【完結済】VRMMORPGのNPCに転生したオレとプレイヤーのあいつの道は交わらない

豆の助

文字の大きさ
上 下
5 / 29

過去3

しおりを挟む
オレが中学2年生になる前くらいに、VRMMORPG《pass through a gate》が発売された。



その頃のVRMMORPGゲームと言えば、若者の脳への負担やなんやかやで、基本的には16歳にならないとプレイ出来ない形になってたんだけど、このゲームは、新しい取り組みとして、ゲームの本筋には参加出来ないし、時間制限もあるけれど、中学生もプレイ出来るエリアを作った。



対象は、不登校だったり、支援が必要な子どもたち。



大手の塾が提携して勉強を教えてくれたり、将来選ぶ職業の幅が広がるように色々なスクールを開いたり。

ゲームの中で、運動会やキャンプ、冒険者の討伐見学、ホームルームで新しいモンスターをみんなで考えたり。



学校でもらってきたそのチラシを見た両親のすすめで、ゲーム発売と同時にオレはそのゲームの学校にも通いはじめた。



黒手袋のキャラや眼帯してるのが多めの色々なアバターがあふれる教室は異様だったけど、すぐに慣れて充実した時間を過ごした。



そこでパソコンを使ってデザインする勉強をおそわったオレは、自分の進む道を見つけられたし、他の仲間も、ゲーム会社に就職する道を、漫画家への道を、デジタルで音楽を作る道を、等々色々な道をそれぞれ見つけて行った。なにより自分にもこんなに可能性があるんだと自信がついたことが嬉しかった。



そうそう、ゲームで最初のログインキャンペーンには、俺たちも参加出来たので、あの城下町のギルドルームの権利をここに通う中学生7人が見事当選で持っている。そのうちの一人がオレで、ギルド《スリーポイント》のギルドルームの所有者はオレだったりする。



 (あれ、オレが死んだ後どうなったんだろう?)



16歳になりメインストーリーに参加する資格を得ると、ここを卒業して、ゲームを楽しむようになった。卒業祝に、運営から一回こっきりアバターを変更する権利をもらったので、そこで手袋を脱いで、眼帯を外すやつが多かったと思う。変更出来てよかったな!





◇ ◇ ◇





オレがゲームの学校に通いはじめたのが13歳。その頃、柊は11歳で所属ミニバスチームをかえて、全国大会にまで行く実力をつけていた。

オレはオレで、中学校に通いながらゲームの学校に通い、リハビリも続けてて忙しく、柊とたまにしか会えなくなっていた。
まぁたまにでも会えばいつも通り過ごせるんだけどな。



その後、結局地元のバスケ強豪中学校に進学した柊はいつの間にかオレの身長を抜かし、手もめちゃデカくなっていた。中1ながらエースだぜ、すごいよな~

久々に我が家に泊まりに来たときに実際に手を合わせてびっくりしたし、朝起きたら抱きかかえられてて、さらにびっくりしたよ。本当にデカくなった!羨ましくなんか、ちょっとしかないぞ!

オレが守らなきゃと思ってたのに、守られてるみたいじゃん。


「おまえそんなにデカくなったら、セミダブルベッドキツキツじゃん、ダブルベッドに買い替えるかな~」


って言ったら、俯いて何か耐えてたんだけど、そういや昨日から柊ずっと顔赤かったな~、体調悪かったのかな?



そんななんだかんだあまり会えない状況にオレが耐えられなくなって来て、柊の13歳の誕生日にオレは思い切って柊に告白をすることに決めた。


ま、オレが柊のこと好きなのバレバレだし、今さら?感はあるんだけど。柊の方はわかんないじゃん?

オレの前では見えない尻尾ブンブン振ってるの見えるくらいには好かれてるの知ってるけど。それがLOVEなのかLIKEなのか?、オレはもちろんLOVEだし。


でも柊って優しいじゃん?

オレが付き合ってって言ったら、優しいから付き合ってくれそうだし。

事故の罪悪感とか責任感もまだ持ってるの知ってるし、でもそんな気持ちで付き合いたくないじゃん。


「って訳でどうしたらいいと思う?」

「いや、知らねーよ!ってかまだ付き合ってなかったのかよ、そのことにびっくりだよ!!どうみてもカップルだよ!一緒のベッドで寝てて付き合ってないってなんだよ!ついでに柊斗はその時体調悪くないよ、絶好調だよ!」



目の前で、オレと柊の共通のひとつ下の幼なじみの智が飲んでたジュースを吹き出しそうになりながら勢いよくそう答える。



「きたないなー。ジュース飛ばすなよ。それより、オレと柊って付き合ってるように見えるんだ?」



眼鏡を外してハンカチで拭く真似をしながら、顔がニヨニヨしてしまう。そっか~オレの片想いじゃなく付き合ってるように見えるんだ。



嬉しくてクフフと笑った時に、周りがザワザワしてることに気がついた。なんだろう?



智は「チッ」と舌打ちしたあと、オレに眼鏡をかけ直す。



本当は飛んで来てないのに、眼鏡拭く真似なんかして悪かったよ。



「いや、そう言うことじゃなく、まぁいいか、周りから見たら両思いにみえるけどなー。不安ならそのまま、罪悪感?とかでは返事して欲しくないって言えばいいじゃん、柊斗ならちゃんと考えてくれるだろ…って俺なんでこんなアドバイス好きなやつにしてるんだろう、俺可哀想すぎる」



最後の方は、ブツブツ何言ってるかわからないけど、智の言葉は告白への後押しになった。それにしても、話きいただけで、柊斗の体調までわかるなんて智すげーな!!



なんか疲れた顔してる智に身体を乗り出して昔みたいに、頭をクシャクシャと撫でてやる。子分を褒めるのは親分の役目だからな!



智もこの前の柊みたいに俯いて何か耐えてるみたいだけど、さっきの話からすると体調悪いわけじゃないんだよな?



「悪くねーよ!!」



だから、ジュース飛びそうじゃん。また眼鏡を拭く真似をしようとしたけど、今度ははずす前に智に止められた。



だから、ごめんてば!





んで迎えた、柊の誕生日。

オレの部屋に遊びに来た柊にプレゼント渡してドキドキしながら、告白…



する前に柊から「朔が好きだ付き合って欲しい」って告白された!



びっくりだろ? オレたち告白するタイミングまで一緒なんだぜ!



「オレも柊が好きだ、付き合えて嬉しい」



って返事してたら、柊の手のひらが頬に触れて、ゆっくり顔が近付いてきた、こいつこんな顔も出来るんだ、13年の付き合いで初めて見るって考えながら目を閉じる。



触れるだけのキスが終わったあと、柊は涙を流していた。



「相変わらず泣き虫だな~」



そう言うオレの頬を柊が優しく拭う仕草でオレも泣いてたことに気がついた。



どちらからともなく、もう一度顔を近づける。


初雪が舞った中3の冬の出来事











しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...