トラウマSubの愛し方

卵丸

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~壮真side~

渚は寝ていたが眉間に皺を寄せ、凄く汗をかいて魘されていた。

「う・・・ふぅ・・・・ぐうぅぅぅぅ」

「渚・・・・・。」

俺は出来るだけ渚の頭を撫でて落ち着かせたが、遂に渚は魘されながら泣き出した。

「ふぅ・・・ぅぅぅぅ」

涙が枕を濡らしていく、俺は少し戸惑ったが渚の額に軽いキスを落とした。そして昔婆ちゃんがしてくれたように胸辺りを掌でポンポンとリズムよく優しく叩いた。すると渚は少し落ち着いたのかスースーと寝息をたてていた。 俺はホッとして一応起きてきたように体温計を持っていくと、ふと本棚にあった「Dom/Subについて」が気になり、手に取り本を読んでいると、物凄く汗をかきながら渚が目を覚ました。



「あのさ・・・僕、瀬戸に撫でられてから記憶がないんだけど」

渚に言われたので俺はスマホを取り出し、さっき撮った動画を見せると顔を赤くしてわなわなと震える渚に怒鳴られた。

「なんなんだよ!この動画!」

「いや、Subスペースに入った可愛い可愛い渚の動画だけど?」

「人の許可無しに撮るなー!!」

さっきまで魘されてた人とは思えなかった。

「今すぐ消して!」

「可愛い渚を拝めたいからヤダ!」

「まさかネットにあげて拡散する気!?」

「しないけど、皆に見られたくなければこれからも毎日プレイにつきあってね?」

「えっ毎日!!」

「そう休み以外、Subに拒否権はないからね?」

俺は流石に酷すぎたと思ったが渚は考える素振りを見せるといい作戦を閃いたように目が輝き出した。すると渚は小悪魔みたいな可愛い笑顔で俺を脅してきた。


「・・・僕、日和に愚痴ちゃおうかな?」

「いや、新村ぐらいで脅しにならないって」

僕が笑い返すと渚はニヤニヤしながら新村について語ってきた。

「日和って全国中学柔道大会で8位の実力者なの知ってる?通り名を背負い投げの太陽」

確かテレビで放送されて見た事があった。身長180cmもある選手を軽々しく背負い投げをして有名になった中学生がいて婆ちゃんが凄いわね~って言っていた。俺はテキトーに見ていたが、あんなでかい男を背負い投げ出来るんだから・・・・・

「俺ピンチ?」

渚はパァーってつきそうな笑顔で俺に頷いた。

「かわっ・・・わかったから毎日はやめとく! せめて三日間!」

「別にいいけど瀬戸だけいい事しかないのずるいなぁ」

「・・・・・・じゃあ、どうしたらいいの?」

「せめて三日間授業には出ること!」

「えっなんで?」

渚は子供を宥めるように朗らかに笑った。

「頑張ったご褒美があった方が嬉しくない?」

「・・・・・ご褒美」

「それに突然、瀬戸が授業受け出した皆の顔を見てみたいと思ってさ!」

『・・・・・俺のSubは小悪魔かもしれない』

俺はプレイをしてくれる代わりに授業を受けることを条件に約束をした。その時、婆ちゃんとよくする、指切りげんまんをしたら「懐かしい」と微笑んだので「可愛い」を言わないように必死に耐えた。



~渚 side~

次の日の朝、皆のざわめきがHRになっても続いた。

「主席を取るぞ~ 青山・・・」

先生がさ行の人を呼ぶ、その時から先生は少し動揺した声をしていた。

「瀬戸 壮真」

「はぁい」

皆がざわつき始める、先生は「静かにしろ」と注意をしていたがざわつきは一分間続いた。

「どうしたんだろな、あいつ」

「でも瀬戸の奴、眠たそうだぞ」

「よく見たら瀬戸君、かっこいいかも!」

皆の反応が面白くて笑いを堪えるのに必死だった。日和の方を見ると信じられない物を見るような顔をしていた。
面白いものを見せて貰ったが放課後はプレイが待っていたので、苦笑いしか出来なかった。



放課後になり、僕達は空き教室に行ったが、その時追いかけている影に気づかなかった。空き教室の鍵を閉めると僕は怖くなったが瀬戸はボリボリ頭をかきながら、ため息をついた。

「俺が先生の問題を正解したら歓声があがるって、どんなクラスだよ。」

「サボり魔くんが直ぐに答えたから皆驚いてるんだよ。」

「渚笑ってる?」

「ふふ・・・まぁね」

瀬戸は不満そうな顔をしていたが、背伸びをすると僕の前に来てにこやかに合図をした。

「今からプレイを始めるね。safe wordは?」

「クレーム?」

『あれ?瀬戸の奴、僕に気を使ってる?』

「言えるね、じゃあ始めよっか!」

すると、ドンドンと音がした。僕達は振り向くと、鬼のような顔をした日和がいた。
僕は鍵を開けると、日和はドスドス音をたてて、瀬戸の前に立ち胸ぐら掴んだ。

「ナギになにしてんだ?」

日和のドスを聞かせた声が空教室に響いた。瀬戸は僕の言葉を思い出したのか、少し顔が動揺していた。僕は慌てて初めて瀬戸を庇った。

「日和、これには訳があるんだ!」

「何?こいつに弱みをにぎられた?」

僕は頭を沢山巡られて、日和に嘘をついてしまった。

「弱みと言うか、僕、実はSubで先生に頼まれてノートを運んでいる途中に先輩達がプレイをしていてcommandを拾ってしまって僕が座ってしまった処にDomの瀬戸が通りかかって、commandを放って助けてくれたんだけど、Subを皆に言わない代わりにパートナーになってくれって言われて、僕も勝手に出して申し訳ないけど、僕が嫌な事をしてきたら、日和に言いつけて背負い投げをしてもらう条件でプレイをする事にしたんだ。」

僕は一気に出鱈目を言うと二人はポカンとした顔をしていたが日和は瀬戸の胸ぐらを離して、瀬戸睨んだ後、僕の方に近づいた。

「ナギってSubだったの?」

「・・・・・うん、日和にはNormalって言ってたもんね。」

「・・・・皆には言わないけど、もし瀬戸に嫌なことされたら言えよ!必ず俺がこいつに背負い投げしてやるから。」

窓の逆行で日和の顔は見えなかったが日和の言葉に安心した。

「ありがとう日和!」

「確かプレイって大切な時間だったよな、邪魔したな・・・・酷いことすんじゃねーぞ!!」

日和はガララと音をたてて、出て行った。僕は少し息をついた。

『やっぱ、日和はかっこいいな!』

僕は日和に対して感激していると瀬戸が教室から出て行こうとしていた。

「どこ行くの?」

「・・・・・・・・トイレ、でも直ぐに戻るから"Stay"しててね」

さり気にcommandを放たれて僕はこの空き教室に待つしかなかったが瀬戸の命令は心がポカポカして気持ちよかった。


~壮真side~

新村と渚が話している時に、新村が悲しそうな顔をして目が潤んでいたのでもしやと思い、渚を置いて新村を追いかけた。

「新村!!」

俺の声に新村が振り向いたがやっぱり新村は俺を睨んでいたが鼻を赤くして泣いていた。

「・・・・・・なんだよ」

俺は新村に近づくと自分の予想を言ってみた。

「お前もしかして・・・・」

「ナギが好きだよ!!悪いかボケ!!」

予想的中すぎてどうしたらいいのか分からなかった。

「・・・ナギは俺にとってヒーローなんだよ・・・・・。」

「ヒーローって?」

「お前に言わない」

「・・・・・・あっそ」

「でも、あいつがSubだったから俺じゃあ満足させる事出来ねーじゃん!」

「あぁNormalなんだ」

「・・・・・Normalって言ってくれた時、凄く嬉しかった。いつかNormal同士のパートナーになりたいって思ってたのに・・・そっか・・Subなんだ・・・・・告る前に振られちまったな・・・俺ダサ」

俺は泣きじゃくる新村を見てるしかなかったが、プレイをする前に新村が来た時の渚について話す事にした。

「新村」

「なに?」

「今日のプレイをする前に渚から感じたフェロモンが冷たかったんだよ、やっぱりプレイが怖かったんだと思う、だけど新村が来た時の渚のフェロモンが温かくなったんだ。だからお前は渚の支えになってんじゃないかな?」

俺なりのフォローを入れると新村は更に泣き出し、遂には俺の胸辺りをポカポカ殴ってきた。柔道やってるだけあって少し痛かった。

「微妙に痛いんだけど」

「うるせえ・・・・・でも、馬鹿みたいなフォローはありがとう」

新村は袖で涙を拭くとスッキリした顔をして、俺の顔を指さして、宣言をした。

「俺はナギに告白してみる、Normalだけどあいつが安心できるみたいだし、Domごときに負けねーからな!」

「いや、負けてるから」

俺はニマニマして、渚のサブスペース動画を見せると素早くスマホを取られ削除された。

『やっぱ言うんじゃなかった!!』

俺が戻って来ると渚は心配そうに待っていた。

「ごめん渚」

「いいよ、大きい方だったの?」

「下品なSubだな・・・。」

「日が昇ってきたけどプレイはするの?」

今日はバイトがあってその少しした時間にプレイをしたかったが邪魔入ったので出来なくなってしまった。

「バイトはいってんだよね。だからafter careだけするね」

俺は渚の頭を撫でた。

「俺を待っててくれてありがとGood(いいこ)」

渚の身体が急に熱くなり、心配したが顔を見るとぽやぽやした顔で俺を見つめていた。

「ふふ・・・いい子でしょ?」

『動画消されたけどパートナーの特権だし、新村ざまぁみやがれ!』



俺はなるべく授業を受けた。受けることにより先生から良い評判をもらったが評判より嬉しいのが渚とのプレイだった。プレイ自体は軽いcommandだが直ぐにぽやぽやした顔になり、俺の癒しだったがKissはやっぱりダメみたいでsafewordを放ったそんな毎日が二週間続いたある日突然転校生が来た。
転校生は親の都合で来た男子生徒で灰色のストレートに山吹色の鋭い目付きだが、胡散臭そうな爽やかな笑顔でクラスの大半の女子は奴に堕ちたと思う。俺は興味を無くし、癒しの渚を見ると渚は目を見開いて青白い顔で転校生を見つめていた。









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