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第四章

第八十九話 強化合成と暴食の進化

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 ◆◇◆◇◆◇


「ふんふんふーん、ふんふんふーん、ふふーんふーんふふーん」


[アイテム〈細胞活性の秘薬〉から能力が剥奪されます]
[スキル【細胞賦活】を獲得しました]
[スキル【生命活性】を獲得しました]

[アイテム〈疲労回復の秘薬〉から能力が剥奪されます]
[スキル【疲労回復】を獲得しました]

[アイテム〈ダグラザの大鍋〉から能力が剥奪されます]
[スキル【自動調理】を獲得しました]

[アイテム〈麗しき白亜の花鞭ヴァイスブルーメ〉から能力が剥奪されます]
[スキル【殲麗花嵐】を獲得しました]
[スキル【接触吸収ドレインタッチ】を獲得しました]
[スキル【伸縮捕縛】を獲得しました]

[アイテム〈収束魔銃エルメランダ〉から能力が剥奪されます]
[スキル【属性収束魔弾】を獲得しました]
[スキル【魔弾超過】を獲得しました]

[アイテム〈射手への祝福〉から能力が剥奪されます]
[スキル【射撃熟達】を獲得しました]
[スキル【射撃技能強化】を獲得しました]

[アイテム〈試作顔面防護殻:四つ目の白殻フォースアイ〉から能力が剥奪されます]
[スキル【看破妨害】を獲得しました]
[スキル【照準妨害】を獲得しました]
[スキル【反応力場装甲リアクション・フォースアーマー】を獲得しました]


 夜食に竜肉串を食いつつ、適当な鼻歌を歌いながら自室で作業を続ける。
 今夜は久しぶりに魔物からスキルを大量に獲得したので、最近入手したアイテムの複製品から能力を剥奪するだけでなく、スキルの合成も行うことにした。
 ただし、今日は合成を行う前に【合成】スキル自体の強化を行う。


[スキルを合成します]
[【合成】+【三位一体】+【一体化】+【調和の心得】=【強化合成】]


 よし。狙い通り。
 では早速この【強化合成】を使って他のスキルを合成しようか。


[スキルを合成します]
[【死を刻む刃デス・エッジ】+【不治魔刃】+【拒絶魔刃】+【対象拒絶】+【魂狩の刃】+【命滅の刃】+【生物解体】=【命狩り奪る死神の刃デスサイズ】]
[【超回復特性】+【鬼王の漲る命精血肉】+【細胞賦活】+【生命活性】=【超越細胞エクシード】]
[【欠片成す人形】+【魔狼顕現】+【分裂】=【眷属作成】]
[【瘴気操作ミアズマ・コントロール】+【病魔感染】+【疫病散布】+【感染爆発パンデミック】+【病症誘発】+【病魔を齎す者】+【病の運び手】=【病瘴齎す災厄の死騎者ペイルライダー】]
[【封印縛鎖】+【遮断の楔】+【乖離の楔】+【伸縮捕縛】+【接触吸収ドレインタッチ】+【生気吸奪エナジードレイン】=【貪り封ずる奪力の鎖グレイプニル】]


 なんか前世で見たことのある名称のスキルになったな。
 例の如く使いどころの難しいスキルもあるが、まぁ強力だから良し。


「ふふーんふー……ん?」


[一定条件が達成されました]
[ユニークスキル【暴食ザ・グラトニー】がランクアップします]
[最上位権能による干渉が確認されました]
[ユニークスキル【暴食】は特殊なランクアップが可能です]
[対価を支払う必要があります]
[【常闇の戦衣】【武装破壊】【魔法破壊】【雷轟掌撃】【暴風掌撃】【暴虐の霧】【竜装纏鎧】【闇纏】【生命を貪る者】【狩猟神技】と大量の魔力を対価として支払い、ユニークスキル【天地狩る暴食の覇王ワイルドハント】へとランクアップすることができます]
[ユニークスキル【天地狩る暴食の覇王】にランクアップしますか?]


 ふむ。察するに普通にランクアップするよりも強力なスキルになりそうだな。
 タイミングからすると、合成によってキャパシティに空きが出来たからだろう。
 間食や大食いは勿論、死体処理にも【暴食】を使ったりして熟練度レベルを上げていた甲斐があった。
 名称的に干渉したのは【魔賢戦神オーディン】っぽいんだが、対価を支払う云々は同じ大罪系ユニークスキルである【強欲神皇マモン】の【拝金蒐戯マモニズム】っぽくもある。或いはその両方による干渉か?
 まぁ、どちらにせよ受け入れることには変わりないんだけど。


[同意が確認されました]
[対価を支払いランクアップします]
[ユニークスキル【暴食】はユニークスキル【天地狩る暴食の覇王】にランクアップしました]


「……これは良いな」


 特殊なランクアップにより至った【天地狩る暴食の覇王】の内包スキルは、実に俺好みの仕様をしている。
 痒いところに手が届くというか、元の【暴食】の時より使いやすく、そして強力になっているようだ。
 これは今すぐ確認する必要があるな。マップを見るにまだ起きてるようだから、一言言っておこう。

 
『リーゼ、起きてるか?』

『……起きてますよ、リオン。どうかしましたか?』

『ちょっと今から新しいスキルを試してくる。日が昇る前には戻るよ』

『分かりました。言うまでもないことですが、お気をつけて』

『ああ。じゃあ行ってくるよ。おやすみ、リーゼ』

『はい、おやすみなさいリオン。いってらっしゃいませ』


 リーゼロッテとの『念話テレパス』を切ると、【無限宝庫】から取り出した仮面フォースアイを着けて【千変万化】で姿を変えてから『瞬間転移テレポート』で移動した。

 転移した先はアークディア帝国内のとある森の中。
 その森の中に作られた盗賊のアジト前に転移すると、アジトの入り口にて見張りについていた盗賊二人と目があった。


「……えっ」

「やぁ、夜分遅くに失礼する。誠に勝手ながら、君達には俺の力のテストに付き合ってもらうよ」

「て、敵だー!」


 近くにあった鳴子を鳴らして寝ている者達を起こす盗賊A。
 その様子を腕を組んだまま黙って見ていると、盗賊Bが剣を片手に突っ込んできた。


「うぉおおおーー」

「ふむ。一人だけではな?」


 俺の身体の周りに現れた霧状の漆黒のオーラーー暴食のオーラと名付けようーーが蠢くと、風が吹きつけるような速さで盗賊Bの身体を呑み込んだ。
 盗賊Bは自らの身に何があったか理解する間も無く暴食のオーラに捕食されて消滅した。


「えっ、は?」

「攻撃力は良し。次は操作性と精密性の確認だな」

「うわっ、む、んぐぐ⁉︎」


 ユニークスキル【天地狩る暴食の覇王】の内包スキル【狩り屠る貪喰の竜王ファブニール】によって顕れた暴食のオーラは、まるで手足を動かすかのように俺の意思に従って正確に動くと、盗賊Aを傷付けることなく捕縛した。
 援軍が到着する前に、以前の【暴食】の【捕食者の喰手】と同じように、暴食のオーラ経由で【強欲神皇】の【強奪権限グリーディア】が使えるか試してみる。


「おー、奪える奪える。ファブニールは喰手の完全な上位互換みたいだな」


 体力、魔力、スキル、記憶の四つを奪う速度もかなり速い。
 盗賊Aとのレベル差があるのも理由の一つだろうが、それを抜きにしても強奪速度の違いがよく分かる。
 強欲ソフトは変わっていないので、間違いなく暴食ハードがグレードアップしたことが理由だろう。


「な、なんだコイツはッ⁉︎」

「お、やっと来たな。ほら、なんか魔法とか矢とか撃ってきてみ?」

「かかれ!」

「「「おう!」」」


 遠距離攻撃に対する性能を確かめたかったのだが、やってきた盗賊のリーダーは部下達に突撃を命じた。罠だと思われたのかもしれない。


「まぁ、近接防御を試せるか」

「な、なんだこりゃ?」

「剣が動かねぇッ⁉︎」


 振るわれた剣を暴食のオーラで受け止めた。
 オーラは微塵も斬り裂かれることもなく不動のまま空中で停止して斬撃を防ぐと、まるでスライムが襲い掛かるかの如く、受け止めた剣ごと向かってきた盗賊達を捕食した。


「う、撃てぇ‼︎ この化け物を殺せぇッ‼︎」


 やっと待望の遠距離攻撃が次々に飛来してきたので、認識したそれらを全てカーテン状に展開した暴食のオーラで呑み込み消化していく。


「化け物とは酷いな……この程度の弾幕は余裕か。なら次だ」


 遠距離攻撃を防ぎ切った暴食のオーラを凝縮し身体に纏っていく。
 暴食のオーラはその霧状の基本形態からカタチを変えていき、その形質を硬質な物へと変貌させた。


「ふむ。貪喰竜鎧ファブニールってところか。元になった【竜装纒鎧】の生物感の強いデザインとは違ってカッコいいじゃないか」


 見た目が嫌で獲得しても全く使わなかった【竜装纒鎧】とは異なり、ファブニールの鎧モードは竜のような意匠のスマートなフォルムをした金属製の全身甲冑姿だった。
 オーラの色である漆黒色だけでなく、濃紫色のアクセントが入っているのが気に入っている。


「全身具象化タイプは懐かしいが……ふむ。身体能力の強化率はそこまでじゃないな。メインはあくまでも暴食の力か」


 茫然としている盗賊達に向かって軽く腕を振るうと、暴食のオーラが黒い雷と風の形となって吹き荒れる。
 雷の速さを避けることは出来ず、風の広さから逃れることは出来ない。
 軽く一歩を踏み出し、目に付いた巨漢の盗賊との距離を詰めて拳を振るう。
 攻撃を受けて二メートルほどの巨体がバラバラに弾け飛ぶが、拳撃に追従するように放たれた暴食のオーラが、血の一滴すら地面に散らばる前に全てを呑み込んだ。


「ほう。中々の捕食スピードだな」


 それから、漆黒色の雷と風に喰われていく盗賊達の悲鳴を背景に、巨大な手の形を成したオーラで盗賊リーダーを捕まえる。


「な、何なんだよお前は。おれ、俺達が何をしたってんだ⁉︎」

「何って、街道を通る人達を襲ってただろ? 街道の安全を確保しないと、人の往来が減って近隣の町の経済に影響が出てしまうんだよ」


 だから邪魔者は排除しないとな、と告げてから盗賊リーダーをオーラで包み込み、全てを奪ってから消化した。


「さて、他も片付いたし、後はアジト内の財宝と物資か。ーー【捕え喰う悪食の徒ニーズヘッグ】」


 空中に集まった暴食のオーラの塊の中から、竜頭蛇身の蛇であり龍でもある悪食龍蛇ニーズヘッグが姿を現した。
 サイズこそ違うが、色と形からして元になったのは【暴食】の内包スキル【捕食者の喰手】の影の喰手に違いない。
 今は見上げるほどに巨大な基本サイズで顕現させたが、前ぐらいの人間サイズで出すことも出来るようだ。
 竜頭の鼻先を撫でてやってから行動を促してやると、ニーズヘッグはその口を裂けるほどに大きく開き、盗賊のアジトを丸呑みにした。
 スプーンで掬われたように大地が抉れたので、【発掘自在】で元に戻しておく。

 ニーズヘッグが喰らったのもそうだが、ファブニールの暴食のオーラで喰らったモノも全て自動的に仕分けられているようだ。
 普段の食事で摂った物や今回の死体などは、【暴食】の内包スキル【万餐吸喰グラトニア】の【暴食胃界】に送られて消化・吸収され、武具などの各種アイテムや食料などの金銭的価値または利用価値のある物資は、【強欲神皇】の内包スキル【無限宝庫】へと送られて保管されている。


「ある程度は取捨分別をする必要があるみたいだが、以前に比べればかなり楽になったな」


 【暴食】の時にはあまり攻撃性能が高くない影の喰手ぐらいしか直接的な攻撃手段は無かったが、今の【天地狩る暴食の覇王】ではそれが解決されている。
 ファブニールやニーズヘッグといった新規内包スキル以外の、【暴食】の時からある内包スキルである【万餐吸喰】と【健康錬体】もどうやら性能が強化されているようだ。
 残る一つの内包スキルである【狩猟神技】は、ランクアップ時に対価で支払ったのだが、そのまま内包スキルに組み込まれていた。
 どうやら対価で支払ったからと言って、必ずしも消滅するわけでは無いらしい。


「さて、まだまだ性能の把握は出来てないから、試運転がてら後三つぐらいは盗賊団を潰しておくか」


 それから満足のいくまで実践を繰り返した結果、追加で三つの盗賊団を壊滅させて帝都に戻ったのは日が昇る直前だった。
 もっと早く終わる予定だったのだが、色々あって後始末に時間がかかってしまった。
 リーゼロッテにはその色々の説明をしときたいところだが、眠いので一時間だけ寝てからにしよう。ある意味人助けだからリーゼロッテもとやかくは言わないはずだ。


 
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