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本編

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この世界は魔法が主流で、主に男性は攻撃系、女性は補助系の魔法を得意とする。

兄のヴェスナーは火の攻撃魔法、弟フーヴァル風の攻撃魔法、弟ヘルフストは土の攻撃魔法、末っ子アスティウは水の攻撃魔法。見事に属性がバラバラだ。
ちなみに僕は・・・光の補助魔法。
男で光属性で更に回復などの補助魔法を得意とするのは前代未聞だった。
属性は瞳に影響が出やすく、魔力を身体に循環させると瞳の色が変わる。通常は茶色で魔力を巡回させると僕の瞳は銀に近い白い瞳に変わる。
・・・僕は小さい頃から目を閉じて何でも行動が取れるよう訓練されていた。
王の発表で、僕はまだ幼いため無属性と発表されていた。

・・・この世界で光属性は稀少であり、国に何人光属性がいるかによって優越付けている。だが、神は平等に生まれてくる光属性の子は9人、それぞれの国に3人と限られている。1人光属性が亡くなれば同時に光属性の持った子供が生まれる。・・・それの繰り返しだった。

だが、今回は違う。アルタイル王国は既に3人、光属性の女性が国にいる。それなのにインヴェルノは男でありながら光属性を持ってしまった。・・・これは何か波乱が起こる前触れなのかもしれないとの事で国王陛下は極秘にした。
インヴェルノが光属性なのを知っているのは家族とウィンザと陛下の付き人ハンナックだけだ。



「アイーリ先生、先生には知って欲しい事があります。」
「あっあの・・・王子、その事は陛下に・・・」
「父上に言えばきっと僕はもしかしたら閉じ込められてしまう可能性があります。・・・アイーリ先生が今後手を貸してくれるのであれば話すべきです。」
「・・・わかりました。では私が・・・」

そう言ってウィンザは懐から短剣を取りだし自信の腕をスパッと切りつけた。

「なっ!?貴方は何をしてっーーー」
「見ててください先生。『回復ヒール』。」
「えっ!?」

怪我をしたウィンザの腕に手を当て詠唱する。すると瞬く間に傷が綺麗に癒えていった。

「先生、僕の眼を見てください。」
「いや、まさか・・・あっああ・・・」

アイーリ先生はインヴェノルの治癒魔法を見て驚き、更に信じられないと言う気持ちで眼を覗き込み更に驚愕してヘナヘナと腰を下ろす。

「・・・もうお分かりですねアイーリ先生。僕の属性は光です。しかも補助の方です。・・・この事を知ってるのは家族とウィンザと父上の付き人ハンナックさんだけです。」
「なっ何故ただの講義にきてる私にお話になったのですか!?」
「先生・・・仮説ですが、ポルックス王国は僕が光属性だと言う事を知っているのかもしれません。」
「「なっ!?」」
「ポルックス王国は僕を差し出せと言っていたらしいんですよ?・・・だったらその可能性はありませんか?」
「たっ確かに王子の言う事は一律ありますね・・・」
「でっですが、そうなると・・・この城に間者が紛れてる可能性がでてきます。・・・これは由々しき事です。しかし・・・これは陛下にも報告した方が・・・私たちの手に負えない事態まで発展してますよ。」
「やっぱりそうなるよね・・・うん、今夜父上の空いてる時間を聞いて話してみるよ。明日また来てくださいますか先生。」
「ええ。わかりました。あっでは私は休暇を取るのは後の方が良いですかね。」
「そうですね。・・・では残りの時間、もう少し先生に他国の話を聞かせてもらえませんか。」
「はい。もちろんです。」

それから日が落ちる頃まで話をした。
そして先生は帰っていき夕飯の時間まで、自室で考えをまとめる。ウィンザと相談をして、とにかく父上と2人きりで話すべきという事で侍女が声をかけてくるまで話し合った。

「父上、お話したい事があるので、後程部屋に赴いてもよろしいでしょうか。」
「なんだ珍しいなヴェル。それに体調は大丈夫か?ヴェスナーから一応聞いてはいたが、ゆっくり休んだ方がいいんじゃないか?」
「いえ、父上と話をしたいので先伸ばしにする方が気になって寝付けず体調を崩してしまいます。」

自虐的に話すと父上は諦めたような溜め息を吐き、就寝の準備をしてから来なさいと言われた。ヴェスナー兄さんがまた心配して一緒に付いていくと言っていたが、父上と二人っきりで話がしたいと言い張り諦めてもらった。

そしてその夜。父上の部屋の前にウィンザと一緒に立つ。深呼吸してノックをする。

「ああ、ヴェルか。入っていいぞ。」
「失礼します。」

45度にお辞儀して中に入る。一人用のソファーに座ると、寝る前との事もあり、付き人のハンナックさんがミルクティーを用意してくれた。

「有り難うございますハンナックさん。」
「勿体ないお言葉です。冷めないうちにどうぞ。」
「いただきます。」

そう言って一口飲む。すると父上も僕の向かいにあるソファーに座り同じくミルクティーを口にする。

「で、どうしたんだ?何か話があるんだって。」
「はい。・・・父上、申し訳ないのですが、2人きりで・・・・・話がしたいのですが。」
「ふむ。親子水入らずで2人で話がしたいのだな。わかった。ハンナック。」
「はっ。私は扉の外で待機させていただきます
。」
「・・・ありがとうございます。」

申し訳なさそうにハンナックさんを見るとニコッと笑いかけられた。そしてスッと扉の外に出ていった。

「すみません父上。こんな我が儘を言ってしまって・・・」
「はははっ。ヴェルは相変わらず謙虚だな。母親の遺伝だな!」
「母上は僕と違っておしとやかで優しいです。母上にはまだまだ手が届きません。」
「気にする事はない!ヴェルはまだ7歳なんだからまだまだ成長途中なんだぞ。」

はははと笑う父上を見て、やはり僕が夜に聞いた生け贄なんちゃらは聞き間違いなんじゃないかと思えてくる・・・
他愛ない話をして、一端区切り、真剣な顔をして話を切り出す。

「父上・・・父上に聞きたい事があります。」
「ん?なんだそんな改まって。」
「・・・僕はウィンター祭りの時に生け贄として他国に行かされるのですか?」

そう言った瞬間、父上は眼を見開き僕を凝視してきた。「なぜ?」と聞いてきたので素直にトイレに起きた時に聞こえたと告げる。

「そうか・・・聞いてしまったのか。ハンナック!」
「はっ!」

父上が付き人を呼ぶ。すると扉から現れた姿に驚き僕は無意識に立ち上がる。

「う、ウィンザ!!なっこれはどういう事ですか!!」
「も・・・申し訳ありません、王子・・・」

ハンナックに胸ぐらを捕まれ血を流してるウィンザがいた。ハンナックの手は血だらけだった。すぐ駆けつけようとすると父上が待った!をかけてきた。

「ヴェル・・・ウィンザを助けたいのであれば私の言う事を聞くのだ。」
「ち、父上・・・」
「お前に残されてる選択肢は1つ。このままウィンター祭りが来るまでじっとしてる事だ。言いたい事はわかるな。わかったならウィンザをすぐ解放してやろう。」
「父上・・・僕にその経路を話してはくれないのですか?」
「話す事はできない。契約の一つだからな。いいか。何も聞かずウィンザを治療し自室へ帰りなさい。」

そう言われ父上は何らかの弱味を握られてるのではないかと考えついた。何故なら父上はとても苦しそうにしているからだ。

「・・・僕はもうこの国にいられないのですね・・・」
「・・・」
「わかりました。それを聞けただけ十分です。・・・気持ちを整理しておきます。」

僕の顔は今どうなってるだろうか。仕方ない事と割りきって開き直るしかない。
急いでウィンザの元へ行き、すぐに『回復ヒール』と詠唱し、ハンナックも回復させる。ハンナックもウィンザとやり合ったのだろう傷だらけだったからウィンザと一緒に回復した。
ハンナックは複雑そうな顔をしたが「有難うございます」と一言言ってウィンザを離し父上の元へ行った。僕とウィンザは無言のまま父上の部屋を出ていき自室へと戻った。

「王子・・・」
「僕はもう・・・王子ですらない。僕はどうしたら・・・」

あまりのショックでソファーに力なくボスっと座り手で顔を覆う。心の準備・・・あと荷物の整理?あ・・・どこの国へ行くのだろうか・・・

「インヴェルノ様・・・私はずっとお側に付いていきますからね。」
「ウィンザ・・・」

目頭が熱くなるのを感じた。その僅かな反応を察知してウィンザは僕を胸に抱き寄せてくれた。
あぁ・・・高い生地を使った燕尾服が濡れてしまう・・・でも今僕は腕も足も全く動かない、なんだか自分の身体じゃないような感覚がして、ただただ涙を流す事しかできなかった。

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