君に噛み跡を遺したい。

卵丸

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小さな一歩

おともだち

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要の小さく放った言葉は絢斗には深く突き刺さり一瞬、頭が真っ白になってしまった。

「・・・・・・・・え?」

要は俯いて涙で掛け布団を濡らしながら彼は絢斗に静かに囁いた。

「・・・僕は捨てられたΩで氷室さんは同情してその言葉を吐いたんですか?」

「・・・・っそんなことは絶対に無い!!」

絢斗は今にも泣きそうな顔で要に訴えると彼は少し泣き顔で微笑んだ。

「そうですか・・・・では嬉しいです。」

「・・・・・・・。」

「でも、本当に申し訳ございませんが僕は氷室さんの事を恋愛対象で見た事が無くて戸惑っていまして出来れば結衣が言っている「お友達」から始めて頂けますか?」

さっきまで悲しそうな顔をしていたのに要は涙を少し流しているが、顔を赤く染めてそっぽを向きながら小さく絢斗に呟いた。それに絢斗はキョトンと目を見開いたが直ぐに朗らかに微笑んだ。

「・・・・友達か・・・あははは」

「・・・なっ何笑ってるんですか!」

「いや、なんか、久しぶりに言われたなぁっと思って。」

「・・・馬鹿にしてます?」

「全然してないし寧ろ、可愛い。」

「・・・・・かっかかかわいい!?」

まさか要は目を見開いて狼狽えるとは予想してなくて絢斗は少しだけからかいたくなって父親の言ってた事を要に伝えた。

「・・・・・箕輪のお父さんに聞いたんだけどお前、俺がいると安心するって言ってたみたいだけど本当か?」

「えっ・・・・・・あぁ・・・・・・・・。」

父親しか知らないはずの話に要は身体全身が熱くなって彼は逃げるように掛け布団に全身隠して病室なのに大きな声で叫んだ。

「・・・何の事やらサッパリですけど!?」

その反応に絢斗は小さく愛おしそうに膨らんでいる掛け布団を見つめて呟いた。

「・・・かわいい」

「可愛くありません!!」

その様子を出るに出れない医者の苦笑に絢斗は気付き、苦笑いをして誤魔化したが医者は頬を桃色に染めてゴホンとわざとらしく咳をして病室に入ってきた。

「・・・良い感じの処悪いけど箕輪さんが起きたのであれば言わなくてはいけないことがあるんですよ。」

箕輪は恥ずかしさで顔を真っ赤に染めて、のっそり布団から出てきて医者の顔を見つめた。

「箕輪さん、貴方の項の噛み跡が消滅した時に氷室さんから甘い匂いがしましたか?」

要は怪訝そうな顔をして医者に伝えた。

「えぇ、しましたけど?」

「その匂いは貴方を安心させましたか?」

「・・・まぁ、落ち着く香りと言いますか・・・その・・・嫌じゃない匂いがしました。」

要の言葉に医者は深く頷き、真剣な表情で要を見つめて絢斗にも伝えた言葉を静かに言った。

「Ωがこの人なら預けられる、安心出来るとフェロモンをお気に入りのαに放出するのですがそのαも嫌な匂いでは無ければ運命の番なのですが、氷室さんに聞いたら甘い匂いで嫌いでは無いと答えまして貴方達は運命のパートナーとなりますが今後の人生に関わる大切な話なので、それは貴方達で話し合って解決して頂けたらと思います。」

要は医者の言葉に唖然とするしかなく黙って聞いていたが完全に不安そうな顔をして掛け布団を強く握りしめていた。

「・・・・まぁ、不安しか無いと思いますので一応、抑制剤は出し時ます。」

「・・・・・・ありがとうございます。」

「箕輪さん、退院する為に再検査を行いますので検査室に案内します。」

「はっはい」

要は医者に着いて行ったがまだ、運命の番が絢斗の事を困惑するしか無く彼の顔を全然見れなかった。

***

絢斗は要の不安そうな後ろ姿をただ切なく見つめていた。

『そりゃ、いきなり同僚が運命の番とか困るよな・・・。』

絢斗は小さく溜息を吐くと病室のドアから不機嫌な隆志が早歩きで入ってきて絢斗の前に止まり睨んできた。

「・・・・要に告白したの?」

「えっどうして知ってるのですか!?」

「・・・要とお医者さんが来たのをたまたま見かけてお医者さんが再検査の事を話してくれてる時にあの子の顔が真っ赤で照れてたから告ったのかなと思って・・・何?付き合うの?」

グイグイくる隆志に絢斗は狼狽えながら今後の事をゆっくり話した。

「・・・あいつは俺の事を恋愛対象で見てなくて断られてしまいましたが・・・その・・・友達から始まりました。」

「・・・・小学生のお付き合いみたいだね。」

「まぁ、はい」

「でもさ、氷室さんは要と仲良くなってあの子をほの字にさせてもう一度告白する気?」

「・・・・・・・・・・。」

「図星だね。」

隆志は絢斗をジト目で見つめてきたが直ぐに真剣な表情で語りだした。

「もし、君の告白が上手くいってお付き合いする事になっても俺は認めるけど要を泣かしたら一発君の顔をぶん殴るから覚悟しといてよ。」

右手で拳を作り絢斗の顔の手前で殴るフリをして睨みつけると絢斗も苦笑するしかなく固まっていると安心した表情をした要が病室に入ってきた。

「あったか兄、異常は無かったみたいだから明日の朝には退院できるみたい。」

「それは良かった。」

「氷室さん何薄気味悪い笑いをしてるんですか?」

「・・・何でもないよ。」

要の指摘に絢斗は気にしないフリをして誤魔化し、絢斗は帰る準備をした。

「俺はそろそろ帰るので、今日はお疲れ様でした。」

「はい、氷室さん、今日はありがとうございました。」

絢斗はドアノブを開こうとしたが後ろを振り向き要の顔をしっかり見て笑顔で別れた。

「今日は楽しかったよ。また結衣ちゃんと一緒に遊びに行こうな、要!」

「じゃあ」と言うと彼は出ていったが要は下の呼び名に何故か鼓動が早くなって隆志に気付かれないようにパジャマの胸ら辺を強く握りしめ俯いた。

『下の名前なんて、色んな人に呼ばれてるのに・・・どうして?・・・これもフェロモンのせい?』

初めての経験に要は戸惑うしか無く、絢斗がいたドアの前を切なく眺めていて隆志を少し困らせた。
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