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帝都ギルド編
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もうすぐ定時、というとき、2級職員のドルイドさんが珍しく不安そうな顔をして話しかけてきた。
ドルイドさんは俺と同じ時期にギルド職員になったんだけど、すぐに昇進していった有望株だ。
それなのに俺に態度を変えずに接してくれるし、他の人にも親切らしく、女性職員にすごく人気がある。
「アルさん、勇者に呼び出されたって本当ですか⁉何か不味いこと言ったんじゃ·····!」
「そんなんじゃないよ。でも、そんなこと誰に聞いたの?」
「ミレーナさんが見たって······本当に大丈夫ですか?」
ミレーナさんは、俺より1つ年上の気の強い女性だ。
俺は彼女と話したことは殆どないし、あまりにも気が強いから、どちらかというと近づきたくない。
ただ、冒険者には好かれていて、受付で楽しそうに話しているのはよく見かける。
「うん。ヨウスケくんとは、個人的に仲良くなっただけだから。」
俺がそう言うと、ドルイドさんは安心したように笑い、それから思い出したようにハッとして俺に言った。
「でも、夜道には気をつけて下さいね!特に鷹の宿の周りは夜は真っ暗になりますから。最近、ギルド職員を狙ったひったくり事件があるらしいですし。」
「ひったくり?何それ、怖いね。」
「そうですよね!噂では、ギルド職員に恨みがある冒険者の仕業じゃないかって······あと、ギルド長には勇者と会うこと言わない方が良いですよ。自分に紹介しろって言いそうです。あの人、がめついですから。」
「そうなんだ·······教えてくれてありがとう。」
「いえ!じゃあ、気をつけて行ってくださいね!」
そうして、笑顔で去っていったドルイドさんを見送った。
それにしても、ひったくり事件、ね。
ひょっとして、先週あるギルド職員が殴られたと言っていたのはそれが原因だったんだろうか。
その後しばらく考えたけど、結局その謎は解けなかった。
午後10時5分前。
俺は約束の場所に着いていた。
流石にギルドの制服で来るわけにもいかないから、私服の中から適当に目立たない服を選び、風よけの薄い外套を着てフードを被っている。
······宿に着いたのは良いけど、そういえば勇者くんの部屋を知らなかったな。どうしよう。
女将さんにでも部屋を教えてもらおうと思ったけど、どうやら勇者くんを一目見ようとやってくる人達が多いらしく、カウンターの横に『勇者の部屋は教えません!』の張り紙が。
「······ほんとにどうしようかな····」
少しの間考えて、結局俺はこっそりと部屋を探すことにした。
2階に上った時、奥の部屋から聞き慣れた声が漏れていることに気づいた。
良かった、意外とすぐに見つかった。
そう思いながら扉をノックし、ドアを開けてもらった。
······なんか今中からすごい音が聞こえたけど、大丈夫かな。
ドルイドさんは俺と同じ時期にギルド職員になったんだけど、すぐに昇進していった有望株だ。
それなのに俺に態度を変えずに接してくれるし、他の人にも親切らしく、女性職員にすごく人気がある。
「アルさん、勇者に呼び出されたって本当ですか⁉何か不味いこと言ったんじゃ·····!」
「そんなんじゃないよ。でも、そんなこと誰に聞いたの?」
「ミレーナさんが見たって······本当に大丈夫ですか?」
ミレーナさんは、俺より1つ年上の気の強い女性だ。
俺は彼女と話したことは殆どないし、あまりにも気が強いから、どちらかというと近づきたくない。
ただ、冒険者には好かれていて、受付で楽しそうに話しているのはよく見かける。
「うん。ヨウスケくんとは、個人的に仲良くなっただけだから。」
俺がそう言うと、ドルイドさんは安心したように笑い、それから思い出したようにハッとして俺に言った。
「でも、夜道には気をつけて下さいね!特に鷹の宿の周りは夜は真っ暗になりますから。最近、ギルド職員を狙ったひったくり事件があるらしいですし。」
「ひったくり?何それ、怖いね。」
「そうですよね!噂では、ギルド職員に恨みがある冒険者の仕業じゃないかって······あと、ギルド長には勇者と会うこと言わない方が良いですよ。自分に紹介しろって言いそうです。あの人、がめついですから。」
「そうなんだ·······教えてくれてありがとう。」
「いえ!じゃあ、気をつけて行ってくださいね!」
そうして、笑顔で去っていったドルイドさんを見送った。
それにしても、ひったくり事件、ね。
ひょっとして、先週あるギルド職員が殴られたと言っていたのはそれが原因だったんだろうか。
その後しばらく考えたけど、結局その謎は解けなかった。
午後10時5分前。
俺は約束の場所に着いていた。
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······宿に着いたのは良いけど、そういえば勇者くんの部屋を知らなかったな。どうしよう。
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「······ほんとにどうしようかな····」
少しの間考えて、結局俺はこっそりと部屋を探すことにした。
2階に上った時、奥の部屋から聞き慣れた声が漏れていることに気づいた。
良かった、意外とすぐに見つかった。
そう思いながら扉をノックし、ドアを開けてもらった。
······なんか今中からすごい音が聞こえたけど、大丈夫かな。
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