哀しい兎に笑ってほしくて

卵丸

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偽りの関係

安易な行動

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圭兎side

中村陸の目の前で粗相をしてから俺は思い出してアイツの顔が見れなかった。なるべく朝早くに起きて制服に着替えて鞄を持って食堂で朝ご飯を食べた後に直ぐに学校に直行する生活を何とか2週間も続けていた。

『中村陸といると絶対に俺が恥ずかしい目に遭うからな。』

俺はまたアイツに会わなくてホッと息を吐いてから教室の椅子に座ると、女子生徒達が黄色い声を上げて騒いでいて鬱陶しかったが内容がほっとけなかった。

「私、見たんだけどさ、陸君の手首にリストバンドを着けてたんだけど、あれって絶対にパートナーいるよね!」

「あーもう、やめて!」

「オシャレの可能性もあるじゃん!」

「え~でもさ、陸君がさり気にリストバンドそれを愛おしそうに見てたのよ!」

「だから、やめてってば!」

「アンタは陸様リアコをぶっ殺す気か!!」

『・・・・・・あの二人に申し訳ないがcollarなんだよな・・・・・偽りだけど』

俺は女子生徒の会話にヒヤヒヤしながら聞いていると、タイミング良く植田君が登校してきて俺は嬉しさに泣きそうになりながら挨拶を交わした。

「植田君、おはよう!」

「あっ・・・おはよう」

その時、植田君の顔色が悪くて目元には隈まで出来て俺は心配になり小さい声を出して聞いた。

「植田君、大丈夫?」

俺の声に植田君は異常に肩を震わせて「ヒィ」と小さく悲鳴をあげたので俺は驚いて戸惑っていると彼は泣きそうな顔をして鞄からスマホを取り出して操作をして俺のスマホが鳴って確認すると目の前にいる植田君からのメッセージだった。

[放課後、2階の準備室3に来て]

***

準備室3は完全に扱われていない部屋で有るとしたら落書きされた机やボロい椅子や何が入ってるか分からないダンボール箱が置いているだけで空き教室みたいな場所なので鍵も閉めていなかった。
放課後になり、俺と呼んだ張本人である植田君が身体をモジモジさせて元気が無さそうに俯いていた。

「・・・・・・・。」

「どうしたの?」

俺はゆっくり近づいて聞いてあげると植田君は珍しく真剣な表情をしながらいきなり顔を上げると直ぐにお辞儀をした。

「僕とプレイをしてください!!」

「・・・・・・・・はぇ?」

予想外な言葉に固まっていると植田君は申し訳なさそうに小さい声で説明しだした。

「・・・・僕、あんまりプレイをした事が無くて、年齢が上がる度にその・・・Domの支配欲が上がるみたいで欲を堪えてると体調を崩してしまって今日もあんまり寝れてないんだ。だから・・・そのプレイをするなら友達の柊君が良くて・・・あっでも、強制じゃないから嫌なら別に・・・。」

「・・・・」

植田君の顔を見ていると本当に疲れていて身体も少し小刻みに震えているので完全に体調不良なのが分かり俺は友達の為に決心して力強く植田君に言った。

「分かったプレイしよう・・・そして、終わったら抑制剤を買った方が良いかもね。」

俺の言葉に植田君は涙を浮かべながら笑顔になって明るい声でお礼を言ってくれた。

「ありがとう。柊君!!」

「・・・でも、大丈夫なの?」

一応、不安になりながら聞くと植田君は自信がなさそうに「Safe wordを決めなきゃね。」と言われて少し考えた後、植田君が苦手な「マラソン大会」に決まった。
正直、今から行われる事は普通に怖いし、一応・・・浮気には・・・ならないか!とは思うが頭の中で中村陸が出てきて少しだけ罪悪感を感じた。

『中村陸とは無理矢理なっただけだから大丈夫・・・!』

植田君は深呼吸してから覚悟を決めたのか凛々しい顔になり両手を広げて俺にコマンドを放った。

「come (おいで)」

「!!」

そのコマンドだけで俺は頭がボーッとなり植田君に逆らえなくなり、ゆっくり数歩歩いて植田君の目の前に来た。
すると植田君はホッと安堵の息を吐いた後、褒めるコマンドを言ってくれた。

「Good(良い子)」

「・・・・良かった」

俺は嬉しくなって笑顔で応えると植田君は顔を真っ赤に染めてそっぽ向いてしまった。その後、どちらも無言になり気まずい空気になってしまうと、取り敢えず俺から何か言うことにした。

「あっあのさ・・・」

「kneel(お座り)」

「あっ・・・・!」

植田君は息を吐くようにコマンド放ったので俺は直ぐにペタンと座って俺は慌てて上を見ると満足そうな顔をした植田君と目が合ってしまった。彼は獲物を狩るような瞳をして爛々と輝かせていたので恐怖で身体が震えてしまった。

「・・・う・・・えだ・・・くん・・・・」

「・・・・・柊君・・・可愛いねぇ・・・・。」

植田君は愛おしそうに俺を見ながらしゃがむと彼の右手が俺の左頬に優しく触れた。それだけで肩を震わせると彼の顔が目の前に来て俺は恐怖で植田君を押し倒してSafe wordを叫んだ。

「ま・・・マラソン大会!!」

俺は怖くなって自分を抱きしめながら震えていると倒れ込んだ植田君が起き上がり彼は青白い顔をして静かに俺を見つめていた。そして彼はか細い声で呟いた。

「・・・・・・・ごっごめんなさい」

「・・・・・・・・・・。」

俺は悪気が無くしてしまった行為だと分かり植田君を安心させる為に口を開いた。

「べっ別に平気・・・」

その時、ドアが開く音がして振り向くと本当にタイミングが悪く、中村陸と澤村誠司が入ってきた。

「誠司、本当にいいって!」

「なんだよ、本当にそっくりなんだって・・・・って圭兎君じゃん!」

澤村誠司が俺に気がつくと中村陸も驚いた顔をすると直ぐに近くいた植田君を怪訝そうに見た。

「2人とも何してんの?」

流石に面倒臭いと思い、逃げようとしたがぺたんこ座りのまま全く動けずにいた。理由はすぐに分かってしまった。

『どうしよう・・・まだコマンドに従っているんだ。』

俺は成る可くアイツらには分からず、植田君には分かるように彼に話しかけた。

「植田君、俺そろそろ帰りたいんだけど・・・」

植田君はオロオロしながらも分かってくれて口を引き攣りながらさりげなく命令をしてくれた。

「そうだね、僕達も"さっさと立ち上がって、ここから出て行こう"」

俺達は慌てて立ち上がり教室から出ようとすると俺だけ中村陸に肩を掴まれ捕まってしまい身体を震えさせるとアイツは耳元で低い声で囁いた。

「"夜、9時に俺のベッドに来い"」

その命令に従うしかなく情けない声で「はい」と返事をしてしまった。

***

植田君は中村陸のせいで遅れた俺を廊下の隅で待ってくれていた。

「植田君ごめん」

「ううん・・・僕の方こそ安易にプレイさせて酷い目に遭わせてごめんなさい」

「・・・植田君は支配欲が大きいから軽いプレイだと満足出来ないかもね。」

「・・・・そうみたい、だから直ぐに抑制剤を買うよ。」

「後は良いパートナーを見つけるとかね。」

「・・・そうだね。」

俺達は無言のまま、寮に戻り俺はベッドにぶっ倒れて今夜の事が嫌すぎて落ち込むしか無かった。

『中村陸、完全にキレてたな・・・俺、どうなるんだろ・・・・。』

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