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第3話 彼の世話をする

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「なぁ、今だけ仮面とってくれよ。いつも着けてて息苦しいだろう。」
「ああ・・・久々に仮面なしでお話しましょうか。」


仮面を取り、壊さないよう収納する。


「ほんと・・・昔と変わらず美形だな。」
「美形の基準がわからないから、そんな事いわれても何とも思いませんよ。」
「天然美形様は大変だな。まぁその美形顔を知ってるのは数知れてるがな。」
「あぁ、あの人たちとは最近顔合わせしてないので、元気にしてるかさえわかりませんよ。」
「たまには顔だしたらどうだ?たまに犬神さんが来るが万理衣さんの事気にしてたぞ?」
「集合がかかれば行きますよ。それ以外は・・・今のままで充分です。」
「・・・戻る気は更々ないって事か。まぁ本人がそう言うならしかたないか。」

それから世間話をして、少し昔話をして、充実した時間を過ごした。







晶さんが帰っていき、辺りは静かになった。使った調理器具や食器を洗うカチャカチャという音だけが辺りに響く。

今日は昼頃から天気が回復すると天気予報士が言っていたので、料理の下ごしらえを始める。


昼が過ぎ開店準備が終わり一息いれる。
今お気に入りなのは梅昆布茶。粉末タイプなのでお湯を入れるだけですぐ飲める。

何もせずボケッとしていると眠気が襲ってくる。
眠る前に軽くシャワーを浴びてベッドへ潜り込みたい。
けど、とりあえずシャワーを浴びたら怪我人の様子を伺わなければならない。気付いたら死んでましたーなんて絶対に回避したい!

シャワーを浴び髪を乾かし、一応仮面を着けて彼の様子を伺いに行く。

すると薬が効いてるのか安らかな顔をして眠っているようだ。よく見ると目元にクマができてた。

気まぐれに指でクマをなぞってみた。ピクッと目に力が入ったがほんの一瞬動いただけでそれっきり動かなくなった。

その後におでこに手を当てた。よく薬の後遺症で熱をだす人もいるようだが、彼は大丈夫のようだ。

一安心しておでこから手を離そうとした時、彼の手が私の手に伸びてガシッと掴まれる。
そしてフッと彼が目を開け私を見る。だが何も喋らず私を見てるだけ。

「手を離してください」と言っても無反応。だが手を払おうとしてもしっかりと掴まえられ離すことができなかった。

溜め息が漏れる。開店する1時間前まで眠ろうとしたのに、このままじゃ寝る事ができない。

・・・仕方ない。ここで寝るしかないと腹にくくる。
ソファーは背もたれが倒せるソファーベットになる仕組みになってるので、手を繋がれたまま作業をする。そして近くにあった少し厚めの毛布を取りだし彼の横で眠る事にした。




+++++++++




・・・肩が熱い。
・・・頭が重い。そして寒い。

・・・誰かが俺を呼んでる。だが雨の音で何も聞こえない。疲れて目も開けられない。
・・・イテテ!腕を動かさないでくれ!でも声がでない。
・・・ぐぅ。手当てしてもらってるのはわかるが激痛だ。訴えたくても悲鳴ですら声が上がらない。
・・・チクッ。なんだ注射か?ヤバイ何をされた?麻薬か?・・・いや、麻酔だな・・・意識が遠くなる...


・・・外が騒がしい。俺は何処にいる?
未だに目が開けれない。意識も未だに朦朧としている。
虎政は大丈夫か?小虎は無事に隠れ家に着いたか?


いつの間にか眠ってた。辺りは静かだな。
!・・・なっなんだ?目元に何か触れた!?
・・・次は額に?・・・ああ、きっと俺の世話をしてくれた奴の手か・・・

なんとか動け俺の体!
おっ手を掴めた。話がしたい。この手を離すものか!

自分の目が開いた気がする。でも目の前は真っ暗だ。目は開いてるだろうが何も映らない。

・・・ん?俺は今どうなってるのだ?掴んだ手の主がゴソゴソ動き出してる。掴んだ手が離れないと理解したのか力が入ってない。

んん???なんだか隣が、主に右肩が暖かいぞ?・・・もしかして添い寝されてる?それになんだか甘い良い匂いがする。 
だが女性なら必ずある胸が当たらないって事は男性か?
ぐぐぐっ・・・男性に添い寝されるなんて無様。だが仕方ない、俺が手を離さなかったのが悪いのだから・・・

だが、別に悪い気はしない。何より良い匂いがするし、柔らかくはないがゴツいわけでもないから気にならない。
とりあえずこの動かない身体をなんとか・・・しな、いと、な・・・・・・ぐぅ。







++++++++






夜9時。
携帯がピピッピピッとアラームが鳴る。
まだ寝たいとモソモソと身体を丸めたりくねらせたり動き出す。
そして、ふと左側に暖かい抱き枕に抱き着く。
・・・ん?暖かい?
目がパチッと覚める。すると昨日拾った怪我してる男性に抱きついてしまっていた。
驚いて飛び起きる。彼は目を覚ましてないだろうか?一気に身体が火照る。顔はゆでダコだ。思わず顔を手で覆う。
ん?仮面がない。
辺りを見渡す。
あった。私の右側に無造作に置いてあった。

軽く髪を手でとかし仮面を着けてソファーから起き上がる。
少し乱れてしまった毛布を彼にかけ直し、顔を覗く。昨日よりは顔色は良くなっていた。

一安心して開店準備をしに1階へ降りる。

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