4 / 29
第3話 彼の世話をする
しおりを挟む「なぁ、今だけ仮面とってくれよ。いつも着けてて息苦しいだろう。」
「ああ・・・久々に仮面なしでお話しましょうか。」
仮面を取り、壊さないよう収納する。
「ほんと・・・昔と変わらず美形だな。」
「美形の基準がわからないから、そんな事いわれても何とも思いませんよ。」
「天然美形様は大変だな。まぁその美形顔を知ってるのは数知れてるがな。」
「あぁ、あの人たちとは最近顔合わせしてないので、元気にしてるかさえわかりませんよ。」
「たまには顔だしたらどうだ?たまに犬神さんが来るが万理衣さんの事気にしてたぞ?」
「集合がかかれば行きますよ。それ以外は・・・今のままで充分です。」
「・・・戻る気は更々ないって事か。まぁ本人がそう言うならしかたないか。」
それから世間話をして、少し昔話をして、充実した時間を過ごした。
晶さんが帰っていき、辺りは静かになった。使った調理器具や食器を洗うカチャカチャという音だけが辺りに響く。
今日は昼頃から天気が回復すると天気予報士が言っていたので、料理の下ごしらえを始める。
昼が過ぎ開店準備が終わり一息いれる。
今お気に入りなのは梅昆布茶。粉末タイプなのでお湯を入れるだけですぐ飲める。
何もせずボケッとしていると眠気が襲ってくる。
眠る前に軽くシャワーを浴びてベッドへ潜り込みたい。
けど、とりあえずシャワーを浴びたら怪我人の様子を伺わなければならない。気付いたら死んでましたーなんて絶対に回避したい!
シャワーを浴び髪を乾かし、一応仮面を着けて彼の様子を伺いに行く。
すると薬が効いてるのか安らかな顔をして眠っているようだ。よく見ると目元にクマができてた。
気まぐれに指でクマをなぞってみた。ピクッと目に力が入ったがほんの一瞬動いただけでそれっきり動かなくなった。
その後におでこに手を当てた。よく薬の後遺症で熱をだす人もいるようだが、彼は大丈夫のようだ。
一安心しておでこから手を離そうとした時、彼の手が私の手に伸びてガシッと掴まれる。
そしてフッと彼が目を開け私を見る。だが何も喋らず私を見てるだけ。
「手を離してください」と言っても無反応。だが手を払おうとしてもしっかりと掴まえられ離すことができなかった。
溜め息が漏れる。開店する1時間前まで眠ろうとしたのに、このままじゃ寝る事ができない。
・・・仕方ない。ここで寝るしかないと腹にくくる。
ソファーは背もたれが倒せるソファーベットになる仕組みになってるので、手を繋がれたまま作業をする。そして近くにあった少し厚めの毛布を取りだし彼の横で眠る事にした。
+++++++++
・・・肩が熱い。
・・・頭が重い。そして寒い。
・・・誰かが俺を呼んでる。だが雨の音で何も聞こえない。疲れて目も開けられない。
・・・イテテ!腕を動かさないでくれ!でも声がでない。
・・・ぐぅ。手当てしてもらってるのはわかるが激痛だ。訴えたくても悲鳴ですら声が上がらない。
・・・チクッ。なんだ注射か?ヤバイ何をされた?麻薬か?・・・いや、麻酔だな・・・意識が遠くなる...
・・・外が騒がしい。俺は何処にいる?
未だに目が開けれない。意識も未だに朦朧としている。
虎政は大丈夫か?小虎は無事に隠れ家に着いたか?
いつの間にか眠ってた。辺りは静かだな。
!・・・なっなんだ?目元に何か触れた!?
・・・次は額に?・・・ああ、きっと俺の世話をしてくれた奴の手か・・・
なんとか動け俺の体!
おっ手を掴めた。話がしたい。この手を離すものか!
自分の目が開いた気がする。でも目の前は真っ暗だ。目は開いてるだろうが何も映らない。
・・・ん?俺は今どうなってるのだ?掴んだ手の主がゴソゴソ動き出してる。掴んだ手が離れないと理解したのか力が入ってない。
んん???なんだか隣が、主に右肩が暖かいぞ?・・・もしかして添い寝されてる?それになんだか甘い良い匂いがする。
だが女性なら必ずある胸が当たらないって事は男性か?
ぐぐぐっ・・・男性に添い寝されるなんて無様。だが仕方ない、俺が手を離さなかったのが悪いのだから・・・
だが、別に悪い気はしない。何より良い匂いがするし、柔らかくはないがゴツいわけでもないから気にならない。
とりあえずこの動かない身体をなんとか・・・しな、いと、な・・・・・・ぐぅ。
++++++++
夜9時。
携帯がピピッピピッとアラームが鳴る。
まだ寝たいとモソモソと身体を丸めたりくねらせたり動き出す。
そして、ふと左側に暖かい抱き枕に抱き着く。
・・・ん?暖かい?
目がパチッと覚める。すると昨日拾った怪我してる男性に抱きついてしまっていた。
驚いて飛び起きる。彼は目を覚ましてないだろうか?一気に身体が火照る。顔はゆでダコだ。思わず顔を手で覆う。
ん?仮面がない。
辺りを見渡す。
あった。私の右側に無造作に置いてあった。
軽く髪を手でとかし仮面を着けてソファーから起き上がる。
少し乱れてしまった毛布を彼にかけ直し、顔を覗く。昨日よりは顔色は良くなっていた。
一安心して開店準備をしに1階へ降りる。
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる