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番外編…その後
黒と緑のマーブル模様(後)
しおりを挟む「こ、これが私とムスタ殿との卵、ですか・・・?」
「うんそうだよウィンザ。綺麗でしょ?」
「ええ・・・始めインヴェルノ様の説明を聞いて、あのスパーモのイメージが湧いてしまってたのですが・・・これは見事に黒に緑が混ざってるような綺麗な模様ですね。」
「ふふ、自慢かな?楽しみだね。孵化する時は知らせるから必ず来るんだよ?」
「勿論でございます!・・・待ち遠しいですね。こんな気持ちになるのはインヴェルノ様が妃様のお腹の中にいた時ぶりです。」
「あはは、そんな昔の事をまだ覚えてるんだね。でも・・・うん、僕も待ち遠しいな。あ、名前何個か候補を考えときなよ。」
「はい。ムスタ殿と考えます。」
報告した次の日、世界樹へウィンザと赴き卵を眺める。うん、やっぱり綺麗だね。
あ、スパーモってのは蜘蛛の魔物ね。見た目が気持ち悪くて忌み嫌われてる魔物なんだよね。足が長く素早くて毒持ちなんだよね。そのスパーモも色とりどりの模様を持ってるんだけどね、多いのが赤に緑を混ぜた感じの模様なんだよね。もちろんマーブル模様。
でも卵は輝いてて絶妙なラインが引かれてて本当に傑作品のようなんだよね。うん、楽しみだな。
ウィンザはムスタと一緒に2つの卵を交互に撫でてた。うん幸せそうだな。・・・チラッとアルトゥン様を見ると目があった。
「我らもまた子供を作るか?」
「!・・・うん、それも良いね。もう僕たちの子は巣立ったからね。」
ウィンザ達の後ろでこっそりアルトゥン様と唇を重ねた・・・
「あっ、あっ、~~~っ!」
「っく!」
「あ、はぁ、・・・アル、もう、お腹いっぱいだよぉ~」
「何をいう、我はまだまだいけるぞ。それにヴェルだってもっといけるだろ?」
「っ、ああ!」
もっと家族を増やすって話をしたその夜、いつの間にか手に入れてた子を成す種をアルトゥン様が持ち、寝室でニコニコ笑って待機していた。・・・なんとも気が早い。まぁこれはウィンザ達に当てられた感じだよね。まぁ子ドラゴンは可愛いからね。やっぱ我が子となると特別に可愛く見えるものだよね。
それにしても今日はいつも以上に激しい。なんだかお腹がポッコリ盛り上がってる気がするよ?どれだけ出すつもりなんだい・・・?
解放されたのは勿論朝、いや日の照り付け加減からして昼かな。もう僕は指一本動かせません。そしてウィンザが僕を介抱してくれてます。うん、逆転してしまったね。
「・・・なんとも、複雑な気分でございます。申し訳ございません。」
「はは・・・ウィンザのせいではないから。これは全てあの夫であるドラゴンが悪いんだから・・・」
「・・・同感でございます。我々はドラゴンではないのですから手加減というものをしてもらいたいですね。」
「うん。・・・でもねウィンザ。それに慣れてきてる僕も悪いんだよね。完璧に拒めないから・・・ね。」
「・・・」
「ウィンザもそうでしょ?」
「・・・黙秘でお願いします。」
「ふふ、それが答えになってるよウィンザ。肯定は図星だからね。」
「肯定は致しません。」
もーウィンザは素直じゃないなぁ。・・・あ、アルトゥン様いわく、やはり僕たちの卵が成ったらしい。今度は2個でどちらも銀色らしい。・・・アルトゥン様が金で、僕は光属性だから金の色が薄まり銀色になったとか?まぁ我が子の卵が成った事を喜ばないとね!
それから17年後。
「ふふ・・・ウィンザ心の準備はいい?」
「は、はい・・・!」
「じゃあ孵化させるよ。」
今、僕の懐には黒と緑のマーブル模様の卵を抱えている。周りには世界樹のお世話をしているドラゴンたちが集まっていた。
魔力を少しずつ流し子ドラゴンが殻を割る手助けをする。
ピキピキ・・・ピキッ、ピシッ!
まず尻尾が出てきた。うん、尻尾は黒いようだ。それから足が出て来て蹴破り頭に殻を着けた状態で卵から出てきた。
その姿は・・・
「綺麗・・・」
「・・・」
左腕、腹部、右脚に緑色のマーブル模様が刻まれ全体は黒い子ドラゴンが誕生した。僕は神秘的で思わず甘い吐息をはいてしまった。瞼を開けこちらを見てきた。瞳は緑色だった。明るい新緑の色。とても綺麗だった。
「ウィンザ。ほら、我が子を抱いてあげて。」
「はい・・・」
ウィンザが子ドラゴンに腕を伸ばすと、やはり親と解るようで手にすり寄っていた。あ~可愛い!ウィンザの後ろにいるムスタも無表情ながら尻尾が忙しなく左右に揺れてるよ。ふふ、ドラゴンは本当に可愛い生き物だ。
もう1つの卵も孵化させる。今度は頭から出て来た。うん、子それぞれ卵からの出方が個性があるよね。毎度見ても飽きない。ほんと可愛い。頭から出てきた子ドラゴンは首元から胸元までマーブル模様で、あと尻尾が根元から先っぽまでマーブル模様。他は黒かった。うん、2頭とも個性がでてるね。あ、瞳は同じ緑色だね。こちらは深緑だね。
・・・ふふ、性格はどうだろうね。今度はムスタに子ドラゴンを抱かせた。やはり本能で親だとわかるんだね。すり寄って抱っこされたら眠ったようだ。もうムスタの反応が・・・ふふふ。
「名前は決まったかい?」
「ええ、こちらの男児は『ノーチム』ムスタ殿の所にいる男児は『ホク』です。」
「どちらも夜のイメージがある名だね。ふふ。暫く職務を休み家族で過ごすと良いよ。ね、アルトゥン様。」
「勿論だ。ムスタもウィンザもまともに休暇をとらぬからな。良い機会だ。ゆっくり休むといい。」
「有難うございますインヴェルノ様。陛下。」
「恐悦至極に存じ上げます。陛下。妃様。 」
あぁウィンザが幸せそうだ。その幸せそうな笑顔が見れて僕はやっと罪悪感が薄れてきたよ・・・
「ヴェル・・・安心したか?」
「アル・・・うん、安心したよ。ウィンザは今幸せなんだなって実感できたから。・・・アル、気付いてたんだ、僕の思ってた事。」
「ああ、我はヴェルの夫だからな。ヴェルの事なら少しの変化も見逃さない。」
「・・・有難うアル。大好き。」
「ヴェル!」
世界樹から帰りアルトゥン様の執務室へと行き今は2人きりだ。
・・・まさかウィンザへの罪悪感を抱いてる事を知ってるとは思わなかった。まさか無意識に行動にでていたのだろうか・・・
アルトゥン様いわく、僕はいつもウィンザの事を気にして行動していたらしく、何かと話しかけてたのから始まり、ウィンザがムスタという伴侶を迎えてから更に執着と思える程ウィンザの事を気にしていたらしい。
「ほんの僅かな反応だ。ウィンザも誰も、我以外気付いてない。そこは安心せよ。」
「そっか・・・うん。アルの言うとおり、僕がこの国に嫁ぎウィンザも一緒に連れてきてしまった時から、そう今までずっとウィンザへの罪悪感が消えなかったんだ。」
「ヴェルは優しいからな。我はヴェルの夫となれた事を誇りに思うぞ。まぁウィンザには嫉妬しか覚えなかったがな。」
「ふふ、ごめんねアル。・・・はぁ、今日は本当に嬉しかった。ウィンザが心から喜んでいたから。・・・僕の都合で寿命を伸ばし、右も左もわからない土地で1から何もかも勉強し慣れない環境の中、ずっと僕を支えてくれて・・・っ。」
思わず涙がでそうになり俯いてしまった。ああ!こんなことしたらアルトゥン様に心配かけるのわかってるのに・・・ああ、やはり案の定、心配かけてしまったようで背中にアルの温度が、鼓動が伝わってくる。
「ヴェル・・・そんな自分を無下にするでない。ウィンザも自ずとここにおる。そして伴侶を見つけた。そして今、新たな子が誕生した。それは幸福な事だ。ヴェル、そなたが一番ウィンザを想ってる事はわかる。だがウィンザももう自分の幸せを見つけたようだぞ。もう自分を責めるでない。」
「アル・・・ああアルトゥン様。ふふ、僕の夫は僕を元気付けるのが得意なようだね。うん、有難うアルトゥン様。」
「当たり前だ。我はこのユエリャン国の王であり、唯一のヴェルの夫だ。妻の事わかってやれない夫は無能だ。」
「有難うアル。」
今はアルトゥン様に甘えてもいいよね?こんな・・・僕の事を理解してくれる夫はアルトゥン様だけだよ。ほんと、僕は幸せ者だよね。
「うっ、うっ、・・・インヴェルノさまぁ~・・・私の事を、そんな風に想ってたなんて・・・」
「ウィンザ・・・」
「あ、有難うございますムスタ。わ、私は本当に良き主人の下で仕えさせてもらえたのですね。」
「ああ、ほんと妃様は聡明な、他人想いの良き方だ。俺はこの国に仕えられて幸せだ。そしてウィンザ、お前を伴侶にできて、子も授かれて本当に俺は幸せ者だと思う。」
「ああムスタ・・・私も、私もそう思います。ですが、まさかインヴェルノ様の負担になってたとは思わず・・・不甲斐ない。」
「だがもう罪悪感はないと言っている。我々が幸せと感じれば妃様も安心していただける。なら今この時を存分幸せを噛み締めようウィンザ。」
「ええ、ええそうですねムスタ。我が子が育つにつれ私はきっと幸せを感じるでしょう。・・・ムスタ、貴方は今幸せですか?」
「当たり前だ!俺は生涯ずっと国に、アルトゥン陛下に尽くそうとしていたのだ。だがウィンザに出逢いウィンザを伴侶に娶る事ができて、今は本当の意味で幸せを噛み締めている。」
「そうですか。ふふ・・・ムスタと私は本当に似た者同士ですね。」
影でこっそりウィンザとムスタはインヴェルノたちの話を静かに聞いていた。そんな事を露知らず・・・次の日にウィンザを訪ねると我が子をほったらかして僕に抱き着いてきた。
それから何十年、何百年、何千年と平和が続いた。流行り病は周期に流行りだしたが、ドラゴンの国に僅か数人しか住んでない人間たちにより流行り病に効く新薬を開発され数を減らす事がなくなった。
更に人間への偏見がなくなりドラゴン達は地上へと赴くようになり、中には地上で暮らすドラゴンも現れ、のちに新たな種族「竜人族」があらわれ人とドラゴンは今後敵対せず永遠と言える平和が続くのであった。
完結
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