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番外編…他視点
お兄様はやっぱりお兄ちゃんだった③
しおりを挟むアレキウスいわく、お兄ちゃんはユーリオン殿下に付きっ切りで手が空かなくなり代わりにアレキウスが迎えに来てくれたみたい。
は、初めてアレキウスと二人っきりなんですけどっ!え、どうしたらいいの?
前世の16(正確には18?)年分の人生+現世の12年分の人生で私これでも28年分の人生を送ってるんだけど………恋愛事は皆無で、いろんな意味で真っ新な私であって………どうしたらいいの?
私、前世の友達と恋愛話は沢山したけど現実はロマンスのロの字すら付かないドロドロの昼ドラの様な恋愛事が多いと聞くんだけど?どうなんだろう?てか、現世に知り合いと言えば攻略者3人に義父母に家庭教師の先生しか知らないんだけど?
………あれ?これって俗に言う『箱入り娘』では……?
「ルーチェ?どうした?」
「っ!あ、いえ………今日、たくさんの方たちに話しかけられまして、少し疲れてしまいました。」
「そっか……まぁあいつが悪いよな。」
アレキウスさん、あいつって誰ですか?
いや、アレキウスが言ってる人物に心当たりがないわけではないんだけど……ほんと、お兄ちゃんとアレキウスって仲良いよね~。
「アキラウルってルーチェと血の繋がりは無いんだよな。なのに本当の妹の様に過保護に構ってて………それで親愛なる感情しかないとか信じられないよな~」
「ふふ。お兄様はとても私に良くしてくれます。孤児院で育った私を養子にと求めてくれたのもお兄様ですし。とても尊敬してますわ!」
「そうか……」
「それに私は気になる方がいますので………」
「えっ!?そ、それは誰っ!?」
「キャッ!?」
お兄ちゃんとの過去の事を思い出しながらポロッと独り言を零したら何故かアレキウスが過剰に反応して両肩を掴まれ迫られた。
そしてアレキウスの行動に驚いて悲鳴を上げた数秒後にお腹に腕を回され引っ張られアレキウスと距離が取れた。あ、この腕は………
「テメェ…………人様の妹に何迫ってやがるんだぁ?」
「わぁー!誤解だからっ!」
「ルーチェ大丈夫か?あいつ馬鹿力だから力加減ができないんだ。………肩、痛くないか?」
「あ、うん………すこしズキズキするけど少しすれば治まるよ。」
「………………アレキウスに頼んだ私が馬鹿だった。もう2度と奴に俺の妹を頼まん。」
「えー!?それは横暴だ!」
「…………………ア?」
「い、いえ………以後気をつけますのでルーチェの傍に寄ってもよろしいでしょうか?」
「……………………ルーチェ次第だ。」
「え、あ………私は構いませんが………あ、アレキウス様、先程のは独り言ですので忘れていただけると有り難いのですがっ!」
「え、あ………あ~……うん、わかりました。」
「独り言?」
「はい。独り言ですので何の意味もありませんのでお兄様はお気になさらずに。」
「そうか………それでは家に帰ろう。きっと母上が待っているだろう。」
「はいっ!」
なんだかこうして会話していると乙女ゲームに出てくるアレキウスとアキラウルの人物像が崩れていくのは気のせいかしら………?
現宰相であるパルバハム・シルフリーフ侯爵の嫡子アキラウル。確か冷徹でいつも微笑を浮かべて何事にも動じない完璧人間だったよね?そんな彼が兄の生まれ変わりだからか喜怒哀楽がわかりやすいし、いつも満面の笑みを浮かべてるから………冷徹という言葉が当て嵌まらないんだけど?
そして国王陛下の護衛騎士の騎士長を務めているルーライン・ギーラム公爵の息子で次男であるアレキウス・ギーラム。長男は剣術の才能がない代わりに頭が良く、公爵家領主となる為に日々勉強中。次男のアレキウスは頭の方は何処かにネジを何本か母胎に置いてったのではないかと言うほどお馬鹿で、代わりに剣術の才能がずば抜けて良かったのでユーリオン殿下の護衛騎士をしている…………はずなんだけど。今のアレキウスは頭も護衛としての剣術も完璧人間に成り果てているのだ。性格はゲーム通りおおらかで明るいのだが頭脳がお兄ちゃんに並べる程の才能がある。
かなり前に「アレキウス様はとても頭が良いのですね」って言ったら「お~。滅茶苦茶頑張ってるからな~。アキラウルに認めてもらうためにな~……」って返事が返ってきたんだよね。………なんでお兄ちゃんに認めてもらう必要があるのかわからないけど、お兄ちゃんが何かしたのかアレキウスは頭が良くなっていた。
そしてユーリオン殿下については………
「アキラウル!俺様を置いて何処へ行ったのだ!」
「…………………………………………はぁ。」
「はは………ほんと、殿下はアキラウルにベッタリだよな~。」
変わらず乙女ゲーム通り俺様な王子様となっている。それに対してお兄ちゃんがうんざりしたような顔で声のした方を向いている。……私を何故か後ろに隠して。そしてアレキウスもそれにつられて声のした方を向いていた。
………お兄ちゃんも頑張った(?)らしい。聖人君子のように良き王太子になってもらえるよう四六時中ずっと傍にいてあれやこれやと手を焼いて面倒をみた(?)らしいんだけど、なかなか暴君な性格は変わらず幼い頃のトラウマがあるためか人嫌いな所もあり常にユーリオンの傍はアキラウルとアレキウスしかいないみたい。
お兄ちゃんがユーリオンに色々と世話を焼いているのは私のためらしいんだけど、どうしてなのかな?でも、お兄ちゃんのする事は何か訳があるだろうから何も言わない。言わないけど………
「アキラウルここにいたかっ!………ん?アレキウスに、アキラウルの妹か。………またお前は妹の為に動いてるのか。アレキウスがいるのだから妹なぞ放っておけばいい!アキラウルは俺とこれからバイオリンの練習をするはずだろっ!さっさと行くぞ!」
そう言ってお兄ちゃんの腕をぐいぐい引っ張り出した。そして何故かユーリオンに睨まれてる私。
そう、何故かユーリオンに私は嫌われてるようなのよね~。
でも、私の腐女子の勘が言ってるの。『ユーリオンはアキラウルお兄ちゃんの事を独り占めしたい』って。つまり……ユーリオンはお兄ちゃんの事を恋愛として好きなんだって事!
お兄ちゃんはユーリオンを癇癪を起こした子としか思ってないみたいだけどユーリオンは明らか私に敵意剥き出しだし私から離そうと必死なのよね~!
なんでBでLな展開になったのかわからないけど私的には生で拝めるのが嬉しくて仕方がないのよねぇ~!
うふふっ!ちょっとユーリオンをからかってやりましょう!
「お兄様……お忙しいのですね。でも、お兄様に家まで送ってもらいたいです………」
「ルーチェっ………………!」
ふふ。お兄ちゃんって前世でもそうだったけど私に凄く甘いから遠回しでお願いすると私優先にしてくれるんだよね!
あぁほら、ユーリオンの手を振り切って私の所へ来てくれた。
だから私はお兄ちゃんに絶対の信頼を寄せている。お兄ちゃん程、私を第一に優先してくれる人はいないから。
「アキラウル!」
「殿下、私は妹を家に送り届けてきます。ですので殿下はアレキウスと行って下さい。私も後に参ります。」
「なっ……!」
「はいはいは~い。殿下行きましょう~間に合いませんよ~あの先生時間に厳しいのでね~」
「ちょ待っ!ア、アキラウルっ!早く来るのだぞっ!!」
「…………………はい。」
ユーリオンがアレキウスに引きずられるように館へと向かう姿を私は唖然と眺めてしまった。
………え?ユーリオンって殿下だよね?次期国王になるお偉いさんだよね?……あんな、我儘な子を連れてくような、あんな態度とって良いの?
「あぁ………ルーチェの言いたい事はわかるが、今はまだ日本で言う中学生だ。まだまだ餓鬼なんだよあいつは。………さぁ家に帰ろうかルーチェ。」
「あ、うん………」
お兄ちゃん、さらっとユーリオンを餓鬼って………餓鬼扱いですか。
でも今ってユーリオン13歳だよね?……あ、お兄ちゃんからしたらまだ子供か。お兄ちゃん精神年齢かなり上だし。……うん、仕方ないのかも。
それにしてもアレキウスもなんだかユーリオンに親しそうだし、やっぱり乙女ゲームの人物であってそうじゃないんだなって改めて思う。やっぱりゲームの世界であって現実はちゃんと一人ひとり実在するし個々があって当たり前だよね。
………うん。なんか未来に起こるゲームのシナリオはシナリオ通りに行かなそうね。
それにユーリオンはきっと………
__________
「お兄ちゃん!!」
「ぐはっ!?」
ある日、お兄ちゃんが朝帰りしてきた。いや、時間的に昼なのだが。
ユーリオンが乙女ゲームのメイン会場となる学園の高等部へと進学し、暫くしたある日の出来事だった。
珍しく夜の食卓にお兄ちゃんがいなくて、義父母に聞いてみたら事情があり城に一泊したという。
………事情とは一体なにがあったんだろう?
そしてお兄ちゃんが帰宅した時、思わずお兄ちゃんにタックルしてしまった。………お兄ちゃんから悲鳴があがった。どうしたんだろう?いつもならしっかりと受け止めてくれるのに。
「お、お兄ぃ……大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。すまんな受け止めきれなくて、情けない。」
「ううん!そんなことない!だ、だって……体調悪いでしょ?」
お兄ちゃんが私を受け止められなかった原因にいち早く感づいてしまった。だって………く、首筋に赤いものがっ!!
それでも私に怪我をさせない為か倒れても私をギュッと抱きしめて自分をクッションにしてくれた。おかけでドレスに少し土が付いた程度に済んだ。ほんっとお兄ちゃん優し過ぎるっ!
すぐに執事のセバスが私とお兄ちゃんを起こしてくれた。そして客間に案内されお兄ちゃんと行くと両親が座ってた。
そしてお義父様に席を外せと言われてお義母様と一緒に客間を出て二人で庭園に来た。
「ルーチェ。学園はどうですか?来年はあなたも高等部へと進級するのですよ。」
「はいお義母様。今は仲良くさせて頂いている方々がいますし、学ぶことは沢山ありますが、楽しく過ごさせて頂いてます。」
「そう、それは良かったわ。」
「あの……お兄様は何かあったのでしょうか?」
「……えぇ、そうね。簡潔にまとめれば、殿下が我儘を言い陛下はそれを黙秘して周りに迷惑をかけているって所かしら。主に息子が一番の被害者ね。」
「お、お兄様が…………」
お兄様に何かあったのはお義母さんは知ってるようだ。けど私には言えないって事かしら?
………それからお兄ちゃんは週に何回か朝帰りする日ができた。多分、ユーリオンの相手をしているのだろう。たまに2日間家に帰ってこない事もあった。
心配になってお兄ちゃんに大丈夫か聞いてみたら
「……ルーチェもユーリオン殿下の幼少期を知ってるだろう?それをあいつは拗らせて俺とアレキウスしか傍に寄らせなくなってしまってな………俺が構いすぎたせいなのか、なんだかゲームのユーリオン以上に我儘な気がするんだが……いや、気のせいだろう。まぁ、ルーチェの為にもう少し頑張ってみるよ。俺のことは気にしなくて良いからな。でも有り難うなルーチェ。」
…………お兄ちゃんって鈍いのかしら?
明らかユーリオンがお兄ちゃんを独占したいがために我儘言って拘束してるとしか思えないんだけど……
てかお兄ちゃん、もう私知ってるから。お兄ちゃんがユーリオンに抱かれてる事。お兄ちゃんは何故か私に知られたくないようだけど、お兄ちゃんの行動見てると何となく察しちゃうから。
家にいる時、よく腰に手を当ててるし。
学園でたまに姿を見ると、お兄ちゃんに寄り添うようにユーリオンがお兄ちゃんの腰に手を当てて、傍から見てラブラブカップルに見える位ベッタリしてるし。
そして私とお兄ちゃんとユーリオンの3人でいる時、滅茶苦茶ユーリオン私を睨んでくるし。それ私に威嚇してるよね?ごめんなさい、怖くないです。お兄ちゃん、ユーリオンにバックハグされて鬱陶しそうにしてるよ?大丈夫かな………あ、ユーリオンの鳩尾にお兄ちゃんの肘が綺麗に入った。ユーリオン痛そう………
ユーリオン頑張れ!お兄ちゃんを落とすのは至難の業だよ!
でも、なんだか可哀想だからアドバイスしてあげた。
不敬かもしれないけどユーリオンの腕を引っ張りお兄ちゃんから距離を取り「お兄様は果物がとてもお好きですよ。特に林檎が好きなようです。さり気なく差し上げてみると喜びますよ。」と耳元で囁いてみたら「う、うむ………そうなのか?いや昼食の時に確か……」と心当たりがあるのか私のアドバイスを素直に受け止めてくれた。………意外と素直?いや、多分お兄ちゃんの事だけだと思う。
後に「何故アキラウルの妹にそんな事言われねばならない!不愉快だ!」とご立腹な声で怒られたが私に背を向けてお兄ちゃんの元に戻る姿がご機嫌なのがわかる程ウキウキしてるのが分かる。あ、これは結構面白……コホン、良いかも。
是非ともお兄ちゃんを落としBでLなリアルな姿を拝ませてください。切に願いますっ!
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