【完結済】VRMMORPGのNPCに転生したオレとプレイヤーのあいつの道は交わらない

豆の助

文字の大きさ
上 下
7 / 29

過去〜智1〜

しおりを挟む

俺、長峰 智(ながみね さとし)には『初恋泥棒』と呼ばれていた幼なじみがいた。


「い~や~だ~」

蝉のように庭の木にしがみついているのは7歳の俺だ。

「父ちゃんなんかほっといたらいいだろ~ 引っこしなんかいやだ~ 朔ちゃんとはなれたくな~い!」

もれなく、俺の初恋も、目の前でしょうがないな~って顔で苦笑いしている、「初恋泥棒」こと咲良 朔、さくちゃんだ。

外国の血をひいてるらしくて、薄い茶色のふわふわした髪の毛に、緑がかった色素の薄めな瞳は大きく、まつ毛なんか影出来るぐらいバッサバサ! これまた色素の薄い唇は小さくて、幼稚園で読んでもらった絵本に出てくる天使のモデルじゃないかと思う。

えっ? あの絵本、幼稚園の先生が朔ちゃんをモデルに自作したやつなの? どんだけ年上まで落としてたんだよ、まったく。
あの先生、ビッグサイトってところに戦いによく行ってたんだよな~ 連絡帳に描いてくれるイラストと好きだったな、ってそれはともかく

そんなこんなで、この辺いったいの同じくらいの子どもはみんな一度は朔ちゃんに恋をする。
「パパが初恋」なんてお父さんと手を繋いでいる美穂ちゃんだって、本当の初恋は朔ちゃんだ。
へ~、「パパが初恋」って言っとけば、可愛い服買ってもらえるんだ、それ着て朔ちゃんにせまるって、女の子こえ~。

同年代の子より身体が大きかった朔ちゃんは、自分はガキ大将で周りの子どもは子分だと思ってて「付いてこい!!」って感じでちょっと横暴に接してるつもりなんだけど、中身はお節介やきで頼りがいもあるし、みんな朔ちゃんを慕ってた。
サッカーアニメのヒットで全国的にサッカーブームの中、この辺でだけバスケットボールをする子どもが多かったのは、朔ちゃんのおかげだろう。

そんな、朔ちゃんとお別れなんて、許せるはずない、何かの間違いだ!

隣の県の大きな病院でPTって仕事してる父ちゃんは、病院の近くで単身赴任ってやつだった。今の家はベッドタウンって呼ばれてる所にあって、電車で一本なんだけど、それでもなかなか帰ってこれなくていつも母ちゃんが週末に父ちゃんの家に通ったりしてたんだけど、さらに忙しくなりそうな父ちゃんが「家族と過ごしたい~」ってメンタルやばめになったから、家族で移ることになったんだ。 

しょうがないな~って俺の髪の毛をワシャワシャ撫でて
「車で1時間ぐらいだろ?会いに行ってやるからな~」
って言ってくれたけど、撫でてる反対の手を握っている、1個下の幼なじみがすげー顔でこっち睨んでやがる。
幼稚園児がする顔じゃないだろ!!

「なっ!柊も一緒に行ってやるよな?」
って振り向いた朔ちゃんに、
「うん!」
って笑顔で答えてるけど、その前に舌打ちしただろう? 幼稚園児が!

今年は俺が小学校に入学して、こいつ抜きで朔ちゃんと登下校過ごせる幸せな毎日だったのに(2人っきりにはなれないけど)

こいつは産まれた時から朔ちゃんにお世話されてて、ただでさえ羨ましいのに! 今だって俺の見送りのはずなのに、なんで2人手を繋いでるんだよ!

結局、どんなに木にしがみついても引っ越しは無くならず、俺はなくなく朔ちゃんとの別れを経験した。

新しい学校でも、朔ちゃんと繋がってたくて、サッカーブームの中バスケットボールの練習頑張った。

約束通り朔ちゃんは月に2回ぐらい、泊まりで遊びに来てくれたけど、何そのおじゃま虫! 布団並べて一緒に寝るのに、なんでおまえが真ん中なんだ! 俺は朔ちゃんと寝たいのに!

「だって柊が一番ちっちゃいじゃん!それに犬みたいでギューッてしながら寝たらあったかいんだよ~ 智もする?」

睨むな、心配しなくてもお前なんて抱っこしないよ、犬は犬でも番犬だな!

柊斗と睨みあいながらも、朔ちゃんがくったくなく笑ってる。
日が沈むまで、脚の早い朔ちゃんにどっちが先に追いつくか競争する。そんな日々が宝物になるなんて、その時には思いもしなかった。

朔ちゃんが事故にあって、意識不明だって信じられない連絡が来たのはその冬のことだった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。

にのまえ
BL
 バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。  オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。  獣人?  ウサギ族?   性別がオメガ?  訳のわからない異世界。  いきなり森に落とされ、さまよった。  はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。  この異世界でオレは。  熊クマ食堂のシンギとマヤ。  調合屋のサロンナばあさん。  公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。  運命の番、フォルテに出会えた。  お読みいただきありがとうございます。  タイトル変更いたしまして。  改稿した物語に変更いたしました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

わからないから、教えて ―恋知らずの天才魔術師は秀才教師に執着中

月灯
BL
【本編完結済・番外編更新中】魔術学院の真面目な新米教師・アーサーには秘密がある。かつての同級生、いまは天才魔術師として名を馳せるジルベルトに抱かれていることだ。 ……なぜジルベルトは僕なんかを相手に? 疑問は募るが、ジルベルトに想いを寄せるアーサーは、いまの関係を失いたくないあまり踏み込めずにいた。 しかしこの頃、ジルベルトの様子がどうもおかしいようで……。 気持ちに無自覚な執着攻め×真面目片想い受け イラストはキューさん(@kyu_manase3)に描いていただきました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...