【完結済】VRMMORPGのNPCに転生したオレとプレイヤーのあいつの道は交わらない

豆の助

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過去〜智2〜

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ガラス越しに見た朔ちゃんは、いっぱいチューブがついてて、色白の肌がもっと白くなってて。

廊下の椅子に膝抱えて小さくなってる柊斗に、
「お前番犬じゃないのかよ、お前が守られてどうすんだ」
って言いたくなったけど、いつものふてぶてしさが無い姿みてたら何も言えなくて。
結局、俺こいつのことも幼なじみとして大事なんだよな。

「俺は帰ったらバスケの練習もっと頑張る!朔ちゃんが目、覚ました時にもっと上手になってびっくりさせるんだ!柊斗はどうなんだよ!朔ちゃん目、覚ますって信じてないのかよ!」

この前テレビでみた、敵に塩を送るってやつだ!!
柊斗が元気じゃないと、朔ちゃんが悲しむんだよ!


◇ ◇ ◇


俺が2年生になった頃に朔ちゃんは目を覚ました。

朔ちゃんがリハビリ頑張ってるって聞いて、俺も勉強とバスケ頑張った。
朔ちゃんを助けてくれたお医者さんすごい!俺もあんな風になりたい!

秋になる頃、父ちゃんの忘れて行った弁当を届けに行ったら、仕事してる父ちゃんの横に朔ちゃんがいた。
厚い眼鏡かけてて、でっかくてきれいな目が見えなくなってたけど、俺には変わらず天使に見えた。

父ちゃんの働く病院に転院して来たんだって!なんで教えてくれなかったんだよ!家族でも守秘義務?何それ?父ちゃん嫌い! でも父ちゃんがすごい先生だから朔ちゃんこの病院に来たんだってさ!父ちゃんすげー!

んで、時々俺は朔ちゃんに会いに病院行って、そこでリハビリに付きあう柊斗見つけて前みたいに睨みあったり。

最近、朔ちゃんのおばさんと母ちゃんがよく電話で話してるな~と思ってたら、同じ市内に朔ちゃん一家が引っ越して来て、その頃には、頑張りやさんの朔ちゃんは杖を使って歩けるようになっていた。

「あんまり頑張りすぎるのは良くないんだけどな~」
って言う父ちゃんに、なんで頑張るのが良くないのか聞いたら、成長する身体に合わせた適切な力がどうとか、無理すると成長の妨げにとか、頑張るのが駄目なときもあるんだってさ。

「でも、智はもうちょい勉強頑張れ」
俺は頑張らないと駄目らしい。

隣の県だけど、大きいミニバスの試合なんかで、柊斗のチームと一緒になることもあって、そんな時は応援席に朔ちゃんの姿があった。

幼なじみ《朔ちゃんの子分》のみんなもバスケをしてるやつが多かったので、負けたチームのやつから応援席の朔ちゃんの隣を陣取り、それをコートから柊斗がチラチラと見つめ、試合が終わると忠犬のように駆け寄り、番犬のように隣で手を握るのは毎度のことだった。

その頃になると、朔ちゃんに初恋を捧げたやつらも、恋心ってやつより、からかいつつも2人を応援するようになってた。
会うたびに、杖は必要だけどしっかり歩けるようになっていく朔ちゃんが誰のために頑張ってるかわかるし、手を握られるたびに無意識に白い頬がピンクに染まるのを見て心が折れたやつもいる。

まぁ、でも、あんな事故にあった朔ちゃんの幸せをみんな願ってたんだと思う。

んで、その『朔ちゃんの幸せ』こと柊斗は4年生ぐらいからグングン背がのびて、認めたくないけど、顔もかっこいいし、小学生ながら、試合会場の隅で告白されてるのをたまに見かけた。
あいつ、俺たち幼なじみとは普通に接するけど、基本朔ちゃん以外に興味ないから、真顔でぶっきらぼうに断ってたけど。
そんなあいつの態度をよく思わないやつらもいて、あいつのチームメイトの中にも、かっこいい自分たちのエースが、チームメイト自分たちより朔ちゃんを優先するのを忌々しい目で見てたり、聞こえるように悪口言ったり。

幸い、分厚い眼鏡をかけても、ぼんやりとしか見えない朔ちゃんがその表情には気づいてなかったし、悪口が聞こえてきたら、幼なじみの誰かが横について喋りはじめて、聞こえないようにした。

あのあざとかった美穂ちゃんも、格好よくなった柊斗と朔ちゃんが並ぶのが自分得だと言って(意味わからん)自分はバスケしてないのに応援に来ては、周りの目から朔ちゃんを守っていた。
朔ちゃんの隣に座る自分に、コートから柊斗が嫉妬まじりの目で見るのがまたいいらしい(意味わからん)

そんなある日、倒れそうになった朔ちゃんをかばって、柊斗が怪我をする事件が起きた。

あのとき、隣にいた俺は、こちらに歩いてくる朔ちゃんの姿に、びっくりしすぎて固まった柊斗の姿を見ていた。
だから助けに行くのが少し遅れて変な体勢になったから怪我したんだよ。

んで、病院に行った柊斗不在のチームが負けて、いつも負けてた他のチームが勝ち残ったりしてて、親たちも柊斗の様子聞きに電話しにいったりしてて、間が悪く朔ちゃんが一人になったときに、あいつのチームメイトに連れ出された。
その様子を試合中のコートから見た俺は、隣のコートで試合終わって休んでる幼なじみに手と目で知らせて、そいつが走っていったけど
、探し出したときには突き飛ばされて暴言吐かれたあとだったらしい。

「オレが柊斗の邪魔してたなんて、知らなかった」って泣きじゃくる朔ちゃんの姿にみんな何も言えなかった。
父ちゃんいわく、辛いリハビリ中も一度も泣かなかった朔ちゃんがその日はずっと泣いていた。

その事件をあとで知った柊斗は、そのチームをすぐに辞めて他のチームに入った。
チームを辞めた原因が朔ちゃんだって知られたらまた何されるかわからないって周りに言われて、もっと上を目指したいとか、もっともらしいこと言ってた。けど…
あの馬鹿たち《元チームメイト》もなんなら朔ちゃんもわかってないと思うけど、柊斗がバスケ続ける理由なんて朔ちゃんの為以外にない。
バスケが好きだから努力してるわけでも、厳しい練習に耐えてるわけでもない。
大好きな朔ちゃんに会いに行く時間を削ってまで練習してるのは、朔ちゃんの小さい頃の夢をかわりに叶えるためだ。
朔ちゃんがバスケ嫌いになったらすっぱりバスケ自体をやめると思う。

「そっか、智は周りの人の気持ちがよくわかるんだな~」

そう言いながら大きな父ちゃんの手が俺の頭を撫でる。

「身体を治すお医者もすごいけど、智なら心を治すお医者にもなれるかもな~」

心を治すお医者さん?

「朔くんも柊斗くんもまだ小さいのに、あんなに心が固くなっちゃって、何も出来なくて大人として不甲斐ないよ」

父ちゃんが前に言ってた頑張り過ぎると良くないって、身体だけのことじゃないのかもしれない。

「でも智はもっと頑張らないとな」
成績表を見ながら父ちゃんがそう言う。

俺は頑張らないと駄目らしい。
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