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20、王宮へ
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「お嬢様、いかが致しますか?」
王妃様の出迎えの馬車を窓から見ながら、私は迷っていた。
(どうしよう、アドニスには屋敷を出ないようにって言われてるし)
でも、王妃様のお招きを断るなんて出来ないよね。
私が断ったりしたら、アドニスにだって迷惑をかけるかもしれない。
「ロートン、使いの方はマリエティーア様からのお招きだって分かる確かなものを持ってましたか?」
本当に王妃様からのお招きなのか、しっかり確認しておかないと。
せっかくアドニスが、私に注意するように教えてくれたんだから。
ロートンさんは私に一通の手紙を私に差し出した。
「間違い御座いません、お嬢様。馬車の紋章もこの招待状の印もしっかりと確認致しました。護衛の騎士も王宮の者達です」
ロートンさんは、ペーパーナイフで王妃様からの手紙を開封してくれる。
そこには急いで王宮に来るようにと書かれている。
「分かりました。すぐに準備します。メルファ手伝って頂戴」
「はい、シャルロッテ様。王妃陛下にお会いするのでしたら、こちらのドレスがいいかと存じます」
ロートンさんが王妃様の使者に、少し時間を頂くように伝えるため部屋を出る。
私はメルファと一緒に、少しフォーマルなドレスに着替える。
さっきの可愛いドレスが好きなんだけど、やっぱり王妃様の前に出るときはそれなりの恰好をしていかないと。
メルファは私にテキパキとドレスを着させると、自分自身も着替えを始める
「私がシャルロッテ様に同行させて頂きます。今日はお嬢様お一人ですから」
そっか、公爵令嬢なんだから一人でって訳にもいかないよね。
昨日はお父様が一緒だったから気にしなかったけど。
話を聞くと、メルファは私付きの特別なメイドで侍女の役割も兼ねてるみたい。
護衛術もある程度身に着けてるんですよって、にっこりと笑う。
よくそんな子を鞭で打ったもんだよ。
清楚な侍女用の服装がメルファに良く似合って可愛い。
着替えも終わった頃、部屋の扉がノックされる。
「エリンです、シャルロッテ様、今宜しいでしょうか」
「ええ、エリン入って」
私がそう言うと、部屋の扉が開いてレアン君が心配そうにのぞき込んでいる。
エリンのメイド服のエプロンをつかんでいる手が可愛い。
そうだよね、今日は朝からバタバタしてるから。
でも、心配してくれるのってお姉ちゃんが気になるからだよね。
私は嬉しくなって、王宮用のドレスを着てレアン君のところに歩み寄る。
「大丈夫よレアン。心配しなくても、お姉様すぐ帰ってくるわ」
私がそう言って髪を撫でると、レアン君は少し染めて頷いた。
「……だと思います」
「ん?」
レアン君の顔を見て私が首を傾げる。
どうしたんだろう、今何か言ったよねレアン君。
私に聞こえなかったのを知ると、レアン君はパタパタと私の部屋のベッドに駆けて行って白いウサギを抱き上げる。
そしてそれを大事そうに抱えて、私のところにトコトコと戻ってくる。
ウサギを一所懸命抱えて、私を見上げると言った。
「お姉様が帰ってくるまで、この子は預かっておきます。心配しないでください」
「うん、ありがとうレアン」
エリンも側についててくれるし、レアン君に預けるのが安心だよね。
「それから……お姉様、そのドレスとても素敵だと思います!」
何それ……素敵なのは君の方だよ!
少しはにかんだ笑顔で私にそう言った弟を、私はギュッと抱きしめた。
レアン君は一瞬、ビクッとしたけど逃げたりはしない。
ああ、でも心配だよ。
今はまだいいけど、もう少し大人になってからが心配。
こんな天使みたいな顔で色んな女の子にもあんなことを言ったらどうしよう。
ものすごいプレーボーイになったりして。
そんな小姑じみたことを考えながら、私はレアン君と一緒に玄関に向かう。
お母様も玄関に出てきていた。
「行ってまいります、お母様」
「ええ、王妃陛下に失礼がないようにねシャルロッテ。メルファ頼みますよ」
メルファはお母様に深々とお辞儀をする。
「はい、奥様」
レアン君と手をつないで私を見送る光景は、いかにも貴婦人といった佇まいで素敵だよ。
レアン君は絶対、お母様似だよね。
あの狸の要素は全くない気がする。
私とメルファが乗り込むと、王妃様が用意してくれた豪華な馬車がゆっくりと走り出す。
馬車の周りは、いかにも強そうな騎士が守ってくれてるから安心できそう。
アドニスとの約束を破ったことになるのが申し訳ないけど、これは仕方ないよね。
次に会った時にきちんと話して謝らないと。
私はそんなことを考えながら、メルファと一緒に馬車に揺られていた。
王妃様の出迎えの馬車を窓から見ながら、私は迷っていた。
(どうしよう、アドニスには屋敷を出ないようにって言われてるし)
でも、王妃様のお招きを断るなんて出来ないよね。
私が断ったりしたら、アドニスにだって迷惑をかけるかもしれない。
「ロートン、使いの方はマリエティーア様からのお招きだって分かる確かなものを持ってましたか?」
本当に王妃様からのお招きなのか、しっかり確認しておかないと。
せっかくアドニスが、私に注意するように教えてくれたんだから。
ロートンさんは私に一通の手紙を私に差し出した。
「間違い御座いません、お嬢様。馬車の紋章もこの招待状の印もしっかりと確認致しました。護衛の騎士も王宮の者達です」
ロートンさんは、ペーパーナイフで王妃様からの手紙を開封してくれる。
そこには急いで王宮に来るようにと書かれている。
「分かりました。すぐに準備します。メルファ手伝って頂戴」
「はい、シャルロッテ様。王妃陛下にお会いするのでしたら、こちらのドレスがいいかと存じます」
ロートンさんが王妃様の使者に、少し時間を頂くように伝えるため部屋を出る。
私はメルファと一緒に、少しフォーマルなドレスに着替える。
さっきの可愛いドレスが好きなんだけど、やっぱり王妃様の前に出るときはそれなりの恰好をしていかないと。
メルファは私にテキパキとドレスを着させると、自分自身も着替えを始める
「私がシャルロッテ様に同行させて頂きます。今日はお嬢様お一人ですから」
そっか、公爵令嬢なんだから一人でって訳にもいかないよね。
昨日はお父様が一緒だったから気にしなかったけど。
話を聞くと、メルファは私付きの特別なメイドで侍女の役割も兼ねてるみたい。
護衛術もある程度身に着けてるんですよって、にっこりと笑う。
よくそんな子を鞭で打ったもんだよ。
清楚な侍女用の服装がメルファに良く似合って可愛い。
着替えも終わった頃、部屋の扉がノックされる。
「エリンです、シャルロッテ様、今宜しいでしょうか」
「ええ、エリン入って」
私がそう言うと、部屋の扉が開いてレアン君が心配そうにのぞき込んでいる。
エリンのメイド服のエプロンをつかんでいる手が可愛い。
そうだよね、今日は朝からバタバタしてるから。
でも、心配してくれるのってお姉ちゃんが気になるからだよね。
私は嬉しくなって、王宮用のドレスを着てレアン君のところに歩み寄る。
「大丈夫よレアン。心配しなくても、お姉様すぐ帰ってくるわ」
私がそう言って髪を撫でると、レアン君は少し染めて頷いた。
「……だと思います」
「ん?」
レアン君の顔を見て私が首を傾げる。
どうしたんだろう、今何か言ったよねレアン君。
私に聞こえなかったのを知ると、レアン君はパタパタと私の部屋のベッドに駆けて行って白いウサギを抱き上げる。
そしてそれを大事そうに抱えて、私のところにトコトコと戻ってくる。
ウサギを一所懸命抱えて、私を見上げると言った。
「お姉様が帰ってくるまで、この子は預かっておきます。心配しないでください」
「うん、ありがとうレアン」
エリンも側についててくれるし、レアン君に預けるのが安心だよね。
「それから……お姉様、そのドレスとても素敵だと思います!」
何それ……素敵なのは君の方だよ!
少しはにかんだ笑顔で私にそう言った弟を、私はギュッと抱きしめた。
レアン君は一瞬、ビクッとしたけど逃げたりはしない。
ああ、でも心配だよ。
今はまだいいけど、もう少し大人になってからが心配。
こんな天使みたいな顔で色んな女の子にもあんなことを言ったらどうしよう。
ものすごいプレーボーイになったりして。
そんな小姑じみたことを考えながら、私はレアン君と一緒に玄関に向かう。
お母様も玄関に出てきていた。
「行ってまいります、お母様」
「ええ、王妃陛下に失礼がないようにねシャルロッテ。メルファ頼みますよ」
メルファはお母様に深々とお辞儀をする。
「はい、奥様」
レアン君と手をつないで私を見送る光景は、いかにも貴婦人といった佇まいで素敵だよ。
レアン君は絶対、お母様似だよね。
あの狸の要素は全くない気がする。
私とメルファが乗り込むと、王妃様が用意してくれた豪華な馬車がゆっくりと走り出す。
馬車の周りは、いかにも強そうな騎士が守ってくれてるから安心できそう。
アドニスとの約束を破ったことになるのが申し訳ないけど、これは仕方ないよね。
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