【完結済】VRMMORPGのNPCに転生したオレとプレイヤーのあいつの道は交わらない

豆の助

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おわり

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《pass through a gate》がサービスを終了した日。

ゲーム内からすべてのプレイヤーやモンスターが消えて、NPCは自分のベッドで眠りについた。


◇ ◇ ◇


白い部屋で目を覚ました。

(見覚えがある!)

「久しぶりじゃの~」
「あっ、狼のじいちゃん、あのときはありがとう!!」
と、いうかここにいると言うことは?
「オレ、もしかしてまた死にかけてる?」
「まぁ、当たらずとも遠からずじゃな」
「そっか~」
大の字になって床に転がる。

「おぬしがいた世界が時間を止めたからの~」

知ってた。
いつかのアップデートから工房に押しかけるようになったプレイヤーたちが、サービス終了について話していたから。
結局、ゲームの中で生前の知り合いで会ったのは、隼さんと銀鮭さんだけだったな~。
でも、楽しく生活も出来たし、家具作りも上達した。
この技術をこの先いかせないのは辛いけど。

「オレってこの先ずっと寝たままなのかな~?」
「その話の前にちぃと昔話をしようかの」

「むか~しむか~し」
「いや、それよりもっと前、日本がまだ大陸と地続きの頃じゃ」
「青いロボットの映画でみた!」
「神様の頼みで狼の番が群というか大軍を率いて、日本へ渡って来たんじゃ」
「…その話も知ってる?なんでだ?」
「ただ、こちらに渡る前に番の雄が亡くなっての~」
あぁ、そうだった、群を守るために犠牲に…
「狼の番は片方が亡くなると狂うものじゃが、さすが神様の眷属というか、群がこちらに渡り定住するまで、気を確かに持ち立派に神様の願いを叶えた」
うん、寂しかったけど。
「その後も二匹は輪廻を繰り返しておったが、向こうの大陸と日本、別々の場所で生まれおったから出会うことは出来んでの~」
それで会えなかったんだ。
「向こうの雄は何度も渡ろうとしておったけど、一匹では無理じゃったんだろう」
何度も…
「まぁこの辺はこの国の神に聞いたんじゃがな」
「じいちゃんも神様じゃないの?」
「話は続く、いつの頃からかこの国では狼も信仰の対象になってな、それで生まれたのがワシじゃ」
「じゃあじいちゃんって」
「大雑把に言うとお主の子孫じゃな」
「…息子よ」
「…」
「…ふざけてごめんて」
「うむ、まあそんな経緯もあり、最初の番であったお主の魂の願いは毎回死ぬ間際に1つだけ叶えるようにしておってな」
「え~それなら半身に会いたいって絶対昔のオレが頼んでるはず」
「日本の中でしか無理での」
「そっか~ それじゃオレは何頼んだんだろう」
「『来世は雌じゃなく雄がいい』が一番多かったの~」
「まさかの性別!」
「動物じゃからの~ 意図せぬ婚姻も多かっただろう、お主の魂は強いから雌として魅力的じゃ」
「まさかの、ハードな前世」
「半身以外の雄と番いたくないから雄になりたいとな(雄になったから無事だとは言っていない)」
「健気!じゃあオレの前のやつも、そう願った?」
「いや、お主の前の前のが、この先ずっと雄でお願いと言ってたの」
「この先ずっとBL展開確定!美穂ちゃん喜んじゃう!じゃあオレの前のやつは、何願ったの?」
「最後はあれだったが、助けられたこともあったのだろう、優しい人間のところに産まれたいと」
「それで人間に…えっ?じゃあ柊は何で人間に? 日本にいなかったんだろ?」
「おぬしが、ノルウェーから連れて来たんだろう」
(そうだ、オレ産まれたときは、ノルウェーにある父さんの方のばあちゃん家にいたんだ)
「輪廻の輪に入る前に、おぬしが日本に連れて帰ったんで、願いを叶えることが出来たんじゃ」
「愛だな」
「しまりの無い顔をしおって」
「どんな顔だよ」
「それで前に一度会ったとき…」
「死ぬ間際ってことは、オレ死ぬ予定だった?」
「さよう、だからここに呼んだ、けどおぬしは願いごとを言う前に半身が心配で自力で目を覚ました」
「愛だな」
「だからその顔やめい」
「だからどんな顔だよ、あれっ?でも階段から落ちたときはここにこなかったよ」
「あれは予期せぬ出来事じゃったから、急いでての、おぬし『死にたくない』と強く思っておったろう、それは出来なかったが、なんとか魂だけはゲームの世界に送ったのじゃ」
ほれ、頭のヘンテコな器械
「あぁ、ギア?」
「あれがまだ起動しておっての」
確かにギアは突然電源が落ちたら危ないので30分ほどは電源が持つ。
「それが良かったのか悪かったのかはわからんがの~」
「ううん、良かったよ、ありがとう」
狼の神様は優しく微笑む。
「さて、おぬしが今ここにいると言うことは」
「うん、わかってる、もうすぐなんだね」
「じゃあ願いは?」
「来世でも柊に会いたい!」
「ぶれないの~そう思ったから半身には別の願いを考えてもらったぞ」
「えっ…」
「一足先に今生を終えて、おぬしを迎えに来ておる」
「えっ、オレっ?えっ?」
自分の身体をペタペタ触る
「今朔じゃないし」
どうみても、ジョシュアだ。
「その指輪外してみるがよい」
えっ、この指輪外れ…
「外れた…えっ…」
内側の柊と桜が絡み合うオレがデザインした模様。
「いつから…」
「ちゃんとあの半身もお主の群のものたちもわかっておる、みなでお主を見守っておったぞ」
「みんな…」
「よき仲間をもったの~」
うんっうんうん
顔を覆った手の平の隙間からも涙がこぼれる。
「そろそろ時間じゃ」
「ありがとうおじいちゃん」
「来世は末永く2人して生きるのじゃぞ」


意識がフワっとあがってくると、見慣れた、でも懐かしいジョシュアの部屋が目に入って来た。
オレの手を誰かが握っている。


「朔」


変わらない、やさしくオレを呼ぶ声。


「柊?」


「うん」


起き上がりその胸に飛び込む。


「柊!柊!柊!柊!柊!」


言わなくちゃ、オレっ、


「オレっ、オレ、先に死んでごめんっ、柊を置いて、ごめっ、会いたかった、会いたかった、会いたかった!」


「俺こそごめん、朔を一人で寂しく逝かせてしまった」


オレを抱きしめる腕に力が入る。


だから…


「神様に頼んで朔を迎えに来た、今度は一人で逝かせない」


お互いの身体がキラキラと光りはじめる。


「俺が死んだら、《pass through a gate》のデータ保管庫から、ジョシュアのデータを消去してもらうように優弥に頼んである」
「そっか、本当にみんな知ってたんだな」
「あぁ、感謝しかない」


でも、


「今は他のやつのことは考えるな」


優しく唇が触れ合う。


それは、刹那にも永遠にも感じる時間。


と、パチンと光が弾け、2人の姿は抱き合ったまま消えて行き


その場には、2つのリングが重なり合って落ちていた。


VRMMORPGのNPCに転生したオレとプレイヤーのあいつ交わらなかった道がやっと一つになった


                      おしまい



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