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閑話〜あの日のお父さん〜
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「朔留守番大丈夫かな?何か連絡ない?」
大学時代の恩師の送別会に参加するために前日から泊まっているホテルに帰って来て、妻にそう聞く。
さっきまで、息子の一も含め、恩師と食事をしていた。
「朔くんにも会いたかったな~ もう何年ぐらい会ってないんだろう?」
スマホの写真を見ながら恩師は孫を見るような顔をする。
「実物はもっとかわいいんだろうね」
「もちろん!」
「天使です!」
僕と一の声が重なる。
「一君がいつも自慢するから、ずっと会ってない気はしないけど」
そう笑う恩師は、ゆっくり出来るようになったら妻とそちらに旅行に行くよと言って帰って行った。
明日はゆっくり話せそうにないので、今日会えて良かった。
その話題に出ていた息子の朔ははじめて一人で留守番をしている。
「大丈夫でしょ?柊斗くんもそろそろ来てくれる時間だろうし」
(それが一番大丈夫じゃない!!)
2人の交際を認めてるのは認めているんだよ、でもそれとこれとは別なんだよ!
ピロン♪ と言う音に気付き、スマホを操作していた妻は、
「ほらっ」
と、その画面を見せる。
【今、咲良家につきました、お邪魔します。】
【朔寝てました、お風呂借りますね】
とのメッセージの後に、丸まって眠る朔の写真が添付されていた。
【ありがとう、柊斗くんも疲れてるだろうから早く寝てね、冷蔵庫に2日分のご飯も作ってあるから食べてね】
よろしくのスタンプとともに妻がそう送るのを横から覗きこんだ。
「大丈夫だって、そもそも恋人同士なんだから、あんまり詮索しないの」
わかってる、わかってるけど、けどさ~
「もう、あなたもシャワー浴びて早く寝なさい!」
えっ、僕たちも2人きりだよ? わかってる?
翌朝、「ちょっとは自分の歳考えなさいよ」とブツブツ呟きながらスマホを操作していた妻は、
「ほらっ」
とまた画面を見せて来た。
【朔、まだ寝てます、今日はゆっくりさせてもらいます】
とのメッセージのあとに、しっかり布団をかぶって眠る朔の写真。
ありがとうとスタンプを返す妻は気づいてるだろうか?
布団からチラりと見える(パジャマが昨晩と違ってる~)
頭をかかえる僕に、妻が冷たい視線を向ける。
「だから、詮索しないの!!」
その日の送別会でいつもよりお酒を飲んで流した涙は、恩師に向けたものだけではなかったと言っておこう。
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「実物はもっとかわいいんだろうね」
「もちろん!」
「天使です!」
僕と一の声が重なる。
「一君がいつも自慢するから、ずっと会ってない気はしないけど」
そう笑う恩師は、ゆっくり出来るようになったら妻とそちらに旅行に行くよと言って帰って行った。
明日はゆっくり話せそうにないので、今日会えて良かった。
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(それが一番大丈夫じゃない!!)
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ピロン♪ と言う音に気付き、スマホを操作していた妻は、
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と、その画面を見せる。
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とのメッセージの後に、丸まって眠る朔の写真が添付されていた。
【ありがとう、柊斗くんも疲れてるだろうから早く寝てね、冷蔵庫に2日分のご飯も作ってあるから食べてね】
よろしくのスタンプとともに妻がそう送るのを横から覗きこんだ。
「大丈夫だって、そもそも恋人同士なんだから、あんまり詮索しないの」
わかってる、わかってるけど、けどさ~
「もう、あなたもシャワー浴びて早く寝なさい!」
えっ、僕たちも2人きりだよ? わかってる?
翌朝、「ちょっとは自分の歳考えなさいよ」とブツブツ呟きながらスマホを操作していた妻は、
「ほらっ」
とまた画面を見せて来た。
【朔、まだ寝てます、今日はゆっくりさせてもらいます】
とのメッセージのあとに、しっかり布団をかぶって眠る朔の写真。
ありがとうとスタンプを返す妻は気づいてるだろうか?
布団からチラりと見える(パジャマが昨晩と違ってる~)
頭をかかえる僕に、妻が冷たい視線を向ける。
「だから、詮索しないの!!」
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