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プレゼント

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新幹線が野々原先輩の別荘の近くに到着した。皆が駅を降りて、野々原先輩を先頭に進むと駐車場に漫画やドラマの世界でしか見た事が無い黒いリムジンの車が有り、運転座席のドアが開くと黒いスーツの男が出てきて僕達に頭を深く下げた。

リーダーは汗を流しながら野々原先輩に恐る恐る聞いた。

「野々原さん、もしかして・・・」

「ええ、私の車ですわ!さぁ皆様お乗り下さい。」

野々原先輩の眩しい笑顔に皆は戸惑いながら車に乗った。車の中は十人乗って隣には藤野先輩が座っていた。

「いやぁ~高級リムジンに乗るなんて人生に一度しかないなぁ!」

「確かにそうですね。」

すると藤野先輩は運転している黒いスーツを着た男に軽々しく聞いていた。

「なぁ、お兄さん ユリちゃんの別荘までどれぐらい時間かかるん?」

「野々原 小百合さゆりお嬢様の別荘まで三十分で到着の予定です。」

男の言葉に藤野先輩は安心した表情になった。

「良かった・・・・。」

「先輩、もしかして」

「・・・・俺車酔いするタイプなんよ・・・アキちゃんに見られんで良かったわぁ」

「もしもの為に酔い止め持ってきてるんで、飲みますか?」

僕はリュックサックから酔い止めの薬を出して説明書を読んで藤野先輩に2錠手渡した。

「ありがとうなぁ アキちゃん・・・出来れば口移しで飲ませてくれへん?」

「・・・・ふへぇ!?」

まさかのセクハラ発言に皆が先輩をジト目で睨みつけてた時に僕は真っ赤な顔でアワアワさせて大きな声で叫んでしまった。

「普通に自分で飲んでくださーーーい!!!!」

その声に皆が唖然としていたが後ろから女性の先輩が藤野先輩の頭を小突いた。

「今のはあんたが悪い!!」

「あいたっ!!」

「さっさと飲めば?」

女性の先輩の言葉に渋々頷いて藤野先輩は薬とペットボトルの水を含んでゆっくり飲み込んだ。

「はぁー・・・アキちゃんは遂、揶揄い易くてなぁ、遊んでしまうんよ。ごめんな!」

「後輩を揶揄うじゃないよ!椎名も嫌ならハッキリ言いなよ!」

「・・・・はい」

そして車は野々原先輩の別荘に到着した。



着いたら、まず発声練習をしてリハーサルを完璧に行った。その時僕は未だに八雲先輩にキスをするフリすら出来なかった。あんな綺麗な顔を直視すると顔が真っ赤になって目がぐるぐる回ってテンパってしまうのだ。

「あ・・・あいいいしてりゅううう!」

「ストップ!」

リーダーの声が響いた。リーダーは真剣な顔で僕を叱った。

「椎名君、流石にミスが多過ぎるよ!まだリハーサルだけど、このシーンだけで時間をかけたくないんだよね。」

「・・・・・すみません。」

僕が悪いのに落ち込みそうになって必死泣くのを堪えていると藤野先輩が手を挙げてきた。

「なぁリーダーキスをするシーンやけどキスをした後アキちゃんは''愛してる"って台詞を言って微笑むんやんなぁ。」

「あぁ、そうだけど?」

すると藤野先輩は黒色のウィッグを被り僕に近づくと目の前で囁いた。

「アキちゃん、俺に近づいて、俺がキスの音を出すから愛してるって言ってな!」

「・・・・はぁ・・・はい」

『藤野先輩何するんだろう?』

僕は近づくと、藤野先輩は唇をアヒルの様に尖らせて白目になって「ちゅうー」と唇から音を鳴らした。 僕はいきなりの変顔に笑うのを耐えながら台詞を吐いた。

「愛してる・・・・。」

すると少し戸惑った歓声が上がったが八雲先輩よりかは出来ると思った。
リーダーは苦笑いをしながら言ってきた。

「・・・まぁ、微笑んではいるな・・・じゃあ藤野の後ろの頭を映してキスシーンに挑むか。」

「いやぁ~裏方やのにいきなり出演しまーす!後ろだけやけど!」

皆がドッと笑った後、リハーサルは完璧に進んで、撮影の為に出演する皆は各々僕達でメイクをして、着替えていた。

後は僕がメイクをする予定だったんだけど藤野先輩がメイクをしてくれる事になった。

「すみません、宜しくお願いします。」

「おう、任せとき!別嬪さんに仕上げるでぇ~!!」

メイクをしている時の藤野先輩は別人の様に物静かで、真剣な顔で僕の顔を見つめていた。

『藤野先輩って顔は怖いけど綺麗な顔をしているなぁ。』

「よし!完璧や!後は先に普通の服を着いや!」

「はい、ありがとうございました。」

僕は服を着替えて、最初に王子に両想いの相手にキスをされてショックを受けて、王子に復讐を誓う所まで撮った後、僕はドレスに着替える為に着ようとすると藤野先輩に止められた。

「どうしたんですか?」

僕の問いを無視して藤野先輩は口紅を取り出した。色は 赤色、桜色 、ローズピンクの三種類が先輩の手の中にあった。

「アキちゃんどれがいい?」

僕はメイクをされた顔を見てどれが合うか、頭の中でイメージをして藤野先輩に言った。

「ローズピンクにしてください!」

「了解!」

藤野先輩は口紅の蓋を開け、僕の唇に塗ったがその時の真剣な眼差しにドキドキしてしまった。
次にラベンダー色のアイシャドウをしてくれた後ドレスに着替えてウィッグを被り、その後の舞踏会の撮影を行った。

その後は藤野先輩の変顔で微笑む事が成功して、映画撮影は終了した。

「皆、お疲れ様でした!」

リーダーの言葉に全員意気投合して「お疲れ様でした!」と挨拶した。その後裏方の人達が人数分の缶ジュースを持ってきてくれて皆でワイワイ楽しんだ。

「ねぇリーダー、街並みはインターネットサークルがCGでしてくれるんだよね?」

「あぁ、流石に海外まで行く部費は無いからな。」

僕はぼーっとジュースを飲んでいると柚木さんが僕の事を見ていた。

「柚木さんどうしたの?」

「あのさ、女装した椎名君、マジ可愛くて羨ましいなぁ~って思ってさ!」

「えぇっ!!」

柚木さんの言葉に女性陣が頷いて僕を取り囲んで話してきた。

「確かに椎名の女装姿可愛かったよね。」

「藤野の化粧も良かったかも!」

「椎名君顔綺麗だもんねぇ~!」

「八雲と違う系のイケメンだよね」

色んな言葉に僕は固まってしまってただただ女性陣の会話を聞くしかなかった。




旅館に向かう為、車に乗ろうとすると藤野先輩が僕の腕を掴んできた。

「先輩?」

すると藤野先輩はポケットから口紅を取り出し僕の掌に押し付けた。 すると藤野先輩は柔らかい表情で僕の耳元で囁いた。

「これ、勇気が出るお守りとして持っといて」

「えっでもこの口紅高いでしょう?」

この口紅は高級な化粧品と有名であり、人気ナンバーワンのコスメの所のなので少し戸惑ったが藤野先輩は爽やかな笑顔で言った。

「高いとか関係あらへん。俺はアキちゃんに持っといてほしいねん!」

そんな事を言われて返す訳にもいかず僕はお礼を言った。

「ありがとうございます。大切に使います。」

「おう!大切に使いやぁ!」

すると、リーダーが僕達に呼びかけていたので僕達は急いで車に向かった。
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