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番外編2

ジェミーはお嬢様が大好き③

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ちょっと、遅くなりました



*********



さらに月日が経ち、ミヤルカーナ様が6歳になった時、事件が起きた。

庭でお嬢様(普通はお嬢様を名前呼びしないらしいので直した)と散歩をしていると、私が一瞬目を離したら近くで『ドボンっ』と何かが水の中に落ちた音がして、そちらを見たら………お嬢様が池で溺れていた。大声を出して助けを呼び庭師や執事がお嬢様を池から救い出してくれ、急いで部屋へお連れし服を脱がし体を拭き着替えさせ医者に診てもらい安静にさせるよう言われた。

私はずっとお嬢様の側を離れず看病をした。何でお嬢様から目を離してしまったのだろう、何故もっとお嬢様の側にいなかったのだろう、と罪悪感からずっと悪い方へ考えて自分を追い詰めていった。
侍女長や奥様に慰められたり、看病の交代を頼まれたが全て拒否しお嬢様の側を離れなかった。お義父さんがいつものようにお迎えにきてくれたが、私がお嬢様の側にいたいと言ったら、頭を撫でられ「じゃあ、しっかり看病をしなさい」と言われた。怒られると思ってたのに、一発殴られるかと思ったのに………何も言わず、「ジェミーが看病すれば大丈夫」と励まされ微笑まられた。
今まで張り詰めていた気持ちが涙に代わり溢れかえって泣いてしまった。

「お嬢様が目覚めなかったらどうしよう!」
「大丈夫だ。ジェミーが看病してるんだ。もうすぐ目を覚ますさ。」
「うぅぅ、私が目を離したから……」
「完璧を求めるものじゃない。予想だにしていなかった事だ。ジェミーはいつもお嬢様を気遣いいつもお嬢様の事を思ってるじゃないか」
「でも……」
「大丈夫だ。お嬢様が目を覚ましたら今以上に誠心誠意尽くせばいい。お嬢様は非道なお方ではないだろう?とても優しい方だから大丈夫、大丈夫だ」

お義父さんに抱きしめられ慰められた。
血の繋がらない父子だけど、お義父さんの言葉はすぐに受け入れられた。
それからお義父さんの言葉を励みに看病を続けた。
仮眠をとりながら懸命に看病を続けた。

そして一週間後、お嬢様が目を覚ました。
思わずお嬢様に抱きついて泣いてしまった。謝罪したら「ジェミーは心配性なんだから。」と言って笑って許してくれた。
それから通りすがった侍女が伝達したのか公爵様に公爵夫人、ノアルーア様にカタリアーナお嬢様(只今2歳。ミヤルカーナ様の妹)がお嬢様の部屋にお見舞いに来た。すると………

「ご迷惑おかけしましたわ。申し訳ございません。」
「「「「「………………」」」」」

い、今、お嬢様が、お嬢様がっ!
あ や ま っ た …………っ!
あのわがままお嬢様が、傲慢な態度しかとらないお嬢様が………謝った。これは、医者に診察してもらうべきかしら……
でも、無事に熱が下がり食事も召し上がっていたので、様子見となった。

私とお嬢様二人だけになり、飲み物の用意をしていると、変な質問をされた。なぜ家族が駆けつけてきたのかって?それはお嬢様が心配だったからじゃありませんか!その他に理由なんてありませんよ。え、理由がわからない?まぁお嬢様は鈍感なのでしょうか?いや愛されて当たり前というお考えだからわからないのでしょうか?なら私から説明いたしましょう!
え?公爵様が泣くなんて有り得ない? え?ノアルーア様も有り得ない? 終いには「何故なの?」と困惑した顔で聞いてきた。 お嬢様はどうされたのでしょう……

……お嬢様、気付かれておられないのなら教えましょう。


ある日、まだカタリアーナ様が幼いため、4人で参加した夜会での事。
複数の貴族が集まるところでは、公爵という高い身分の旦那様たちは貴族の仮面をつけ、どんな場面でも感情を表さず弱みを見せないよう平素を装わなければならない。
私はミヤルカーナ様の身の回りの手伝う為、着いていき会場で走り回っていた。そして、聞いてしまった貴族の会話を……

「ドルドムガン公爵は威厳に満ちて、貴族の鏡ですね。」
「ですが………あぁ!なんとも勿体ない方たちだ!」
「そうですよね。でも……あの姿・・・を見た時は……もう言葉に表せません」
「私はまだ見た事がないんですよ~。いやぁタスタム伯爵は羨ましいですね~!」

………なんか、凄いことを聞いてしまったわ。
なんでも、旦那様たちはある程度会場で時間を過ごした後、少し席を外す時があるらしい。そこで控室や中庭で貴族の仮面を外し家族で和気藹々と過し、少し経ったらまた貴族の仮面を着けて会場に戻るらしい。
その和気藹々と過してる姿を目撃すると、その人の家族と生涯おしどり夫婦で暮らせるというジンクスが貴族の中で広まってるらしい。
そのことを奥様に話したら「知ってるわ。恥ずかしい話ねぇ」とおっとりとした返事が返ってきた。そして

「でもね、ミヤちゃんが生まれる前は他の貴族と同じように仮面夫婦かってほど仲良くはなかったのよ」
「え?」
「ふふふ。今じゃそんな面影も感じないでしょう?でも、ミールに聞いてみるといいわ。」
「………そうなんですか」
「でね、おしどり夫婦と言われるようになったきっかけがね、ミヤちゃんなのよぉ~」
「え!」

奥様に話を聞いて驚愕した。まさかお嬢様が夫婦の中和剤?のような存在になってたとは……

なんでも?少しでもなにかあるとギャン泣きしていたらしい。二人が仏頂面になるとギャン泣き。不穏な空気を感じるとギャン泣き。夜も二人が別々で寝るとギャン泣き(川の字で寝ないと泣き止まない)。とにかく、二人が仲良くしないと泣いて泣いて手に負えなくなるらしい。そこで旦那様も奥様も形だけでもと仲良くしてたら、いつの間にか本当に互いに思い合うようになったらしい。
ただ、家の外ではそう仲良く接すると公爵の威厳がなくなるという理由でいつものように仮面夫婦のように行動するようになったらしい。
でも、今まで仮面夫婦でよかったものが夫婦仲が良くなると同じ会場にいるのに別行動するのが、なんだか違和感というか不安感というか、ソワソワしてしまい、休憩室で内緒で逢瀬を重ねるようになったようだ。
それが隠れて家族でスキンシップをとるものだから、他の貴族からしたら「夫婦仲は良いが貴族の威厳を守るために本来の姿を隠してる」姿を貴族の鏡と称し、さらにその姿を見たものは幸せをもたらされると誰かが言い出したものが尾ひれが付き「公爵家のおしどり姿を見たものは生涯伴侶と幸せに遂げられる」と言われるようになったとらしい。
中には「世間視なぞ気にせず堂々としていれば良いのに、なんとも勿体ない」と言う人もいるらしい。だが旦那様が今のスタンスを崩す事が今更できないらしい。

「それからよ。実はね、私は3人目は望んでなかったの。でもね………いつの間にかできちゃってたの!」
「………奥様、それは絶対に口に出してはいけない事だと思います」
「うふふ。ジェミー内緒にしててね。でもリアちゃんが生まれて嬉しかったわぁ。二人してリアちゃんを溺愛よぉ~!もちろん、ノアにミヤちゃんも可愛い子たちには変わりないけどねぇ~!」
「はぁ……」


奥様……いろいろと私に暴露してますが大丈夫なのかな?
でも、うん、これを聞けば確かにお嬢様が中和剤の役割をしたんだなと思える。
今は………自分の口で言いたいことをはっきりと言えるので周りがてんやわんやしてますがね……
でも、貴族平民関係なく、夫婦仲は良いほうがいいよね。


………と、回想が長くなってしまったが、その出来事を話したらお嬢様がポカンとした顔で私の話を聞いてました。
お嬢様、池で溺れたショックでおかしくなりましたか?
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