『王子』の僕が死んだ後

アールグレイ

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 「殿下には城の敷地内の南にある塔に住んでもらいます。」

 王国に来て王と話した後、トゥロに使えることになった執事の一人、執事長のルイは静かにトゥロに話しかけた。ルイはきっちりと髪をオールバックにして眼鏡をかけているため、賢いイメージと共に生真面目そうという印象を持った。

「殿下だなんて。トゥロと呼んでください。」

トゥロは苦笑しながらルイに言った。ルイは少し考えた後、ではトゥロメシア様と呼ばせて頂きます、と言って深く頭を下げた。やはり、元、と言っても王子は畏れられるらしい。



 それからルイに連れられて、城の中を見て回った。栄えているだけあって、高そうな置物や豪華な部屋が目立った。しかし、人質という立場のため、入って良い所はごくわずかだった。

「次は第一図書室に行きます。」

「第一という事は、他にもあるのですか?」

「はい。しかし、トゥロメシア様の入室は他の図書室は許可されておりません。どうかお許しを。」

「気にしてませんから。大丈夫ですよ。」

第二図書室以降には王国の機密文書があるのだろう。トゥロはそういうことには興味がなかったため、それ以上は聞かなかった。
 そんな事を考えていると、前から泥だらけの少年と少女が走ってきた。その二人を追いかけるようにメイドも走っている。

「だ、誰かぁぁ!捕まえて下さいぃ!」

童顔のメイドが息を切らしながら此方に向かって叫ぶ。すると、ルイがトゥロの前にスッと出てきた。そして勢いよくルイに突っ込んだ少年を捕まえた。しかし少女は捕まえられず、後ろにいたトゥロを巻き込んで倒れた。

「あ、ありがとうございます、ルイさん!後ろの方、大丈夫ですか⁉」

童顔のメイドがルイに慌てて礼を言い、トゥロを心配しながら近寄ってきた。ルイは表情を変えずに問題ない、と返したが、トゥロはあまりにいきなりの事ですぐに返事が出来なかった。

 ルイに説明されてようやく納得したのだが、帝国では子どもは元気に遊ぶことが仕事、と言われているらしい。そのためさっきの少年と少女、リアス第二王子とララル第一王女は泥で遊んでいたらしい。その後体を拭くのを嫌がり、逃げ回っていた所にトゥロたちは出くわしたのだ。


 捕まった王子と王女はふて腐れながらもメイドに手を引かれ、きた道を戻っていった。
 トゥロはその場面を微笑ましく思いながら見ていたが、やがて身体中から力が抜けたように床に座り込んだ。

 ぐらぐらと視界が揺れ、耳なりがする。肌寒く感じるのに、顔と頭は火照っている。酷い頭痛を我慢しながら耐えていたが、すぐに意識が途切れた。
 ルイがトゥロの名前を呼んでいるのが聞こえたが、そんな事はどうでも良かった。
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