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番外編〜またお隣さん〜
しおりを挟む昔、翼義姉ちゃんが、
「赤ちゃんってなんでも知ってるかのようにこっちを見てくることがあるの」
って言っていた。
「おしゃべりがはじまったら、胎内記憶を教えてくれる子もいるって言うし、案外、産まれた直後は前世の記憶とかもってるのかもね」
その後、おしゃべりを始めた姪の花ちゃんが、
『花はママのお腹の中に来る前のこと覚えてる?』
と、聞かれて。
『くものうえかみてたらママをみつけて、あいにきたのよー』
と答えて、翼義姉ちゃんを泣かせていた。
そう、で、何が言いたいかと言うと、
『ありました!赤ちゃんに、前世の記憶!』
俺は今日、優しそうな女の人から産まれて来た。
確か少し前に、雲の上から、同時期に妊娠した2人の女の人をみつけて、それぞれのお腹の中に行くことを決めたんだ。
「今度は同級生だな」
って言ったら、
「本当は今度は年上が良かった」
って言われて、
「それじゃ、それまでお空で1人で待たないといけないの寂しい」
って言い返したら、
「すぐなろう同級生になろう、1日待たせるのも駄目だ、同じ日に産まれよう」
って、あっという間に次の生まれ先が決まった。
「来世で記憶をなくしても必ず朔を見つける、会いに行くから待っててくれ」
「うん、約束」
って指切りして、それぞれのお母さんのお腹に入ったんだ。
で、話戻るけど、今日無事にこの世に生を受け、前世の記憶があるのにびっくりしているオレ。
そして…
隣のコットからビシバシ感じる、熱い視線!
いるじゃん、柊隣にいるじゃん!
って、いや、赤ちゃん、まだ自分で動けないじゃん!なんで視線感じるのかな?
痛いって、わかんないけど、視線痛いって!
痛みという不快感を感じて「ほぎゃ~ほぎゃ~」
と泣くと、看護士さんがやってきて、そろそろお腹空いたかな~ってあやしてくれる。
隣のコットからの視線は少し弱くなった。
◇ ◇ ◇
ママからおっぱいをもらっていると、隣から視線を感じる。
同じ日に子どもを産んだ縁で、親たちも仲良くなって、授乳室で一緒におしゃべりをしながら授乳していたりする。
そもそも赤ちゃんの柊が、オレがコットから出されるたびに泣く、自分がコットから出されたら泣くで、授乳もオレと一緒だと機嫌がいいので、柊のママがオレのママに一緒にさせてくれと頼んだみたいだ。オレのママも初めての出産で不安だったのだろう、すぐにそれを了承した。
「本当に樹は千早くんがいると大人しくて助かるわ~」
樹は柊の今の名前で、千早がオレの名前だ。
大人しくって言ってもにらんでますよ、おたくの息子さん。
えっ、何? オレが女の人の胸に吸い付くのが嫌なの?
浮気?
いや、おまえも吸い付いてるじゃん、えっ?俺は嫌そうな顔してるって?大きくなるためにしょうがなく吸ってる?ってしょうがなく吸う赤ちゃんいる?
「樹、毎回おっぱいタイム短いわ~勢いすごくて痛い痛い」
「ゲフぅ」
と大きなゲップをしながら、縦抱きにされた柊がこちらを向いてドヤ顔をする。
えっ、嫌な時間だから、最短ですませてる? 何それ? あと表情筋動かせないのに、どうやって動かした?
相変わらずおっぱいを一生懸命吸ってるオレに、浮気するなって視線を向ける柊。
だから浮気じゃないって、ってか浮気と言えば、オレが前に死んだ時お前もあやしかったじゃん。
授乳が終わり、同じように縦抱きにされて柊と向かいあったオレはそう思い柊を睨む。
あっ、オレも表情筋動かせた。すげぇな。
「あ~う~」
あっ、柊が慌てはじめた、何あのオロオロした顔。
わかってるよ、死んだオレに指輪を送ってオレを追いかけて来る柊が浮気したなんて思ってないよ。
あれ、今赤ちゃんが頷いた? 首の支え悪かっただけだよな?
うん、わかってる、だから柊もオレのこと信じろよ。
えっ、信じてるけど、これは別? 嫉妬? オレが吸うのは柊の☓☓だけにしろ? は? 何赤ちゃんに卑猥なこと言わせようとしてるんだよ?
「本当に樹くんと千早くんは仲良しですね、あ~う~って2人で会話してるみたい」
様子を見に来た看護士さんにそう言われる。
「本当にね~樹の方が30分お兄ちゃんなんだから、仲良しの千早くんに迷惑かけちゃ駄目ですよ~」
柊のママがそれにそう答える。
そう、柊は執念でオレより早く産まれて来た。30分年上だ。
柊のママが「超スピード出産」って言ってた。
本当、柊の執念ってか、オレへの重たさ、
(嬉しいな~)
んっ、柊もそう思ってるって?
うん、ずっと一緒にいような。
◇ ◇ ◇
そうして、退院して新しい生活に慣れる頃には、前世の記憶も薄れていき、2人がまた出会えるのはもうちょっと先のお話。
◇ ◇ ◇
おまけ『樹と千早の胎内記憶』
樹『大好きなやつに会うために空からきた、ちょうどよかったからママのおなかに入った』
千早『ん~大好きなお友だちと手をつないでママを探したんだ~ママ大好き』
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涙が止まりません🥲
とても良いお話を読ませてもらいました。
ありがとうございます。
嬉しい感想ありがとうございました(^^)