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4.春色の心

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「好きです! 付き合ってください!!」
「………彼氏がいるので、ごめんなさい」

 予想していたが、告白は失敗に終わった。人生初の告白に右往左往しまくったのに、いざ本番を迎えて思い切った結果が彼氏持ち。いっそのこと、大げさに肩をすくめておけば浅い傷で済んだのかもしれない。でも、今の俺にはすくめる気力がない。何も発さず棒立ちになって相手を見送るので精一杯だったからだ。彼女の姿がすっかり消えたのを確認して、俺は重い足を引きずるように駅へ向かった。

 告白しようと思い立ったのは、高校デビューがしたかったからだ。これまで同性としか話をしなかったし、何より自分の殻を破りたかった。後か不幸か、学校は地元から少し離れたところにあって知らない顔が多い。逆にアウェイだからこそイケると思った。そのタイミングが今だった。

 ところで、俺をフッた彼女。元は同じ電車に乗る間柄でしかなかった。上手く言えないけど―初めて見たとき、もったりしている制服がやたら似合っていた。その制服はうちの学校のものだった。後でググってみたら、もったりしているやつはジャンパースカートというやつらしく、うちのはそこにジャケットを羽織るタイプなのだそうだ。知らんけど。

 話を本題に戻すと、彼女は俺と同学年―今年入学したピカピカの1年生だった。オリエンテーションで学年委員長として壇上で演説していた。キリリとしていて真面目な感じが逆にそそった。
 はっきり言って、めちゃくちゃ好みだった。クラスと名前は分かったし、あとは交流を図るだけ…LHRロングホームルームで各委員を決める際、俺はすかさず学年委員に立候補した。各クラスの委員が集まる週一のミーティングで彼女と一緒になる。俺はその一心でクソめんどくさい仕事を頑張った。

 そろそろ一ヶ月になる。あまりにも抑えきれなかったし、善は急げということもあった。ダチは全員「早すぎだ」って止めたけど、俺の心は変わらなかった。
 一言…一言だけでいいんだ。友達から始めてもらっても構わない。だからそうした。でもダメだった。しかも次の日はGWゴールデンウィーク、休み明けのミーティングが恐ろしい。部活であれば辞めれば済むが、これは委員会であってその選択は許されなかった。

 黒歴史は一気に広まった。しかし、真相を知っているのは誰もいない。
 あれから2年…俺は生徒会長、彼女は副会長として残りの高校生活を謳歌した。
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