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第22話 小虎くんお迎え
しおりを挟むアラームが鳴り素早く止める。眠たい目を擦りながらうっすらと目を開ける。目の前には変わらず西園寺さんが私に腕枕をして眠っていた。
・・・少しだけ瞼にあったクマの色が薄らいだ気がする。
そっと上半身を起こすと同時に西園寺さんが目を覚ます。
「おはようございます西園寺さん。体調はどうですか?・・・おっと!?」
話しかけたら急に腕を引っ張られ抱き付く様な形で倒れる。そしてまたギュッと抱き締められる。
「・・・おはよう万理衣。」
「おっおはようございます。」
お互い挨拶を交わしギュッと抱き締められる。
上半身を起こすと西園寺さんは私のお腹に顔を埋めてスリスリしだした。朝からナニコレ?
「起きれますか?私はそろそろ開店準備をしたいのですが・・・」
「ん・・・」
軽く返事をして西園寺さんも身体を起こす。ご飯を食べるかと聞いたら食べると返事がきた。
それからクリーニングに出してたスーツを受け取り西園寺に渡し自分は1階へ行って掃除と下ごしらえを始める。
「世話になった。」
「いいえ。・・・貴方はこの店に唯一認められた人ですから、いつでも入らしてください。」
「認められた?」
「前にも話しましたが、この店は悪意がある人は店に辿り着けません。ですが西園寺さんは私の招待なしに店に来られました。しかも1度でなく2度も。ヤクザや警察など少しでも店の害になる人は来れませんから貴方は特別みたいです。認められたと言っても過言ではありません。」
「・・・そうか。」
話しているうちに軽食を作り西園寺さんの前に出す。そして準備の邪魔になると言って出口の方へ向かったので見送りの為、私も玄関へ行く。するとクルッと私の方を向いてハグしてくる。そして名残惜しそうに帰って行った。
少し寂しそうな背中を見送り今日もお客様をもてなす準備を始める。
それから西園寺さんは2~3日に一度訪れては一緒に眠る日々が続いた。抱き着いてくるがキス一つ無く、疚しい事をしてこないので好きにさせとく。
寝にくるだけなら寝間着くらい持ってこいと言ったら素直に持ってきた。・・・組長という威厳の欠片も感じない。西園寺組、大丈夫だろうか。
それから月日が経ち、満月の夜が近付いてきた。そろそろ店を休みにしなければならない。
仮面を取り鏡で自分の顔をみると眼孔が細くなりだしてるので、いつ猫になってもおかしくない状態だった。
明日から休業すると出入口に貼り付ける。
少し億劫になりながらも店をいつも通り開店して客を入れる。
何故億劫になるかって?それは、もうすぐ小虎くんと一緒に中頭郡さんの所へ行かなければならないからだ。
そして、あっという間に閉店の時間になり店を閉める。・・・と同時に西園寺さんがやってくる。多分迎えに来たのだろう。
暖簾を下げて片付けをして、西園寺さんは先に風呂に入ってもらい、いつもの様に夜になるまで2人ベットに横になり眠る。
夕方6時に目を覚まし、西園寺さんを起こす。西園寺さんはカウンターに座って待ってもらい、いつもの全身黒のスーツに着替える。
月が登ったと同時に耳と尻尾が生えてきたので仮面を片付け髪を整える。
そして1階へ行くと西園寺さんはこちらを見て一瞬固まる。
「すみません。満月が近いとどうしても先祖帰りしてしまいますので今日はこの格好で行きます。」
「あぁ。・・・準備できたか?」
「ちょっと待ってください。・・・中頭郡さんの好きな酒を包みますので。」
そう言って1本の瓶を取り出し風呂敷で縛る。
そして2人で小虎くんを迎えに行く。
「いつも店までどうやって来てますか?」
「近くまで車で来て、それから歩いて店を探してる。」
「徒歩ですね。・・・では西園寺組の屋敷まで飛んで行きます。お手を。」
そう言って、西園寺さんの手を握る。すると驚いた顔をしたがすぐ無表情になり了解したというように手を握り返してきた。
「では、行きましょうか。若様を迎えに。」
そう言って思いっきり大跳躍して屋敷に向かった。
「組長!それに、ほっ尾麟さん!お疲れ様ですっ!!!!」
「ああ。」
「お疲れ様です。」
ニコッと笑い返事をする。すると門番は頬を赤らめる。・・・不可抗力。武寅もそれに気付き一睨みする。でも門番は未だに私から目が離せないようで気付いてないらしい・・・大丈夫か?
「ほりんさん!」
「こんばんは小虎くん。いや若頭と呼ぶ方が良いですか。」
「いえ、小虎で良いです。会いたかったです。」
そう言って抱き着いてくる。小虎くんは私の肩の辺りまで背があるので160㎝くらいあるのかな。頭を撫でてあげると背中に回された腕に力が入る。
「さぁ小虎くん、空の旅へご招待します。」
「よろしくお願いします!」
「ではさ・・・武寅さん、小虎くんを預かります。尾麟の名に懸けて無事に送迎させてもらいます。」
「よろしく頼む。」
「小虎くん、背中へ来てもらえますか?しっかり捕まってください。」
「えっ、あ、はい!よろしくお願いいたします。」
体から離して今度は小虎くんをおんぶして空へと消えていく。
「ん!この匂い、来たか。」
そう言って付き人に窓を開けるよう指図する中頭郡さん。いつもの様にベランダへ着地し、小虎くんを背中から下ろし窓から中へ入る。
「お邪魔します長。」
「来たか尾麟。そして、ようこそ小虎。緊張せずに楽しく過ごそうや。」
「はっはい!」
ニッと笑い小虎くんに話しかける。けど小虎くんは私の後ろに隠れて返事をする。怖いのか緊張してるのかわからないが前へ出るよう促す。
「さっ西園寺 小虎です。お招き頂き有難うございます。」
「おう。とりあえずソファーに座れ。今食い物を運ばせる。」
「はっはい!」
「ふふふっ。」
小虎くんの仕草を見て思わず微笑んでしまった。すると中頭郡さんが上機嫌になり夕食を持ってこさせるようとする。
すると・・・
バーーーーン!!!
「ホリンちゃーん!!会いたかったよぉー!!」
「おや、これは珍しい顔がいますね。」
「頭麟に・・・右麟。右麟は本当にお久しぶりですね。」
頭麟の隣に右麟という長身の丸眼鏡をかけ黒髪ロン毛の優男が料理を両手に持って現れた。
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