R18の乙女ゲーに男として転生したら攻略者たちに好かれてしまいました

やの有麻

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高年期[一学期編]

2人の兄

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音楽祭がやってきた。


後半に聞いた1ーAの歌を聞いた瞬間、俺、鳥羽愛翔は座っていたパイプ椅子から一瞬落ちそうになった。



・・・俺はこの歌を知っている・・・いや、知っていた!?っていうのが正確な答え。





_______



「ねぇー藍人お兄ぃ~・・・この歌って昔歌われたものなんだよねぇ?それで桜井さんが歌って再ブレイクしたんだよね~?」

「ああ、そうですね花彫。この歌、俺も好きですよ。」

「私も好きー!サビとか意味を理解すると凄く感動するの!」

「花彫歌ってください。俺は花彫の声が好きですので好きな歌を花彫の声で聴きたいですねぁ~。」

「リクエスト!うけたまりー!!じゃあピアノで演奏しながら歌うよ!今丁度練習中だから。」

「あぁ・・・早く・・・聞かせ、て・・・か、ほ、る・・・」


_______




視界がボヤける・・・意識がだんだんハッキリし始めてきた。







「ーーーーば、・・・おい鳥羽!大丈夫か?」

「っ!?あ、あぁ・・・俺、なにしてっ?」

「珍しいな鳥羽がこんな大事なイベントに寝るとか。」

「・・・」



隣に座ってる中野に肩を揺すられていた。
寝てた?・・・いや一瞬気を失った感覚だ。


・・・夢?・・・それにしてはリアルな夢だった。・・・いや、現実リアルだったような夢だった。



かほる?・・・その名前の子は?・・・俺の妹?



いや、俺には兄弟も姉妹も・・・・・・いない。一人っ子だ。・・・でも確かにかほるという子は俺の妹・・・




何か引っかかる・・・


ふと歌ってる1ーAの生徒たちを見る。・・・そこに黒髪金のメッシュをいれてる薫風に目が行った。



『藍人お兄!』

「っ!!花彫!」



幻聴が聞こえ思わず口に出してしまった。・・・これで確信した。俺は前世の記憶持ちだ。



すると頭の中に大量の情報が入ってきた。また目眩がしたが今度は意識を手放さずに持ちこたえた。



・・・俺は前世の名前は八王子・・・藍人。花彫の2つ違いの兄だ。


思い出した。全て思い出した!・・・そして直感だが、我が妹・・・八王子花彫は転生して今は八乙女薫風だ!



・・・直感。なんとなく波長のような、顔にも花彫の面影が残る整った顔。性別は違うが確実に薫風はあの花彫だ。





・・・凄い。たとえ兄弟でなくても、こうして来世でも会えるなんて・・・!


前世は花彫を守ってやれなかった。・・・あんな悲惨な目に合わせ、挙げ句、女性に突き飛ばされ呆気なく他界・・・あの時は絶望した。この世の終わりのように感じた。


・・・今度は絶対に幸せになってほしい。・・・まだ卒業まで時間はある。その間は薫風と・・・我が妹とずっと側にいよう。




※※※※※※※




理事長となった風間の側で俺はじっと立っていた。


今日は音楽祭という聖陵高等学校のイベント行事かある日。風間はお気に入りの八乙女弟の歌を聞きたくて朝から機嫌がいい。・・・まったく八乙女弟は苦労するな・・・。



俺、五十嵐銀徹はこいつ、風間和彦に頼み込まれ理事長秘書として聖陵高等学校に就任した。



主に風間理事長の補佐役だ。・・・これが結構大変だった。



理事長と言って、いわゆる学校を運営している社長のようなもので、仕事という仕事はあまりない。書類に目を通し案件を許可、却下したりしている。


それを整理するのが俺の役割。そしてスケジュール管理。よく理事会というものが開かれるので、理事長は必ず参加し会議をする。・・・会議の内容は俺にもわからない。




そして俺はいつものように風間理事長に付いており音楽祭の様子を伺っている。



うん。どれも良い歌だと思う。前半は2ーAの歌が印象に残っている。




後半の組達が次々と歌を披露していく。・・・うーん、どれもイマイチ。



1ーAの八乙女弟のクラスの出番になった。・・・風間、明らかテンションが先程までと違いすぎる。贔屓にするなよ?



・・・~♪



!この歌・・・聞いたことがっ!?・・・うっ!?



__________


「お帰り憖哲お兄!ねぇねぇ聞いて!さっきね、藍人お兄に披露した歌があるんだけどね、私が歌ったら気に入ってくれたのー!」

「ああ、ただいま花彫。花彫は歌が好きだな。上手なんだから歌手を目指せば良かったんじゃないか?あのA○B42だっけ?あのアイドルとか。」

「A○B48ね!嫌だよ~私は歌うのは好きだけど自由に好きな時に歌うのが良いんであって、歌を本職に仕事するのは嫌ー!」

「まぁ花彫の好きにするといい。・・・あぁ、まだ歌えるのなら俺にも聞かせてくれ。」

「もっちろん!その為に待ってたんだからねー!」

「有難う。じゃあ早速お願いするよ。」


__________



2人の会話が遠退いていく・・・





「・・・い・・・おい、五十嵐!どうした?」

「っ!?あ・・・」

「・・・仁王立ちで居眠りとか・・・器用な真似ができたもんだな。」

「・・・寝てた?」





もう1ーAの歌は終わり最後のクラスが歌う準備をしていた。


・・・寝てた?さっきのは夢?幻?・・・いや違うな。聞いたことがある声・・・なにか引っかかる。



1ーAが台の裏側から出てきて席に着き始めた。・・・ふと八乙女弟の姿に目がいった。




・・・あの顔立ち・・・かほる?・・・いや、名前は似てるが八乙女薫風は男だ。



・・・かおる・・・かほる・・・っ!花彫!



あいつは俺の妹・・・!!!・・・そうだ。俺は八王子・・・憖哲。花彫の兄だった・・・



ぐっ!?あ、頭が・・・ズキズキする・・・頭の中に大量の情報が入ってくる・・・一瞬フラついた。




「!?おい・・・五十嵐、疲れたのか?・・・少し休め。」

「っ。・・・大丈夫だ。だが、そうだな・・・少し座らせてもらう。」

「ああ・・・気にするな。」






ちっ・・・風間に弱った姿を見せてしまった・・・まぁ仕方ない。





・・・パイプ椅子に座り頭を整理しよう。





俺は・・・つまり前世の記憶をたった今取り戻した事になる。前世の俺は八王子憖哲。弟と妹がいた。そして日本という国でサラリーマンをしていて弟妹を養ってたんだ。


ある日、妹の花彫がストーカー野郎に襲われ弟と過保護な程に花彫を守ってたが・・・花彫は不幸が続き会社でセクハラされ辞職、恋人は悉くクズばかりに捕まり傷ついていた。・・・最終的に引きこもりになってしまった・・・




だが弟の藍人と一緒に花彫を養っていた。養うというか・・・可愛い妹の為に、これ以上傷ついてほしくなくて部屋に閉じ込めさせた。



妹は引きこもりといっても家事を一生懸命してくれて主婦の様な働きをしてくれていた。





・・・花彫がまた働きたいと言い出し始め反対したが、意志が強く引き留める事はできなかった・・・



仕事はガーデニング。出張花の手入れ屋さんのような仕事らしい。・・・花彫は昔から土いじりが好きだったので気晴らしにも良いかと思い許可してしまった。








・・・それが間違いだった。




俺が仕事が終わり帰る頃にスマホに着信音が鳴る。・・・知らない番号だったが最後に「110」がついていた。・・・警察?



電話を取ると・・・花彫が女性に階段から突き飛ばされ頭の打ち所が悪かったらしく亡くなった、と。






あの時は一生分の涙を流したと思う。それは藍人も同じだった。2人で周りを気にすることなく冷たくなった花彫を抱き締め叫んでいた。何故花彫だけが不幸が続いたのだと・・・







・・・それからの記憶は思い出せない。その後の前世の俺はどうなったのか、今じゃキッカケがない限り思い出さないだろう。別に気にもならない。



・・・そして重要な事が。・・・もしかしたら、あそこにいる黒髪金メッシュを入れてる男性としては可愛い顔をしている八乙女薫風は・・・もしかしたら前世の妹だった花彫の生まれ変わりじゃないかと・・・




まさしく直感。なんの根拠もないただの直感。・・・直感だが間違いない。名前も何処と無く似ている。八王子花彫、八乙女薫風。なんとなく似ている。





・・・ふと視線を感じ、そちらを振り向く。



3ーBの・・・鳥羽愛翔?





っ!!!あいと?・・・もしかして弟、藍人か!?




あちらも気付いたのか目を見開いている。・・・そうか・・・兄弟揃って同じ世界同じ土地に生まれ変わったのだな・・・




なんと偶然。そして奇跡。・・・思わず涙が出そうになった。




あぁ・・・藍人、いや鳥羽も同じようで俯いてしまった。あんな癖のような仕草も同じく受け継いだのか・・・







・・・休み明けに話しかけてみようか。あいつも俺も花園で良く会うしな。この世界にスマホはない。手段は手紙のみ。・・・なんとも不便な世界なのだろうか。




そして早く花彫、いや八乙女弟に会って話しかけて確信をもちたい。



もし花彫だったら・・・今度こそ守ってやりたい。




ふふ・・・確か風間が八乙女弟を気に、いや本気で好いてるようだからな。・・・まぁそんな事はどうでもいいか・・・とにかく休み明けだな・・・



*********

フラグ回収しましたー。
でもこの2人が出てくるのは少し後になりますー!
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