トラウマSubの愛し方

卵丸

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サボり魔はDomでした。

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僕の高校生活は可もなく不可もなく、普通に過ごしていた。 普通に授業を受けて普通に友達とご飯を食べて普通に下校をした。 せっかくの高校生活はハッキリ言うと味気ないがSubの性で虐められるよりかはマシだった。
今日も授業を受けていると、ガラガラとドアが開く音がした。皆がその音に注目すると、その男子生徒は欠伸をして黒板の方を見た。

「ふーん.....数学か」

と言ってその子はドアを閉めて、パタパタと音をたてて教室から逃げていった。

「はぁ~・・・授業進めるぞ!」

先生はパンパンと手を叩くいて黒板を向くように生徒達に指示をした。
その時生徒達のひそひそ話が聞こえた。

「あいつ今日も三時間目にきて、授業内容見て逃げたな」

「まぁサボり魔だからね」

「でも学力テストは学年で一位なんだよね」

「何も勉強しなくても、賢いんじゃない?だってあいつはDomだしさ」

「私語をするな!!」

「「すんません」」

先生に注意されて、生徒達は謝っていた。僕はDomと言う言葉に少しビクッとしたが、授業に集中した。 ダイナミクスのことは大体の人は秘密にしているが、
瀬戸 壮真せと そうま の性は結構有名な話だった。
噂で聞いた話だが、瀬戸は中学の時に喧嘩になりSubにえげつないCommandを放ってSubdropをさせたことがあるらしい。 噂だし真実は知らないが僕は瀬戸とあまり関わらないでおこうと思った。



「ナギ~ !一緒に帰ろうぜ!」

僕が帰る支度をしていると、日和ひよりが声をかけてきた。 日和とは図書委員が一緒で好きな本のジャンルが似ていて仲良くなった男子生徒だ。彼は女性みたいな名前で身長が160cm前後で中性的な顔立ちだが、男らしくて5歳から柔道をやっていて、力は強い兄貴肌だ。

「いいよ、少し待ってて」

僕はポケットにイヤホンを入れると、日和の所まで走った。

「なぁ金曜日だし、ハンバーガー食べに行かね?」

「良いけどさ、晩御飯どうしよう?」

「じゃあナギはソフトクリーム食べればいいんじゃね?」

「それなら、晩御飯も入るかも!」

僕達が今後のこと話していると、いきなりCommandが聞こえた。

「"Stay" (止まれ)」

僕の心臓はバクバクしたが抑制剤を飲んでるので、少し止まるのに数秒かかった。
振り向くと、そこには瀬戸がいた。
瀬戸が僕の所まで来て、手を差し伸べてきた。掌をみるとそこにはイヤホンがあった。 僕はポケットの中を探るとイヤホンが無かった。

「拾ってくれたんだ、ありがとう」

瀬戸は僕にイヤホンを返してくれたが返したあと、僕の顔をずっと見ていた。

「・・・何?」

「いや、上原ってさSubっぽいから、Commandを放ったけど効かなかったから違うんだと思って上原ってDomそれともNormalあっそれとも実はSubで薬を・・・」

すると日和が瀬戸を睨んで僕を前に出て、庇ってくれた。

「お前ナギが困ってんだろ!ってかダイナミクスは簡単に教えるもんじゃねーって保健の授業で習っただろ!・・・あの時お前いなかったな。だからってベラベラ喋るもんでもねーし、ナギがSubだったらどうすんだよ。今のCommandのせいでナギが大変な目に逢うんだぞ!お前の好奇心のせいでな!!」

日和が瀬戸に大声で怒鳴ると、日和は僕の腕を掴んで走って瀬戸から逃げた。



日和は学校から出てきても、何故か僕より怒っていた。

「何で日和が怒ってるの?」

「だって!あいつ気に食わねーじゃん 授業をサボる癖に頭が良くて、スポーツも完璧で女の子にモテモテ野郎が自分の興味でナギをからかったんだぞ!そこが気に食わないんだよ、Domなら何でもしていいのかよ!」

「日和は僕の為に怒ってくれてるんだね、ありがとう」

「どーいたしたしまして、あぁーやっぱムカつくな!俺ハンバーガー二個食いそう!」

「お腹壊すよ?」

僕らはたわいのない話をしていると、嫌な笑い声が聞こえた。 いきなりのことで僕は怖かったけど、日和が声がする方へ向かい僕も慌てて着いていった。
路地裏を見ると、男性三人がいたが、二人は一人の男性に何か言っていた。

「"pass"(渡せ)」

すると男性は震える手で財布から万札を沢山握って二人に渡した。

「何だよ二十万だけか湿気てんな!」

「おい、まだあんだろ?ほら"pass"」

Commandを放たれた男性は小さい声で「もう無いです」と言ったら、一人に顔を殴られてしまった。 その男性は鼻血を出しながら泣きわめいたが、二人にボコボコに蹴られていた。

僕はCommandを放たれて自分の右腕を抓って、何とか耐えた。 すると日和が前に出てきて、思いっきり息を吸うと、大きな声で叫んだ

「お巡りさんこっちです!!」

すると、男性二人は驚いて路地裏から全力で逃げ出した。 その時、捨て台詞を吐いた。

「クソっサツを呼ばれた。」

「Sub如きがいい金持ってんじゃねーよ」

「・・・たくクソみたいな台詞吐いて逃げたな!」

日和はボロボロの男性の方に行くと手を差し伸べた。

「大丈夫ですか?立てますか?」

すると男性は日和の手を叩いて、自分の足で立ち上がった。

「・・・オレがSubだから哀れだと思ってんだろ」
と静かに言ったが、驚いている日和を見ると男性はハッとした顔になりすぐに「ごめん」と謝って逃げて行った。

「・・・あの人ピンピンしてたな」

「・・・そうだね」

「・・・ハンバーガー食べに行くか」

「日和は大丈夫なの?」

「・・・まぁな・・・」

「そっか」

僕たちはハンバーガーショップに行ったが、僕はあのcommandが頭に響いた。

『"pass"』

「照り焼きバーガー上手いなぁ・・・ってナギどうして俺の方にソフトクリーム置いてんだ?」

いつの間にか、日和の方に僕はソフトクリームを置いてたみたいだ。

「あっその・・・このソフトクリーム美味しいから、日和にも食べてほしくて」

「そーなん?じゃあ遠慮なく」

日和はティースプーンを持ってソフトクリームを少し食べたが「普通」と言う言葉が返ってきた。

「まぁソフトクリームのお礼に俺のキチンナゲットやるよ」

「ありがとう日和」

「BBQソースとマスタードどっちがいい?」

「BBQソース」

『僕に放たれてないCommandをしてしまったってことは薬の効き目がなくなってきてるな。』



僕は家に帰ってきてから、薬箱を開けると抑制剤の薬が空だったので仕方なく僕は薬局に向かった。

『う~んやっぱり抑制剤って高いんだよね・・・それならまだ安いこっちにするか』

僕は薬を持ってレジに並んだ。

「らっしゃっせ」

なんか気が抜ける声がする店員さんだなと思ったら、その店員さんに見覚えがあった。
赤茶髪のボサボサ髪でジト目だが藤色の瞳が輝いていて、肌が白くて整っている顔した・・・瀬戸がいた。

『瀬戸ってここでバイトしてたのか!?』

僕の後ろに列が混んできて、手汗をかきながら薬をレジに置いた。

「1890円です。」

僕はカード払いをしてレジ袋とレシートを貰わずに全力で走った。 その時人にぶつかりかけながら、走ったので嫌な顔をされたが気にせず瀬戸から逃げた。




壮真 side

「お疲れ様したー」

俺はバイトのレジ打ちが終わり、家に帰宅した。

「そーちゃんお帰り」

「ただいま婆ちゃん」

婆ちゃんは夜の九時なのに起きていた。

「婆ちゃん寝なくていいの?」

「だって一人だとそーちゃん泣くでしょう?」

「もう、いつの話してんだよ !今日は筑前煮?」

「そうよ、そーちゃん召し上がれ」

「ありがとう いただきます」

俺は今日の出来事を考えた。 間違いなく上原はSubだと確信した。今日のレジで俺が会計してた時のあの焦った顔に終わった後にすぐに逃げた時、俺にバレたのが嫌だったんだろう・・・。Commandの時も新村にいむらからはSubのフェロモンを感じなかったが、上原からは少し甘い香りのフェロモンを感じた。 婆ちゃんがよく言う運命のSubなんだろうか? 多分本人は嫌がるかも知れないけど、上原は本当に運命のSubなのか知りたかったから、これから上原と関わっていきたいと思う。

『少し、ワクワクするな』

俺はいつの間にか笑ってたみたいで婆ちゃんは俺の顔を見て朗らかに言った。

「まぁそーちゃん、そんなにお婆ちゃんの筑前煮が美味しいの?」

「うん、美味しいよ」

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