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番外編…他視点
お兄様はやっぱりお兄ちゃんだった①
しおりを挟む妹視点になります。妹視点なためNL話になります。
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「お兄ちゃん大好き~!」
「俺も光の事好きだよ。」
お兄ちゃんは世界で一番格好いい理想的な男性!血が繋がってなかったら結婚したいくらい好き!大好き!
けれど、事故だったとしても、私を庇ってこの世からいなくなるなんて思いもよらなかった。
ずっと傍にいると思ってた。互いに結婚しても、パパママがいなくなったとしても、ずっとずっとお兄ちゃんは私からいなくならないと思ってた…………
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私は御子柴光。16歳。今年の春に高校生になったばかりのピチピチの女子高生。
私には5つ年上のお兄ちゃんがいる。御子柴明っていうの。
一度も染めたことのない艶々な黒髪に少し垂れ目で天然な藍色の瞳が魅力的。鼻筋がすっとしてて彫りの深い顔立ち。178cmで程よく筋肉が付いた細マッチョな体型。
どこの誰が見てもイケメンなお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんの傍にいつも私がいる。妹だから。何故かお兄ちゃんは私の事をこっそり陰で「天使」と呼んでるのを知ってる。
確かに周りからは「美形兄妹」と言われてるのは知ってるよ。
でも、私はお兄ちゃんほど美形ではないと思うんだよね。
黒と金を混ぜた感じの明るめの茶髪にふわっと内巻きの癖毛の髪。瞳も日本人特有の焦げ茶色の、くっきり二重の目をしている。鼻もそんな高くない普通の鼻、輪郭も普通だと思う。
お兄ちゃんは間違いなく美形だけど。
お兄ちゃんはいつも人の輪の中心にいて皆に頼られている。学校では学級委員長になったり、中・高と生徒会長になったりしてたみたい。5歳も離れてるから学校が一緒だったのは小学生まで。凄く寂しかった……
でも、どんなに人気者でも一番に私の事を想ってくれていた。
勉強はもちろん、買い物も「新しく出来た喫茶店に行きたい」と言えば予約とってまでして連れてってくれる。新しいワンピースが欲しいと言えば可愛いお店を探してくれて連れてって好きなものを選ばせてくれる。勿論お兄ちゃんに似合うか聞いて意見を聞いてる。例え私が凄く気に入っても「光には、これは黄色より緑の方が似合うよ」ってやんわり否定して変わりのものを選んでくれる。お兄ちゃんのコーディネートは何故か絶対外したことがないからお兄ちゃんの言う事は聞いてる。
お兄ちゃんは私を甘やかしもすればちゃんと注意してくるし間違いをちゃんと正してくれる。
きっと私はお兄ちゃんがいなかったら生きていけないと思う。
ある日、高校で仲良くなった友達からあるゲームを勧められた。アクション系は苦手ってのを知ってか、友達が勧めてきたものは恋愛シュミレーションゲーム、つまり乙女ゲームだった。
乙女ゲームにはあまり興味が惹かれずスルーしてたんだけど、やってみたら………ハマった。
すっごく面白い!今まで何で触手が伸びなかったのか自分でも不思議な程ハマってしまったのだ。
『俺様は王太子である~暗い過去から癒やしの光を~』
タイトルは………厨二病?なんか意味がわからなかったけど、このゲームは攻略対象者が3人いる。俺様な王太子、冷徹な宰相の息子、陽気な護衛騎士の息子、この3人だ。当たり前だが王道で3人とも性格がバラバラ。
見た目は護衛騎士の息子が好きかな。でも攻略していくと……脳筋なのが浮き彫りになってきて……う~ん。
宰相の息子さんは……なんだかお兄ちゃん見てるみたい。いつも王太子様の後ろについて控えめな笑みを浮かべていて……あ、でも好感度上げていくうちに優しそうな笑みで微笑んできて……格好いい。
王太子様は………うわぁ、やることが我儘三昧。身分の低い貴族にはとことん見下し高い貴族には愛想振りまいて……あ、でも俺様な性格の裏を知ってくと……切ない。なんか凄く魅入っちゃう。
3人とも魅力があって凄くやり込んじゃった。
……けど、初めてだからかな?ノーマルとトゥルーエンドしかできなくて、しかも王太子ルートの好感度が上がりにくくて苦悩する。
あれ?この答えであってるよね?あっ!このルートに入ったらトゥルーで終わる!じゃあ違う答えを……あ、ノーマルで終わっちゃった。む~………難しい。
スマホで調べれば簡単だけど、カンニングはしたくないな~………
……………あ!お兄ちゃんに手伝ってもらおう!よし、明日は休みにだし、明日の朝にでも……あ、でもお兄ちゃん社会人だし、乙女ゲームなんてわからないよね……どうしよう。
でもこれ全部のエンド見たい!特に王太子ルートのハッピーを見たい!もうドキドキが止まらない!
「お兄ちゃん!私、運命の人を見つけた!」
「…………………………。」
朝、興奮冷め止まないまま誤解しかねない言い方でお兄ちゃんに口走ってしまった。
でも、お兄ちゃんの呆気とした顔を見たのは幼い頃以来なので貴重な表情を見れて幸福感で一杯になった。
……後に私が話しかける前に飲んでたコーヒーを自分の膝にこぼしてしまい絶叫している姿にまた萌えてしまったのはご愛嬌ということで。
のちに何事かと詰められたが、恥ずかしくてモジモジしながら説明したら手伝ってもらえることになった。お兄ちゃん優しいっ!
それから何週間かして全クリアした。流石お兄ちゃん!
王太子ルートのハッピーエンド……やはり王子様って感じにトキメいた。やはり膝を折って目線を低くして手を掴まれプロポーズする姿は………キャーーー!格っっ好いい!
「やったぁ!これで全EDクリアしたね!有難うお兄ちゃん!」
「あぁ………良かったね光。」
……………その時のお兄ちゃんの笑顔は一生忘れない。
気付いたら白いベッドの上に私が寝ていて、鼻にチューブを付けられ、点滴を打たれていた。周りは静かで電子音がピッピッという音が響いていた。
辺りを見回すと、辛うじてここは病院で、ここは集中治療室の中だって事がわかった。辺りは薄暗く、大きな窓の向こうには看護師さんがパタパタ忙しなく動いてる姿が見えた。
一体、私はどうしたんだろう?というか私の今の状況は………?
しばらくして、状況がはっきり?掴めた。
どうやら私は幽体離脱しているようだ。集中治療室の天井にフワフワと風船の様に浮いていて、そこから動けないでいた。
集中治療室って防音なのかな?電子音しか聞こえないんだけど……?
「ひかり………お願い、目を覚まして……光までいなくなったらお母さんはどうしたらいいの………?」
あ、防音かと思ったらか細い声が窓の外から聞こえた。意識だけそちらに向けると両親がいてお母さんが泣いていた。それに寄り添って、いつも忙しく中々会えないお父さんもいた。………あれ?お母さん、あんなに細かったっけ?……それにお父さん、あんなに白髪あったっけ?
『ミコシバヒカリさん、で合ってるかな?』
「え…………?」
突然響いた柔らかそうな声が聞こえてきた。未だに幽体離脱のまま体を動かせない状態で意識だけ声がする方へ向けた。
『中々キミの魂が来ないから迎えに来ちゃった。……けど、なんか不思議な事になってるね?』
「………?」
『魂は確かに体から離れてるのに体の方はまだ生き続けてるね。……だからか~中々僕の所に来なかった理由は~………』
「あの………?」
なんだろう?幼い男の子の声が聞こえるけど姿が見えない。一体この声はなんなのだろう?
『あ、説明するの忘れてた。初めましてミコシバヒカリさん。僕は空想の世界を司る神なんだ。それでね、本来は君は2年前に亡くなって魂が僕の所に連れてこられて、新しい僕が作った世界に転生してもらう予定だったんだ~。』
「………はぁ。」
『………あれ?気付いてない?えっと、君が今の状態になってもうこの地球の世界では2年が経っているんだよ。』
2年………2年っ!?え、私は2年もずっと幽体離脱していたの?そして今見ている私の体は2年間ずっとこのままだったって事!?
………だからお父さんお母さんが老けたというか、変わったように見えたんだ~……
2年……なんで私はそんなに眠っているんだろう。
『それは簡単な話だよ。本来君の寿命は16年と決められていたのに、今まで生き延びているからだよ。』
…………本来私は2年前に死んでいたらしい。あの地震で、本当は私は死んでいたらしい。
………あれ?そういえば両親の姿は見えてたけど、お兄ちゃんは?
『そう。本来、ミコシバヒカリが死んで僕の元にくるはずだったのに、何故か君の兄、ミコシバアキラの魂の方が来ちゃったの。………つまり、君の代わりに兄が死んだって事だよ。』
「………お兄ちゃんが……し、死ん、だ……?」
『そうだよ。も~びっくりしちゃったよ。死を司る神が間違えて君の兄の方を殺しちゃってね~………まぁあの子のせいってだけじゃないんだけどね?』
『ミコシバアキラくんがね………強く願ってたみたいなの。「妹だけは助けてくれ」って。かなり強い念を感じて死神くんの手元が狂っちゃって妹じゃなく兄を殺しちゃったわけ。………なんかゴメンね~』
神様が何か言ってる。
…………けど今の私は、あの優しい大好きなお兄ちゃんが死んだって事に衝撃を受け神様の言葉が聞き取れなかった。
お兄ちゃんが死んだ。…………死んだ?死?
もう、会えないって事?え、そんな嘘だよね?何事にも完璧で、いつも自信に溢れてて、病気一つしたことがなくて、いつも私を可愛がってくれてた、あのお兄ちゃんが、死んだ?
『それでね~お詫びと言ってはなんだけど~……今すぐ元の身体に戻してあげれるんだけど、どうする~?』
「………ぃや」
『ん?』
「いや、いや、嫌いや嫌いや嫌っ!お兄ちゃんがいないなんて信じられない!なんで?お兄ちゃんにあんなゲーム、一緒にやらなければ良かったの?なんでなんで?なんでよ!」
『ちょちょっ!?お、落ち着いてねミコシバヒカリちゃん!?』
「嫌よ!お兄ちゃんがいない世界なんて戻りたくない!嫌だ嫌だ嫌だっ!…………ふぇ、ぅうう~~~お兄ちゃぁん………」
『………そっか。じゃあこの世界からオサラバして僕の作った世界に転生する?そこに君のお兄ちゃんがいるよ?』
「………え?」
『君の良く知る乙女ゲームの世界なんだ。本当は2年前に君の魂を迎え入れ、その乙女ゲームの世界へ転生させる予定だったんだよ。ヒロインとして。
………そして、その世界に君のお兄ちゃんは今記憶を持ったまま別人として生きているよ。』
………転生モノの小説も高校の友達に沢山借りて呼んでたから知ってる。しかも私はヒロインとして転生するなんて、未来は波乱万丈な人生を歩む事になってしまうじゃないの。
……………でも。
「わかった。神様の世界に転生する。そしてお兄ちゃんに会う。絶対に会う!」
『そっかそっか!いやぁ~よかったぁ。ヒロイン役にピッタリな子を探してたんだよね~!じゃあ決まり!今すぐ転生させちゃうけど大丈夫~?』
お兄ちゃんに会えるなら転生する!
お父さん、お母さん、ごめんね。いままで大切に育ててくれて有難う!親より先に死ぬなんて親不孝なのはわかるけど……お兄ちゃんがいない世界は考えられないの。
お兄ちゃん……私を庇ってまで助けてくれた命、無駄にしてゴメンね。お兄ちゃんがシスコンのように、私もブラコンみたいなの。だからもう一度お兄ちゃんの傍に行くためにそっちに行くね!
「大丈夫!神様、どうかよろしくお願いします。」
最後に両親の顔を見て感謝の念を飛ばし、次第に浮遊感を感じて暗転した…………
##########
兄がシスコンなら妹もブラコンだったって話(笑)
ちなみに、明の瞳が藍色というのは、御子柴親の母方の血縁者にイタリア人の血筋が混じってるという設定で、隔世遺伝が明の瞳に出たという感じです。
なかなか御子柴家族の話を有耶無耶にしてしまって………話す所がなかったのでここで追記しておきますm(__)m
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