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第三章

第五十五話 領都ランドルムの蚤の市

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 ◆◇◆◇◆◇


 盗賊アジト跡地でのアンデッドとの戦いから五日後。
 俺達はアルムダ伯爵領の〈領都ランドルム〉に到着した。
 他国との国境に面している都市だからか、ランドルムの都市を囲む外壁は高く、その外観から窺える頑強さは魔物の生息領域と接しているアルグラートの外壁にも匹敵するように見える。
 このアルムダ伯爵領と領土を接している国は〈メイザルド〉という王国だ。
 集めた情報によると、アルムダ伯爵領が属しているアークディア帝国との関係は、一言で言えば友好国、正確に言えば宗主国と属国の関係に近いらしい。
 当然ながら、アークディア帝国が宗主国で、メイザルド王国が属国だ。
 メイザルド王国は内陸国で、アークディア帝国は南部が海に面している。
 であれば、アークディア帝国の主な輸出品は南部産の塩になり、これは国内で採れる岩塩の少ないメイザルド王国の生命線を握っているようなものだ。
 そんなメイザルド王国には特にこれといった特産品はないらしいのだが、西のアークディア帝国とは反対側の東の大陸中央小国家群ーーメイザルド王国もその小国家群の一つだーーの国々から輸入した品々を輸出している。
 これでアークディア帝国と隣接している小国家群の国がメイザルド王国だけならば、もっと上の立ち位置を確立できただろうが、実際にはメイザルド王国以外にも隣接している国が複数あるため、何かしらの必需品や技術があるわけでもないメイザルド王国の価値は低く、自然と現在のような関係に落ち着いたそうだ。
 それでも、小国家群との交易ルートの一つであるのは間違いなく、その持ち込まれた交易品が行き交う大市場を壁内に持つランドルムは、アルグラートとは別種の大きな賑わいを見せていた。

 そんなランドルムに到着して真っ先に宿を取ると、領主であるアルムダ伯に依頼の品であるヴァイルグ侯の手紙を届けに行った。
 早く配達した方が良いのでアポ無しの突然の訪問になったが、上級冒険者であるAランク冒険者だからか、そう時間がかかることなくアルムダ伯との面談が叶い、直接手紙を手渡すことが出来たので依頼はこれで完了だ。
 その場でヴァイルグ侯からの手紙を読んだアルムダ伯の表情の変化から、あまり穏やかな内容ではないことは窺えたが、俺達には関係ないことなので少しの世間話を交わしてから領主邸を後にした。
 まぁ、手紙の内容に伴うアルムダ伯の動き次第では俺達に冒険者ギルドを通して指名依頼を出したいらしく、数日ランドルムに滞在していて欲しいと言われたので、場合によっては関係がある話になるだろう。


「お、これは良い生地ですね。ここにあるのを全部ください」

「色々な調味料がありますね。ここに並んでいる分の半分の量を貰えますか? あ、全種類ですよ。ええ、本当です」

「グランブ鉱石? ほぉ、小国家群の一部の国でしか入手出来ない希少金属ですか。面白い特性ですね。見たところ品質も悪くないようですし、全部買いましょう。他にもオススメが? これも希少鉱石ですか。ふむ。値段をもう少し勉強してくれるなら、これとあの鉱石も全て纏めて購入しますよ?」


 領主邸から冒険者ギルドに移動する道中、市内で常時開かれている蚤の市の露店を冷やかしたり、気に入った物や掘り出し物を買い漁っていく。
 中には商品価値を知らずにかなり安価な値段で売られている商品があったり、国内では流通していない商品もあるため見ていて飽きない。


「それが気に入ったのか?」

「はい。似合いますか?」

「ああ。リーゼによく似合ってるよ。気に入ったなら買おうか」

「ありがとうございます」


 リーゼロッテが雑多な品々に紛れて売られていた蒼銀色のイヤリングを手に取り、自らの耳元に持っていき合わせながら尋ねてきたので簡潔に感想を返すと、店主に金を支払って購入し、そのままリーゼロッテにプレゼントする。
 蒼銀色はこの世界ではミスリルの色なのだが、このイヤリングは蒼銀色に塗装された紛い物ではなく、本当にミスリルが使われたミスリル合金製のイヤリングだった。
 【情報賢能ミーミル】を使って材質を調べたところ、大まかにミスリルが六割、銀が三割、大地聖銀ガイアルヴが一割のようだ。
 少なくとも材料費だけで売値の十倍近くするんじゃないだろうか?
 【情報賢能】で調べてもおかしな点は無いので盗品というわけでは無いはずだ。

 出処が気になったので【百戦錬磨の交渉術】を発動させながら直接店主から聞き出したところ、小国家群のとある国の没落貴族から捨て値で引き取った品々らしい。
 本来言わなくていい捨て値でのくだりは無意識に口を滑らせている感じだったので、これは【百戦錬磨の交渉術】の効果だろう。
 合成したスキルの効果を実感しつつ、並べている品の中には他にも値札以上の価値がある物があったので、情報料だと言って纏めて購入することにした。
 値切り交渉をするまでもなく店主自ら値引きしてくれたのは、スキル効果もあるんだろうが、持ち込んだ品が全て捌けた嬉しさもあるんだろう。
 ……全て合わせると、本来なら今の百倍近くになると思うんだけどな。


[経験値が規定値に達しました]
[スキル【値切り】を習得しました]
[スキル【相場】を習得しました]
[スキル【鑑識眼】を習得しました]
[スキル【審美眼】を習得しました]
[ジョブスキル【商人マーチャント】を習得しました]


 内心の思いを【無表情ポーカーフェイス】で隠しつつ、蚤の市を抜けて冒険者ギルドへと向かった。
 さて、冒険者ギルドに入る前に、久しぶりに偽装ステータスを更新しておくことにした。
 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


○名前
リオン・エクスヴェル

○種族
超人スペリオル族 レベル79

○所属
〈アークディア帝国冒険者ギルド・アルグラート支部〉〈冒険者パーティー:戦神の鐘〉

○職業
〈Aランク・上級冒険者〉〈男爵・名誉貴族〉

○称号
なし

職業ジョブスキル
高位剣術師ソード・ハイロード
魔導師ウィザード
司教ビショップ
弓術師ボウ・ロード
槍術師ランス・ロード
高位狩人ハイハンター
野伏レンジャー
隠者ハーミット
騎士ナイト
魔法騎士マジック・ナイト
聖騎士パラディン
守護騎士ガードナイト
斧士アクサー
格闘士ファイター
剣豪ブレイダー
剛剣士ストロング・セイバー
剣舞士ソードダンサー
双剣士デュアル・セイバー
高位盾士ハイシールダー
竜殺者ドラゴン・スレイヤー
聖魔導師カオス・ウィザード
高位妖術師ハイソーサラー
祓魔師エクソシスト
修道士モンク
軽戦士ライト・ウォリアー
重戦士ヘヴィ・ウォリアー
錬金術師アルケミスト
料理人コック
救命士パラメディック
魔導具製作師アイテムクリエイター
薬師ファーマシスト
裁縫師ウィーバー
細工師クラフトマン
商人マーチャント

魔法マジックスキル
【火炎魔法】
【水冷魔法】
【風塵魔法】
【岩土魔法】
【聖光魔法】
【暗黒魔法】
【爆裂魔法】
【氷凍魔法】
【雷電魔法】
【重力魔法】
【術理魔法】

○スキル
⚪︎強化系スキル
身体強化ブースト
強敵殺しジャイアント・キリング
【剛腕】
【駿足】
【限界突破】
【物理攻撃強化】
【乾坤一擲】

⚪︎攻撃系スキル
【魔装刃】
【威圧】
【挑発】
【射出】
【拡声】

⚪︎防御系スキル
【魔装鎧】
【対魔力】
【不屈】
【防御体勢】
【環境適応】

⚪︎回復系スキル
【超回復】
【高速再生】
【魔力増強】
【休眠】
【休息】

⚪︎感覚系スキル
【直感】
罠感知センス・トラップ
敵性感知センス・エネミー
鷹の目ホークアイ
【暗視】
【見切り】
【鑑識眼】
【審美眼】

⚪︎耐性系スキル
【状態異常耐性】
【物理攻撃軽減】
【魔法攻撃軽減】
【苦痛耐性】
【精神耐性】
【精神汚染耐性】
【魔法攻撃耐性】
【物理攻撃耐性】

⚪︎生産系スキル
【物品鑑定】
【罠設置】

⚪︎補助系スキル
【高速思考】
【並列思考】
【言語理解】
【武芸百般】
【罠解除】
【鼓舞】
【逃走】
【奇襲】
【強襲】
【集団行動】
【交渉】
【指導】
【取引】
【狩猟採集】
【礼儀作法】
【騎乗】
【並列行使】
【弱点看破】
【速読】
【学習】
【守護の心得】
【狩猟の心得】
【生活の知恵】
【超回避】
【超狙撃】
【値切り】
【相場】

⚪︎成長系スキル
【弱肉強食】

⚪︎特殊系スキル
異空間収納庫アイテムボックス
【契約】
【幸運】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 レベルは適当にリーゼロッテと同じでいいだろう。
 今までに公開した手札を考えると、スキルも割と適当でも構わない気がする。
 合成後のスキルである【偽装の極み】でも以前と変わらずステータスを偽装出来ることを確認すると、リーゼロッテと共に冒険者ギルドへと足を踏み入れた。


 
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