アゲ穴♂は幸せになれるか?

やの有麻

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別れて新たな地へ

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政宗と行動するようになってからは厭らしい目線はまだ感じるが虐めや無理矢理連れてかれる事がなくなったので、少し心にゆとりができるようになった。
それから、いつも俺に付き合ってくれてるお礼として三人に弁当を少量だが作ってくるようにした。初めは驚いていたが弁当の中身を食べ始め喜んでくれたので、この行動は迷惑じゃなかったと安堵する。

夏が過ぎ冬が過ぎ…卒業間近になった。
政宗たちのお陰で授業もなんなく過ごし成績も元に戻った。

「福代…本当にここの大学へ行くのか?」

「はい。」

「…その…嵐山にはこの事は…」

「言ってません。…俺はもうこの街からいなくなりたいんです。…人生を、リセットしたいんです。」

「そうか…その、すまなかったな、何の力に立てなくて…」

「いえ、大丈夫ですので…自分自身で守れなかったのが悪いんですから。」

進路相談での先生との会話。やはり先生にも俺の噂は聞こえていたようだ。
そう、俺は大学へ進学、しかも県外へと行く予定だ。まぁもう推薦でほぼ決まってるがな。
これは政宗たちには話してない。…今度こそ楽しい思い出として心の中に留めたかったからだ。自分勝手かもしれないが俺にとって最善と思い、卒業するまで黙っとくつもりだ。

「…与一は卒業後どーするんだ?」

「…大学へ進むつもりだよ。一人暮らしをするつもりなんだ。家族を説得するの、大変そうだけど、ね。」

「…家族?」

「いつも俺が家事してるから…家政婦がいなくなったら、きっと家はごみ屋敷になるかもしれないからね。引き留められそうだが頑張って説得するつもりだ。」

「ふ、そうか…」

少しヒヤッとした。何処の大学か聞かれたらどうしようかと動揺してしまった。
政宗は俺に甘い。いつも屋上にあるソファーの上で、何故か政宗の股の間に座らされてる。そして後ろから抱き締められているのだ。
細川と服部は昼以外はあまり一緒にいない。「熱々な所に俺たちは邪魔っすからね~」と言われ遠慮しているらしい。…少し恥ずかしい。

政宗とは、恋人ではない。政宗が「俺のもの」とは言っていたが所有物のような感じなのだろうと思う。スキンシップはあるが一度も手を出された事がない。だから、恋人ではないと思う。愛玩動物のような、ほんとそんな感じ。

そして卒業式。
無事に終了して各自下校していく。
そんな中、俺は屋上へ行き政宗に会いに行く。
…そこに三人がいて俺を迎えてくれた。俺は感謝の言葉を伝えて三人に抱きついた。細川は「ふふっ」と微笑み抱き締め返してくれ、服部は「ひょぉ~!」と興奮したような奇声を上げ硬直し、政宗は…微笑んで俺を受け止めてくれた。

「ありがとう…3人の事は忘れないよ。」

「…どーゆう事だ」

大学の合格通知をもらったので政宗たちに県外の大学に通うこと、一人暮らしをすること、…里帰り以外はこの街に帰ってこない事を話した。
細川と服部は寂しそうな顔をしたが政宗はさっき見せてくれた微笑みが消え無表情になって俺を見つめてきた。

「…来い」

「えっ」

「「政宗(さん)!?」」

二人を置いていき腕を掴まれ物凄い早さで階段を掛け下りていく。
そして靴も履き替えず鞄へと放り込みそのまま歩いていく。と言ってもリーチの差か、俺は駆け足状態になった。
校門をすり抜け少し歩いた所にバイクが置いてあった。俺の腕を握ったままエンジンを掛け俺にヘルメットを渡しバイクに股がった。

「乗れ」

「え、何処に…」

「いいから乗れ」

「…」

怒りのオーラを感じ素直に従う。バイクに乗るのは初めてで言われるがまま政宗の後ろに座り込む。すると急発進し思わず政宗の背中にしがみついてしまった。政宗は俺の腕をポンポンと叩き「しっかり捕まってろ」とでも言われたようだ。

体感では1時間以上乗った気がしたが実際は20分程だった。二階建てのアパートの駐輪場にバイクを止め政宗に腕を引っ張られながら二階へと上りドアの前に立ち止まり鍵を開けて中に入っていく。…腕を掴まれたまま靴を脱ぎ中へと入っていく。2LDKで一人暮らしにしてはかなり広く、黒で統一していたが家具もセンスの良い物が置かれていた。
腕を離されソファーに座れと促される。そして俺が座ると隣に政宗が座った。


「…いつから県外の大学に行く事を決めてたんだ?」

「…半年くらい前かな。親を説得するのに時間が掛かりそうだったから早めに決めて行動していた。」

「場所は」

「教えられない。俺はもう、この街には急用がない限り帰ってこないつもりだから…」

「俺とももう会わねぇって事か」

「…政宗くんにはこの一年凄く助けられたよ。凄く、感謝しきれない程感謝している。」

「感謝の言葉なんていらねぇ…」

「…うん、そう言うと思ったよ。引き留められそうで卒業するまで、ずっと黙ってたんだよ。」

「…チッ」


政宗は膝に肘を付き両手を組その上におでこをのせ項垂れている。…うん、申し訳ないとは思うけど、でも何も告げずに消えるのも何か違うと思い卒業式の時に告げようと思ったんだけどね。


「ごめんね、何も言わず、勝手に決めちゃって…」

「…」

「あのね、お詫びと言ってはなんだけど、俺に何かできる事を一つ、聞くよ?」

「傍にいてくれ。ずっと」

「それは出来ない。もう大学には合格してるし、住むアパートももう料金も払って───っ!?」


話の途中に衝撃を受ける。肩を強く握られギュッと抱き締められた。…泣いてるのか怒ってるのか、少し荒い息を吐いていた。

…政宗が納得するかわからないが、政宗の背中に腕を回しトントンとあやすように背中を叩いたり擦ったりしながら…俺が高校入りたての頃から話始める。
ゲイだと自覚したのは中3の時だったこと、高校に入り2年のバスケ部の先輩と付き合いだしたこと、そしてフラれ、また頼を戻そうと言われ断ったら恋人だった人に強姦されたこと、…そして集団レイプされたこと、そして3年になり写真と動画で脅されてバスケ部の肉便器に成り果てていたこと、全て話した。


「政宗が俺を守ってくれてからズタボロだった心が癒されてったよ。それはもう~政宗とずっと一緒に居たいと思える程に、ね。」

「だったら」

「ううん、でもこれは単に俺が政宗に甘えてるだけなんだよ。…だから誰も俺を知らない都会の方へ行き…リセットしたいんだ。」

「…」

「政宗の事は忘れないよ絶対。だからね…もし、政宗が俺の事、本当にずっと一緒に居たいと思ってくれてるなら…高校を卒業して、俺を探しに来てよ。」

「…わかった。必ず見つける。」

「それと、ね…これは俺自身の事なんだけど…」

「?」


これは言うつもりは無かったんだけど…なんか、政宗ならいいかなって思えてきた。
先輩の言葉を借りて自分がアゲ穴って事を話した。それでバスケ部の勝率を上げるためにバスケ部は俺を離さなかったと言うことを理由付けた。


「…ありえねぇ」

「うん、これは実際に体験しないとわからない事だし、俺も、先輩に言われなかったら気付かなかった事だったからね。」

「…お前はその先輩に未練はあんのか?」

「ううん、憎んだり、名残惜しいという感情は全くないよ。もう過去の人って感じかな。多分、何年後に偶然出会っても気付かない、気付いても何とも思わないと思う。」

「…そうか。」


ここで政宗に聞いときたい事がある。こう…政宗は行動で俺の事が大切だって表してくれるけど…やっぱり言葉がほしいよね。
少し体を起こし目を合わせるよう政宗の顔を覗き込む。そして聞いてみた。


「ねぇ政宗くん…俺の事、どう思ってる?」

「好きだ。愛してる」

「!」

「傍にいてデロデロに甘やかして俺無しじゃ生きていけねぇ程甘やかしてやりたい程だ。そして部屋に閉じ込めて俺以外誰にもあわせないようにしてぇな。」

「あ、う……ぅえ、えっ!?ええっ!」


俺の反応が可笑しかったのかクツクツ喉で笑い始めた。いやいや、急にあんな事言われたら戸惑うでしょ!だって好きと言われるのは覚悟してたが、それ以上の愛してると言われ、さらに執着とも取れるデロデロに甘やかしたいとか欲望を聞かされたら…ねぇ?誰だって口ごもると思うよ?
政宗…君って熱愛だったんだね。いつもは無表情で言葉少ないからわからなかったよ。


「ありがとう…俺も、政宗が好きだよ。凄く好き、愛してる。」

「!」

「俺ね、あと2週間、荷造りも含めて空きがあるんだ。…だからその間、ずっと一緒にいてくれるかな?」

「!勿論だ。」


両想いとわかったからか嬉しそうに満面の笑みを浮かべて返事を返してくれた。そして顔が近付いてきて…初めて政宗とキスをした。

…それからほぼ毎日政宗の部屋を訪れた。1、2年はまだ授業が残ってるので政宗に合わせてアパートに訪れ二人っきりで過ごした。ご飯は勿論俺が作った。合鍵を借りて準備して政宗の迎え入れる。…なんだか新婚気分だ。
政宗は1日1日を大事にするように、ずっと俺の傍にいる。…学校をサボって映画やゲームセンターへ行って遊んだりした。
そして夜は…


「んぅ…ぁ、はぁ…」

「大丈夫か」

「だいじょ、ぶ……っ?…あ、ああっ!?」

「ここか?」


初めて政宗と行為をした時は先輩の時とまるで違った。色んな奴に犯されたのにも関わらず、まるで初めて行為をやるかの様な感じだった。今はうつ伏せになって慣らされてるところだ。


「あ、あ、…ぁあ何っ!?あ、そこ、そんなに擦らな、いでぇっ!」

「いい声で鳴くなぁ…そそられる」


下半身に熱が溜まっていく…え、何故こんなにも感じるの?俺の身体は遂におかしくなったのか?俺の中で政宗の指が動く度に腰が無意識に揺れてるのを感じる。こんな…自分から誘ってるような感じに…


「やっ、やだっ!…はぁ、あ、あぁ、イ、イキそ…っ!」

「なんだ与一だけ先にイクつもりかぁ?…それは駄目だ」

「っ!…はぁ……っ?    ……っ!ぁああー!」


指を引き抜かれ圧迫感がなくなったと思ったらすぐに熱い杭がズズッと一気に入ってきた。…その瞬間、強い衝撃からか目から星が散りばめられた感じがした。


「は、あ……」

「キツっ……ああ、入れた瞬間イッたのか。厭らしいな与一は」


政宗に言われて気付いた。シーツには俺が出した物が散らばっていた。
なんだこれ…ただ入れられただけだぞ?それだけでイクなんて…信じられない。今までこの行為で萎えたままだったのに…なに?どうしたらいい?


「あぅ……ま、政宗、こ、わ、い…」

「?どうした」

「こんな…い、入れられただけで、イクなんて、初めてで…怖い…」

「っ…、与一っ、それ、誘ってんのか?これ以上煽るなっ!」


何を言ってるのか理解できないまま何に刺激を受けたのか腰を強く打ち付けて 奥の奥まで挿入しようとしてくる。それが刺激となり俺も力が入り政宗のモノを締め付けてしまう。なんという悪循環。引き抜かれたら引き抜かれたで刺激を受け締め付けてしまい、激しく打ち付けられる度に今まで演技で喘いでいたのが嘘のように自然と声が漏れる。
ああ…好きな人と身体を繋げるのがこんなにも気持ちがいいもだと初めて知ったよ。やはり先輩とは偽りの恋だったようだ。

解す為に俯せになっていた体勢を軽々しく繋げたままひっくり返され向かい合わせになる。…政宗の姿を見た瞬間胸がざわめいた。そして思わずキュッと中を締め付けてしまい政宗が低く唸った。

「くっ…そんなに締め付けるな…そんなに気持ちいいか?」

「うん…なん、だろう…今まで無理矢理だったからかな、こんな気持ちがいい行為だとは思わなかったよ。政宗のテクがいいのか、身体の相性がいいのか…ふふ、今、凄く幸せな気分だ。」

「そーやって煽るなっ…与一は俺を喜ばせるのが得意なようだなぁ?…そんな笑ってられる程余裕があるなら、まだいけるよな?」

「ふふ…ああ、お手柔らかに、ね?」


仰向けになった事で思う存分キスが出来ると思い、政宗の首にしがみつき無我夢中で唇を貪った。それに政宗は煽られてか激しく動きだし俺は何度かイったがイキっぱなしになったのか俺のモノからは涎を垂らしっぱなしになってしまった。政宗も、一度果てたが直ぐに復活し萎える事はなさそうな勢いだった。
何度ゴムを変えたのだろうか…ゴムの取り外しが面倒になった頃、自分から生でいいと誘い、その後は政宗のされるがままにされ…行為が落ち着いた頃には全身が精液まみれになっていた。
事後処理は恥ずかしかったが政宗に全てやってもらった。
…初めてだよ、エッチして腰が立たなくなり、さらに全身筋肉痛になるなんてね…政宗といると全てが初めてな事ばかりで戸惑う。…今までのは一体なんだったのだろうか?
今の気持ちをそのまま政宗に伝えたらまた襲われた。…俺の何に反応するのか未だにわからん…

…それからはタガが外れた様に毎晩泊まるようになりエッチをするようになった。俺は毎晩やってるせいか下半身からは濁りのない透明な液しかでなくなってしまった…何故かそれをみて政宗は満足そうに俺が出したモノを指で掬い上げ俺に見せびらかすように舐めるのだからタチが悪い。…何故政宗が満足してるのから理解不能だが。
それより政宗の逸物は凶器そのものだった。毎日行為をしてるのに最低3回は果てるまで落ち着かないようだ。一回では物足りないらしい。なんという絶倫。これじゃ複数相手してた時より格段に疲労が溜まりやすいではないか。でもそんな事は気にならない程この短期間の生活に不満はない、むしろ充実してるな。まぁ、それは愛が成せる業ってことにしておこうか。

そして別れの時はあっという間にきた。


「じゃあ…これでさよならだ。」

「2年後…絶対探しだして今度こそ俺のものにする。待っててほしい。」

「では猶予を考え3年、政宗を待ってるよ。それまで誰とも付き合わず、体を誰にも触らせないよ。」

「わかった…絶対みつけてやるよ。」

「…そうか。なら、ヒントをやるよ。俺の通う大学は4年生だ。選んだ科目は医学。それにちなんだ仕事をする予定だ。…まぁ、あくまで予定だ。もしかしたら何も関係ない職に付くかもしれないし、未来はわからないよ。でももし…再会して気持ちが残ってたら…その時は───」


ずっと一緒にいよう。
そう誓い、俺は18年慣れ親しんだ街から出ていった…
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