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第8話 西園寺組に出向く
しおりを挟むそれから一礼して中頭郡さんの部屋から出ていく。
それから外をでて中頭郡さんが用意してくれた黒塗りの高級車に乗る。
そして白虎組のシマまで送ってもらった。
「マリーちゃんとデート!すっごい久々だなぁ~♪」
「・・・早く用をすませて中頭郡さん所に帰りますよ。」
「え~もっとゆっくり~・・・」
パシッ
肩に手を置いた犬神くんの手を叩き倒した。この人、昔からスキンシップが多すぎるんだよね。
そして何故か首元をスンスンと匂いを嗅いでくる。
・・・たしか西園寺さんにも匂いを嗅がれた気がする。
・・・私、何か匂うのか?今度あまりキツくない香水でも買ってつけてみようか・・・いや、飲食店やってる限り香水は厳禁だな。・・・本人に聞いてみるか。
「犬神くん、前から気になってたんですが、私、何か変な匂いでもするのですか?」
すると犬神くんはキョトンとした。そしてすぐにクスクス笑いだした。
「気にしてたの?ごめんなぁ~。いやぁ・・・臭いんじゃないよ、凄く良い匂いがするんだよマリーちゃんは。」
「・・・はい?」
「ん~なんてゆうの?しいて言えばフェロモンかな。甘~いハチミツのような?俺が蜂だったらマリーちゃんの花の蜜に吸い寄せられてるような~そんな感じかな。」
「え~・・・フェロモン、ハチミツですか・・・」
軽くショックを受ける。何フェロモンて?なんなんだろう?あっ軽くパニック起こりました。
「はあ~そうですか・・・なんででしょう?まぁ・・・特定の人しかわからないみたいですから大丈ー」
「いや?中頭郡さんも気付いてるよ?いつも甘い匂いがするって。」
「え~・・・なんででしょう?」
「・・・さぁ?だから~ずっと嗅いでいたいからマリーちゃんにくっつくの!」
ガバッとまた抱きついてくる。
もう何度も何度も引き離したのに懲りもせず抱き着いてくるので結局私が折れて抱き着くのを許してしまう。
それを解ってるのか諦めずに抱きついてくる犬神くんは策士家なのだろうか。
それから背中に抱き着かれ腕を首に絡められたまま西園寺組の組長がいる屋敷に着いた。
大きな門の前に仁王立ちになり軽く横に頭を傾けた。
門番2人がこちらを見て驚き、一人は屋敷の中へ駆け出していき、もう1人は腰を90度に曲げ頭を下げた。
「おおおおおおお、お疲れ様です!!!!」
「あ~はい、お疲れ様です。いつも門番大変でしょうに。」
「いぃいいえ!!!使命与えられただけでも光栄ですので問題ないですー!!!」
あーあ・・・萎縮しまくっちゃってる。
・・・多分、皆知ってるんだろうな。私の事を・・・
満月の時は必ずと言って良い程、猫耳と猫尻尾が生えた獣人になる。仮面を取った素顔は瞳は金色で瞳孔は縦に細くなっている。大きな傷なんかはなく、70代にしてはシワがあまりない成人男性に見える・・・らしい?中性的な顔立ちで美形らしい。
「あーそんなに畏まらなくて良いですからね。今日は組長さんに伝言があって来ただけですのですぐ帰りますよ。」
「でっ伝言ですか?」
「・・・多分、他に漏れると大変な事になるだろうから個室を用意してもらえると助かります。」
「わわわわかりました~!今、組長を呼んでますので、とりあえず中へどうぞ!」
「ん。お邪魔しますね。」
もう・・・この門番、恐縮しきってて心配になるわ。「しっかりね。」って声掛けてあげたら頬を染められました。・・・不可抗力。惚れないでね。
屋敷の中庭に来た所で慌てて組長が私の前に来て一礼してくる。
「お出迎えできず申し訳ございません。私、組長をやっております西園寺 虎政と申します。」
「ご丁寧に挨拶有難うございます。こちらこそ急に来てしまい申し訳ございません。私は麒麟幹部の尾麟と申します。今日はある方からの伝言を伝えに参りました。」
「左様ですか。とっとりあえず中へ。個室を用意して人払いを済ませてますのでどうぞ。」
「お気遣い感謝します。」
ニコッと笑い軽く頭を下げる。すると組長は少し困った顔をしつつ案内してくれる。
「ホリンちゃ~ん!ヘコヘコし過ぎ!」
未だに後ろにくっついてる犬神、改めて頭麟が組長に聞こえる位の声ではっきりと言う。
ちなみに麒麟組の幹部はみんなハンドルネームを使ってる。周りを捜索されるといろいろと面倒(狙われたり)なので組に戻った時には素顔を晒しハンネで呼び合う。
「・・・私の性格に文句を言わないでください。私に文句があるのなら帰ってください。相手に失礼ですよ。」
耳をピンと立たせ後ろに向き、尻尾は小刻みに動かす。イラついたりすると無意識に耳と尻尾が動くのは仕方ない事だ。本能?なんだからね。
それをみた頭麟は焦っていた。
「わ~俺が悪かったよ見捨てないで~‼」
「・・・静かにしてください」
かなりウンザリして脱力してると組長がポカンとして私を見ていた。私の視線に気付いたのか目を逸らされた。・・・なんだか複雑な気分だ。
そして和室に案内され、向い合わせで座った。さすがに邪魔になり頭麟を体から引き剥がし隣に座らせた。ブーブー言ってたので尻尾で畳を叩き一睨みしてだまらせ・・・コホン、静かにしてもらって話を進める。
「・・・人払いは大丈夫ですか。」
「はい、尾麟さんの言う通り私だけです。」
「わかりました。では伝言を伝えます。・・・西園寺 武寅さんからの伝言です。」
「!!!!」
あぁ、この顔、予想してなかったんだろうな。まぁ仕方ないだろう。多分探しても手掛かりが掴めてなかったんだろうねぇ。
「・・・あなたが組長代理というのも本人から聞いてます。ですが、誰にも話してませんし、誰かに話すつもりはありません。そして言伝ては「西園寺武寅は無事」です。」
「ほっ本当に武寅さんは無事なんですか!!!」
バンッと机を叩き上半身を前のめりになる。
「本当です。今は安全な場所で安静にしてます。あと2~3日すれば完治すると思います。」
「そうですか。・・・ほんと、良かった・・・」
脱力して座り込む。余程心配していたのだろう。思わず微笑んでしまった。
「・・・今、「鎮西組」が、西園寺武寅を血眼になって探してるみたいです。何か心当たりはありますか?」
「・・・鎮西組が・・・きっとうちの若頭を狙ってるのでしょう。今は安全な所に避難させてますが、いつ見付かるか・・・」
「そうですか。ん~白虎組の総長が降りるという話からして何か関係が・・・?」
「あっはい・・・その・・・白虎組総長の後継者が、うちの組長、武寅さんにという話が上がってまして・・・それで鎮西組が若頭を人質に武寅さんを総長にする事を阻止しようと企んでるみたいです。」
「なーるほど。じゃあ鎮西組、潰しちゃう?」
「・・・は?」
虎政さんは間抜けな声をだした。頭麟もサラッと何を言い出すのかと ジト目で見てしまった。あっ尻尾も畳を叩いてしまった。すみません畳さん・・・
「何を言ってるんですか頭麟?」
「前にね~鎮西組の奴等がヤクに手をつけてるって噂があってね~、それはご法度なわけで色々調べてるんだけど、なかなか尻尾を掴めなくてヤキモキしてるんだよね~。」
「あ~そういう事なら・・・いいですね。」
「えっ?あの・・・?」
よし、善は急げ、思い付いたら即行動!頭麟と一緒に立ち上がると組長代理がオロオロしていた。
「というわけで今から鎮西組に乗り込みに行ってきます。すぐに終わるので安心してください。小虎くんにも伝えてください。これで自由に行動できますよって。」
ニッコリと笑い2人でその場を去る。
そして門の外に出ると頭麟を見る。
「一気に行きます。私に捕まって下さい。」
「わぁ~お♪久々にお空デートできるの!」
「なんですかそれ?まぁ・・・飛んで行くので空は飛びますけど・・・とにかく捕まってーー」
「は~い喜んで!!!」
何このハイテンション・・・ついてけない・・・
頭麟が肩に腕を回したのを確認して足に力を入れ大跳躍する。するとさっきまで門の前にいたのに今は点にしか見えない、それくらい上空へと飛んだ。
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