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第23話 グツグツの煮込みました
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「いままでどこに雲隠れしてたんですか?」
「雲隠れしたつもりはないのですが・・・親の後を継いで居酒屋をやってます。・・・それにしても変わりませんね。髪はロングのままですね。」
「ええ、彼女がこの髪を好いてますから手入れ程度で長さは変わらずですね。」
「そうですか。仲睦まじい事ですね。」
右麟が料理を運びながら軽く話す。右麟は私が麒麟組から少し離れる前に幹部に上がった人で、その前は私の部下のような存在だった。
今は互いに幹部なので気軽に話せる。
「なぁ尾麟、うちの台所使って良いから何か一品作れよ。・・・まったく、うちの秘書は有能すぎてお前の店に行くことが出来なかったんだ。」
「そうですか。ですが私の料理は一般家庭用の物しか作れませんが・・・」
「構わん構わん。尾麟が作る物なら間違いないだろうからな。」
「・・・期待しないで下さいね。では食材はあるのですか?」
「あぁ、その為に適当に買い出しを頼んだから沢山入ってるぞ。」
「・・・適当に、ですか」
あっ尻尾が左右に揺れだした・・・なんだか嫌な予感がしたが、とりあえず台所へ行くことにする。すると小虎くんがソファーから立ち上がり「僕も手伝います」と言ってついてきた。・・・居づらかったんだろうね。
付き人に案内された場所は、どこもかしこも綺麗で使われてないようだった。一応確認したら「私がお茶を沸かす位です」と予想通りの返事がきた。
そして冷蔵庫を開けると食材がぎっしり詰まっていた。奥に何があるかわからない程ぎゅうぎゅうに詰められてたので、小虎くんと付き人に手伝ってもらい冷蔵庫から食材を全て出した。
そして調味料を確認すると消費期限は切れてないが新品ばかり並べられてた。
「・・・誰が買ったんですか?あっ、いや聞かなくてもわかりました・・・はぁ、なんと勿体ない事を・・・」
耳と尻尾が項垂れる。先ほど料理を持ってきた2人が買ったのだろうと結論付けた。付き人の顔を見ると目を伏せて項垂れてるように見えた。まぁ、中頭郡さんも少し悪いよね。「適当に買ってこい」なんて言われれば何を買っていいかわからず、結果、気になる物を爆買いしたという事になったのだろう・・・
「小虎くん、今日は何が食べたいですか?ここにある食材であれば何でも作れますよ。あっでも手早く作れる物にしてください。」
「なっ何でも良いのですか?」
「一応料理は得意ですので難しい物ではなければ作れますよ。」
「でっではーーー」
グツグツグツ・・・
只今煮込み中。小虎くんがオーダーしたのは『肉じゃが』。簡単で尚且つ大量に作れるので有難いオーダーだった。
「本当はもっと煮込むと美味しくなるのですが今日は仕方がないですね。小虎くん、味見してみますか?」
「是非!」
小皿にじゃがいも一欠片爪楊枝に刺して汁を入れ、それを小虎くんに手渡す。そして口にした瞬間パァっと顔が明るくなった。
「美味しいです!ほりんさんの料理は凄いですね!」
「そんな・・・たかが肉じゃがですよ。でも有難うございます。」
「お世辞ではないです。・・・失礼な事を言いますが、母より美味しいです。」
それを聞いて苦笑いする。元組長の奥さんなんだから・・・そんな事言ったら殺されそう・・・
ふと視線を感じ後ろを振り向くと付き人が味見したそうにチラチラ見てきていた。それを見て口許が緩んでしまい尻尾がまた揺れてしまった。
小皿に同じ物を入れ差し出すと恐縮しながら味見してくれた。もちろん太鼓判もらいました。
「では小虎くん、長の器に盛り付けるので持って行ってください。」
「えっ!?僕がですか?」
「そうです。頼めますか?」
「・・・わかりました。ご招待していただきましたので、これくらいはやらねばなりませんね。」
「長は温厚な方ですから大丈夫ですよ。」
手が離せなかったので尻尾を動かし小虎くんの肩をトントンと叩いたら顔が緩み尻尾に軽く抱き付いてきた。そして覚悟を決めた様に力強く頷いた。
案の定、長は小虎くんを偉い偉いと誉めていた。それから緊張が解れたのか他愛ない話に入ってきて夕食は盛り上がった。
もちろん小虎くんはずっと私に引っ付いたままでした。
はじめ誰もが肉じゃがを知らず「何だこれ?」と疑心暗鬼していたが、一口食べれば皆が同じ反応をしてお代わりをしてくれた。うん、作った甲斐があった。とくに長が鍋の3分の1食べていて気に入ってくれたみたいだ。
・・・てか、普段何を食べているのだろうか?肉じゃがを知らないとか・・・私の店に来たらきっと初めて尽くしなんじゃないだろうか。
夜10時になり小虎くんが目を擦り始めたのでお開きにする。
「なぁ小虎、今日泊まってくか?」
「えっ?」
突然の申し出に小虎くんは固まり、その他の人たちは長を凝視する。
「なぁ、尾麟も泊まーーー」
「結構です。さぁ、武寅さんが心配してるはずです。帰りましょう。」
「えっあっはい。」
長が言いたい事を遮り小虎くんの手を握って玄関の方まで行く。
するとすかさず長が私の腕を掴もうとした。だが反射的に尻尾でペシッと叩き拒否する。それでも諦めず私を追いかけてきたが付き人に論され諦めてくれた。付き人さん有難う‼
それから小虎くんを西園寺組の屋敷へと帰し、我が家へと帰った。
「雲隠れしたつもりはないのですが・・・親の後を継いで居酒屋をやってます。・・・それにしても変わりませんね。髪はロングのままですね。」
「ええ、彼女がこの髪を好いてますから手入れ程度で長さは変わらずですね。」
「そうですか。仲睦まじい事ですね。」
右麟が料理を運びながら軽く話す。右麟は私が麒麟組から少し離れる前に幹部に上がった人で、その前は私の部下のような存在だった。
今は互いに幹部なので気軽に話せる。
「なぁ尾麟、うちの台所使って良いから何か一品作れよ。・・・まったく、うちの秘書は有能すぎてお前の店に行くことが出来なかったんだ。」
「そうですか。ですが私の料理は一般家庭用の物しか作れませんが・・・」
「構わん構わん。尾麟が作る物なら間違いないだろうからな。」
「・・・期待しないで下さいね。では食材はあるのですか?」
「あぁ、その為に適当に買い出しを頼んだから沢山入ってるぞ。」
「・・・適当に、ですか」
あっ尻尾が左右に揺れだした・・・なんだか嫌な予感がしたが、とりあえず台所へ行くことにする。すると小虎くんがソファーから立ち上がり「僕も手伝います」と言ってついてきた。・・・居づらかったんだろうね。
付き人に案内された場所は、どこもかしこも綺麗で使われてないようだった。一応確認したら「私がお茶を沸かす位です」と予想通りの返事がきた。
そして冷蔵庫を開けると食材がぎっしり詰まっていた。奥に何があるかわからない程ぎゅうぎゅうに詰められてたので、小虎くんと付き人に手伝ってもらい冷蔵庫から食材を全て出した。
そして調味料を確認すると消費期限は切れてないが新品ばかり並べられてた。
「・・・誰が買ったんですか?あっ、いや聞かなくてもわかりました・・・はぁ、なんと勿体ない事を・・・」
耳と尻尾が項垂れる。先ほど料理を持ってきた2人が買ったのだろうと結論付けた。付き人の顔を見ると目を伏せて項垂れてるように見えた。まぁ、中頭郡さんも少し悪いよね。「適当に買ってこい」なんて言われれば何を買っていいかわからず、結果、気になる物を爆買いしたという事になったのだろう・・・
「小虎くん、今日は何が食べたいですか?ここにある食材であれば何でも作れますよ。あっでも手早く作れる物にしてください。」
「なっ何でも良いのですか?」
「一応料理は得意ですので難しい物ではなければ作れますよ。」
「でっではーーー」
グツグツグツ・・・
只今煮込み中。小虎くんがオーダーしたのは『肉じゃが』。簡単で尚且つ大量に作れるので有難いオーダーだった。
「本当はもっと煮込むと美味しくなるのですが今日は仕方がないですね。小虎くん、味見してみますか?」
「是非!」
小皿にじゃがいも一欠片爪楊枝に刺して汁を入れ、それを小虎くんに手渡す。そして口にした瞬間パァっと顔が明るくなった。
「美味しいです!ほりんさんの料理は凄いですね!」
「そんな・・・たかが肉じゃがですよ。でも有難うございます。」
「お世辞ではないです。・・・失礼な事を言いますが、母より美味しいです。」
それを聞いて苦笑いする。元組長の奥さんなんだから・・・そんな事言ったら殺されそう・・・
ふと視線を感じ後ろを振り向くと付き人が味見したそうにチラチラ見てきていた。それを見て口許が緩んでしまい尻尾がまた揺れてしまった。
小皿に同じ物を入れ差し出すと恐縮しながら味見してくれた。もちろん太鼓判もらいました。
「では小虎くん、長の器に盛り付けるので持って行ってください。」
「えっ!?僕がですか?」
「そうです。頼めますか?」
「・・・わかりました。ご招待していただきましたので、これくらいはやらねばなりませんね。」
「長は温厚な方ですから大丈夫ですよ。」
手が離せなかったので尻尾を動かし小虎くんの肩をトントンと叩いたら顔が緩み尻尾に軽く抱き付いてきた。そして覚悟を決めた様に力強く頷いた。
案の定、長は小虎くんを偉い偉いと誉めていた。それから緊張が解れたのか他愛ない話に入ってきて夕食は盛り上がった。
もちろん小虎くんはずっと私に引っ付いたままでした。
はじめ誰もが肉じゃがを知らず「何だこれ?」と疑心暗鬼していたが、一口食べれば皆が同じ反応をしてお代わりをしてくれた。うん、作った甲斐があった。とくに長が鍋の3分の1食べていて気に入ってくれたみたいだ。
・・・てか、普段何を食べているのだろうか?肉じゃがを知らないとか・・・私の店に来たらきっと初めて尽くしなんじゃないだろうか。
夜10時になり小虎くんが目を擦り始めたのでお開きにする。
「なぁ小虎、今日泊まってくか?」
「えっ?」
突然の申し出に小虎くんは固まり、その他の人たちは長を凝視する。
「なぁ、尾麟も泊まーーー」
「結構です。さぁ、武寅さんが心配してるはずです。帰りましょう。」
「えっあっはい。」
長が言いたい事を遮り小虎くんの手を握って玄関の方まで行く。
するとすかさず長が私の腕を掴もうとした。だが反射的に尻尾でペシッと叩き拒否する。それでも諦めず私を追いかけてきたが付き人に論され諦めてくれた。付き人さん有難う‼
それから小虎くんを西園寺組の屋敷へと帰し、我が家へと帰った。
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