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ジョシュア3
しおりを挟むそもそも、このゲームのプレイヤーネームは誰かと同じのは付けられない。
ネリちゃんが話してた赤髪の隼さんのプレイヤーネームは、正確には『隼』一文字である。
ここで、ゲームしてる人は「オッ!?」となる。
何の付属もなくかっこいい名前使ってる人はだいたい初期からゲームをしている人だ。
もし今ゲームを始めて「隼」って名前つけたくても、すでに隼さんがいるから同じ名前は付けられない。んで、じゃあどうすればいいのかってなると、隼はあきらめてまったく別の使われていない名前をつけるか、隼の後ろに数字とか文字付けるか、例えば「隼7」とか「隼MAX」とか。
だから、早くアカウント作った人ほど付属なしで、好きな名前取れたりする。
他のゲームと共通の名前欲しい人なんて、ゲームしなくても先にアカウントだけとったりしてるんだよな。
朔のプレイヤーネーム『桜』も、発売日当日に始めたから取れたラッキーな名前だったんだ。
吉野の千本桜を見に行ったときに、妊娠がわかって、名字が咲良なのに女の子だったら桜とつけようと思ったって話を親に聞いてて、何かの時に使いたいなと思ってたんだ。
ゲームでもリアルでも「サクラ」って呼ばれたらややこしくないしな。
ゲーム辞めたりしても、その名前はその人固定なので、オレがゲームしてなくても『桜』はもう誰も使えない。
ってオレの話は置いといて、その隼さんは、オレがゲーム内学校にいるときからお世話になっていて。
討伐見学の引率してくれたり、講師に来てくれたり。
16歳になってからは、すでにトッププレイヤーだったのにオレたちひよっこのレベル上げに付き合ってくれたり、ギルドの立ち上げの相談したり。
隼さん自体はギルマスじゃなかったけど、ゲームのイロハを教えてくれた、なんて言うかゲーム内の兄ちゃん的な人だった。
さっきネリちゃんが言ってた技も、指定されたジョブを3つマスターした人が使える技で、指定期間内に達成できたのは隼さんを含めて4人だけだった。
そんなトッププレイヤーの隼さんが、
今目の前にいる!!
懐かしくて駆け寄りたいのに、オレは立ち止まり両手をあげて『ヤレヤレ』ってポーズをしながら『親方が急に木の枝1000本必要なんて言うから困ってるんですよ~』
なんて、勝手に喋っている。
と、ピコン♪ と隼さんの方から音がなり、
「よし、クエスト受け付けオッケー」
なんて仲間と話している。
横にいるのは、隼さんが所属しているギルドのギルマスの『銀鮭』さんだ。
銀色の髪の毛をしているキャラで、本当は『銀狼』でアカウント取りたかったのに出遅れて、他に銀から始まるものっ!って焦って銀鮭にしてしまったんだってさ。
あと2人は知らないプレイヤーさんだな~ なんて思いながらクエスト目的地まで歩く。
「それにしても銀鮭さんと隼さん最近よくミニクエスト受けてますよね」
「俺たちは一緒にプレイ出来て嬉しいですけど」
仲間の声に呼ばれた2人が顔を合わせる。
「あ~それな、お前たちは少し先の大型アップデートの話聞いたか?」
「あっ、はい、レベルの上限あがるんですよね」
「そうそう!上限あがるのなんて2年ぶりくらいだろ」
そう言えば、オレがこっちに来る前にもうすぐ大型アップデートって話出てたな。って、
(話に入りたい!)
「んで、毎回、上限アップの時にでる条件があってな」
(あーなるほどあれか?)
「NPCから受けるミニクエストの達成回数がえげつない量いるんだよな~」
「次もその条件かどうかはわからないんだけどね」
「んで、俺たち最近ミニクエストあんまり受けてなかったから慌ててるんだよ」
「そうそう」
そうなんだ~、なんて言いながら仲間が相槌をうっている。口調からしてまだ高校生ぐらいの新人さんかもしれないな。
「この町もあんまり来ることなかったんだけど」
キョロキョロ見回しながら隼さんが続ける。
「最近、やけにこの町のクエスト増えてるんだよな~」
確かにこの町に来たばっかりの時より金縛りになる回数増えてるかもしれない。
「次の大型アップデートでこの町が大きく変わるんじゃないかって噂じゃ言われてるね」
(なんですと!?)
心の中ではびっくりしてるけど、表面上に出ることはない。
「ジョシュアは何か知らないか?」
急に名前を言われて、顔をそちらに向ける。
NPCってクエスト受けたプレイヤーに名前呼ばれると、そちら向くようにプログラミングされてるんだよな~。
前に面白がったプレイヤーに何度も名前呼ばれて首が痛くなったんだよな。
と思いつつオレもゲームはじめた頃にこっち向くの面白くてやったことあるんだよな、あのときのNPCさんごめんなさいっ!
「ってNPCが知ってるわけないか」
この町がアップデート来るならどんなんだろうね~
とか4人はワイワイ言いながら話を続けている。
「話変わるんですけど」
新人さんの1人がそういえばと言う感じで続ける。
「このNPCさんが持ってる鞄って俺たちプレイヤーは持つこと出来ないんですか?」
オレが斜めがけしている鞄を指さしながら質問している。
「通称マジックバックな~これすごいよな、俺も最初に見たとき欲しい!ってなったな」
(そうそう)
「まぁ、でもプレイヤーは持ち物は直接インベントリ行きだからな~」
(そうなんだよな~)
採集イベントとかだと、NPCは鞄にどんどん採集物を入れていって、数がカウントされる。鞄より大きいものも入るし、はじめて見たときはびっくりしたよ。
この鞄、NPCゾーンでは普通の鞄なんだけど、こっちに持ってくるとマジックバックになるんだよな。
「それ、無理に取ろうとするなよ、NPCにちょっかい出すとペナルティーあるぞ」
「そんなことはしませんよ~ でも欲しいな~」
そんなことを言っている間に目的の採集場所についた。
オレはみんなが拾ってくれた木の枝をひたすら鞄に入れる。
1000本ってけっこうしんどい。
途中チラチラと隼さんが鞄を見てたんだけど、新人さんにあんなことを言ってたのに本当は隼さん自身も今でもマジックバックが欲しいのかも知れない。
内心でクフフと笑いながらも、決まったことしか喋らないNPCの仕事をして、お礼を言って彼らと別れた。
NPCを出会った場所に連れて帰って、お礼の言葉を聞いたらクエスト完了だ。
その場所に来ると勝手にオレの口から感謝の言葉が出る。
4人と別れたオレは、
今日も、コンタクトとれなかったな~せっかく隼さんに会えたのに! でもすごい情報を手にいれたぞ!! この町がアップデートか!もしかして、プレイヤーも増えるかな? あいつも来るかな? ってまだゲームしてるかどうかわからないけど…。
そんなことを考えながら工房へと帰って来た。
「ただいま帰りました」
「おぅ、今日は急に頼んでわるかったな!裏の倉庫になおしたら、夕飯まで休んどけ!」
「はーい」
親方の言葉に、枝を片付け、自分の部屋に戻るとすぐにベッドに寝転がる。
っと、
「…ふっ、くっ、うぅ~」
帰るまで耐えていた涙があとからあとから流れてくる。
本当は隼さんの姿を見たときから泣きたかった。
この世界に来てから知り合いに会ったのは初めてで、それだけで感極まって泣けてくる。
そして知り合いに会えても、自分のことを話せないもどかしさが悲しくてさらに泣けてくる。
「グスッヒクッ…」
会えたからこそ、彼らと自分の住む世界が違うんだと現実を突き付けられた気がする。
「ヒッヒクッ」
そのまま泣き疲れて眠ったオレに
「そんなに辛いとは思わなかった、これからは無理言わない、本当すまんな」
「パパ、ジョシュアはヒョロヒョロなんだから、力仕事は頼んじゃダメよ~」
焦った親方に何度も謝まられ、なんとも言えない夕飯風景になったけど、オレは曖昧に笑うことしか出来なかった。
――――――――
??視点
「一足遅かったか!!」
4人グループに連れられていくNPCを見ながらそう叫ぶ。
あの後ろ姿は、隼さんと銀鮭さんに、あそこのギルドに入った新人2人だな。
「最近ホント、クエスト争奪戦だね~ あの隼さんまで来てる」
「銀鮭さんがミニクエストしてるの久々に見たよ」
「ギルマスとかになるとやる仕事増えるからな~ あそこ大所帯だし」
背中を見送りながらそんな会話をする。
「あれっ、あのNPCくん脚が悪いのかな?」
「ホントだ、ひょこひょこ歩いてるね、このゲーム、NPC1人1人のキャラ付けがしっかりしてるよね~」
その言葉にNPCの方に視線を向ける。
「…サクラっ」
ぼそっとそんな呟きが口から漏れた。
外見は違うけど、同じような背格好によく似た歩き方は、あいつを思い出す。
「あっ!城下町で一気に10個クエストでたよ!」
「移動せずに、待っとけばよかった」
急いで門を出した仲間に腕をひかれ、ゲートをくぐる。
門が消える前に振り返りもう一度その背中をみると、あいつみたいにひょこひょこ歩くのに合わせて緑色の髪がフワフワと揺れていた。
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