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本編

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「すまない・・・インヴェルノ様に話したい事がある。取り次ぎをお願いします。」

王室の門の前に、あの僕を拉致した団長と呼ばれた男が立っていた。僕がそれに気付き凝視していると、男の方も僕に気付いたのか必死に僕に訴えてきた。

「こんな真似・・・許されないとわかってる。それを承知で、罪を償うためにインヴェルノ様に情報を流しに、ここへ来ました。どうか・・・聞くだけ聞いてください・・・」

あまりの必死の姿に不安を感じ、広間に父上と僕とウィンザと団長の4人で顔を合わせていた。・・・拉致された事を父上に内緒にしてた事がバレて睨まれてしまったが、反省はいつだってできると一言呟いて見逃してくれた。

「・・・俺はベテルギウス王国、第四騎士団団長べリオスと言います。・・・孤児出身です。」
「べリオスさんですね。・・・ところで何故僕の所に来たのですか?・・・予測ですが、僕が自国に戻ったと報告があり自国に帰ってこいと言ってきたのではありませんか・・・?」
「・・・・・・」
「?どうしましたかべリオスさん。」
「あ、の・・・俺が孤児出身だと聞いても何とも思わないのか?」

キョトンとした顔をしてべリオスはおずおずと聞いてきた。・・・僕からして孤児出身なんて事は何とも思わないのだが。

「言ってる事がわからないのですが・・・孤児出身だから何なのですか?実力があれば団長くらいなれるでしょう?」

僕の言葉に眼を見開き驚愕していた。父上は何故かヤレヤレと首を左右に振ってウィンザはニコニコ笑っていた。・・・僕は何か変な事を言ったのだろうか? 

「インヴェルノよ。・・・私達の国は人を差別する事を禁止しているが、他国によっては孤児や平民を差別する奴もいるのだ。ベテルギウス王国はその差別をする国なのだろう・・・。」
「そんな・・・同じ人間なのに・・・」
「・・・インヴェルノ様はまさに聖君のような女神のようなお方ですね・・・そんな方を俺は・・・酷い事を・・・」
「あーあーもう過ぎた話です。僕は無事に自国に帰ってきましたし、どこも怪我してませんので!気に病む事はありません。」
「・・・インヴェルノ様・・・それはきっと出来ないでしょう。むしろ気に病まない方が異常ですよ。」
「そっそうか・・・で、では、罪滅ぼしという事でべリオスさんは知ってる情報を提供してください。」
「はい!その為に来ました。・・・話した後は打ち首にでも好きにしてください。」
「・・・えっ?」

べリオスさんの言葉を聞いて思わず思考が停止した。・・・は?何で打ち首?罪滅ぼしの為に情報を提供してくれるんじゃないの?

「・・・べリオスさん、質問いいですか?」
「あっはい。」
「・・・べリオスさんは何故ここへ来たのですか?」
「えっ、・・・罪滅ぼしの為に情報を提供しに、来ました。」
「そうですよね。ではなぜ打ち首にしろと言ってきたのですか?」
「・・・えっ?」
「インヴェルノ・・・」

父上は僕の言葉を聞いて呆れ顔で僕の肩に手を置いてきた。何?僕間違った事を言ったの?ウィンザを見ると未だにニコニコ顔でポーカーフェイスのままだった。

「王子様はとてもお優しい方です。べリオス殿、王子は何故情報を提供してくれるのに・・・・・・・・・打ち首にしろと言ったのが理解できないみたいです。」
「・・・は?」

ウィンザの説明を聞いてべリオスは呆気にとられてしまった。僕は今考えてた事をウィンザが説明してくれた事に満足してニッコリと笑顔になる。その反面父上は頭を悩ませていた。

「・・・わしが悪いのか?アイーリに講習させとけばある程度常識が備わると思ってたのに・・・うぅぅ~」
「陛下、間違っておりませんとも。そのお陰でこうして純粋な心をお持ちな優しい王子に育ちましたので!それに王子はとても賢いお方ですよ!」
「だが・・・一般常識が何故欠けているのだ!普通は密偵や間者は捕まれば打ち首が確定してるのにヴェルは何も知らない!なぜじゃぁ~‼」
「ちっ父上!静かにしてください!とにかくもう時間がありません。とにかくべリオスさんの話を聞きましょう!」
「あぁぁぁ~・・・」
「すみません王子、陛下はどうやら使い物にならなくなったので話を続けましょう。」
「うっうん・・・えっと、ではべリオスさん、お話を聞きましょう。後の事は後回しです。もうすぐポルックス王国との交渉時間になってしまいます。」
「・・・インヴェルノ様は変わったお人だな。・・・とりあえず俺が知ってる事を話す。」

父上は頭を抱え唸ってるのでほっといて話をすすめる。
・・・実はベテルギウス王国もポルックス王国に間者を数人送り込んでいたらし。そこへ今回の出来事を耳にした間者はベテルギウスの王様に情報を流し、それを横取りしようと第四騎士団をウィンター祭り前日にアルタイル王国に忍ばせ僕を拐ったらしい。

「・・・ではアルタイル王国の極秘などはベテルギウス王国にも届いている・・・という事ですか?」
「・・・おそらくは。」
「ハンナックさん・・・いろいろと爆弾を沢山落としていきましたね。もう許す事はできません。必ず捕まえて罪を償って貰わなくてはなりませんね。・・・それに僕には取って置きの奥義もありますからね。」
「お、奥義・・・ですか。」
「ええ。これはどこにも漏れてません。・・・この奥義は最終手段、もう手の付けようが無くなった時に使います。」
「ふふふ・・・我が国に喧嘩を売った事・・・後悔させてあげましょう・・・」

・・・ウィンザの腹黒い一面を見てしまった気がしたよ?もう最近僕の知らないウィンザばかり見て新鮮だけど・・・うん、ウィンザだけは敵に回したくないよね。うん、絶対に。

「・・・失礼ですが、ポルックス王国の事について何か情報はありませんか?・・・正直、こちらの情報ばかり流れてしまって、僕は他国の機密情報は全くもって知らないのです。」
「ポルックス王国ですか?・・・そうですね、ああ、ポルックス王国は実は闇市が毎月開かれ人身売買を主にやっている・・・という話を聞きました。・・・それがあってポルックス王国からアルタイル王国に逃げて行く人がいると聞きました。・・・ですが闇市は毎回開かれる所が違うので捜査は難航していて、実際に開かれてる所を見たことがないので確信はもてませんが・・・」
「闇市・・・ですか。それはポルックス王国の王様は知らないのですか?」
「いや・・・それを黙認しているらしい。」
「・・・は?人身売買は大罪ですよ?」
「そうです。我がベテルギウス王国でも人身売買は大罪に値します。でもポルックス王国は噂が流れてるのにも関わらず国はほったらかしにしてるという情報が・・・」
「・・・ふぅーん。なんだがポルックス王国は叩けば埃が沢山でそうですね・・・」
「その通りです王子!ではポルックス王国の使者が来る前にできるだけ情報収集に時間を回しましょう。」

僕が何か企んでるのを察知し、ウィンザがすぐに行動にとりかかる。

「あっべリオスさん、あとベテルギウス王国には何か黒い噂はないんですか?」
「・・・実はこの国にもベテルギウス王国の間者が紛れています。」
「「えっ!?」」

珍しく僕とウィンザの声が被った。・・・この国にもベテルギウス王国の間者がいる!?

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