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序章
アルの話
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どうも皆さんこんにちは。
キニルフィスカ帝国帝都支部の3級職員、アルです。
俺の仕事は朝の書類整理から始まります。基本、書類の整理は5級の仕事なんですが、朝は人手が足りないので、暇な人がすることになっているんです。
ちなみにギルド職員は5級から1級に分けられ、数字が小さくなるほど有能とされます。まあ3級から2級には急に昇格しにくくなるそうですが。
だからまあ俺は·······普通?ですかね。3級の中でも下位ですけど。
俺はわりと長く勤めていて、そういう人は多少無能でもお情けで級を上げてくれるところもあるらしいんですが。
此処は実力主義の帝国のど真ん中なわけですし、ちゃんと有能じゃないと上げてくれないでしょうね。
でも結構天職です。
3級でもしっかり給料貰えますし、朝は忙しいですけど、その他は普通ですし。
女性の職員はわりとシビアで、俺がのんびりしすぎだとか髪が顔にかかってて鬱陶しいとか言われることもありますけど、事実なのでしょうがないです。
俺、癖っ毛なんですよ。
おまけに黒いから余計ごちゃっとして見えるのかもしれません。
まあそんなわけで、彼女達の言葉が時々クリティカルヒットすること以外は本当に最高の仕事場なんです。
········だからね勇者君。俺は君達と旅に出る気は全くないんだよ。
「何でですか!」
「うーん、君、俺の話聞いてないねえ。」
夢も希望もわんさと持っている勇者君は、些細なことにも目を輝かせていて微笑ましい。
そして女性職員がアタックしようかとあんなに言っていたのに、彼は彼女以外からも全く声をかけられていない。
それは彼が彼女達のお眼鏡に叶わなかったのではなく、彼と常に一緒にいる、所謂「仲間」がいるからだろう。
厳つい大男に生真面目そうな少女、鋭い目付きの獣人の女性、ふわふわとした雰囲気の少女がいて、何ともアンバランスだ。
そしてなぜか大男以外は相当な美形。
このパーティを外でたまたま見つけてしまえば、見たときの衝撃は推して図るべしだろう。
多分、何となく声がするなと思って見ようとしたら振り向きざまに殴られた、くらいの衝撃だと思う。
俺が外で彼らを見かけたときがそんな感じだったからね。
そして、そんなパーティに俺は何故か勧誘を受けている。
言っておくけど、俺は何もしていない。
彼らが突然ギルドを訪れてきて、周りの驚き具合からああ勇者ってあれかと思い、通常業務に戻ろうとしたら急に腕を掴まれて、今日みたいに仲間になれと言われたんだ。
周りが驚愕してたし、勿論俺も驚いたし、なんなら獣人の女性と大男もびっくりしてた。
まあ、当然だよね。
俺も今でこそ慣れたけど、その時は本当に、心の底から驚いたんだ。
勇者に目を付けられるような生活を送ってないか思わず人生を振り返ったくらい。
でもその時に女性職員が言ってたことを思い出したんだ。
勇者は良さそうな人、つまり、強そうな人に声をかけるってことを。
それで納得した。
ああ、さすが勇者。『眼が良い』んだなって。
キニルフィスカ帝国帝都支部の3級職員、アルです。
俺の仕事は朝の書類整理から始まります。基本、書類の整理は5級の仕事なんですが、朝は人手が足りないので、暇な人がすることになっているんです。
ちなみにギルド職員は5級から1級に分けられ、数字が小さくなるほど有能とされます。まあ3級から2級には急に昇格しにくくなるそうですが。
だからまあ俺は·······普通?ですかね。3級の中でも下位ですけど。
俺はわりと長く勤めていて、そういう人は多少無能でもお情けで級を上げてくれるところもあるらしいんですが。
此処は実力主義の帝国のど真ん中なわけですし、ちゃんと有能じゃないと上げてくれないでしょうね。
でも結構天職です。
3級でもしっかり給料貰えますし、朝は忙しいですけど、その他は普通ですし。
女性の職員はわりとシビアで、俺がのんびりしすぎだとか髪が顔にかかってて鬱陶しいとか言われることもありますけど、事実なのでしょうがないです。
俺、癖っ毛なんですよ。
おまけに黒いから余計ごちゃっとして見えるのかもしれません。
まあそんなわけで、彼女達の言葉が時々クリティカルヒットすること以外は本当に最高の仕事場なんです。
········だからね勇者君。俺は君達と旅に出る気は全くないんだよ。
「何でですか!」
「うーん、君、俺の話聞いてないねえ。」
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そして女性職員がアタックしようかとあんなに言っていたのに、彼は彼女以外からも全く声をかけられていない。
それは彼が彼女達のお眼鏡に叶わなかったのではなく、彼と常に一緒にいる、所謂「仲間」がいるからだろう。
厳つい大男に生真面目そうな少女、鋭い目付きの獣人の女性、ふわふわとした雰囲気の少女がいて、何ともアンバランスだ。
そしてなぜか大男以外は相当な美形。
このパーティを外でたまたま見つけてしまえば、見たときの衝撃は推して図るべしだろう。
多分、何となく声がするなと思って見ようとしたら振り向きざまに殴られた、くらいの衝撃だと思う。
俺が外で彼らを見かけたときがそんな感じだったからね。
そして、そんなパーティに俺は何故か勧誘を受けている。
言っておくけど、俺は何もしていない。
彼らが突然ギルドを訪れてきて、周りの驚き具合からああ勇者ってあれかと思い、通常業務に戻ろうとしたら急に腕を掴まれて、今日みたいに仲間になれと言われたんだ。
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まあ、当然だよね。
俺も今でこそ慣れたけど、その時は本当に、心の底から驚いたんだ。
勇者に目を付けられるような生活を送ってないか思わず人生を振り返ったくらい。
でもその時に女性職員が言ってたことを思い出したんだ。
勇者は良さそうな人、つまり、強そうな人に声をかけるってことを。
それで納得した。
ああ、さすが勇者。『眼が良い』んだなって。
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