哀しい兎に笑ってほしくて

卵丸

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最悪な関係

微かな記憶

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圭兎side

「・・・・アイツは何がしたいんだ。」

俺は中村陸が頭を撫でてくれるとは思ってなくて混乱していたが少し時間が経ってから冷静になり、Subスペースになる時はぼんやりとしている事が多いが頭が触れる感触は残っているので改めてアイツがプレイをしている最中は撫でてからかっていると分かり腹が立った。

「・・・・でも、不愉快じゃないんだよな・・・厄介だな。」

俺は深い溜息を吐いた後にもう一度ベッドに潜り込んだ。そして自分の頭を優しく撫でると、ふと昔を思い出した。
まだ、母さんが俺達を差別しなかった時の事・・・。

***

俺達双子はご近所では可愛くて人気者だった。そして母さんも美人な専業主婦で父さんは大きい会社の社長秘書で仲良く暮らしていたが父さんはSubのせいでDomの社長に命令され知っていながらも禁止されている薬物を売ってしまい社長と共に逮捕されてしまった。
そのせいでご近所付き合いも難しくなり、一軒家からマンションに引っ越して父さんから逃げて、お金が少なくなり、母さんは水商売をして朝は寝て夜に働くので見かける日があまり無かった。
そんなある日、小学生の時にダイナミクスの封筒が配られて咲真と一緒に確認するとアイツはDomで俺がSubだった。
それまで俺がテストで70点台を取れば「賢いわね」と頭を撫でて褒めてくれたのにSubだと知った途端、母さんの態度はガラリと変わってしまった。

「・・・・もう少し良い点取れない訳?」

母さんの見下す目は今でも思い出せる。多分、母さんはSubの父さんを思い出してSubはろくでもない奴しか居ないと思ったんだと思う。咲真は俺よりも賢くて母さんにいつも褒められていた。

「流石、咲真は私に似て賢いのね。」

母さんはDomなので咲真を可愛がる事が多くなり、俺が悪い点数を取るとお仕置きをされた。

「何、この点数・・・・・圭兎、こっちに来なさい」

夜なのに珍しく、母さんが仕事が休みで返ってきたテストを見せると79点とまだマシな点数なのに母さんが睨みつけながら俺の腕を無理やり引っ張ったので怖くなり泣いてしまうと強く頬を叩かれてしまった。
母さんの部屋に着くとドアを閉めてパジャマのボタンを外すように命令されて俺は震える手でボタンを外すと母さんは俺の脇腹を強く抓った。

「・・・いっ!!」

俺は泣くとまた叩かれると思って下唇を噛んで涙は流したが声を出さないように必死に耐えた。母さんは能面のような表情で俺のお腹を満足するまで抓ったのでお腹周りは痛々しい赤い痣がいくつも出来た。母さんは誰にもバレない所をよく抓った。
俺は痛さで倒れていると母さんは苦虫を噛み潰したような顔をして無理矢理、俺の腕を引っ張って部屋から追い出した。その時、俺は乱暴に倒されて背中が痛くて泣き声をあげるとイラついた母さんに怒鳴られた。

「うるさいわね!良い点数を取れなかったアンタが悪いのに何泣いてんのよ!!兄なのにピーピー泣いて情けない!!・・・・・・Subなんかと結婚するんじゃなかった・・・・・。」

それ以来、母さんは咲真も酷い点数を取ると一緒のお仕置きをしたがアイツは俺より賢いので俺の方がお仕置きは多くてSubと知ってから咲真は俺を見下ろす事が多くなった。
母さんが居ない間はアイツの命令に従って咲真の分の宿題をやったり家事全般は俺がするがアイツが褒めるわけが無く、俺は褒められたり頭を撫でられたりするのが9歳ぐらいから無くなった。
だからよく夢で見るのが家族でピクニックに出かける時におにぎりを不器用ながら作って母さんが優しく微笑み頭を撫でてくれる夢だった。そして目が覚めて静かに泣いた朝を今でも鮮明に覚えている。

『圭兎、上手に出来たわね。』

あの優しい手つきがまさか中村陸と同じだなんて思わなかった・・・・。

***

「・・・・・・思い出したくも無かった・・・・・・。」

俺は布団の中で涙を流しているとスマホが鳴ったので確認すると中村陸からのRoinだった。

「明日、でかけるよ。」

そのメッセージに俺は頭が真っ白になってスマホを見つめた。

「・・・・・・・はぁ?」
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