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弟を愛してるっておかしいよね!?
番外編 1 兄さんとドライブ
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高校最後の夏休み、俺は自分の部屋で必死に受験勉強をしていた。何としてでも兄さんと同じ大学に行きたいが兄さんが通っている大学の偏差値が意外と高くて今のままでは絶対に合格が不可能だった。
『ぐぬぅ~せめて、数学だけでも完璧にしなければ・・・。』
俺は死にものぐるいで勉強をしているとドアを叩く音がして仕方なく中断してドアを開けると勉強の妨げになるのでダイニングテーブルに置いてた俺のスマホを片手に持った母さんが笑顔で画面を見せてくれた。
「幸ちゃん、恭ちゃんから電話よ。」
兄さんは今年の春に引っ越して今は一人暮らしをしていた。そして俺が大学生になったら兄さんの家に居座る予定なのだ。
『いきなり、なんだろう・・・・・。』
俺は母さんからスマホを貰い、電話に出る事にした。
「もしもし、兄さん」
『久しぶりだな幸久。』
兄さんの爽やかな声にドキドキしたが母さんが居るので我慢して一応冷静に話した。
「久しぶりって会話アプリで話してるじゃん。」
『確かにそうなんだけどさ、声はあんまり聞いてないだろ?』
「確かにそうだね。」
『幸久、受験勉強は順調か?』
その言葉にギクッとしたが兄さんを心配させたくないので俺は敢えて明るい声で言った。
「大丈夫だよ。結構順調なんだよね!」
すると兄さんの安心した声が聞こえた。
『それなら、良かった・・・あのさ、気分転換に明日ドライブに行かないか?』
「ドッドライブ!?」
『そう、ドライブデート。』
兄さんはやらしく囁いたので顔が赤くなったが深呼吸して何とか喋れるようにした。
「嬉しいけど、母さんに話さないと・・・・」
「お母さんに話す内容なの、代わるけど?」
丁度、母さんがいたのでスマホを渡すと母さんの声と兄さんの小さい声が聞こえた。
「そうね、受験勉強だけだと幸ちゃんもしんどいと思うから一日ぐらい大丈夫よ。」
すると母さんは俺にスマホを手渡してきて、俺は兄さんとの会話に戻った。
『母さんから許可は貰ったよ。行くのは〇✕海水浴まで行こうと思うんだけど?』
「良いね、じゃあ兄さんが自宅に来るってことでいいんだよね?」
『そうする予定だよ。じゃあ、明日楽しみにしてるから勉強頑張れよ。』
「うん、ありがとう またね・・・・・恭弥」
名前の部分だけ母さんに聞こえないようにボソッと呟くと兄さんのクスクスと笑う声が聞こえた後、兄さんの爽やかな声で囁いた。
『一緒の大学に行けるの楽しみにしてるよ、幸久。』
その言葉で電話は切れて、俺は心臓のドキドキを抑えるのに必死になっていた。
「明日は一日楽しんでね幸ちゃん。」
母さんの言葉にこくこく頷くしか出来なかった。
『絶対、同じ大学に合格してやるからなー!!』
*
次の日になり、俺は出かける準備をしていると朝の10時位に兄さんの車が八雲家に停まってるのが窓から見えた。
俺はリュックを背負って母さんに挨拶してから、車に向かうと兄さんが車から出てくる所で目が合った。
「おはよう幸久、だいぶ見ない間に大きくなったな。」
「おはよう、兄さん、実は身長が三センチ伸びたんだよね。」
俺は誇らしげにしていると兄さんは微笑んで頭を優しく撫でてくれた。
「そうか、いつか追い越されるな。」
「うん、兄さんなんて直ぐに追い越してやる!」
「それは、出来るかな?」
兄さんが意地悪そうに言ったので、俺は頬を膨らますと玄関のドアからニコニコ笑顔の母さんが出てきて兄さんに抱きついてきた。
「恭ちゃん久しぶり!!」
「えっお母さん!?」
まさか抱きつかれると思って無かったらしく狼狽える兄さんに気付かず母さんは頭をよしよし撫でていた。
「相変わらずそうで良かったわ!今日は幸ちゃんの事を宜しくね!安全運転を忘れずによ!」
「わかったよ、行こう幸久!」
「行ってきます、母さん!」
「行ってらっしゃい二人共!」
俺達は車に乗り兄さんの安全運転で出かけた。
「あのさ、幸久海に行く予定だったんだけど、呟くアプリで調べたらあそこの海水浴は人が多いから1時間半位で着く川に変更して大丈夫かな?」
「兄さんと一緒なら別に構わないよ。」
「そうか、なら良かったよ。」
兄さんは安心したようにカーナビに川の名前を入力して詮索した。 俺はその間、英単語帳を開いて学習をしようとすると兄さんは少し悲しそうな顔で俺に言った。
「幸久、受験勉強も大切だけど今日だけは忘れても良いんじゃないか?」
『兄さん、寂しいんだな・・・仕方ない今日は勉強サボりますか。』
俺は英単語帳をリュックに仕舞うと兄さんに最近の事を聞いてみた。
「兄さん、一人暮らしどう?」
「そうだな、結構ゆっくり出来るし、お風呂の順番が無いから楽だけど・・・料理のレパートリーが少ないから困ってるかな?」
「カレーがスープになるぐらいだもんね。」
「カレーはスープにならなくなったけど、ハンバーグがただの炭になったんだよね。」
「・・・俺、兄さんと一緒に住む時までに料理出来とかないと・・・。」
「頭パンクするなよ?」
「絶対、しないよ!」
恋人と云うよりは兄弟の会話で物足りないが心地は良かったので会話は結構続いた。
1時間半後に行きたかった川に到着して俺達は早速裸足になってサンダルを履いて川に進んだ。サラサラと流れる川に人差し指を突っ込むと冷たくてひっくり返ってしまって兄さんに肩を支えられた。
「わっとと!!」
「あっぶな!幸久楽しみ過ぎて怪我するなよ?」
「う~・・・分かってるよ・・・・そうだ兄さんビニール袋にさジュース入れて冷やそうよ!」
「冷えて美味しくなるだろうな、よし!車から缶ジュース持ってくるよ。」
兄さんが缶ジュースを取りに行こうとすると女性の叫び声と男の子が泣き叫んでいる声が聞こえてきた。振り返ると男の子が奥の深い方で溺れて凄まじい勢いで流されていた。
「あぶっあぁ、ママァたすげでぇぇ!!」
「キャアアアりっくんー!!」
「兄さん、あれって溺れてるし流されてない!?」
「・・・・・・・。」
すると兄さんは走って川の中をズンズン潜って男の子を胸の方に抱っこして川から這い上がってきた。
その子はギャン泣きで暴れて兄さんは慌ててその子を地面に置くと追いかけていたお母さんに気づき走って抱きついていた。
「うわぁぁぁ、ママァー!!」
「りっくん!良かった・・・・ごめんね・・・・・怖かったね・・・・・。」
親子が抱き合って泣いているとゾロゾロと女性達と子供がやって来た。多分、ママ友の人達だと思う。
するとりっくんのお母さんが兄さんに気づいて何回もお辞儀をしていた。
「息子を助けてくれてありがとうございます。」
「いえいえ、息子さんに怪我がなくて良かったです。・・・・クッシュン!!」
兄さんは可愛らしいくしゃみをするとママ友達が顔を赤く染めたが、りっくんのお母さんが慌てて、腰につけてるポーチから紙切れを渡してきた。
「私が見てなかったせいですみません、風邪をひかないように温泉に行かれますか?」
そこに書いてあったのがこの川の近くにある露天風呂の半額チケットだった。因みに一枚で二人まで半額になるらしい。
今の兄さんは川に入ったので全身びしょ濡れだったのでお風呂に入るのが良いと思い二人で露天風呂まで歩いていった。(その時点で兄さんは少し乾いていた。)
時間は午後の13時で誰もいなくて露天風呂は奇跡的に貸切状態だった。俺達は先に身体を洗った。洗っている間兄さんが俺の方をチラチラ見ていた。
「・・・・・・何?」
俺が聞くと兄さんはため息を吐いて、さりげなく俺の尻をピシャリと叩いた。
「きゃう!いきなり何!?」
「・・・・前まで熟成した桃のようなお尻が熟成前になってて寂しいなと思って・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
俺はしょうもない事で寂しそうな顔をしている兄さんに向けて冷たいシャワーを放った。
「あっちょっつめた!!?」
「・・・少し頭を冷やせた?」
「・・・ごめん、幸久のお尻を見てると、ついお仕置きしたことを思い出して・・・・。」
兄さんは穏やかな顔でお仕置きをした事を思い出し、俺はお仕置きで阿鼻叫喚を味わった事を思い出していた。
「あの時は満足したなぁ・・・。」
「・・・・地獄だったな・・・・・。」
俺達は露天風呂に浸かり、ゆっくりしていると兄さんが俺に話しかけてきた。
「幸久はサークルに入る予定はあるのか?」
「ん~入らずにバイトをする予定かな?」
「どうして?」
「だって二人暮しするのにお金が必要じゃん!」
「先の事を考えてるんだね。」
「まあね。」
俺達は極楽を味わい、露天風呂を出て兄さんのお金で俺はフルーツ牛乳で兄さんはコーヒー牛乳を買って、母さんの手作りおにぎりを休憩所で食べた。母さんのおにぎりの具は意外なのが入っていて、中身はミートボールやウインナーやチーちくが入っていた。
「俺のはウインナーが入ってた!」
「僕のはミートボール。」
おにぎりを食べ終わると、露天風呂の近くで縁日がやっていて、少し中を覗いた。
すると小さい頃にしていた「紐引き」があった。
「わぁ~懐かしい!!」
「紐引きって見たことないかも。」
「兄さん、知らないんだ。紐引きって言うのは一本の紐を引くと商品が貰えるんだ・・・うぉぉ最新のゲームカセットが見えた!兄さん一回やってみるよ!」
「おっおい幸久は受験生だからゲームは出来ないだろう?」
「受験が終わったらする予定だよ!」
俺はおじさんに二百円を払い一本の白い紐を引くと戦隊モノの下敷きが当たった。
「・・・まぁ、上手くいかないよなぁ・・・。」
俺がトホホ・・・と落ち込んでいると兄さんが二百円を払い紐を引くとけん玉を当てていた。
「・・・ゲームカセット出なかった・・・ごめん。」
俺より落ち込んでいる兄さんにクスッと笑い兄さんの手を恋人繋ぎで繋いで店の名前を指さした。
「俺、りんご飴食べたいなぁ、行こうお兄ちゃん!」
俺は恥ずかしくなって兄さんの顔が見れなかったけど、微笑んで隣で歩いてくれた。
「お腹を壊すなよ幸久!」
*
帰り道は混んでいて、車をゆっくり走らせた。その間眠そうになったが兄さんが話しかけてきた。
「幸久、今日は気分転換出来たか?」
「うん、出来たよ、ありがとう兄さん。」
すると信号が赤になると兄さんの顔が俺の方に近づいて「ちゅ」っと唇に触れるだけのキスをして俺の左手の薬指に小さい石が飾っている指輪を付けた。
「これって・・・。」
「ターコイズの指輪だよ、お店の人にきいたんだけど石の言葉は「成功」なんだって。」
「いつ買ったの?」
「幸久がトイレに行って待ってる時に買ったんだ。」
俺はターコイズの指輪を翳して微笑んでいると兄さんはとんでもない爆弾発言を放った。
「後は・・・この指は僕が予約してるから・・・・・。」
その言葉を言って兄さんの頬が真っ赤に染って運転していたが俺もその言葉で顔を真っ赤に染めた。
「恥ずかしい事するよね・・・ちゃんと守るよ。」
「ありがとう・・・幸久・・・・・」
「なーに?」
「受験に合格して一緒に大学楽しもうな。」
兄さんの爽やか笑顔につられて俺も微笑んでいた。
「頑張るよ恭弥兄さん!!」
*
「今日はわざわざ、ありがとう兄さん。」
「ああ、幸久の合格発表の日だからな・・・最初に祝いたいし。」
「うぅぅ・・・緊張してきた。」
俺は受験票を片手に看板に飾られている受験番号の紙を丁寧に探した。
「168・・170・・171・・・・・・・兄さん!!」
俺は「171」と書かれてある紙を握りしめて兄さんの方を振り向いて、思いっきり兄さんに抱きついた。俺は周りを気にせず抱きついて最初は驚いていたが、直ぐに爽やかな笑顔で俺の頭を撫でてくれた。
「おめでとう幸久、これからも宜しくね。」
こちらこそ宜しく、大好きな兄さん。
『ぐぬぅ~せめて、数学だけでも完璧にしなければ・・・。』
俺は死にものぐるいで勉強をしているとドアを叩く音がして仕方なく中断してドアを開けると勉強の妨げになるのでダイニングテーブルに置いてた俺のスマホを片手に持った母さんが笑顔で画面を見せてくれた。
「幸ちゃん、恭ちゃんから電話よ。」
兄さんは今年の春に引っ越して今は一人暮らしをしていた。そして俺が大学生になったら兄さんの家に居座る予定なのだ。
『いきなり、なんだろう・・・・・。』
俺は母さんからスマホを貰い、電話に出る事にした。
「もしもし、兄さん」
『久しぶりだな幸久。』
兄さんの爽やかな声にドキドキしたが母さんが居るので我慢して一応冷静に話した。
「久しぶりって会話アプリで話してるじゃん。」
『確かにそうなんだけどさ、声はあんまり聞いてないだろ?』
「確かにそうだね。」
『幸久、受験勉強は順調か?』
その言葉にギクッとしたが兄さんを心配させたくないので俺は敢えて明るい声で言った。
「大丈夫だよ。結構順調なんだよね!」
すると兄さんの安心した声が聞こえた。
『それなら、良かった・・・あのさ、気分転換に明日ドライブに行かないか?』
「ドッドライブ!?」
『そう、ドライブデート。』
兄さんはやらしく囁いたので顔が赤くなったが深呼吸して何とか喋れるようにした。
「嬉しいけど、母さんに話さないと・・・・」
「お母さんに話す内容なの、代わるけど?」
丁度、母さんがいたのでスマホを渡すと母さんの声と兄さんの小さい声が聞こえた。
「そうね、受験勉強だけだと幸ちゃんもしんどいと思うから一日ぐらい大丈夫よ。」
すると母さんは俺にスマホを手渡してきて、俺は兄さんとの会話に戻った。
『母さんから許可は貰ったよ。行くのは〇✕海水浴まで行こうと思うんだけど?』
「良いね、じゃあ兄さんが自宅に来るってことでいいんだよね?」
『そうする予定だよ。じゃあ、明日楽しみにしてるから勉強頑張れよ。』
「うん、ありがとう またね・・・・・恭弥」
名前の部分だけ母さんに聞こえないようにボソッと呟くと兄さんのクスクスと笑う声が聞こえた後、兄さんの爽やかな声で囁いた。
『一緒の大学に行けるの楽しみにしてるよ、幸久。』
その言葉で電話は切れて、俺は心臓のドキドキを抑えるのに必死になっていた。
「明日は一日楽しんでね幸ちゃん。」
母さんの言葉にこくこく頷くしか出来なかった。
『絶対、同じ大学に合格してやるからなー!!』
*
次の日になり、俺は出かける準備をしていると朝の10時位に兄さんの車が八雲家に停まってるのが窓から見えた。
俺はリュックを背負って母さんに挨拶してから、車に向かうと兄さんが車から出てくる所で目が合った。
「おはよう幸久、だいぶ見ない間に大きくなったな。」
「おはよう、兄さん、実は身長が三センチ伸びたんだよね。」
俺は誇らしげにしていると兄さんは微笑んで頭を優しく撫でてくれた。
「そうか、いつか追い越されるな。」
「うん、兄さんなんて直ぐに追い越してやる!」
「それは、出来るかな?」
兄さんが意地悪そうに言ったので、俺は頬を膨らますと玄関のドアからニコニコ笑顔の母さんが出てきて兄さんに抱きついてきた。
「恭ちゃん久しぶり!!」
「えっお母さん!?」
まさか抱きつかれると思って無かったらしく狼狽える兄さんに気付かず母さんは頭をよしよし撫でていた。
「相変わらずそうで良かったわ!今日は幸ちゃんの事を宜しくね!安全運転を忘れずによ!」
「わかったよ、行こう幸久!」
「行ってきます、母さん!」
「行ってらっしゃい二人共!」
俺達は車に乗り兄さんの安全運転で出かけた。
「あのさ、幸久海に行く予定だったんだけど、呟くアプリで調べたらあそこの海水浴は人が多いから1時間半位で着く川に変更して大丈夫かな?」
「兄さんと一緒なら別に構わないよ。」
「そうか、なら良かったよ。」
兄さんは安心したようにカーナビに川の名前を入力して詮索した。 俺はその間、英単語帳を開いて学習をしようとすると兄さんは少し悲しそうな顔で俺に言った。
「幸久、受験勉強も大切だけど今日だけは忘れても良いんじゃないか?」
『兄さん、寂しいんだな・・・仕方ない今日は勉強サボりますか。』
俺は英単語帳をリュックに仕舞うと兄さんに最近の事を聞いてみた。
「兄さん、一人暮らしどう?」
「そうだな、結構ゆっくり出来るし、お風呂の順番が無いから楽だけど・・・料理のレパートリーが少ないから困ってるかな?」
「カレーがスープになるぐらいだもんね。」
「カレーはスープにならなくなったけど、ハンバーグがただの炭になったんだよね。」
「・・・俺、兄さんと一緒に住む時までに料理出来とかないと・・・。」
「頭パンクするなよ?」
「絶対、しないよ!」
恋人と云うよりは兄弟の会話で物足りないが心地は良かったので会話は結構続いた。
1時間半後に行きたかった川に到着して俺達は早速裸足になってサンダルを履いて川に進んだ。サラサラと流れる川に人差し指を突っ込むと冷たくてひっくり返ってしまって兄さんに肩を支えられた。
「わっとと!!」
「あっぶな!幸久楽しみ過ぎて怪我するなよ?」
「う~・・・分かってるよ・・・・そうだ兄さんビニール袋にさジュース入れて冷やそうよ!」
「冷えて美味しくなるだろうな、よし!車から缶ジュース持ってくるよ。」
兄さんが缶ジュースを取りに行こうとすると女性の叫び声と男の子が泣き叫んでいる声が聞こえてきた。振り返ると男の子が奥の深い方で溺れて凄まじい勢いで流されていた。
「あぶっあぁ、ママァたすげでぇぇ!!」
「キャアアアりっくんー!!」
「兄さん、あれって溺れてるし流されてない!?」
「・・・・・・・。」
すると兄さんは走って川の中をズンズン潜って男の子を胸の方に抱っこして川から這い上がってきた。
その子はギャン泣きで暴れて兄さんは慌ててその子を地面に置くと追いかけていたお母さんに気づき走って抱きついていた。
「うわぁぁぁ、ママァー!!」
「りっくん!良かった・・・・ごめんね・・・・・怖かったね・・・・・。」
親子が抱き合って泣いているとゾロゾロと女性達と子供がやって来た。多分、ママ友の人達だと思う。
するとりっくんのお母さんが兄さんに気づいて何回もお辞儀をしていた。
「息子を助けてくれてありがとうございます。」
「いえいえ、息子さんに怪我がなくて良かったです。・・・・クッシュン!!」
兄さんは可愛らしいくしゃみをするとママ友達が顔を赤く染めたが、りっくんのお母さんが慌てて、腰につけてるポーチから紙切れを渡してきた。
「私が見てなかったせいですみません、風邪をひかないように温泉に行かれますか?」
そこに書いてあったのがこの川の近くにある露天風呂の半額チケットだった。因みに一枚で二人まで半額になるらしい。
今の兄さんは川に入ったので全身びしょ濡れだったのでお風呂に入るのが良いと思い二人で露天風呂まで歩いていった。(その時点で兄さんは少し乾いていた。)
時間は午後の13時で誰もいなくて露天風呂は奇跡的に貸切状態だった。俺達は先に身体を洗った。洗っている間兄さんが俺の方をチラチラ見ていた。
「・・・・・・何?」
俺が聞くと兄さんはため息を吐いて、さりげなく俺の尻をピシャリと叩いた。
「きゃう!いきなり何!?」
「・・・・前まで熟成した桃のようなお尻が熟成前になってて寂しいなと思って・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
俺はしょうもない事で寂しそうな顔をしている兄さんに向けて冷たいシャワーを放った。
「あっちょっつめた!!?」
「・・・少し頭を冷やせた?」
「・・・ごめん、幸久のお尻を見てると、ついお仕置きしたことを思い出して・・・・。」
兄さんは穏やかな顔でお仕置きをした事を思い出し、俺はお仕置きで阿鼻叫喚を味わった事を思い出していた。
「あの時は満足したなぁ・・・。」
「・・・・地獄だったな・・・・・。」
俺達は露天風呂に浸かり、ゆっくりしていると兄さんが俺に話しかけてきた。
「幸久はサークルに入る予定はあるのか?」
「ん~入らずにバイトをする予定かな?」
「どうして?」
「だって二人暮しするのにお金が必要じゃん!」
「先の事を考えてるんだね。」
「まあね。」
俺達は極楽を味わい、露天風呂を出て兄さんのお金で俺はフルーツ牛乳で兄さんはコーヒー牛乳を買って、母さんの手作りおにぎりを休憩所で食べた。母さんのおにぎりの具は意外なのが入っていて、中身はミートボールやウインナーやチーちくが入っていた。
「俺のはウインナーが入ってた!」
「僕のはミートボール。」
おにぎりを食べ終わると、露天風呂の近くで縁日がやっていて、少し中を覗いた。
すると小さい頃にしていた「紐引き」があった。
「わぁ~懐かしい!!」
「紐引きって見たことないかも。」
「兄さん、知らないんだ。紐引きって言うのは一本の紐を引くと商品が貰えるんだ・・・うぉぉ最新のゲームカセットが見えた!兄さん一回やってみるよ!」
「おっおい幸久は受験生だからゲームは出来ないだろう?」
「受験が終わったらする予定だよ!」
俺はおじさんに二百円を払い一本の白い紐を引くと戦隊モノの下敷きが当たった。
「・・・まぁ、上手くいかないよなぁ・・・。」
俺がトホホ・・・と落ち込んでいると兄さんが二百円を払い紐を引くとけん玉を当てていた。
「・・・ゲームカセット出なかった・・・ごめん。」
俺より落ち込んでいる兄さんにクスッと笑い兄さんの手を恋人繋ぎで繋いで店の名前を指さした。
「俺、りんご飴食べたいなぁ、行こうお兄ちゃん!」
俺は恥ずかしくなって兄さんの顔が見れなかったけど、微笑んで隣で歩いてくれた。
「お腹を壊すなよ幸久!」
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帰り道は混んでいて、車をゆっくり走らせた。その間眠そうになったが兄さんが話しかけてきた。
「幸久、今日は気分転換出来たか?」
「うん、出来たよ、ありがとう兄さん。」
すると信号が赤になると兄さんの顔が俺の方に近づいて「ちゅ」っと唇に触れるだけのキスをして俺の左手の薬指に小さい石が飾っている指輪を付けた。
「これって・・・。」
「ターコイズの指輪だよ、お店の人にきいたんだけど石の言葉は「成功」なんだって。」
「いつ買ったの?」
「幸久がトイレに行って待ってる時に買ったんだ。」
俺はターコイズの指輪を翳して微笑んでいると兄さんはとんでもない爆弾発言を放った。
「後は・・・この指は僕が予約してるから・・・・・。」
その言葉を言って兄さんの頬が真っ赤に染って運転していたが俺もその言葉で顔を真っ赤に染めた。
「恥ずかしい事するよね・・・ちゃんと守るよ。」
「ありがとう・・・幸久・・・・・」
「なーに?」
「受験に合格して一緒に大学楽しもうな。」
兄さんの爽やか笑顔につられて俺も微笑んでいた。
「頑張るよ恭弥兄さん!!」
*
「今日はわざわざ、ありがとう兄さん。」
「ああ、幸久の合格発表の日だからな・・・最初に祝いたいし。」
「うぅぅ・・・緊張してきた。」
俺は受験票を片手に看板に飾られている受験番号の紙を丁寧に探した。
「168・・170・・171・・・・・・・兄さん!!」
俺は「171」と書かれてある紙を握りしめて兄さんの方を振り向いて、思いっきり兄さんに抱きついた。俺は周りを気にせず抱きついて最初は驚いていたが、直ぐに爽やかな笑顔で俺の頭を撫でてくれた。
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