哀しい兎に笑ってほしくて

卵丸

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大切な関係

兎が笑った。

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12月25日は俺の誕生日だけど数年間も祝われてない俺にとってはどうでもいい日だったのに・・・。

「圭兎君、お誕生日おめでとう!これ前から欲しいって言ってたイヤホンだよ!」

今日の朝、笑顔の裕太君が部屋に訪れて俺に新型のワイヤレスイヤホンをくれた。前に休み時間で会話をしていたのを覚えてくれてて、まさか貰えるとは思ってなくて嬉しくてお礼を言おうとしたが裕太君の後ろから現れた賢太君が右手で持ってた生クリームのパイを思いっきり顔面に目掛けてぶっかけられて倒れなかったが、よろめいてイヤホンを落としてしまった。

「圭くんー、ハッピーバースデー!!」

「わっっぶぶぅっ!!」

「圭兎君!?」

俺は両手で生クリームのを雑に落としながら賢太君を睨みつけると彼は完全に反省などせずにケラケラ笑ったので俺は生クリームで汚れた両手を賢太君の顔に遠慮なく塗りたくった。

「この!!」

「うぎゃぁぁぁぁ!」

「何してんの!」

真っ白い顔になった賢太君を大笑いして、俺達が騒いだせいか俺の背後から低くて不機嫌な声がきこえてきた。

「朝から煩いな・・・。」

「あっ中村君・・・騒がしくしてごめんなさい」

慌てて裕太君が謝ったが中村陸は無視をすると俺の方を見て目を見開いた後、直ぐにそっぽを向いて2人には聞こえない音量で俺に伝えた。

「色々と危ないから早く顔を拭いてくれば?」

「・・・・。」

(何を想像してんだコイツ)

俺は呆れながら洗面所に向かい顔を洗うと、まだ裕太君達が残っていて俺は疑問に思っていると可愛らしい笑顔をした裕太君が俺の右腕を引っ張って明るい声で言った。

「今日、賢太と誕生日パーティの準備したんだ!今から僕たちの部屋で始めていいかな?」

その言葉に俺は嬉しくて顔が熱くなってるのを自覚しながら泣きそうになるのを下唇を噛み締めて耐えて何回も頷くと裕太君はにっこり笑い「レッツゴー!」と拳を上げると中村陸が慌てて裕太君に声をかけた。

「あ・・・あのさ、俺も行っていい?」

すると裕太君はふにゃりと良い笑顔で「もちろんだよ!」と言ってくれて中村陸は安堵の息を吐いた。

***
「はぁー楽しかった。」

裕太君の部屋で食べた、多分買ったであろう惣菜に目を輝かせながら唐揚げやサラダやエビチリなどを食べたり、最後は俺の好物であるチーズケーキが出できた時は歓喜の声をあげると中村陸に吹き出して笑われて少しだけムカついた。
そしてパーティが終わり、ベッドに寝転がって満足気に息を吐くと中村陸が俺を見つめて立っていた。

「なんだよ」

「別に可愛いなと思っただけ。」

「・・・・っうるせえ!」

俺はそっぽを向いたがアイツは気にした感じはせずにベッドに近づいて俺の隣に座って愛おしそうに優しい声で呟いた。

「・・・圭兎君、生まれてきてくれてありがとう。」

「・・・・・・!?」

その時に頭を優しく撫でられて俺の身体が温かくなった。

(久しぶりに言われた・・・。)

そして、いつの間にか涙を流していた・・・。

「・・・・・圭兎君・・・・嬉しかったんだね。・・・良かった。」

「・・・・うっうるせぇってば、この!」

中村陸が楽しそうに笑ってんのをつまらなく思いながらも今が幸せだと感じてしまった。
そして、中村陸がズボンから小さくて丸いものを取り出した。

「・・・これって?」

「・・・・collarだよ。」

「でっでも、貰ったし」

「二重にして離さない。」

「・・・・・ヤンデレかよ!」

「失礼だな!」

中村陸のしかめっ面に満足した俺はアイツの目の前に手を翳した。

「はめてくれんだろ?」

「・・・・うん。」

珍しく、アイツが素直に頷くとシンプルな銀色の指輪を薬指にはめたので、流石に焦った声を上げてしまった。

「なっ・・・結婚指輪みたいじゃねーか!」

「・・・みたいじゃなくて、結婚指輪だよ。・・・まぁ、本物は少し待ってね。」

「・・・・・・・お試しのはずだっただろ?」

俺の言葉に口を尖らせた中村陸と目が合うとアイツは自身の額を俺の額に合わせて小さく呟いた。

「・・・・・・絶対に後悔はさせないから。」

中村陸の真剣な表情に息を飲んだが、俺は恥ずかしかったが嬉しくて、ゆっくりアイツに気づかれないように腕を回して優しく抱きしめると驚いた顔をした中村陸に満足しながら俺は耳元で楽しく囁いた。

「期待しといてやるよ。」

俺がボソッと言ったのが聞こえたらしくアイツは嬉しそうに「期待しててね。」と囁いた。

***

そして2年生になり、教室に向かうと裕太君と奇跡かコネか知らないが中村陸と同じクラスになった。
眉間に皺を寄せた俺に気づいた中村陸はさりげなく命令をした。

「圭兎君、"こっちにおいで"」

「ッ・・・・お前!」

俺は嬉しさを隠したが身体が熱くて顔に出ないように俯きながら近づくとアイツは楽しそうに呟いた。

「赤くして、可愛い。」

「うっ・・・うるせぇ!」

俺が叫ぶと気になった奴らが俺達をチラホラ見だしたので俺は慌てて「なんでもない、ごめん」と謝る姿を見て中村陸は吹き出して笑いだしたのを威嚇して睨みつけたがアイツはもう一度、「可愛い」と言うだけで意味がなかった。
俺はそれが気に食わなくて仕返しをする為にアイツの耳元で名前を呼んだ。

「陸」

「っえ、なっ・・・さっき、名前・・・・いっだ!?」

名前呼びは予想外だったらしく頬を赤らめて慌てた声で言う中村陸に満足しながらデコピンを一発食らわせた。

「名前呼びだけで慌てすぎ。」

俺が意地悪く笑うと中村陸はジト目で睨みつけた後にさっきの俺と同じように耳元で優しく囁いた。

「今日、覚悟しといてね?」

その後に耳朶を甘噛みを少しだけして離れた。俺は顔が熱いのを理解しながらアイツに小声で 「見られたらどうすんだ!」と怒鳴ったが反省ゼロの中村陸は猫のように細めて机から次の授業の教科書を取り出した。

***

「圭兎君から"キスをして?"」

中村陸の甘い声の命令に俺は鼓動を早くさせながら、ゆっくりアイツの唇にキスをすると中村陸は目を細めながら舌を入れて絡めさせながら深いキスを落とした。

「・・・・・ぷはっ・・・はぁ・・・りぃ・・・・く」

「・・・・・・なぁに・・・・・圭兎?」

最初は恥ずかしかったアイツの名前呼びが嬉しくて俺は微笑むと中村陸は目を見開いて俺の頭を優しく撫でた。

「・・・・・圭兎、笑ってるの?」

「そうだけど?」

「どうしてか、"教えて?"」

最近、コマンドでは無く命令になったのは会話のようにプレイをしたいからみたいで俺自身も襲われた時はコマンドが多かったので有難かった。

「・・・・・陸の名前呼びが嬉しくて・・・・。」

俺が理由をゆっくり伝えると、中村陸は優しくもう一度軽いキスをして俺をベッドに倒した。

「・・・・・理由、可愛い・・・・・圭兎・・・大好き」

その一言だけで俺は嬉しくて、アイツに微笑みながら伝えた。

「俺も、陸が好き。」

多分、俺達の関係は早めにお試しじゃなくなるだろう。
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