君に噛み跡を遺したい。

卵丸

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噛み跡

気づいた気持ち

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要はタイムカードを押すと、絢斗が歩いてきて要は少し戸惑ったが絢斗は笑顔で話してきた。

「箕輪、お疲れ」

「お疲れ様です。」

挨拶をしたのに去らない絢斗に嫌な予感がした要は少し後ろに下がりながら聞いた。

「何かようですか?」

「確か明日休みだろ?良かったら、飲みに行かないか」

「・・・・えーと」

「無理ならいいけど、渡したい物があるんだ。」

渡したい物が気になった要は少し考えてから絢斗に言った。

会社ここで渡しても良いのでは?」

「それは・・・雰囲気とかあるだろ?」

絢斗と困った顔に要は仕方なく要件付きで話を進めた。

「それなら静かな場所がいいですね。」

要の提案に絢斗はにこやかに微笑えんだ。

「それなら良いとこがあるんだけど?」

「良いとこですか?」

要は心配になりながら夜の街を絢斗と一緒に歩いた。

『良いとこって何処なんだろう?』

地下を歩いてbar「ミドリ」と言う看板の前に立ち絢斗はカランと音を立ててドアを開けた。
すると女性?が絢斗を見て明るい笑顔で招き入れた。

「あら、絢ちゃん、いらっしゃ~い!」

女性は絢斗の後ろにいる男性に気づき、はっとした表情をして絢斗の見てニヤニヤ笑っていた。

「なに笑ってんだよ、気持ち悪い」

「気持ち悪いってなによ!!」

女性ことしずちゃんは絢斗に軽く怒ると要の方を向き可愛らしい笑顔で出迎えた。

「初めてのお客さんよね?いらっしゃい!!」

「あっ・・・どうも・・・あの、すみませんが男性の方ですよね?」

「うふふ、確かに体は男だけど中身は乙女よ!」

「は・・・はぁ」

「おい静雄、飽きられてるぞ」

「静雄って言うな!!」

険しい顔で睨んでいるしずちゃんは絢斗の頭を拳でグリグリと攻めると彼にしては珍しく涙目になって要が聞いたことない声で叫んでいた。

「いだだだだだだ!!ごめん、すみません!!」

「・・・たくっまた、くだらない事ほざいたらグリグリよりも痛い事してやるんだから!!」

しずちゃんは奥からメニュー表を取り出しまた笑顔で要に渡した。

「初めての人には無料でカクテルを注文できるけど、どれがいいかしら?」

「えっ・・・カルーアミルクお願いします。」

「はいはーい席に座ってお待ちください。」

しずちゃんはにこやかに微笑んでシェイカーを手にするのを見届けると要は痛がっている絢斗の腕を引いて椅子に座らせた。

「大丈夫ですか?」

「ああ、いつもされてるから慣れている。」

「そうですか」

要は可哀想になり絢斗の頭を撫でてあげると絢斗はお礼を言って要に近づいた。

「ありがとう」

「・・・少し近くないですか?」

「ちょっとお客さん、イチャイチャするなら違う場所でお願いしまーす!!」

しずちゃんは要の方にカルーアミルクを置くと絢斗を睨んでからかってきたので絢斗はジト目でメニューを開きしずちゃんに注文をした。

「俺はジンバック頼む」

「はーいかしこまりました!」

しずちゃんは鼻歌を歌いながら再びシェイカーを手にした。

「あの、氷室さんと店員さん親しそうですけど知り合いですか?」

「ああ、高校からの付き合いだな。」

「綺麗な方ですね」

「オカマだけどな」

「こちら、ジンバックの指入りでございマース」

絢斗の悪口が聞こえていたらしく、しずちゃんはわざとジンバックに自分の親指を浸した。

「うわぁっきたな!!」

「ごゆっくり~」

しずちゃんはガラスコップを拭きに行ったので絢斗は睨んだ後、仕方なくジンバックを嫌な顔でゆっくり飲んだ。

「指の味がする」

「どんな味ですか」

要が軽く突っ込んだ後、絢斗は真剣な表情になり鞄を取りだした。

「箕輪の項は今、噛み跡無いから危なくないか?」

「あー・・・確かに怖くはありますね。」

要は項をさすりながら言うと絢斗は鞄から紫色の紙で包まれた中ぐらいの四角い箱を取りだした。

「良かったら身を守る為に・・・。」

「開けても良いですか?」

「構わないよ」

要は何となく分かりながらも絢斗から受け取った箱を開けると中には黒色のチョーカーが入っていた。

「丈夫な皮ですけど高かったんじゃないですか?」

「その方が噛まれても事故にはなりにくいだろ?」

要は初めてのプレゼントにたじろいながらも笑顔で絢斗にお礼を言った。

「ありがとうございます。」

要の笑顔に絢斗は嬉しくなり残っていたジンバックを飲み干すと要以外の視線を感じ、振り向くとニヤニヤして両手でハートの形を作っているしずちゃんと目が合った。

「なっお前!!」

「あら、いい感じ?」

要は2人の煩いやり取りを眺めていると何故か心がモヤモヤしだしてカルーアミルクをゆっくり飲んで落ち着かせたが要にとって少しつまらなかった。

『僕、氷室さんのこんな顔見たことないのにあの人にはするんだな・・・。』

要はチョーカーを手にすると早速、首につけて2人の前で顔を赤くしながら叫んだ。

「あっあの、どうですか?」

要の叫び声で2人は振り向くと恥ずかしさで目が定まっていない要を見て絢斗は可愛さに唖然としていたがしずちゃんは可愛い笑顔でチョーカーの感想を言った。

「まぁ、良いじゃない!でも黒でシンプルだから首輪にも見えちゃうわねぇ?」

「なっ首輪はないだろ!」

「絢ちゃんセンスないから許してね?」

しずちゃんは完全に遊んでいたが絢斗は首を傾げながら要に深く謝った。

「箕輪は飾らないやつの方が良いと思って敢えてシンプルなやつにしたんだ。その・・・束縛みたいなやつになってすまない」

「・・・氷室さんは僕の事を考えて買ってくれたんですよね?」

「あっああ、そうだ。」

「それなら、このチョーカーは嬉しいです。」

要はふわりと微笑むと絢斗も釣られて微笑んで「良かった」と小さく呟いた。

「・・・私、邪魔な感じ?」

2人だけの温かい空気にしずちゃんは苦笑いをして特別にカクテルを2人の前に置いてイタズラっ子のように微笑み2人に囁いた。

「サイドカーって言うカクテルよ。カクテル言葉は「いつも二人で」よ。」

しずちゃんの言葉に要はキョトンとしていたが絢斗は頬を赤く染めてわなわなさせていた。その様子を見たしずちゃんに「オホホホ」と笑われて絢斗は悔しそうにしていた。

***

「ミドリ」を出て2人はほろ酔いの中、夜の街を歩いていた。

「氷室さん、いつ買ったんですか?」

「あー確か、5日前に買ったんだよ。お前から噛み跡が消えて狙われやすくなったから危ないなと思って。」

「態々、ありがとうございます。」

「いいよ、でも箕輪が喜んでくれて本当に良かった。」

絢斗の安心した笑顔に要の心臓が速くなるのを感じ認めざる得なかった。

『・・・きっとあの時、しずさんと仲良くしてたのに僕は嫉妬してしまったんだな。悔しいけど僕も氷室さんの笑顔をもっと見たい・・・・好きになってしまった。』

2人は両想いだと要は気づいたが今はこの関係を続けたかった。要は絢斗に気づかれないようにチョーカーを優しく撫でて微笑んだ。
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