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過去〜智3〜
しおりを挟む「って訳でどうしたらいいと思う?」
「いや、知らねーよ!ってかまだ付き合ってなかったのかよ、そのことにびっくりだよ!!どうみてもカップルだよ!一緒のベッドで寝てて付き合ってないってなんだよ!ついでに柊斗はその時体調悪くないよ、絶好調だよ!」
ジュースを吹き出す真似をしながら、大げさに驚くふりをする。
朔と柊斗が拗らせすぎて、まだ付き合ってないのなんか知ってるよ。
いまだにベッドで一緒に寝てるのは知らなかったけどな、あいつ何してんだよ。
と、朔が吹き出したジュースがかかっちゃったじゃん、的に眼鏡を外して拭く真似をする。
んで、クフフと可愛く笑いだした。
多分、自分たちがカップルに見えてるんだ~とかそんな事が嬉しいんだろうな。
なんて考えてたら、さっき、俺が大声出してこっち注目してた周囲が、眼鏡の下に隠されてた朔の笑顔にザワつき始めた。
「チッ」と舌打ちしたあと、オレは朔の眼鏡をかけ直す。
朔(さすがにもうちゃん付けはしない)は、自分の可愛さに無頓着だ。そもそも、眼鏡を外すと自分の顔もよく見えてないだろうし、他人の視線や自分に向ける表情もわかりにくいんだと思う。
言い方悪いけど、この厚い眼鏡があって良かった。
眼鏡なかったら今頃どんな魔の手が迫ってたかわからない。
朔は事故が原因もあるだろうけど、あのおじさんとおばさんの子どもかと思うほど華奢だ。
前に父ちゃんが言ってたみたいに無理をしすぎたのもあるかも知れない。
幼なじみの中で一番デカかった『朔ちゃん』は今では誰よりも小さくなっていた。
「男の子は高校でもグングンのびる!目指せ兄ちゃん!」
みんな、朔に庇護欲をかきたてられてるけど、兄ちゃんを理想としてる朔に「かわいい」って言えず、悶々としている。
あの頃と反対に朔のふわふわの髪の毛を撫でたくてたまらなくて、行き場のない手をワキワキしているのをよく見る(俺も)
本人はガキ大将(自称)の頃から変わらず「かっこいい」と言われたがってるから、そう言うけど、本当は大声で言いたい!
「かわいい!!」って。
相変わらず、朔至上主義の柊斗なんて「…かわいい」「…かわいい」って最近は心の声が漏れてきている。
朔が理想としてる一兄ちゃんは、おばさんに良く似た切れ長の目をした、日本人らしい美形で、190ちょいの身長を生かし、バスケットボールの雑誌にたまに載るぐらい大学生プレイヤーとして活躍している。
朔がどう成長しても、ああはならないだろうな。
関係ないけど、天使のような朔とヨーロッパの方の王子みたいなおじさん。アジアンビューティーなおばさんと、武士みたいな一兄ちゃん。
咲良家が揃ってるの見たら、二度見間違い無しだ。
まぁでも、朔が「かっこいい」のもまた事実で、小さい頃と変わらず、周りに優しく、頼りがいもあるし、最近はじめたVRゲームの中で色々な知識を蓄えてるらしくて、纏う雰囲気が大人っぽくなってきている。
とはいえ、さっきみたいに笑う姿はあどけなくて、そのアンバランス差が危ないな~なんて言うのが、幼なじみたちみんなの共通認識である。
柊斗もその辺はわかってるみたいで、不本意ながら俺含め幼なじみたちに頭を下げて、近くにいる時は守って欲しいって頼んできた。
頼まれなくてもそのつもりだけどな。本人は守られるの嫌がってるけどさ。
んで、どちゃくそ愛情重たい柊斗と朔はどこからどう見ても両思いなんだけど、これで付き合ってないんだもんな~。
美穂ちゃんは「ジレジレ両片思いは大好物だけど食べ時を過ぎると不味くなる」って言って、最近は遠い目をしている。
まぁ、2人の気持ちもわからなくもないよ、朔は柊斗が義務感から自分といてくれてるのかもって思ってるし。柊斗はいまだに朔に申し訳ないって気持ちが大きいし。
それでも、側にいて離れたくないんだもんな~ どんなに人の目あっても握った手離さないの見てたらわかるじゃん?
「いや、そう言うことじゃなく、まぁいいか、周りから見たら両思いにみえるけどなー。不安ならそのまま、罪悪感?とかでは返事して欲しくないって言えばいいじゃん、柊斗ならちゃんと考えてくれるだろ…って俺なんでこんなアドバイス好きなやつにしてるんだろう、俺可哀想すぎる」
まぁ正確にはその好きは兄弟に対するそれに変わってきてるけど。
でも俺が幸せに出来るならしたかったよ。
お節介アドバイスついでに、もう一人の幼なじみにもお節介やいてやるか、ちょうど週末に練習試合で会うし。
「お前から男を見せろ」って。
朔にはああアドバイスしたけど、自分から告白したら、義務感でオッケーしてくれたって疑念消えないじゃん?
「私は柊斗が焦って告白しようとするような、ライバルを用意すればいいのね!」
美穂ちゃん、目の輝きが戻ってるけど、ややこしくなりそうだから君は何もしなくていいよ。
影で幼なじみたちが暗躍したおかげかどうか知らないが、2人は無事に付き合いはじめた。
朔は事故前にも見たことないような笑顔で報告してくれた。
◇ ◇ ◇
俺、やばいかもしれない。
朔が中学生のときから、プレイしている「パスゲー」
朔みたいな特例以外は16歳からしか出来ないから、一緒に出来るのを楽しみにしていた。
俺は朔より一学年下だけど、4月うまれだから3ヶ月遅れぐらいでそのゲームをはじめたんだけど、プレイ開始前に朔が自分のゲームプレイ動画を見せてくれた、
「おーい!智見えてるか~?」
2メートルくらいあるムキムキキャラが片手上げて、ピョンピョン跳ねながら喋る様子を見て俺は。
(かっわい~)
自分でも信じられない感想を抱いてしまった。
俺にそんな性癖が!?
やばいんじゃないかと一瞬思ったんだけど。
いや、違うな。
手をあげてピョンピョンは事故前に朔がよくしてたんだよなー。
「おーい!バスケするやつこっち集合~」
「智~学校遅刻するぞ~走れ走れ~」
「よっしゃ~夏休みだ~!」
外見は全然違うけど、動きはあの頃の朔のままで。
(…かっわい~)
もう、俺ゲーム一緒にして大丈夫かな?
プレイヤーネームは『煩悩退散』にした。
「あ~あれやばいよね、あの頃に気持ち戻っちゃう」
幼なじみたちも16歳になったやつからどんどんゲームはじめてて、もれなくそんな感想。
朔のアバターが楽しそうに走りまわるのをみんなで見守りながら、各々ゲームを楽しんだ。
普通に楽しいからね、このゲーム!!
朔が作った、ギルドに加入して、ギルマスとはリアルでも会って、リアフレになっている。
朔の希望で、加入申請緩めのこのギルドだけど、俺もギルマスもその辺はシビアと言うか、問題おこしそうなのとかは入れたくないんだよなー。
ギルドメンバーの紹介なら加入させるけど、入ってきたやつが問題起こしたら、紹介したやつも退団するように先に約束してある。
このギルドのメンバーってだけで調子のったり自分がスゴいって思ったりするやつとか、あとさっきみたいに、
「きもっ」
「うちのギルドのイメージ悪くなるから止めて欲しいよね~」
朔の悪口言うやつもね。
ここのギルドルーム使えるのも、その内装にバンバンレア家具おいてあって一目おかれてたり、設備整ってたり、初心者でも装備に困らないのは朔のおかげなの、ちょっと調べたらわかるのに。
さっき、悪口いったやつがSNSにギルドの内装のスクショアップして、
◆【スリーポイント】のギルドすごい!
◆ここのギルドメンバーになりたい!
◆紹介してほしい!
みたいに、そこそこいいね!もらって調子のってるの知ってる。
今日の【スリーポイント】は?
みたいなコーナー何勝手に始めてるんだよ?
朔が「個人情報だけ気を付けて~って伝えといて」って言うから、放っておいたけど、悪口言うなら駄目だな。他からも報告来てるし。
ギルマスの金欠男爵と目配せしてその辺の確認をする。
疎外感感じて、朔のアバターの桜がほっぺたふくらますの見て。
「その外見で頬を可愛く膨らませるな」
ってギルマスが言うけど、本当、まじで、その姿でも可愛く見えるからやめてほしい。
精神的に疲れた俺に追い打ちをかけるように、朔は相談をもちかける。
惚気なら聞かないぞっと言った俺に、真面目な顔して、
「柊とセックスしたいんだけど、どうやって『わ~ワーわ~』」
相談って、そっちかよ~
何が嬉しくて、幼なじみたちのエロ事情聞かないといけないんだ!
「惚気より聞きたくないやつだった!」
さらに話を続ける朔に、俺がブツブツ文句呟いたら、聞こえないって、うさ耳カチューシャかぶりだすし。
だからそのアバターでうさ耳カチューシャは…
かわいいよ! 幼稚園のお遊戯会思い出したよ!
ライフ0になった俺は、今回はもう一人の幼なじみにお節介をやくのはやめようと思った。
キスで止めてる忍耐力すごいけど、朔に押し倒されてアタフタすればいいんだ。
「最近の好みは身長差、体格差カップル!」
って言う美穂ちゃんにも今度は伝えない。
まぁなんだ、うまく行くといいな!
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