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19,それからそれから
しおりを挟む王様が離してくれない……
正直、ウザい。俺の許容範囲を等に超えてるので、そろそろキレそう。
あの戯れあった日から王様が執着するようになり四六時中、そう四六時中ずっと傍から離れなくなったのだ。
偵察に行ったばかりという事で主に執務室と寝室を行き来しているのだが……その執務室に何故か俺も居座ることになった。
王様いわく「次期王妃になるのだ。慣れる訓練に丁度いい」とか。…ぶっちゃけ王妃というのにまだ実感がわかず、とりあえず王様の執務の流れを観察している。
あ、変わった事が一つ。
お昼になり俺が「お腹減った~」と言ったのを切っ掛けにご飯にしようとなり、俺は生は食べれないから調理すると言ったら何故か調理室に王様がくっついてきて俺の調理する姿を終始観察して、挙げ句に「一口食わせろ」と言われ一口サイズにカットして……王様が口をパッカンと開けてきたのでアーンしてあげたら、目を閉じ咀嚼して肉を味わってゴックンした後、目をカッと開け「うまい!なんだこれはっ!」と驚愕された。
その声につられ執務室にいたお偉いさん(宰相や大臣など身分高い人)がわらわら集まり、俺を見つめては肉をチラッと見て俺を見つめ……のループをされ仕方なく皆さん(王様含む)の分の肉を焼いて渡したら大絶賛され、それから料理を懇願され王室の料理長に作り方を教えてほしいと懇願され教える事になり、王室では焼いた肉を食べるようになった。
うん、やはり『調理』をするって考えがなかっただけのようだ。食べ方に拘りがあるのかと思いきや、ただ単に調理の手順が面倒なんだなって思う。
で、調理室に行ったら……いろんな調味料あったよ。塩、胡椒、醤油、みりん、酒などなど。……何故こんなにも調味料が揃ってるのに料理をしないんだろうか……?
とりあえず王様が忙しい時、俺は調理室に入り浸り料理人たちにいろんなレシピを教えた。
キッチンが元の世界と同じだったし果物もちょっと見た目が違うだけでほぼ同じだったから、他の野菜などの食べ物も他にあるのか聞いてみたら、やっぱりあったよ。
でも、やはり獣族の世界(?)、みなさんお肉が大好物なようで野菜は草食系の種族たちしか食べないようで、王室は殆ど肉食系の種族が多いため野菜はほぼなかった。
「あの、王妃様は肉食では……?」
「う~ん……敢えて言うなら雑食?肉も野菜も果物も穀物も何でも食べます。」
そう。俺は肉は好きだが生肉が駄目なだけで好き嫌いがないのだ。アレルギーもないし。だからいつもバイト帰り、消費期限ギリギリの食材とか店長に断りを入れて持ち帰ったりして食べてた。やっぱ料理屋で働くメリットはこれだよね。余り物を貰える。賄いとかしっかり食べれるしね!
あと、それが影響してるのか調理室にマヨネーズとかドレッシング系が無かったので作った。卵も油もあったからね。
唯一、デザートは無理だった。酒のつまみ系は作れるけど、居酒屋はアイスくらいしかないから凝ったものが作れない。飾り付けしかできない。スイーツ男子でない限り凝ったものは作れないよ。うん。
で、寝るときは王様と一緒。政務が遅れた時は俺も政務室に同席して王様の側にいた。
そんなに頭の良いわけではなかったが、少しでも役に立てないかと思い、飢えてる土地があり、その原因が何なのか頭を悩ませてる所に俺がちょろっと意見を述べたり、最近窃盗が増えてると困ってるような話を聞いて対策案を提示したりした。
それを採用されたり詰めが甘いと言われ却下されたりするが頭を悩ませて意見を言い合うのは割と刺激があって楽しかった。
あれだよね、よく小学校で課題について近くの人とグループを作って意見を言い合うやつ。あれに似てる。
などなど……王様が傍から離れないが為に先の事を考える暇がなかった。……お腹は着々と大きくなっていってるのに────……
__________________
「だいぶ大きくなりましたねアオイさん。体調はどうですか?」
「胎動も感じるしお腹の子はすくすく育ってるみたい。体調は良いけど、お腹が重たくて腰が痛いかな。」
「仰向けでなく横になって寝てくださいね。予定日を超えているので、いつ陣痛がきてもおかしくないので……」
「そうだね。うん、とにかく安静にしてるよ。」
毎朝ラムンさんが甲斐甲斐しく看病しに訪れてくる。
始めの頃はまだお腹が膨らんでなかったので王様にあちこち連れてかれていたが、だいぶお腹が目立つ頃になると動くのがしんどくなり、その様子を心配した王様に「寝てろ」と命令され数日前から強制的にベッドの住人と化してしまった。
それからは忙しなくラムンさんが俺の面倒を見てくれてる。
ご飯は料理長直々に作ってくれて、それを何故か王様が寝室に持ってきて一緒に食べてる。風呂も王様が直々に俺を洗ったり湯船に浸からせてくれたり世話してくれている。
その他、ご飯と風呂以外はラムンさんが傍にいて暇つぶしの相手をしてくれたり寝返りの手助けしてくれたりしてくれる。
……もうすぐ俺が出産するんだよね?なんかあまり実感がわかないんですけど……だ、大丈夫かな?
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