勇者が俺の所属ギルドから出ていってくれないんだが

アールグレイ

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帝都ギルド編

宿での話し合い1 sideヨウスケ

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「メイ、アルさんにちゃんと言ってきたよ。」


そう言いながら鷹の宿の一室である俺達の部屋に入ると、みんなが自由に寛いでいた。


カレンは精神を統一させて魔力を練る訓練をしていて、サナは寝転びながらお菓子を食べていて、メイは知り合いから集めた情報を吟味していて、ジークはひたすら腕立てをしていた。


·······ジークって、俺が宿を出る前から腕立てしてなかったっけ······


そう思いながら、ちっとも反応してくれないメイにまた声をかけた。


「ねえ、メイ、ちゃんとメイが言ってた言葉を一言一句間違えずに伝えてきたんだけど。」


「あら、そう。ありがと。アルさんはなんて言ってた?」


「来るってさ。」


「アルさん、この宿が何処にあるのか知ってるの?何号室か、ちゃんと言った?」


「·······あ」


言ってなかった。


情報が書かれた紙を睨みながら何かを書いていたメイの手が止まり、眦がどんどんつり上がっていく。


俺は慌てて言い訳を捻り出す。


「で、ででででも、アルさんならきっとわかるって!そっ、それに、10時頃になったら俺が下に行って迎えに行くよ!」


「言い訳無用!!」


そう言って俺の鳩尾に鋭い突きを入れたメイは、俺が悶絶したのを無視してみんなに声をかけていく。


「ちょっとみんな集まって!アルさんが来るまでにしばらくの間の行動予定と情報を伝えておくわ。」


そう言ってメイが取り出したのは地図だった。


適度に汗を拭ったジークが不思議そうにそれを覗き込む。


「なんで地図なんだ?流石に地形くらいはわかるぞ。」


「あんたはね。でも、特にヨウスケはちっとも理解してないみたいだから。改めて1から説明するのよ。」


そう言って、ジロリとヨウスケを睨み、メイは北にある国から説明していく。


最北端にあり広大な土地を支配する極寒の国、魔族大国、通称魔国。
支配地があまりにも広いため、最北端にありながら国の半分弱が温暖な地域。
魔王が治めており、貿易も殆ど行っていないため、謎に包まれた国。
魔国の民は魔人と呼ばれ、その多くが魔力が多い、身体能力が高い等の特徴を持つ。


魔国の南東に位置するナハカリ共和国。
特定の相手としか貿易をしていない、内向的で保守的な国。
ナハカリ人は親しみやすい人が多いが、政治にはそれが反映されておらず、国としては付き合いにくいと称される。
周囲の国とあまり仲が良くないため、今後の動きを警戒されている。


魔国の南西に位置し、エルフとハイエルフの国とされるイ・ジーナ樹海。
どこまでが国なのかわからないが、エルフ達は樹海の奥から殆ど出てこない。
エルフよりハイエルフの方が長命で魔法に長けているが、人間から見ればエルフもハイエルフも大差なく長寿で魔力が多い。
魔力の種類が他種族と少し違うらしいが、魔力量は魔人に匹敵し、中には魔人を超える量を持つエルフもいるらしい。
自然と調和して生きていて、精霊族とも繋がりが深い。


そこまで聞いて、ジークが不満そうに口を尖らせた。


「それ、常識だろ?わざわざ言わなくても、こいつらだって周りの反応とかでわかってきてるだろ。」


「そうね。カレンとサナわね。」


メイがそう言うと、皆が一斉にヨウスケを見る。


カレンが頭を抱え、サナがそっと目をそらした。


「あんたね·····」


「ヨウスケがバカで、恥ずかしい·····」


あ、俺の為に説明してくれてたの?


メイは呆れたのようにため息をついたが、すぐに持ち直した。


「まだ説明終わってないわよ。宗教的に対立していて、相手国で話題にしたらすごい目で見られる所もあるんだから、しっかり聞きなさい!」

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