に戻してから首を斬り、頭部を確保した。
 残った身体を【狩り屠る貪喰の竜王ファブニール】の暴食のオーラで処分すると、ヴィルヘルム達の後を追いかけた。


 その後、一時間もかからずメイザルド王国軍の本陣が陥落した。
 総大将である王弟と首脳部の面々は、陥落前に逃げ出そうとした者含めて全員が生きたまま捕らえられた。
 王国本陣にアークディア帝国の旗が上がったことで、本陣の外で戦う兵士達にも結果が伝わり、両軍共に戦闘を中止した。

 自軍の勝利に湧き立つ帝国兵達の声を聞きつつ、貯蔵している竜肉串を食って遅い昼食を済ませる。
 戦闘自体が一日で終わったのは良いんだが、まだ事後処理やら王都制圧やらがあるんだよなぁ……帝国に帰れるのはいつになるやら。
 日が暮れ始めた空を見上げながら、小さく溜め息を吐くのだった。



 
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